神経根嚢胞が症候性となることは非常にまれである.腰椎神経根嚢胞による下肢の激痛に対してステロイド薬注入を併用した神経根パルス高周波法が有効であった1例を経験した.43歳男性,1カ月前からnumerical rating scale(NRS)7の左大腿前面の痛みが出現した.腰椎MRIで左L3神経根に直径10 mmの神経根嚢胞を指摘され,これによる左L3神経根症状と診断した.本症例は職業運転手であり,薬物治療より神経ブロック治療を優先してステロイド薬注入を併用した神経根パルス高周波法を施行した.痛みはNRS 2まで改善し職務に復帰した.5カ月後のMRIで嚢胞は消失していた.神経根嚢胞は神経根に沿った硬膜の嚢胞性拡張で偶発的に発見されることが多い.嚢胞による神経根圧迫や骨破壊により腰下肢痛を呈することがある.治療は外科的治療,穿刺吸引法などさまざまな方法での効果が報告されている.単独の神経根症状であったためステロイド薬注入を併用した神経根パルス高周波法で良好な鎮痛が得られた.神経根症状を有する腰椎神経根嚢胞に対してステロイド薬注入を併用した神経根パルス高周波法が治療選択肢の一つとなる可能性が示唆された.
腰椎分離症に伴う難治性腰痛に対して分離部へ高周波熱凝固法を行い,良好な経過を得た症例を経験したので報告する.【症例】17歳女性.バスケットボール部所属で受験を控えていた.他院で腰椎分離症と診断され,試合中の接触を契機に腰痛が悪化し,日常生活に支障をきたしたため当院を紹介された.【初診時現症】持続的な左腰痛を認め,体幹の回旋で増悪した.左への荷重動作が困難で跛行が見られた.腰椎単純CTで第5腰椎の左関節突起間部と棘突起に分離を認めた.【経過】患者は非侵襲的な治療を希望されたが,運動療法では十分な効果が得られず,薬物療法は希望されなかった.腰痛により学業に支障がでていたため,神経ブロックを行う方針とした.分離部への直接的な局所麻酔薬の投与で,短期的に腰痛は消失した.長期的効果を得る目的で分離部へ60℃・6分間の高周波熱凝固法を施行した.施行後より腰痛の軽減を認め,跛行が改善した.6カ月経過後も症状の悪化を認めず,その間に受験を無事に終えることができた.【結語】腰椎分離症の腰痛は,分離部のRFTCを行うことで長期の腰痛軽減効果を得る可能性がある.
難治性慢性疼痛の管理におけるフェンタニル貼付剤への適応は,その期間や使用量に未だ問題が多い.今回,難病である家族性地中海熱,運動器疾患による難治性の慢性疼痛に対して長期間および高用量フェンタニル貼付剤を使用していた患者に対し,フェンタニル血清濃度を測定しながらオキシコドンへのスイッチングを計画した.慎重な管理で約1/3量へのオピオイド量へ減量でき,かつ疼痛が軽快することで日常生活動作および生活の質が改善した.