本研究は,ウェアラブル機器や動画から取得されるデータを用いて機械学習を活用することで,工場における作業者の動作状態を把握する手法を提案する.AIカメラの普及により,動画から作業者の動作推定を行う方法が活用されはじめている.しかしながら,工場環境においては,作業者の作業動画が不明瞭になりうる.この課題の解決のため,簡易なウェアラブル機器から位置と動作に関するデータ,動画解析から骨格データを取得し,複合的に機械学習を行うことで動作推定を行う.本稿では,CNN-LSTMやGNNの派生モデルを基本としたアンサンブル/マルチモーダル学習を適用することで,骨格データの欠損が生じる場合に有効な動作推定手法について考察をする.
燃料電池自動車の普及における課題は,燃料である水素の効率的なサプライチェーンネットワーク(HSCN)の設計であり,これを実現するために,ガソリンと同じ設備を利用できる有機ハイドライドという水素の輸送方法が開発されている.しかし,有機ハイドライドはまだ新しく,これを考慮したHSCNの研究は行われていない.本研究では,有機ハイドライドを含む3通りの輸送方法と輸入を含む3通りの入手方法を考慮したHSCNを混合整数線形計画法としてモデル化し,有機ハイドライドの有効性を検証した.実験結果より,港,脱水素プラント,水素ステーションが近くにある場合,有機ハイドライドはHSCNの効率を向上させると言える.
家庭用電力消費量データには世帯単位の生活スタイルの情報が含まれており,耐久消費財や世帯向けサービスのマーケティングに有用な情報である.しかし一般的に電力消費量はスマートメータで主幹電力のみが検針されており,家電製品の稼働状態は推定する必要がある.従来ディスアグリゲーション技術を用いて各家電製品の電力消費量を推定する試みはいくつか研究されているが,追加センサが必要になるなど実用上はコスト面の問題が存在した.これに対し,本研究ではマーケティング用途に特化した世帯属性情報として観測された主幹電力データから家電製品の稼働・非稼働を推定することに特化した問題を定型化し,混合正規分布を用いてスナップショットでの状態推定モデルを提案する.またシミュレーション実験により,提案モデルが実用上有効な正解率を有していることを示すとともに,推定のインプットとなる機器状態の事前確率分布と提案手法との関係性について示す.本モデルは追加センサを必要としない,低いコストでマーケティングに利用可能な世帯のエネルギー消費傾向情報を得る世帯属性の推定方法であり,エネルギー事業者にとって世帯を対象とした省エネ推進等の施策のための基礎情報として活用が期待できる.
2021年9月現在,COVID-19が世界的に流行し日本の外食産業においては,店舗の営業形態が強く制限されている.多くの飲食店はガイドラインに従った感染予防対策を講じており,特に顧客同士の物理的距離が保てるような座席表を作成する,という手法がよく見られると思われる.しかし感染リスクを削減する座席割当は,店内の混雑状況により常に同一とは限らない.そこで本研究は,店舗運営者が感染リスクを単一のパラメータθにより定量的に調整することができる座席割当モデルを提案する.パラメータθは店舗内の空間全体に対する感染リスクの閾値となる.提案したモデルを仮想の飲食店に適用した結果,店舗の収益損失を減らしつつ感染リスクの削減効果が期待できること,単一のパラメータにより感染リスクと収益を調整できることが確認された.
本研究は,組立加工工場における作業者の手作業をカメラで撮影し,その映像を画像解析することによって作業内容を推定し,作業測定の自動化を試みた論文である.近年,製造業において,工場に設置される様々な機器やセンサなどから製造データを収集し分析・可視化する技術は向上しているが,作業者の手作業をリアルタイムに分析し,可視化するまでは至っていない.そこで本研究では,作業者の画像を解析するにあたり,深層学習を用いて着目領域の設定と着目領域内の特徴から作業内容を推定するという二つの解析の手続きを取ることによって,高い推定精度が得られる方法を提案している.本提案方法を用いて,実際の工場で評価実験を行った結果,99.5%の作業を正しく推定することができた.さらに,この結果を踏まえて,本研究で提案する方法について,実際の運用を見据えた検討をしている.
In general, assembly lines are connected by conveyors. Therefore, the movement of products is synchronized and they all move at the same speed. In recent years, factories in which products are moved individually without synchronization have been introduced. In this study, we examine the difference in productivity between the synchronized line and the individual transport line.