日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
6 巻, 2 号
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  • 田口 敦子, 岡本 玲子
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 19-27
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ヘルスプロモーションを推進する住民組織への保健師の支援過程の特徴を明らかにすることである.調査方法は,12名の熟練保健師を対象に,半構造化面接を実施した.分析は,帰納的記述的研究方法を用いた.保健師の支援内容は,過程I〜VIIに分類され,そのうち21のカテゴリー,50のサブカテゴリーが抽出された.保健師の支援過程は,過程I:「住民組織の発足,活動の支援により,個々・地域の健康問題の解決を目指す」,過程II:「個々の健康問題の解決を起点に,住民組織を発足する合意形成にメンバーを導く」,過程III:「漸次的にリーダーシップをメンバーに委譲し,住民組織を発足させる」,過程IV:「住民組織が地域の健康問題に視野を広げ,行動できる土壌をつくる」,過程V:「地域の健康問題に取り組む必要性をメンバー間で共有化することを促す」,過程VI:「地域の健康問題の解決を目指し,住民組織が行動できるように導く」,過程VII:「住民組織とともに地域の健康問題の解決を目指し,行動する」であった.保健師の支援過程の特徴は,メンバー自身がニーズを明らかにする支援,住民組織活動に意義を見出すことを促す支援,住民組織の発足・運営に関する支援,地域ケアシステムの構築を促進する支援を行っていることであった.住民組織は,保健師による人脈や資源の活用に伴い,より活動を拡大させていたことから,それへの支援は,保健師の機能を活かした活動方法であることが示唆された.本研究において明らかにした,ヘルスプロモーションを推進する住民組織への支援過程の特徴は,保健師の住民組織支援の方法論にひとつの枠組みを与えると考えられた.
  • 市森 明恵, 大下 真以子, 北島 麻美, 西川 瑠美, 橋本 文, 福村 有夏, 南 貴子, 山越 紫, 横川 紀美子, 織田 初江, 佐 ...
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 28-37
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    家族規模の縮小や女性の社会進出等の社会環境の変化により,男性が介護に携わる機会も増えている.男性にとって,受け入れ難い介護行為のひとつに排泄ケアがある.男性介護者が,在宅で排泄ケアを行っていく支援の一助とするため,男性介護者が排泄ケアに対してどのような抵抗感を抱き,排泄ケアを実施しているのかを明らかにした.研究方法は,グラウンデッド・セオリー法に基づき,排泄ケアを行っている男性介護者11名に対し,半構成面接を行い質的に分析した.その結果,男性介護者が抱く抵抗感には【排泄物に関連する抵抗感】,【固定観念に関連する抵抗感】,【要介護者との関係性に関連する抵抗感】,【排泄ケア行為自体に関連する抵抗感】の4つがあった.男性介護者に顕著なものは【固定観念に関連する抵抗感】の中の<女性の陰部に対して「穢れ(けが)れ」のイメージがある>,<排泄ケアは地位の低い人が行うものだと思う>,<排泄ケアは女性が行うものだと思う>の3つと【要介護者との関係性に関連する抵抗感】では<女性への排泄ケアは性的にいやらしく思う>であった.これらの男性介護者に顕著にみとめられた抵抗感の背景には社会規範や社会通念から影響を受けた男尊女卑の固定観念に基づくものが大きく影響していると考えられた.また,排泄ケアの実施を受け入れる思いとして,【要介護者への愛情】,【要介護者への同情】,【排泄ケアをすることへの割り切り】,【介護への努力が報われている実感】,【介護をしている自分の生き方への誇り】の5つがあった.男性介護者は抵抗感をもちながらも排泄ケアの実施を受け入れる思いをもって排泄ケアを行っていることが明らかになった.今後の支援としては介護者に関わる専門職が,においへの対策として消臭剤の紹介や価値観の転換をはかるような健康教育を行うことにより,今回明らかになった抵抗感が少しでも軽減されるよう支援していくとともに,排泄ケアの実施を受け入れる思いを抱いていけるように介護者の努力を認め,フィードバックしていくことも必要であると考えられた.
  • 福島 道子, 北岡 英子, 大木 正隆, 島内 節, 森田 久美子, 清水 洋子, 勝田 恵子, 黛 満, 奥富 幸至, 菅原 哲男, 藤尾 ...
