超音波医学
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37 巻, 1 号
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原著
  • 河内 伸江, 角田 博子, 小野田 結, 菊池 真理, 刈田 映子, 松岡 由紀, 本田 聡, 矢形 寛, 鈴木 高祐, 齋田 幸久
    2010 年 37 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/26
    ジャーナル 認証あり
    目的:非浸潤性乳管癌(DCIS)のエラストグラフィ所見について知ることを目的とした.対象と方法:対象は2007年4月からの1年間におけるDCIS 46例である.エラストグラフィではItoらにより低エコー域の歪みを5段階にスコア分類することが提唱されており,これを使用して対象のスコア分類を検討した.腫瘤像形成性病変と腫瘤像非形成病変,病理学的コメド型と非コメド型でスコア分類に違いがあるかどうかを検討した.MMG上の石灰化はマンモグラフィガイドラインで悪性の可能性があるとされるカテゴリー3以上について,その有無を比較検討した.さらに,カラードプラ所見は,視覚的に血流の多寡を4段階に分類して比較検討した.結果と考察:エラストグラフィではスコア1が5例,2が8例,3は18例,4は12例,5は3例であった.良悪性のカットオフを行えるとされるスコア3‐4間で分けると感度32.6%と低かった.腫瘤像形成性病変は22例,腫瘤像非形成性病変は24例で,腫瘤像非形成性病変の方が統計学的に有意にスコアは低かった.病理学的コメド型と非コメド型の分類,MMG上の石灰化の有無,カラードプラ所見とスコアに統計学的有意差はなかった.結論:DCISではスコアが低いものが多く,特に腫瘤像非形成性病変でその傾向が強く留意する必要がある.
  • 山田 利津子, 辻本 文雄, 菅田 安男
    2010 年 37 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/26
    ジャーナル 認証あり
    目的:頸動脈閉塞性疾患症例の眼動脈血流方向に関する多くの報告が超音波パルスドプラ法によってなされた.眼動脈測定の重要性が認識されたことから,眼科領域の検者だけでなく,新たに眼動脈の血流測定をする眼科以外の検者が増えてきた.眼動脈の血流測定では超音波ビームの投射方向を変化させることにより,1ヵ所のカラードプラ信号部から順方向・順逆両方向および逆方向の血流波形が採取されることについて検討した.対象と方法:同意を得た健康成人を対象に眼窩内眼動脈の血流波形を測定した.超音波診断装置SSA-700A(東芝)で中心周波数7.5MHzの探触子を用い,仰臥位で閉瞼させ,反対側は直上を注視させた.接触法でヒドロキシエチルセルロース点眼液を音響カプラとして用いた.眼動脈の信号を捕らえ,超音波ビームの投射角度を変えることにより血管の走行方向とビームの角度を変化させ,血流波形の形状変化を観察した.結果と考察:超音波ビームの投射方向をわずかに変える事により,同じ被験者から順方向波形・逆方向波形ならびに両方向血流波形が記録出来た.眼動脈の走行には多様性があるため,血流測定には眼位ならびに血管走行方向を確認し,順方向,超音波ビームの方向と血流方向のなす角度が出来るだけ小さくなるように測定し,3回以上の測定により再現性を確認することが必要であると思われた.結論:眼動脈の血流測定では超音波ビームの投射角により,1箇所のカラードプラ信号部位から順逆両方向の波形が得られることが示唆された.
