技術情報の複雑化・多様化に伴い,専門知識が異なる技術者や意思決定者の間で技術傾向に関する情報の共有が難しくなっている.こうした中で近年,テキストマイニングに基づいたパテントマップが注目されており,これを用いることで特許データから技術に関する知識の抽出・可視化が実現されている.本研究は,複数の分野を跨いで実用の可能性に富む技術に関する情報の可視化およびそれらに関する知識抽出を行うものである.提案法では出現した単語の情報を属性とし,技術分野などに関する情報をクラスとしたランダムフォレストの学習結果の内部モデルに対する解析を通じて知識抽出を行う.知識抽出にあたり,ランダムフォレストの内部モデルから特許文書間の類似度行列を作成し,多次元尺度構成法によるマッピングを行っている.ここで得られた出力結果に対してカーネル密度推定を施すことによって,適用領域を考慮した文書ベースのパテントマップが構築できる.また,非負値行列因子分解により,単語の類似性に基づいて次元縮約することでランダムフォレストの内部モデルの解釈を与えた.分析対象にはWeb上に公開されている特許に関する文書データを用いて分析を行った.
大型製品の組立作業では,作業者が作業位置に合わせて姿勢をとらざるを得ないことが多い.そのため,不良姿勢の維持や繰り返しによる身体負担が発生している.そこで本研究では,組立作業における作業姿勢を簡易に推定する方法を提案した.具体的には,組付け高さと組付け方向が作業姿勢に与える影響を明らかにすることを目的とした被験者実験を実施し,各条件におけるOWASに基づいた作業姿勢の評価値を決定した.そして,作業者の身長,部品の組付け高さ,組付け方向を入力情報として,OWASに基づいて作業姿勢を推定する作業姿勢推定表を作成した.さらに,生産現場に提案手法を適用し,作業姿勢の推定精度を検証した.その結果,観察による評価と提案手法の評価の相関係数が0.77,推定精度が61.2%となり,提案手法の有効性を示した.
事業継続における問題点として災害時の需給ギャップの発生が挙げられる.各組織は需給ギャップを縮小するために対策を実施している.対策効果の評価にはリソースの稼働率や信頼性を単独で評価するだけでなく,対策プロセスのそれらへの影響も考慮する必要がある.リソース間の依存関係と各リソースの量から災害時の需給ギャップを定量的に評価するモデルを構築し,対策効果を定量的に評価した.次にこのモデルを実際の医療サービスに適用し,対策の効果を評価した.そしてシミュレーションによりほかの対策の効果も同様に確認し,モデルの適用可能性を検証した.
流動数グラフを用いた流動数分析は,システム内の物財の流れを可視化することで,そこでの問題を把握したり,改善の着想を検討したりするために有効な分析手法のひとつである.しかし,物財の流れが直列かつ一方向であることを前提にしているため,システムの処理プロセスが並列のサブシステムで構成され,それらのサブシステム間で物財が行き来するフローパターンでは,従来の流動数分析をそのまま活用することはできない.本研究では,主システムと副システムと呼ぶ2系統のサブシステムから構成される並列型システムを対象にした分析手法のひとつとして,各サブシステムでの滞留量に着目して物財のフローを可視化して問題点と改善の着想を検討する,並列型流動数グラフを提案する.また,提案した手法を現実の物流システムの事例に適用し,問題発見方法としての有効性を検証する.
近年,海外人手組立ラインにおいても工程内に多数の要素作業を割付けたショートライン化が進んでいる.このようなラインでは工程作業編成時に設定されたタクトタイムやラインバランスでの運用が行えず目標生産性を達成できない事例が多々見られる.この理由として工程内に多数の要素作業を割付けたことによる作業時間延長の発生が考えられる.
本研究では海外に拠点を置く白物家電人手組立ラインを分析することにより,実工程作業時間は設計時の作業時間に対し平均1.18倍の作業時間延長が発生していることを確認した.さらに,作業延長時間は工程内要素作業数によって影響されることを確認し,これを考慮した工程作業時間見積もり方法を提案した.
近年,情報システムの保守工程は,開発工程より費用が多く掛かるといわれており,企業の経営課題の一つとなっている.費用が多く掛かる原因の一つに,問い合わせがある.この問い合わせは,発生することを予測することが出来ないため,人や設備の準備が出来ずに対応に多くの時間を要する.問い合わせが発生する要因については,様々な研究がなされているが,問い合わせの対応に掛かった時間からの分析はなされていない.そこで本研究では,問い合わせに対応した時間を二つに層別し,その分布の差を求め評価する分析の枠組みから,考察する.その結果から,サービス提供側である製造業の情報システム部門の視点に立ち,問い合わせの発生を予測するモデルを提案する.そして予測モデルの検証を行い,今回のデータから妥当性と有効性を示した.