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 38-46
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    都内某保健所において児童虐待事例として援助した家族8例,および関東圏某児童養護施設において虐待事例として入所した児童の家族17例を対象に,「家族生活力量」の概念に基づいて事例検討し,児童虐待が発生している家族の問題状況を分析した.各事例を「家族生活力量アセスメントスケール」や家族システム論を用いて分析した後,全体像を短文で記述し,それをグルーピングしたところ,「精神疾患から虐待が発生し,それに伴って生活困難が生じている」「不健全な夫婦関係が虐待問題をより解決困難にしている」「生活基盤が弱いことによってネグレクトが生じている」「家族形態が成立しないまま出産し,出産直後から育児放棄している」「世代間境界の曖昧さが虐待問題をより解決困難にしている」「未成熟な家族ゆえに虐待が発生している」の6つに類型化された.また,「家族生活力量アセスメントスケール」で家族の生活力量を測定した結果,虐待が発生している家族は家族生活力量が低値であり,特に「役割再配分・補完力」と「関係調整・統合力」が顕著に低かった.虐待事例各々についてスケールの得点をみると,同スケール9領域のいずれかが0%である事例が21例みられた.虐待支援に当たっては,家族生活力量を査定したうえで働きかけることが必要であることが考えられた.本研究の限界として,事例数が少なく,虐待重症度や対象選定機関等に偏りがある.今後は,地域保健・福祉機関からの事例を積み上げていきたい.
  • 渡部 月子, 星 旦二
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 47-54
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:疾病探索型の乳幼児健康診査の,健康志向型の健康診査への転換が模索されているなか,母親の育児不安の軽減への対応が求められている.本研究は4カ月児をもつ母親の育児不安の概念モデルを踏まえて関連する要因との関係性とその構造を明確にすることである.方法:全国12の市町村で実施している4カ月児健康診査の対象となった児の母親945人を対象とし,自記式質問紙によって行った.調査項目は,基本的な属性,主観的育児不安,育児観,対処行動,ソーシャルサポートである.分析方法は育児不安に関する構造モデルを設定して,共分散構造分析を用いて分析した.分析ソフトは,SPSS11.0Jを共分散構造分析にはAmos4.0を用いた.結果:仮説的に設定した4つの潜在変数による構造モデルによって「育児不安」の97%が説明されることと,その適合度が高いことが明らかになった(NFI=0.871, RMSEA=0.043).4カ月児健康診査受診時における母親の「育児不安」のほとんどが「育児認識と自信」から規定されていた.「育児支援ネットワーク」は育児不安を直接規定していなかったが,母親の「自己肯定感」を高め,次の「育児認識と自信」を高めることにつながっていた.結論:育児不安を軽減し,育児を通しての自分自身の成長を促進させるためには,母親の自己肯定感を高め育児認識をポジティブな視点で捉え,同時に育児するうえでの自信を高めることが最も効果的である可能性が示唆された.また,育児に対する「対処行動」を推進させていくためには,育児サポートを強化していくことが重要である.
  • 村山 洋史, 春名 めぐみ, 村嶋 幸代, 吉岡 京子, 永田 智子
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 55-61
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    地域母子保健活動の重要性は増しているものの,それを成功,発展させる要因はいまだ明確にはされていない.本研究はこれらの要因を探ることを目的とし,地域母子保健組織に一定の働きかけを行い,継続・発展した2事業を対象に,報告書からのデータ収集と事業担当者へのアンケートによる確認,さらにインタビューを実施することにより,事業の継続・発展要因を抽出した.その結果,事業が継続・発展するための要因として,(1)潜在するニーズの先取り,(2)既存の住民組織の活用,(3)関係者間での意思疎通の促進,(4)マンパワーの確保,(5)住民や住民組織の積極的な関わりの促進,(6)行政の管理職の理解の促進,(7)経済面でのバックアップの確保,があげられた.また,各要因を確保するためのポイントも示した.今後,母子保健事業を実施していく際には,これらの点に留意することが必要と考えられた.