  • 福井 寛也, 藤岡 正幸, 梶山 雄司, 上道 武, 三上 慎一, 高 智成, 安積 正作, 大原 龍彦, 臼井 典彦
    2010 年 37 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/26
    ジャーナル 認証あり
    背景および目的:体外式超音波検査(以下,US)を中心に穿孔性十二指腸潰瘍(以下,本症)の診断と治療を行い,その結果,本症の診断と治療に有用なUS所見を得た.対象と方法:2002年3月から2008年6月までの6年4ヵ月間に経験した本症24症例を対象に,本症の診断と治療選択に大いに有用と考えられる,(1)十二指腸壁を貫いて液体や空気泡が行き来する流動性エコー所見,(2)十二指腸壁を貫く高エコー像,(3)遊離ガス像,(4)液体貯留像,(5)周囲臓器,特に,肝臓による穿孔部の被覆状態の5項目のUS所見についてretrospectiveに検討した.結果と考察:24症例のうち,流動性エコー所見は4例に,壁を貫く高エコー像は18例に,遊離ガス像と液体貯留像は,それぞれ,24例の全例に検出された.流動性エコー所見が認められた全ての症例は,直ちに本症と診断出来る.壁を貫く高エコー像や遊離ガス像,さらに液体貯留像は本症に高頻度に認められ,本症を診断する上で有用なUS所見であった.流動性エコー所見が認められた4例を含む,穿孔部が周囲臓器,特に,肝臓で被覆されていなかった5症例では,全例に手術が行われた.穿孔部が周囲臓器に被覆されていた19例のうち,被覆臓器は肝臓が16例で,大網や肝円索などの脂肪組織が3例であり,このうち,18例に保存的治療が適応された.以上より,穿孔部が肝臓を中心とする周囲臓器で全く被覆されていない場合は,原則的に手術治療を適応とし,穿孔部が肝臓を中心とする周囲組織で十分に被覆されていれば,原則的に保存的治療を適応としてよいと考える.結論:USは本症の診断と治療法の選択において有用な検査である.
症例報告
  • 浜崎 直樹, 今井 照彦, 柴 五輪男, 北村 友宏, 仲川 房幸, 空 昭洋, 林田 幸治, 鴻池 義純, 平井 都始子, 木村 弘
    2010 年 37 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/26
    ジャーナル 認証あり
    我々はCoded Phase Inversion(CPI)モードとCoded Harmonic Angio(CHA)モードを用いたSonazoid®造影超音波検査が腫瘍血流信号描出に有用であった肺扁平上皮癌の1例を経験した.85歳の女性が右肺のS6に腫瘤影を指摘された.彼女は超音波誘導下針生検で肺扁平上皮癌と診断された.Bモードでは,胸膜浸潤を伴う低エコー腫瘤であった.カラードプラ法,パワードプラ法,B-flow colorでは屈曲,蛇行する枝状血流信号であった.Sonazoid®は,第二世代の超音波造影剤である.まず,0.4mlのSonazoid®が注入された.これは推奨容量の半分の量である.CPIモードは低MIのモードであり,CHAモードは高MIモードである.CPIで観察したところ豊富な腫瘍濃染が得られたが,血管は不鮮明で空間分解能は不十分であった.さらに,Sonazoid® 0.4mlを注入しCHAで観察したところ空間分解能に優れた腫瘍血管が腫瘍の内部や辺縁に描出された.
  • 徳中 真由美, 長谷川 潤一, 市塚 清健, 三村 貴志, 松岡 隆, 大槻 克文, 関沢 明彦, 岡井 崇
    2010 年 37 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/26
    ジャーナル 認証あり
    近年稀となっている子宮体部縦切開術による帝王切開創部への癒着胎盤を経験したので,本症例での胎盤の超音波画像を中心に報告する.症例は31歳,1回経妊1回経産.前回妊娠は,妊娠26週に緊急帝王切開となったが,子宮筋腫のため下部横切開が出来ず古典的体部縦切開が施行された.今回の妊娠中の超音波検査では,胎盤が子宮前壁の前回帝王切開創部に一致した場所に付着していたため癒着胎盤の有無についての検索を行った.脱落膜に相当すると考えられているlow echoicな帯状エコー(clear zone)が一部途絶しており,また胎盤実質中に複数の無エコー領域(placenta lacunae)を認めたことから癒着胎盤が強く疑われた.妊娠37週3日に帝王切開術を施行し,子宮下部横切開で児を娩出した.胎盤剥離に際し,子宮底部で胎盤の一部が癒着していることが分かった.胎盤が癒着している前回帝王切開創部の子宮筋層を楔状に切除後2層縫合し手術を終了した.輸血の必要もなく順調に経過し退院した.病理検査では,漿膜下4 mmの筋層まで胎盤の侵入を認め,placenta incretaの診断であった.癒着胎盤は前置胎盤に合併することが多く,前置癒着胎盤の診断には超音波画像におけるplacenta lacunaeの存在やclear zoneの欠如が有用であると報告されている.本症例における超音波所見は,体部縦切開創部への常位癒着胎盤でも同様の超音波画像所見が診断の参考になることを示唆するものである.
今月の超音波像
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