目的:転居高齢者の適応の状況と,適応の関連要因を明らかにすることを目的とした.方法:一都市部の1年間の転入者全731人に質問紙を郵送し,回収した310通中299通を分析対象とした.分析は,適応群と非適応群に分け,生活変化・健康状態・ソーシャルサポート等の変数との関連についてχ
2検定,t検定,多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:1)適応群は230人(76.9%),非適応群は69人(23.1%)であった.2)非適応群は,年齢が高く(p<0.05),要介護認定を受け,転居の意志決定は非自発的,また転居先について「知らない場所だった」者が多かった(p<0.01).非適応群は,困ったこととして,経済的負担感,外出困難,家族への気兼ねをあげた者が多く,健康度自己評価,生活機能が低い者が多かった(p<0.01).3)適応群は,高齢者向けマンションへの転居者,住環境がよくなったと感じている者が多く,同居家族以外からのソーシャルサポートをもち,友人等との交流頻度が高い者が多かった(p<0.01).4)多重ロジスティック回帰分析により,転居先を知っていた者,同居家族以外のソーシャルサポートがある者,転居を自発的に決めた者,経済的負担感が少ない者,高齢者向けマンションへ転居した者ほど,適応が良好であることが明らかとなった.考察:高齢者の転居においては,転居先の情報を得たり,心理的な準備が重要であることが示唆された.
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