イスラーム世界を語る際にシャリーア(イスラーム法)は重要な鍵概念として提示されることが多くある。シャリーアはイスラーム教徒の人々にとって人生のガイドラインとなる存在であり、各地域にある文化や慣習と融合した多様性のある法体系であることが特徴にある。イスラーム全体を見るとき、中東をイスラームの「中心地」として、その他の地域を「周縁」とする見方が根強く存在するが、本質的には違いはない。
シャリーアが各地域の社会的・政治的・経済的実情に合わせて解釈がなされていることを踏まえれば、地域研究との融合は重要となる。そこでまずイスラーム世界をより深く理解するために「シャリーアとは何か」ということを改めて問い直すことが必要であろう。
カレツキの「インフレーション理論」は,Kalecki (1938) とKalecki (1954) から導出され,「二分法」としての性格をもつ。Kalecki (1938) は,「カレツキ体系」を形成するうえでの「ミッシングリンク」と見なされるものであり,それを進化させたものが Kalecki (1954) の第1章である。カレツキ体系では,「物価」とは「諸価格の平均」であるとされており,「ある一定期間における物価の上昇」が「インフレーション」として定義される。Kalecki (1938) の「二分法」を否定するKalecki (1954) の「二分法」では,不完全競争から寡占へと理論の発展を遂げている。物価水準は「価格方程式」の加重平均により示されて,インフレーションの発生が捉えられる。「物価騰貴」が起きるのは,一般的に原料や設備の不足が,需要に比して供給を厳しく制限していることによる。この理論により見出されるインフレの問題とは,利潤と賃金の間の所得分配の比率の変化であり,「所得再分配効果」である。つまり,賃金の購買力が低下し,有効需要の不足が起こり,産出量や雇用が減少し,「スタグフレーション」が発生しかねないないというものである。この理論による洞察は,物価水準の上昇のもとで,貨幣賃金が上昇しても,実質賃金は低下しないということであり,また,趨勢的に上昇する傾向にある独占度のもとでの,労働の資本にたいする抵抗の決定的な重要性である。これらに,政策的含意が見出される。