本研究はグローバル生産を積極的に展開している日系現地法人に着目し,進出先現地工場の従業員を研究対象として取り上げている.ここでは,日常の生産活動におけるモノづくりに対するチームワークに関する認識を集団過程としてとらえ,その内部構造を考察している.研究目的は,各国のチームワーク認識の実態調査から得られた知見を社会経済的背景としての宗教と国富の二面から再整理し,それらの認識差異をグローバルな視点から考察することである.ここで,宗教の布教領域を東洋系と西洋系に層別している.東洋系は仏教,ヒンドゥ教,イスラム教を含み,西洋系は広義のキリスト教圏であり,プロテスタント派,カトリック派,ローマ・カトリック派,英国・国教会派を含む.一方,国富は国の経済力を示すものとし,1人当たり正味国内生産高(GDP:gross domestic product)を採用している.ここでは,国富水準として上位グループ(30,000US$以上),中位グループ(5,000US$以上)そして下位グループ(5,000US$以下)の3グループに層別し解析を行っている.解析を通じて次の仮説が採択された.「チームワーク認識は宗教の影響を受け,東洋系布教圏と西洋系布教圏では異なる」,「チームワーク認識は国富の影響を受け,国富水準ごとに異なる」,「チームワーク認識を構成する作業力と凝集力は,宗教や国富の影響はなく層別される」.
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