日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
10 巻, 2 号
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  • 蔦木 美穂, 錦戸 典子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 7-13
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    近年,総合健康保険組合(以下,総合健保)等の公的医療保険者の保健師が,労働者への個別支援だけでなく,事業者と協力して事業所全体に向けた支援活動も行うことの重要性が認識されてきたが,その支援方法等については,未だ十分な知見が得られていない.そこで,本研究は,事業所が組織的かつ主体的に健康づくりに取り組めるよう,総合健保保健師が意図的に働きかける活動(以下,事業所支援活動)に着目して,そのプロセス(以下,事業所支援プロセス)と支援の実施につながった背景要因について整理することを目的とした.総合健保常勤保健師のうち,事業所支援活動に関して卓越した実践実績がある6名を対象として,半構成的面接を行った.事業所支援プロセスとして,【事業所支援活動に向けた戦略を立て,総合健保内の合意形成を図る】,【事業所担当者等と信頼関係を構築しながら,動機づけを促し,直接的および側面的な支援を行う】,【事業所支援活動の意義や支援技術を総合健保保健師等に広め,活動の評価および普及を図る】の3つのサブプロセスに整理された.背景要因として,[保健師の個人要因],[総合健保要因],[事業所要因]の3つの大カテゴリーに整理された.本研究により明らかにされた,総合健保保健師による事業所支援プロセス,およびその背景要因についての知見をさらに精選・発展させ,今後の事業所支援活動の推進・普及に役立てることが期待される.
  • 笠井 真紀, 河原 加代子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 14-19
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:文献レビューにより保健師による育児支援についての現状と課題を明らかにした.方法:医学中央雑誌,保健婦雑誌と保健師ジャーナルを用いて検索した.結果:保健師による育児支援はさまざまな対象に数多く行われ,主に保健師ジャーナルによって報告されていたが,研究論文として報告されているものは少なかった.育児支援の内容について具体的に十分に明らかにされ,かつ母親や保健師による評価まで詳細に述べられているとは言い難かった.医療職による育児支援の課題として,地域における継続支援への取り組みが挙げられていた.夫の育児支援は母親の育児状況と母親自身の意識を高めるとされていたが,保健師から夫へ何らかの働きかけを行う取り組みや保健師による育児支援に結びつけられているものはみあたらなかった.考察:保健師の育児支援の必要性が示唆されたが,保健師にとっての育児支援は日常的に数多くの機会を利用し実施されており,その支援方法もさまざまであるため捉えにくいものであることが考えられた.今後の課題として,育児支援の事例検討の結果から母親へのアセスメント指標や支援体制を構築するための研究の必要性,スクリーニングシステムの評価,検討を行うことや母親への事後措置の方法の確立,夫の育児支援状況のアセスメント要因やその後のフォローアップ方法を検討することが考えられた.
  • 黒川 博史, 横山 美江
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 20-25
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症による骨折を予防するため,peak bone mass(最大骨量)を高めておくことが重要である.本研究では,骨密度測定を組み込んだ骨粗鬆症予防の個別健康教育が骨粗鬆症予防の意識を高め,行動変容につながるかを検討するため,個別健康教育実施前と個別健康教育実施から3カ月後の運動と食生活に対する意識と行動を比較することにより個別健康教育の効果を検証した.調査対象は,研究の趣旨説明に同意が得られた健康な女子大学生45人を対象とした.個別健康教育方法は,骨密度測定を行うことで対象者に自分の骨密度を認識してもらい,その上で骨粗鬆症予防について個別健康教育を実施した.骨粗鬆症予防の個別健康教育実施前と個別健康教育実施から3カ月後の意識と行動をそれぞれ比較したところ,実施から3カ月後のほうが運動習慣,緑黄色野菜の摂取の2項目で意識の向上が認められ,かつ魚および塩分の摂取の2項目で行動の改善が認められた.本研究結果から,骨粗鬆症予防のための個別健康教育を実施することで,健康な生活習慣への意識を向上させ,骨粗鬆症予防に向けた食生活の改善に効果がある可能性が示唆された.
