日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
17 巻, 3 号
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  • 小出 恵子, 岡本 玲子, 猫田 泰敏, 岡田 麻里
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 4-13
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,保健師を対象としたリフレクションに基づく生活習慣病予防のための保健指導技術向上プログラムの介入効果を検討することである.方法:本プログラムは3か月間に4日間である.アウトカム評価では,保健指導技術の変化を対照群と比較した.保健指導技術は,参加者が模擬患者と保健指導を行い,終了後に双方が評価指標に沿って評価した.アウトカム評価はベースラインと直後,3か月後に実施した.また,プロセス評価では,リフレクション過程で生じた介入群の変化を明らかにした.結果:介入群と対照群は各11人であり,基本属性に有意差はみられなかった.多元配置分散分析の結果,介入群の自己評価では2項目が対照群より有意に低く,他者評価では有意差はみられなかった.内容分析の結果,介入群は自己の課題を自覚し,改善策を模索しながら,専門職として学び続ける意欲を高めていたが,学んだことを実践で生かすむずかしさを実感していた.考察:プロセス評価の結果より,介入群はリフレクションを促進していることが明らかになった.しかし,介入群は,対照群と比較して保健指導技術の向上はみられず,本プログラムの効果は認められなかった.
  • 糸井 和佳, 亀井 智子, 田髙 悦子, 梶井 文子, 山本 由子, 廣瀬 清人
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 14-22
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域の高齢者と子どもの世代間交流における両者の相互作用を観察する地域世代間交流観察スケール:Community Intergenerational Observation Scale for Elders (CIOS-E) and Children (CIOS-C)を開発し,信頼性と妥当性を検証する.方法:第1段階で作成したCIOS原案(CIOS-E27項目,CIOS-C26項目)を用い,第2段階では6か所のプログラム参加高齢者113人,子ども130人を観察し,暫定版CIOS(CIOS-E18項目,CIOS-C16項目)を作成した.第3段階では17か所のプログラム参加高齢者174人,子ども175人を対象に暫定版CIOSならびに子どもは社会的スキル尺度を併用した観察と,両世代の交流の自己評価と満足度,高齢者の世代性関心,SF-8の自記式質問紙調査を行った.結果:CIOS-Eは【包容】【伝承】【育成】の3因子構造を有し,集団間で測定不変性が採択された(p=0.078).CIOS-Cは【継承】【尊重】の2因子構造を有し,集団間で測定不変性が採択された(p=0.392).両尺度ともCronbach α=0.79〜0.81,観察者間一致率はκ=0.73〜0.88であった.結論:CIOS-EとCIOS-Cは地域の高齢者と子どもの世代間交流における相互作用を観察する尺度として信頼性と妥当性が示唆された.
  • 鹿瀬島 岳彦, 田髙 悦子, 田口 理恵, 有本 梓, 臺 有桂, 今松 友紀
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 23-29
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:大都市における地域在住高齢者の健康長寿に向けて,主観的健康感の実態ならびに関連要因を把握するとともに支援の示唆を得ることである.方法:対象は,関東圏A市A区の65歳以上の住民のうち,住民基本台帳に基づき1/50無作為抽出された623人である.方法は,無記名自記式質問紙調査(郵送法)であり,調査項目は,主観的健康感,人口学的特性,身体心理社会的特性等である.結果:有効回答者数(割合)は350人(56.2%)であり,平均年齢は73.5(SD=6.1)歳,男性180人(51.4%)であった.主観的健康感は健康:32人(9.1%),まあ健康:244人(69.7%),あまり健康でない:54人(15.4%),健康でない:15人(4.3%)であり,重回帰分析により,性別(β=-0.136, p<0.05),自覚症状数(β=0.308, p<0.05),要介護認定(β=-0.147, p<0.05),K6(うつ)(β=0.167, p<0.05),LSNS-6(ソーシャルネットワーク)(β=-0.238, p<0.05),口腔衛生(β=-0.173, p<0.05),定期的な運動(β=-0.253, p<0.05),休養と睡眠(β=-0.127, p<0.05)の各項目ならびに健康づくり合計項目数(β=-0.191, p<0.05)との間に有意な関連が認められた.考察:大都市における地域在住高齢者の健康長寿に向けて主観的健康感を向上させるためには,高齢者1人ひとりの健康づくり活動を支援するとともに,地域における支援の体制づくりが必要である.
