日本ペインクリニック学会誌
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最新号
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原著
  • 吉野 敦雄, 森脇 克行, 田口 志麻, 中村 隆治, 堤 保夫
    原稿種別: 原著
    2025 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2025/01/25
    公開日: 2025/01/25
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    慢性疼痛患者の痛みや気分,QOLを改善するための治療法として,認知行動療法が行われている.近年,治療へのアクセスが容易なインターネットを利用した心理療法が注目を集めている.われわれは広島大学精神科で作成した対面式の集団認知行動療法(cognitive behavioral group therapy:CBGT)を基に,週1回,合計12回のオンラインCBGTプログラムを作成し,慢性疼痛患者30名を対象に効果を検証した(前後比較の予備的検証).主要評価項目として痛みの強度(visual analogue scale:VAS)を3時点(待機開始時T0,治療前T1,治療後T2)で実施した.その結果,T2でのVASがT0およびT1と比較して有意に改善していた[T0:73.0(22.1),T1:73.9(22.1),T2:58.8(27.3),平均(SD),paired t-test,p<0.001,効果量d=0.95].本研究結果から,慢性疼痛患者に対してオンラインCBGTが効果的であることが示唆された.今後対照群の設定による効果検証や治療後の効果持続期間を明らかにする必要がある.

症例
  • 井谷 基, 裏辻 悠子, 森川 修
    原稿種別: 症例
    2025 年 32 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2025/01/25
    公開日: 2025/01/25
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    脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は神経障害性痛や血流障害を改善することが知られている.今回われわれは両側多発性腎結石による背部痛に対してSCSが著効した症例を経験した.症例は47歳,男性.両側多発性腎結石に対して定期的に破砕術や内視鏡的摘出術を実施するも残存結石による慢性的な背部痛が持続していた.オピオイド処方でも安静時は背部に数値評価スケール(numerical rating scale:NRS)7の鈍痛と動作時にNRS 8の鋭い疼痛が出現するため,夜間不眠・就労不可となり当院紹介となった.2回の硬膜外ブロックで安静時痛がNRS 3に改善されたため,SCSを提案した.サージカルトライアルにて8極リードを2本挿入し,安静時痛はNRS 1まで,動作痛もNRS 2まで軽減したため埋め込み術に至った.以後オピオイドは不要となり復職した.背部の安静時痛および動作痛は共に内臓痛を主とする侵害受容性痛であり,両者にSCSが著効した.上記疾患による慢性痛に対して,SCSは長期オピオイド服用の回避と日常生活動作・生活の質の改善を得られ,良い適応になると考えられる.

  • 間嶋 望, 吉田 麻美, 佐野 博昭, 南 敏明
    原稿種別: 症例
    2025 年 32 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2025/01/25
    公開日: 2025/01/25
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    症例は11歳男児.2年前から,左前胸部痛が月1~4回の頻度で1~5分間出現し経過観察していた.初診1カ月前,左前胸部痛が約5時間持続するため近医を受診し当院に紹介となった.小児科の精査で器質的異常は否定的であり,疼痛コントロール目的で当科紹介となった.初診時,左Th5領域にnumerical rating scale(NRS)5~7の胸痛を月3~4回の頻度で認め学校や習い事を欠席することがあった.疼痛部位に圧痛や感覚鈍麻を認めなかった.心理社会的背景として2年前から入眠中に突然,大声で泣き叫ぶなど睡眠障害を認めていた.東洋医学的所見は虚証で気逆を認め,甘麦大棗湯エキス顆粒5 g/日を投与し,鍼灸を開始した.また心血管疾患など重篤な疾患は否定的であることを母親と本人に説明し不安を軽減させた.甘麦大棗湯エキス顆粒の内服と鍼灸の継続で,初診5カ月後に症状は消失し日常生活を制限なく送れるようになった.小児における原因不明の胸痛で東洋医学的治療が一助となる可能性が示唆された.

  • 林 文昭, 米本 紀子, 林 大貴, 神移 佳, 小林 俊司
    原稿種別: 症例
    2025 年 32 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2025/01/25
    公開日: 2025/01/25
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    結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は神経の栄養血管の虚血から多発性神経障害を引き起こすため,神経障害性疼痛を発症する場合がある.一方で,比較的まれな疾患であるPANの疼痛の治療についての報告は限られている.われわれはPANの難治性疼痛に対して脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)が著効した1症例を経験したので報告する.症例は60代の男性.PANを発症し免疫抑制治療の後に寛解した.しかし発症初期からみられた四肢の強い疼痛はその後も残存した.保存的治療によって手の疼痛は改善傾向にあったものの,足底の疼痛は依然として強く残った(numerical rating scale:NRS 10/10).そのため歩行困難と夜間中途覚醒が続いた.疼痛緩和目的に施行したSCSが直後より著効(NRS 10/10→2/10)した結果,歩行速度は改善し疼痛による夜間中途覚醒も消失した.埋め込みから半年後にも合併症はなく鎮痛効果は継続している(NRS 2~3/10).

  • 岩田 千広, 菅原 亜美, 井上 真澄, 佐藤 泉, 小野寺 美子, 牧野 洋
    原稿種別: 症例
    2025 年 32 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2025/01/25
    公開日: 2025/01/25
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    26年持続した歩行時の痛みに超音波ガイド下fasciaハイドロリリース(US-FHR)が著効した症例を経験した.症例は80代男性,X−26年の頸椎症に対する手術後より歩行時の右大腿外側部の痛みを自覚した.さまざまな医療機関で神経ブロック等の治療を行ったが,有効な鎮痛は得られなかった.X−3年に当院ペインクリニック外来を自ら受診し,プレガバリン50 mg/日の内服を開始して歩行時痛は軽快したが,眠気等の副作用を認めた.X年に歩行時痛がさらに増悪した際の診察で痛みと同部位に筋硬結と圧痛があり,超音波で右外側広筋の筋膜重積を認めたため,診断的治療として重積部周囲に0.025%リドカイン20 mlでUS-FHRを行ったところ痛みが完全に消失した.効果は1週間程度持続し,US-FHRを繰り返し行い,計9回施行した.ミロガバリン5 mg/日に変更して痛みのコントロールが可能となり,副作用は認めなかった.本症例は筋硬結や圧痛,超音波上の筋膜の重積を認め,筋筋膜性疼痛を疑い施行したUS-FHRにより副作用なく有効な鎮痛が得られた.

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