  • 塚崎 恵子, 城戸 照彦, 須永 恭子, 長沼 理恵, 高崎 郁恵
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 62-71
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    在宅介護が家族の心身に及ぼす影響を明らかに示すことを目的とし,特に夜間の睡眠を中断して介護することに焦点をおき,血圧と疲労感への影響を分析した.調査対象者は,夜間の睡眠を中断して介護していた夜間群17名(女性11名,男性6名:66.2±8.4歳)と,日中のみ介護していた日中群11名(女性10名,男性1名:62.6±13.0歳)の主介護者とした.研究方法は,24時間の自記式行動記録,Actigraphによる24時間の活動量測定と睡眠・覚醒判定,携帯用血圧モニタシステムによる24時間の血圧と心拍数の日内変動測定,疲労感の質問紙調査,および面接調査を行った.夜間群は妻が多く,日中群は嫁が多かった.夜間群の夜間の介護は,ほとんどが床上での排尿介助で,1晩のうち2回から3回中途覚醒しており,熟睡感のない人が多かった,血圧変動において,夜間群のほうが,夜間の血圧降下が少なかった.特に,夜間群の降圧剤内服者は,収縮期血圧の日中と夜間の平均値が高い人が多かった.疲労感については,夜間群の訴え率が低かった.また,夜間介護の有無にかかわらず,高血圧の既往がない人で,日中または夜間の血圧の平均値が高い人がいた.以上のことより,夜間介護している介護者には,疲れを自覚して心身の健康のバランスを保つように促すことと,高血圧の治療の際は,夜間の介護状況を考慮しながら24時間の血圧のコントロールを図ることが必要であると考える.また,在宅介護者の高血圧の予防と早期発見が重要であると考える.
  • 錦戸 典子, 京谷 美奈子
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 72-78
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,産業看護活動の質の向上のために,今後どのような支援が必要であるか明らかにすることを目的として,東京都に在勤の産業看護職250名を対象に活動上の困難に関する質問紙調査を実施した.130名からの回答を分析した結果,活動上の困難に関しては,「非常にある」が26.8%,「まあある」が57.5%,「あまりない」が13.4%,「まったくない」が2.4%であった.「非常にある」と「まあある」を合わせたものを「困難あり群」,「あまりない」と「まったくない」を合わせたものを「困難なし群」として,属性データや学習機会の有無との関連を調べ,単変量分析でp<0.10の関連がみられた変数を独立変数とし,困難の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した.その結果,産業看護経験が短いこと,職場内学習機会がないこと,産業保健推進センターの研修受講機会があったことが,各々独立して困難があることに関連していた.困難の具体的内容に関する自由記述データを内容分析した結果,91名の回答から188のフレーズが得られ,32の小カテゴリー,16の中カテゴリー,6つのコアカテゴリーに整理された.主なコアカテゴリーは,活動スキル上の困難,職場での理解・支援・連携不足,学習機会・相談相手の不足,組織上の制約,活動範囲・質が不十分,などであった.今後,産業看護活動の質を高めていくためには,スキル向上のための継続教育の体系化やスーパーバイザーの育成とともに,他職種・事業場の理解を得るためのPR活動など,産業看護職が働きやすい環境を整えることが重要であることが示唆された.
  • 尾形 由起子, 小西 美智子
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 79-85
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,介護予防事業の1つである生活支援デイサービスに参加している高齢者の自己効力感評価指標を作成することである.方法:F県内2地域の生活支援デイサービス参加者16名に対し,フォーカスグループ・インタビューを実施し,Banduraの4つの情報源に基づいて,自己効力感項目を抽出した.この抽出した自己効力感項目と一般性セルフエフィカシー尺度をF県およびH県内の生活支援デイサービス参加者103名を対象に実施し,因子構造は因子分析で確認,信頼性はCronbach α係数,基準関連妥当性は一般性セルフエフィカシーとの相関係数で分析し,信頼性・妥当性の検証を行った.結果:フォーカスグループ・インタビュー内容の分析から得られた自己効力感23項目について,因子分析を行った結果,因子負荷量0.5未満の6項目および設問内容の表現が類似していると思われるものを除くと16項目となった.16項目のCronbach α係数は0.92であり,基準関連妥当性を一般性セルフエフィカシー尺度との相関係数をみると,r=0.54(p<0.05)で有意な正の相関はみられた.これらの検討を行った結果,自己効力感評価指標は16項目となり,この16項目について,因子分析を行った結果,第1因子7項目「生活維持の効力感」と第2因子9項目「生活活性化の効力感」の2因子に分けられた.