  • 平賀 睦
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 26-32
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,在宅ターミナルケアに関わる訪問看護師にとっての遺族訪問の実践とその意味を明らかにすることである.訪問看護師8名に半構成的面接を行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に,質的帰納的に分析を行った.訪問看護師は遺族と<内的世界の共有>をして<遺族の現状の把握>と,自己の行ってきた<在宅ターミナルケアの評価確認>を行っていた.そして<遺族の心の拠りどころとしての自覚>をもって,<異なる視点の助言>や<生活を支える資源の紹介>をしていた.これらを通して<内省による気づきの獲得>,<より良いケアの方針の確立>,<在宅ターミナルケアへの意欲の向上>,<対象の思いに添うケア能力の積み上げ>を遂げていた.また<遺族の現状の把握>から<継続的関わりの判断>をし,必要ないと判断すれば<専門的関係の終結>をしていた.これらの行為は,【双方の心の整理】,【遺族の人生の橋渡し】,【訪問看護師の在宅ターミナルケア継続の糧の獲得】という意味のいずれかを内包していた.結果から,在宅ターミナルケアに関わる訪問看護師は,(1)遺族の死の受容と介護生活の肯定的な意味づけを促進し,その後の人生への橋渡しをする,(2)訪問看護師自身の精神的健康を保ち,在宅ターミナルケア対象者の生き方を尊重した支援技術を磨く,という2つの方向性をもって遺族訪問を行っていると考えられた.
  • 尾﨑 伊都子, 小西 美智子, 片倉 和子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 33-39
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:電子メールを用いた生活習慣改善のための保健指導を行い,その過程と成果を分析することにより実用的で有効な保健指導方法を検討したので報告する.方法:研究対象はA企業B病院で人間ドックを受けた40〜59歳の男性勤労者14名とした.保健指導は非喫煙者に食事・運動・睡眠・節酒,喫煙者に禁煙を指導し,人間ドック時の面接指導とその後12週間の電子メールによる指導を行った.電子メールによる指導過程で,メールの送信に要した時間や必要な環境・設備,困難であったこと等を記録した.この記録と電子メールの記載内容を分析し,メール送付回数,指導内容作成に要した時間,指導目的・内容,および実施に必要な条件を明らかにした.結果・考察:喫煙者1名を除く13名が指導を終了し,生活習慣や検査結果に改善がみられた.メール送付回数や指導内容作成に要した時間は個々に異なり,指導内容にはカウンセリング的な関わりが含まれていた.このことから有効性を高めるためには,対象者の状況に合わせた指導回数や指導内容が必要と考えられた.面接は対象者の個別性を理解するために重要であり,その有効性が示唆された.設備・技術面の条件から実用性を高める方法として,対象者が特別な技術の習得やソフトウェアの購入をしなくても保健指導に参加できることが必要と考えられた.さらに,指導頻度が高い指導内容をあらかじめ指導媒体として作成しておくことにより,効率があがると考えられた.
  • 宮田 さおり, 岡部 充代, 櫻井 しのぶ
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 40-46
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は半導体設計者における精神的健康度とストレス要因の分析である.研究対象者は半導体設計会社に勤務する設計者273名,記名式質問紙調査を行った.回答者は245名,回収率は89.7%であった.1)GHQ28の症状の7点以上の者は,男性で132名(59.7%),女性で17名(70.8%),全体149名(60.8%)になった.またGHQ28平均値を年齢別区分でみると最も高かったのは35〜39歳で109名(70.6%)であった.2)GHQ28の下位尺度について「身体症状」の重度の者が33名(13.5%)で最も多かった.症状のある者の割合では,「社会活動の障害(80.8%)」「身体症状(71.0%)」「不眠・不安(71.0%)」が高い数値を示した.3)ストレスと感じていること(複数回答)について最も多かったのは,仕事(72.2%),対人関係(31.8%),家族(16.7%)であった.ストレスの有無とGHQ28について,GHQ28総得点および下位尺度すべてに有意差があった(p<0.001).4)仕事に関するストレス,対人関係に関するストレスとGHQ28について,GHQ28総得点および下位尺度すべてに有意差があった(p<0.05).半導体設計に特有な事業展開の早さ,テクノストレスなどの背景が考えられる.今後はそのストレス要因の詳細な分析を進めることで,半導体設計者特有のメンタルヘルス問題が明らかになると考える.