  • 小野 恵子, 小笠原 映子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 30-40
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,在宅看護論の演習プログラムを評価することである.この演習評価で,学生が在宅看護をイメージできているのかどうか,受講してきた授業は演習で理解が深まっているのか,演習は理解できているのか,演習プログラムの目標・目的の達成度はどれくらいかを明らかにする.方法:方法は,演習プログラムを評価するために,演習前後でアンケート調査を行った.分析対象は,演習前と演習後のアンケートが同一の学生であると確認できた45人(有効回収率55.6%)であった.結果:演習プログラムの前後で評価項目に有意な差がみられた.演習前に比較して,演習後は在宅看護の理解が深まっていた.授業の理解度,演習プログラムの理解度,在宅看護のイメージ化の間には,正の相関があった.在宅看護のイメージ化とコミュニケーションの実践には正の相関があった.結論:本演習プログラムは,在宅看護の理解やイメージづくりに有用である.演習はいままでの授業の理解を深めることにもつながり,より在宅看護のイメージ化につながる.とくに,学生によるコミュニケーションの実践は,より在宅看護をイメージ化しやすいと思われる.
  • 岡久 玲子, 多田 敏子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 41-50
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,保健指導を受けた成人男性が生活習慣改善過程においてもつストレングスの内容を明らかにすることである.方法:ストレングスとは,生活習慣改善過程において人々のもつ力,能力と定義する.特定保健指導を受診した40歳代から50歳代の成人男性で,本研究に同意を得られた15人を対象とした.1人あたり約1時間の半構造化面接を1回行い,生活習慣改善過程において本人のもつストレングスの内容を質的帰納的に分析した.インタビューガイドは,(1)保健指導後の生活とその変化,(2)生活を変えることの意味,(3)生活習慣の改善の力になったもの,(4)いまの生活を続けて将来どうありたいと思っているかの4項目を用意した.結果:生活習慣改善過程における男性労働者のストレングスとして【長期的な展望で自分の生き方を考える力】【人とのかかわりのなかで自己の存在を認識する力】【きっかけがあれば生活習慣の改善に向けて行動できるという自己認識力】【ストレスに対応しコントロールする力】【自分の傾向や生活を分析する力】【生活習慣改善目標を自分の生活に合わせて具体化する力】の6カテゴリーが抽出された.考察:生活習慣改善過程における成人男性のストレングスの内容は,認識面にとどまらず行動面の変化をもたらす力であった.さらに,ストレングスは相互に関連し合い,過去,現在,未来へと続く時間軸のなかで,他者との相互作用により引き出されていた.本研究結果より,生活習慣病予防のための保健指導に,ストレングスの概念を取り入れることの重要性が示唆された.
  • 今松 友紀, 田髙 悦子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 51-59
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,生活習慣病ハイリスク者における継続可能性の高い行動変容に向けた行政保健師の支援方法を明らかにすることである.方法:生活習慣病予防の支援経験を有する行政保健師4人を対象に,生活習慣病ハイリスク者の支援にあたり継続可能性の高い行動変容に向けて行った支援とはどのようなものだったかについて,インタビューガイドを用いた半構成的面接法にて個別インタビュー調査を実施し,質的帰納的に分析した.結果:分析の結果,42の<サブカテゴリー>,9つの《カテゴリー》,2つの【コアカテゴリー】が抽出された.行政保健師は,生活習慣病ハイリスク者に対し,《生活の客観視を促す》や《生活パターンに合った改善方法を見いだす》《改善の効果を感じる力を養う》などの【自己の生活調整力を高める支援】と《家族の健康観・生活観を考慮する》や《周囲に対する改善の意思表示の仕方を検討する》《健康に関する役割を付与する》などの【周囲との関係調整力を高める支援】を行っていた.考察:行政保健師が実施する継続可能性の高い行動変容に向けた支援とは,【自己の生活調整力を高める支援】と【周囲との関係調整力を高める支援】から成り立ち,生活習慣病ハイリスク者個人のセルフケア能力の向上を助けるとともに,地域全体の健康づくりの人材としてとらえ,地域環境の変容への参加を促す支援であった.
