本研究の目的は,キャリア開発教育を評価するための能力尺度を開発し,大学のキャリア開発教育から雇用への接続効果と大学生が自己認識する能力を検討することである.就活経験を持つ大学4年生392人を対象にWeb調査を行い,キャリア開発教育をキャリア開発授業,キャリア開発授業以外の授業,正課外の教育諸活動に分類し検討を行った.その結果,キャリア開発授業の経験有層は雇用への接続効果が高く,特に偏差値50未満群で高かった.大学生が自己認識した能力は,正課外の教育諸活動の割合が相対的に高く,これはキャリア開発教育の限界を示したが,社会的意義と教育の可能性からキャリア開発授業を分析すると「礼儀,マナー」が特徴的に出現し,特に50未満群を中心に「礼儀,マナー」を授業で扱う意義を示した.
倉庫内作業の最適化には様々な問題が存在するが,その中の代表的な問題の1つとして,どのオーダー同士を同時にピッキングするかを決定する,オーダーバッチング問題がある.オーダーバッチング問題を解く際の評価指標として,すべてのオーダーをピッキングすることにより生じる移動距離を用いている研究が多く存在するが,それらのほとんどは移動距離の計算を厳密に行っているため,最適化に長い計算時間を要する.これに対して本研究では,オーダーバッチング問題を解く際に近似的に計算された移動距離を評価指標に用いることで計算時間を削減し,許容される時間内で得られる解の精度を向上させるモデルを提案する.
本論文では,ファジィ利得行列を持つ多目的双行列ゲームを定式化するために,制約法と必然性測度に基づく均衡解概念を導入する.このようなメンバシップ関数空間上の均衡解を直接計算することは極めて困難であることから,メンバシップ関数空間の均衡条件を期待利得空間における均衡条件と対応づけて,二つの空間の均衡条件が一致する点を探索することにより最終的に均衡解を導出する手法を提案する.提案手法を用いて,制約法における許容レベル値を更新することにより,均衡解集合の中から一方のプレイヤーの立場からの満足解を導出する対話型アルゴリズムを開発する.仮想的なプレイヤーのもとで対話型アルゴリズムを数値例に適用し,均衡解集合の中から満足解を導出する.
本研究では施設レイアウト問題(FLP)に対する新しい解決策を提案する.FLPとは施設内に設備や機械を作業効率が最適になるように配置する最適化問題である.物流施設や生産施設のレイアウトを設計する場合,レイアウトの作成時間や完成したレイアウトにおける作業効率は設計者の能力に大きく左右される.本研究では,強化学習と階層化意思決定法(AHP)を用いて多様なユニット群に対して,ユニット間関係を取り入れたレイアウトを導出する設計支援手法を提案する.既存のベンチマーク問題に対して本手法を適用し,ユニット間関係を考慮したレイアウトを作成できることを確認した.その結果,使用者の能力にかかわらず与えられた条件を満たすようなレイアウトが得られることが確認できた.