  • 高田 直美, 巽 あさみ
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 47-53
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:現代の子育て世代の女性たちは,身近で子育てをしている母親の姿を見たり,乳幼児と実際に接したりすることがないまま大人になることで,想像と現実の子育てに乖離を生じやすい.想像と現実の乖離が母親の感情にどのような影響をもたらしているのかを明らかにする.方法:生後10カ月の第1子をもつ母親15名を対象に半構造化面接を行った.結果・考察:母親は,子どもをもつことによって,自分の生活変化の程度やそれに伴う肉体的・精神的負担度が想像を超えていたことによって乖離を感知していた.母親になった時の自分の感情や,実際の子育ての営みの中で経験する負担度とそれに伴う感情を,他人の子どもとの短時間の接触によってイメージすることは困難であることが示された.母親が精神的余裕を喪失している場合には,夫の子育てには良い評価を付与しながらも,夫や子育てに対してはネガティブな感情を生起していることが示されており,夫への不満や子どもや子育てに対するネガティブな感情の生起は,母親の精神状態に影響を受けることが示唆された.母親は子育てにおける得失を比較することで,得たもののほうが大きいと感じており,母親の心中では子育てに対するポジティブな感情が優位を占めることが示唆された.
  • 俵 志江, 時長 美希
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 54-62
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:閉じこもり高齢者の行動範囲を拡大するために,家庭訪問において保健師が行っているはたらきかけを明らかにする.方法:研究デザインは質的帰納的研究とし,5年以上地域を担当した経験があり,保健師の管理職に紹介を受け,個別に承諾を得ることができた者11名を対象に半構成的面接を行った.面接内容をもとに逐語録を作成し,具体的なはたらきかけを明らかにする観点から分析を行った.結果:閉じこもり高齢者本人に対するはたらきかけ,家族に対するはたらきかけ,地域に対するはたらきかけ,という3つのレベルから成り立つことが明らかになった.閉じこもり高齢者本人に対するはたらきかけとしては,【資源利用につなげる】【外出する方法を考える】【連れ出す】など14カテゴリーを抽出した.家族に対するはたらきかけとしては,【家族の関係性を把握する】【家族の健康状態を把握する】【介護状況を継続的に把握する】など8カテゴリーを抽出し,地域に対するはたらきかけとしては,【地域の分析をする】【地域組織と連携する】【他職種と協働する】など6カテゴリーを抽出した.結論:閉じこもり高齢者の行動範囲の拡大を目指した保健師の訪問における本人,家族,地域の3つのレベルでの具体的なはたらきかけの内容が明らかになり,保健師はそれらを重層的に行うことで,行動範囲の拡大を援助していることが明らかになった.
  • 馬場 みちえ, 西田 和子, 藤丸 知子, 兒玉 尚子, 伊藤 直子, 今村 桃子, 津山 佳子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 63-71
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    看護師の喫煙率は高いといわれ,看護学生時代に喫煙開始する人が多いと報告されており,看護学生時代の禁煙支援は重要なことである.本研究では,女子看護学生の喫煙習慣と性格特性の関連について検討を行った.性格特性の測定にはMPI性格調査票を用い,喫煙者と禁煙者は,非喫煙者と比較すると外向的であった.喫煙者は,神経質傾向がみられ,精神的健康度を測定するGHQ28ではストレスが高くなっていた.しかし禁煙者では神経質傾向がなくストレスは低かった.また禁煙ステージ別にみると,喫煙者の関心期,準備期と禁煙者の性格特性は類似していた.看護学生時代の禁煙支援あるいは喫煙防止教育には,性格特性を踏まえて行う必要があることが示唆された.禁煙教育は喫煙者にはもちろんであるが,禁煙者が再度喫煙者へ移行しないよう,禁煙者も含めて支援することが重要である.
