目的:看護学学士課程において,地域における認知症ケアを題材に,社会資源創出に関する能力向上のためのシナリオ学習教材を開発し,その開発プロセスを明らかにする.
方法:社会資源創出のニーズに対応するために必要とされる看護実践能力を明確化したうえで学習目標を設定し,インストラクショナルデザイン理論を参考に,学習目標と教育内容,評価方法の3要素がマッチする教材設計をした.学習目標に基づきシナリオを作成し,地域包括ケア実践者(8人)と地域包括ケアに関する内容を教授する大学教員(8人)の各グループインタビューによりシナリオの内容妥当性を評価し精錬した.そしてシナリオ学習教材を完成させた.
結果:研究は3段階で構成し,研究1では9つの看護実践能力を明らかにした.研究2のシナリオ作成では当事者のもつ力に着目して支援する能力を重視した.認知症を有する人とその家族を主人公とした【認知症初期の対応】から【地域のなかで支え合える場づくりと継続】まで6テーマを含めた.研究3のシナリオ評価では,場面は概ね妥当と評価を得たが,テーマ毎に詳細な指摘がなされた.
考察:本教材の開発プロセスは,学生が獲得すべき看護実践能力を明確にしたうえでのシナリオ作成,地域包括ケア実践者と経験豊かな教員による内容妥当性の評価からリアリティのあるストーリーをもとにしたシナリオ作成,段階的学習のための学習目標と学習課題の設定が特徴であった.
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