日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
27 巻, 3 号
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原著
  • 光井 朱美, 郷良 淳子, 志澤 美保
    2024 年27 巻3 号 p. 6-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:新任期保健師と母親との信頼関係構築のプロセスを明らかにする.

    方法:経験年数5年未満の行政に勤務する新任期保健師30人に対し,インタビューを行い,得られたデータから修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    結果:新任期保健師と母親との信頼関係構築のプロセスは,≪受けいれられるための試行錯誤≫≪協働関係の第一歩≫≪共に作り上げる≫の3つの段階であった.母親との関わりの最初は<母親がみえないなかでの関わり>と<関わり続けることの不安と苦悩>が並行していた.不安と苦悩に対応するために<真摯に向き合う>を行い,<母親の全体像を自分なりにつくってみる>をしていた.新任期保健師は<真摯に向き合う>と<母親の全体像を自分なりにつくってみる>を繰り返すうちに,母親との関係が変わる<流れが変わるのを感じる>,新任期保健師の<母親に合わせた支援>が,次第に【対等な関係】となり,<一体感の手ごたえ>を感じた新任期保健師が,【知識と経験を活用する】ことで,母親と【共に次の一手が考えられる】を行い,≪互いに作り上げる≫につなげた.

    考察:新任期保健師が,第1段階の≪受け入れられるための試行錯誤≫を乗り越えられるように重点的にサポートすることは,その後新任期保健師自身が考え,実践し,自分なりの支援方法の確立を目指すことを可能にすると考える.

研究報告
  • ─動機づけ支援初回面接に焦点化して─
    品川 祐子, 黒田 寿美恵
    2024 年27 巻3 号 p. 17-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:保健師による効果的なオンライン特定保健指導の実践内容を明らかにし,実践指針開発の基礎資料とする.

    方法:オンラインでの動機づけ支援初回面接を10件以上経験している保健師20人に半構造化面接を行い,Krippendorffの内容分析の手法を参考に分析した.

    結果:【画面越しにより制限される表情・口調・仕草に関する情報の獲得や心理的距離の接近のために対面時よりも注意深く細やかに対応する】【Webカメラ越しでも食べ物の大きさや身体の動きを正しく伝えるためにカメラ位置や使用する媒体を調整・工夫する】【他事による中断がなく面接に集中できる環境でつないでもらう】【表示画面への意識集中・発言内容の視覚化など画面共有機能の利点を活かす】【具体的で実施可能な行動変容を考えるために自宅・職場という日常環境下でオンライン接続していることを活かす】など10カテゴリーが得られた.

    考察:保健師は,援助的関係構築に向けて非対面がもたらすコミュニケーションの障壁を克服し,保健指導を困難にするオンラインゆえの要因を解決しようとし,また,オンラインの利点を有効活用していると推察された.実践指針を開発するうえでは,事業所ごとの特殊性やデバイスへの考慮も必要である.

  • 岡野 明美
    2024 年27 巻3 号 p. 26-34
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーションに関連する要因を明確にし,認知症のコーディネーション向上への示唆を得る.

    方法:地域包括支援センターの保健師等,社会福祉士,主任介護支援専門員を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.調査内容は,個人属性,地域診断や認知症に関する研修参加の有無,5因子からなる認知症に関連する知識の理解,7因子からなる顔の見える関係,4因子からなる3職種間の協働要素である.認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーションを目的変数とした重回帰分析を行った.

    結果:259人を分析対象とした.認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーションに関連のあった要因は,認知症に関連する知識の理解の下位尺度の「認知症の基本的な理解」(β=0.203,p=0.009),「地域資源の理解」(β=0.176,p=0.008),3職種間の協働要素の下位尺度の「相互的な活動の共有」(β=0.159,p=0.015),地区診断(β=0.109,p=0.026)であった.

    考察:認知症のコーディネーションを高めるには,認知症の基本的な理解,地域資源や担当地区の理解と3職種間の相互理解の重要性が示唆された.これらを実践していく方法として,地区診断や地域ケア会議が考えられた.

資料
  • ─地域における認知症ケアを題材として─
    石丸 美奈, 鈴木 悟子, 石橋 みゆき, 辻村 真由子, 飯野 理恵, 諏訪 さゆり, 宮﨑 美砂子
    2024 年27 巻3 号 p. 35-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:看護学学士課程において,地域における認知症ケアを題材に,社会資源創出に関する能力向上のためのシナリオ学習教材を開発し,その開発プロセスを明らかにする.

    方法:社会資源創出のニーズに対応するために必要とされる看護実践能力を明確化したうえで学習目標を設定し,インストラクショナルデザイン理論を参考に,学習目標と教育内容,評価方法の3要素がマッチする教材設計をした.学習目標に基づきシナリオを作成し,地域包括ケア実践者(8人)と地域包括ケアに関する内容を教授する大学教員(8人)の各グループインタビューによりシナリオの内容妥当性を評価し精錬した.そしてシナリオ学習教材を完成させた.

    結果:研究は3段階で構成し,研究1では9つの看護実践能力を明らかにした.研究2のシナリオ作成では当事者のもつ力に着目して支援する能力を重視した.認知症を有する人とその家族を主人公とした【認知症初期の対応】から【地域のなかで支え合える場づくりと継続】まで6テーマを含めた.研究3のシナリオ評価では,場面は概ね妥当と評価を得たが,テーマ毎に詳細な指摘がなされた.

    考察:本教材の開発プロセスは,学生が獲得すべき看護実践能力を明確にしたうえでのシナリオ作成,地域包括ケア実践者と経験豊かな教員による内容妥当性の評価からリアリティのあるストーリーをもとにしたシナリオ作成,段階的学習のための学習目標と学習課題の設定が特徴であった.

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