  • 丸谷 美紀
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 72-78
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師が先駆的事業内容を活用して事業を創設してから成果が得られるまでの期間に,どのような過程があり,どのように活動したかを調査し,保健師活動において先駆的事業内容を活用した事業の展開方法を明らかにする.方法:1市の1人の保健師による2つの活動事例について,保健師への半構成面接と事業の参加観察を行い,その記録から先駆的事業内容を活用した事業の展開に関する「保健師の考えを含めた行為」を抽出し,内容の類似性を捉えて分類整理してカテゴリーとし,カテゴリーを保健師活動の展開過程に沿って整理した.結果:17のカテゴリーが得られ,活動計画立案,実施,評価の過程に整理された.活動計画立案過程では,まず先駆的事業内容を健康課題改善および資源開発・支援関係構築の面から有用性と活用可能性をアセスメントし,次に事業準備として新規・既存の人材の参画を得て事業内容の改変と事業対象者への適性を確認していた.事業実施過程では,事業の適性を再確認し,事業関与の意味づけ,住民同士の交流を拡大していた.考察:分析対象事例の成果より,先駆的事業内容を活用した事業の展開方法として,保健師が自市の事業対象者や資源の状況を把握していることを前提に,活動計画立案過程の当初に先駆的事業内容の有用性と活用可能性をアセスメントする過程を設け,幅広い人材の参画を得て事業内容の適性を高めるとともに事業関与を意味づけることが重要と考える.
  • 山本 文子, 村山 洋史, 田口 敦子, 小林 小百合, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 79-84
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:行政機関退職後,地域でNPO等の民間機関で活動する保健師を対象に,彼らの行政機関と民間機関での活動経験を比較することによって,行政保健師と民間保健師それぞれの活動の特徴と意義を明らかにする.方法:行政機関を退職後に,地域でNPOとして活動する保健師3名に対し,2004年9〜12月に半構造化面接を実施した.結果:行政保健師として活動した事例として,「行政保健師として僻地の保育園を廃園から救ったケース」等があった.一方,民間保健師として活動した事例として,「行政保健師時代に独自に考案した赤ちゃん体操を,民間保健師になってから普及させたケース」,「民間保健師として地域に生じている健康問題に即時的に対処したケース」等が語られた.結論:行政保健師の活動と民間保健師の活動を比較すると,行政保健師の活動の特徴として,(1)行政特有の情報源から判断し,法的根拠を基に保健師側から対象に接触できる,(2)採算のとれない専門的なサービスを確保することが可能,(3)政策決定権をもつ人に直接働きかけることができる,が挙げられた.また,民間保健師の活動の特徴として,(1)対象と対等な立場で関わることができる,(2)民間という外部組織の立場から行政のさまざまな部署に働きかけることができる,(3)保健師自身の得意分野を活かしたより専門性の高いサービスを提供できる,(4)問題に対して即時的な対応が可能,が挙げられた.今後,行政から民間への流れが加速するなかで,行政保健師,民間保健師それぞれの特徴を生かした保健師活動が展開されることが望まれる.