  • 牧野 忍, 巽 あさみ, 大塚 敏子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 60-69
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:ネグレクト家庭の不登校児童に対する小学校教諭の支援の経験を明らかにする.方法:ネグレクト家庭の不登校児童への支援を行った経験のある小学校教諭13人を対象に半構造化面接を実施した.研究方法は舟島なをみによる看護概念創出法を用いた.結果:ネグレクト家庭の不登校児童に対する小学校教諭の支援の経験を示す414のコードが抽出され,7コアカテゴリー,すなわち【児童にとって学校が楽しみとなる工夫】【担任を中心とした学校全体および地域支援者の共同体による支援】【保護者の養育力を強化するかかわり】【顕在化する児童の問題への対応困難】【タイムリーな支援ができない困難】【学校の機能として親にかかわることの限界】【保護者への強力な介入が可能な権限や仕組み】の7つの概念が抽出された.考察:小学校教諭は,ネグレクト家庭の不登校児が登校できるようになる目標達成の視点から,学校の業務の範囲を超え支援しているものの,ネグレクト家庭の保護者にみられる特性やネグレクトを背景に二次的に形成された児童の問題への対応に苦慮し,学校内外の共同体としての支援を求めていることが明らかになった.
  • 細田 舞, 中谷 久恵, 池田 和子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 70-77
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,労働者の生活習慣と生きがいとの関連を明らかにし,産業保健分野での保健指導のあり方について検討することである.方法:調査対象者は製造系企業に勤務する全労働者638人のうち正規職員の544人である.調査内容は基本的属性と生活習慣および生きがいであり,無記名自記式で任意のアンケート調査を行った.生活習慣は,厚生労働省の標準的な健診・保健指導の質問項目を活用し,選択肢の内容から良好・不良の2群にわけた.生きがいの測定はPurpose-in-Lifeテスト日本版(以下,PILテスト)を用い,判定基準により低群・中群・高群に分類した.生きがいを従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,生きがいに影響する要因を抽出した.結果:回収は419人(回収率77.0%)からあり,欠損値のない265人を分析した.平均年齢は33.9±8.3歳で性差はなかった.生きがいの割合は低群50.2%,中群36.2%,高群13.6%であった.年齢と睡眠は生きがいに関連しており,生活習慣である睡眠の不良群は,生きがいの低群に影響していた(オッズ比3.213, P<.01).考察:睡眠で休養が十分にとれていない人は生きがいが低いことが明らかとなり,睡眠や休養についての保健指導や健康教育の必要性が示唆された.
  • 猪股 久美, 川名 ヤヨ子
    原稿種別: 本文
    2015 年17 巻3 号 p. 78-83
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:産業活動の現場での臨地実習は,効果的な学習方法として大変重要である.本研究では,実習指導に携わる保健師・看護師に対するインタビューを通して,看護職が産業保健・看護実習に際して大学に望むことを明らかにすることを目的とする.方法:大学の産業保健・看護実習の受け入れ経験がある,または予定があるという保健師および看護師5人に対し半構造化面接を実施した.遂語録から実習において実習指導者が大学に望むことに関連する文章を取り出し,質的記述的研究の手法を用いて分析した.結果:実習指導者が大学に望むことには,【伝わりやすい実習要綱】【分かりやすい実習目的・目標】といった,実習施設に快く実習を受け入れてもらうための方法,【実習プログラム作成への協働】【実習生を理解することへの支援】【実習指導者の学びへの支援】【実習生の準備性の強化】といった学習効果をより高めるための具体策,【安全への対応】といった実習生の安全を守るための方法,【個人情報保護への対応】といった従業員の個人情報保護のための具体策があった.考察:実習指導者が,実習施設と大学との関係性に配慮しながら実習を受け入れ,安全と学習効果を考えて取り組み,実習目標の達成のために双方の協力から実習を創造することを望んでいることが分かった.実習指導者と教員との協働で産業保健・看護実習を作り上げていくことにより,教育効果の実現が可能になると考える.
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