  • 松坂 由香里
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 86-92
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,一人暮らし高齢者の生活感情を明らかにすることである.訪問看護サービスを利用しながら在宅で一人暮らしをしている高齢者12名を対象に,半構成的面接を行い,その逐語録をデータとしGrounded Theory Approachを用いて,質的帰納的に分析を行った.その結果,「生きてきた誇り」「一人で生きる現実の辛さ」「一人で生きていく意地」「今の自分を認める気持ち」「周囲の人々との日々のつながり」「生きる支えとなっている家族の存在」という6つのカテゴリーとその関連性が明らかになった.それは次のように説明できる.1)「一人で生きる現実の辛さ」と「一人で生きていく意地」との間で揺らぎながらも,「生きてきた誇り」や「今の自分を認める気持ち」により,一人暮らし高齢者自ら生活調整を行っていた.2)他者との関係性を示す「周囲の人々との日々のつながり」は,日常生活を支える感情の一つであった.3)一人暮らしを継続する感情として「生きる支えとなっている家族の存在」が導き出された.以上の結果から,一人暮らし高齢者が生活調整能力や家族の絆を認識できるように,生活感情および周囲・家族の意味を尊重した看護実践が重要であると示唆された.
  • 菱田 一恵, 森 仁実, 松山 洋子, 杉野 緑, 大井 靖子, 普照 早苗
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 93-99
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,介護保険制度における居宅介護サービス利用者の主体的な選択にかかわる介護支援専門員の支援の現状と課題を明らかにすることを目的とする.対象は,H市における居宅介護支援事業者に所属する介護支援専門員20名である.介護支援専門員に,介護支援専門員の役割の説明,利用者のサービス選択支援の工夫,介護保険制度では対処できない問題,活動を充実させる方法に関する意見・要望等について半構成的面接調査を実施し,調査項目ごとに意味内容の類似性に従って分類を行った.14名の介護支援専門員が,ケアプラン作成,サービス仲介・調整,一緒にサービスを考える等と利用者に自らの役割を説明し,利用者・家族の意向を捉える,身体状態を捉える,サービスの見学を勧める,パンフレットを利用する等のサービス選択の支援を行っていた.12名の介護支援専門員が,利用者と話し合いながらその場でケアプランを作成していたが,その一方で10名の介護支援専門員がケアプランに同意が得られなかった経験があるとも答えていた.また,8名の介護支援専門員は介護支援専門員同士が交流・情報交換する場や研修の機会を要望していた.介護支援専門員が利用者の主体的な選択を支援するうえで,工夫しながら対応している現状が確認できたが,介護支援専門員自身が研修等の機会を求めている現状が明らかになり,サービス利用の支援を充実させていくうえでも介護支援専門員の情報交換・研修の機会を設ける必要がある.
  • 西嶋 真理子, 小西 美智子, 脇谷 小夜子
    原稿種別: 本文
    2004 年6 巻2 号 p. 100-106
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,産業保健師のヘルスプロモーションに向けた働きかけの分析から,保健師の働きかけの展開方法を探ることである.方法は,T社保健師の26年間の働きかけを既存資料および面接調査から質的に分析し,働きかけの内容コードを用いて,活動方法と経年的な変化を分析した.T社の結果を地域における先駆的保健活動として報告された事例と比較し検討した.T社保健師の働きかけから427件の内容コードを抽出し,ヘルスプロモーションの5つの活動方法別では26項目の小項目が抽出できた.経年的にみると,個別ケアから集団的アプローチ,組織への働きかけへと広がり,組織には組織全体を動かす組織と,個を取り巻く組織の2方向への働きかけが確認できた.これらの働きかけから,リーダーが育成され,リーダーが変化してくるとともに,保健師の働きかけはリーダーとの協働へ,さらにリーダーの影響を受けた人々の変化とともに,保健師の働きかけは人々の相互作用を促す働きかけへと広がりがみられた.これらの働きかけには地域との共通性が認められ,社員や社会のニーズを汲み上げ,国の対策とも連動しながら,個人,組織への働きかけへと具現化してきた過程と考えられ,活動の展開モデルとして提示できた.
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