  • 景山 真理子, 伊藤 智子, 森山 美恵子, 佐々木 順子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 85-93
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】K町では,2000年から地区ごとに介護予防・健康づくりを目的とした「地区ミニデイサービス事業」(以下ミニデイとする)を行ってきた.本研究は,小地域において継続的に行われているミニデイに注目し,コミュニティ・アズ・パートナーモデルを用いて,地域エンパワメントを検証することを目的とする.【方法】福祉協力員3グループにフォーカス・グループインタビュー(以下,FGIとする)を実施した.またミニデイの参加観察,ミニデイ関係者への半構成的面接および既存資料を参照し,実施した.【結果】コミュニティ・アズ・パートナーモデルを用い,地域をコアと8 つのサブシステムに分けた.そして,FGIで得られたすべてのデータをもとに,キーアイテムを抽出し,カテゴリー化していった.そして,モデルの枠組みを用いながら,分析を行いエピソードからストレッサーを導き出した.その結果,4つのストレッサーが挙げられ,それぞれに対する住民の反応をまとめていった.さらに,それぞれのストレッサーに対して住民が行ってきたさまざまな経過をたどり,住民たちの活動,行動について検討した.【結論】研究と分析を通し,小地域において継続的に行われているミニデイで,コミュニティがさまざまある困難なストレッサーに対し対処,解決していくことにより変化し,エンパワーされていっていると言えた.そして,コミュニティ・アズ・パートナーモデルはコミュニティ・エンパワメントのプロセスを示すうえで有用であると考える.
  • 吉岡 洋治, 木下 由美子, 清水 由美子, 奥山 則子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 94-100
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域看護学の履修開始時期は,大学によって異なっている.その違いが学生の地域看護学の理解度や興味,看護観の形成にどのような影響を与えているかを分析し,学生に理解しやすい適切な地域看護学の履修開始時期を考えることを目的とした.方法:看護系大学のシラバスから地域看護学の履修開始時期を5パターンに分類した.各パターンから28大学を抽出し,4年次生に対して,郵送法による質問紙調査を実施した.調査項目は,地域看護学についての(1)イメージ,(2)興味,(3)理解度,(4)難易度,(5)位置づけ,(6)履修時期,(7)看護観である.分析方法は,各パターンを学年別の履修開始時期により3群に分け統計的に分析した.結果:地域看護学のイメージは「広い」「暖かい」「曖昧」であり,難易度ではやや難しいという回答が多かった.興味では在宅看護の領域が高かった.3群間の比較では,3年次履修開始の群のイメージ,理解度,難易度において,有意な差がみられたが,本結果は学生の地域看護学の考え方に履修開始時期が影響することを必ずしも示すものではなかった.結論:本研究から履修開始時期の違いによる学生への影響は3年次開始の群にやや強く表れた.しかし全体的に同様な傾向であった.学生の地域看護学の考え方への影響は,履修開始時期だけでなく,さまざまな要因があり,今後その要因を明らかにし,学生に理解しやすい地域看護学の教育のあり方を検討することが示唆された.
  • 平野 美千代, 佐伯 和子
    原稿種別: 本文
    2008 年10 巻2 号 p. 101-107
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,行政機関で行う保健指導に対する保健師と事務系職員の認識を質的帰納的に明らかにすることである.研究方法は「保健師の専門実践能力に関する調査」において,『保健指導についての考え』の自由記載に回答のあった,実務経験10年以上の保健師445人と事務系職員105人を対象とした.分析は自由記載内容からデータを作成し質的帰納的に行った.分析の結果,保健指導の認識として保健師8カテゴリー,事務系職員10カテゴリーが抽出された.保健師は保健指導を自らが推進するものと考え,事務系職員は第三者の視点から客観的に保健指導を捉えていた.なお,住民を尊重することおよび地域の健康レベルの向上を考慮することでは,保健師と事務系職員の認識は共通していた.しかし,保健師は住民を尊重しながら保健指導に取り組んでいると考える一方,事務系職員は保健師が住民個々に合った保健指導を行えていないと捉えており,両者の認識に違いがみられた.すなわち,保健師が実践で重視していることと,実際に事務系職員が見ている保健師の活動には相違があった.この相違について,保健師は真摯に受けとめることが重要と考えられた.また,実践スタイルの改善や,保健指導に対する事務系職員の理解を得る努力の必要性が示唆された.
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