近年,総合健康保険組合(以下,総合健保)等の公的医療保険者の保健師が,労働者への個別支援だけでなく,事業者と協力して事業所全体に向けた支援活動も行うことの重要性が認識されてきたが,その支援方法等については,未だ十分な知見が得られていない.そこで,本研究は,事業所が組織的かつ主体的に健康づくりに取り組めるよう,総合健保保健師が意図的に働きかける活動(以下,事業所支援活動)に着目して,そのプロセス(以下,事業所支援プロセス)と支援の実施につながった背景要因について整理することを目的とした.総合健保常勤保健師のうち,事業所支援活動に関して卓越した実践実績がある6名を対象として,半構成的面接を行った.事業所支援プロセスとして,【事業所支援活動に向けた戦略を立て,総合健保内の合意形成を図る】,【事業所担当者等と信頼関係を構築しながら,動機づけを促し,直接的および側面的な支援を行う】,【事業所支援活動の意義や支援技術を総合健保保健師等に広め,活動の評価および普及を図る】の3つのサブプロセスに整理された.背景要因として,[保健師の個人要因],[総合健保要因],[事業所要因]の3つの大カテゴリーに整理された.本研究により明らかにされた,総合健保保健師による事業所支援プロセス,およびその背景要因についての知見をさらに精選・発展させ,今後の事業所支援活動の推進・普及に役立てることが期待される.
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