MACRO REVIEW
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5 巻, 1 号
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  • 小島 朋之
    1992 年 5 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    国交正常化から20年を迎え,日中関係は大きく発展してきた。しかし発展とともに,さまざまな摩擦や紛争が生じてきたことも否定できない。 友好関係の発展にとって,日本の対中経済協力がはたした役割はきわめて大きなものであった。両国関係全般と同様に,経済協力もまったく問題がないわけではない。20年をへて,経済協力もある意味で転機を迎えつつあるのかもしれない。 本稿はこうした問題意識をもって,20年の日中関係を概観するとともに,対中経済協力の実績を検証したうえで,今後の協力の在り方について若干の提言を試みる。
  • 陸 鴻程
    1992 年 5 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    世界経済構造の変貌に従って,中国も世界経済パートナーの時代を迎えた。改革の推進によって,中国の農民は貧困から解放され,都市の改革も生き生きと全国的に進んできた。然し,全体から見れば中国の産業構造はまだ立ち遅れ,各産業の効率も低い。過去の教条的な経済計画は中国の経済発展に見えない鎖を掛けてきた。どうすればいいかを毎日呻吟している一人の中国人は経済改革を短い期間に復興させる為,改革開放への再認識,国内政治,経済政策の緩和,計画経済から市場経済へ或いは経済計画と市場経済共存への転換,企業民営化,集団化,外資企業,民間企業の拡大や人材の育成,外国資本の導入と国内資金の活用及び国際習慣に慣れるなどの面を改善しなければならないと指摘。又,日本に対する期待は,正しく中国を知り,流通分野と人材養成面での協力,中国での合弁,合資,独立会社を作ることと,日本政府との間に理性的な外交政策を打ち立てることである。
  • ―その形態と要因の基礎的考察―
    秋吉 祐子
    1992 年 5 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    中国では約11.3億の人口のおよそ49%が就業しているが,潜在的失業人口が農村では1億以上,都市では1.5千万と推定されている。毎年農閑期を中心として,職を求めて農村から都市へ向かう人口は多く,年間を通じて全国を移動する人々は数千万である,とみられている。このような背景のなかで国内的には人口,住居,教育等さまざまな社会問題が起きており,国際的には諸外国へ出国する人々が増えるなかで,不法入国・就労をはじめとする各種の問題が発生している。中国の労働移動の潜在的圧力は国際的にも重要なテーマである。本稿は1978年以降の経済改革・開放政策の実施過程で増大した労働移動の形態とその要因についてを考察するものである。1990年の国勢調査の集計結果から出された人口移動の統計数値を用い,まず人口移動動態の特徴をみ,次にそれと人口動態の特徴との関係をみ,最後に経済水準との関係でみた。労働移動の動態の特徴は人口動態の特徴との関連性において本質的に固有なものがある。経済水準との関連性では,産業構造,文化生活の要素を含むところの複合的な経済社会水準において本質的に固有なものがある。これらが本稿のなかで基本的に明らかにされる。
  • 金平 隆
    1992 年 5 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    特許権等の知的財産権が脚光を浴びているが,特許権を設定する特許制度の活性度は,一国の産業,経済の活性度を示す指標として意義がある。中国はその長い歴史にもかかわらず,専利(特許)制度は1985年に導入されたばかりである。しかし,中国専利局は急速に組織を整備し,出願件数も増加の一途を辿っており,規模としては先進国の域に達しようとしている。 日本は明治維新以後,急速に工業化の道を進み,今日では経済大国として繁栄を謳歌しているが,特許の面でも先進国の中で群を抜いた大国となっている。このような先例を踏まえて中国の専利制度創設後の状況と,社会主義体制の下での特許制度の特徴を展望する。また主要な外国とのデータの比較を行ないその位置づけを試みる。
  • 玉山 昌顕
    1992 年 5 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    中国の石炭産業は活況を呈している。年産10.8億トンをべースにして年間増産分だけでも4千万トンを目標にしている。これはわが国の年間消費量の40%弱である。2000年には年産14億トンに達する予定である。各種情報源によれば増産のタスクを背負った最近の炭鉱は最新の機械化採炭技術を採用し,露天掘りが主流になっている。したがって事故死亡率が低下している。新炭鉱は内陸部に存在しているので鉄道建設も平行して進行しているが諸産業の発展に追いつかないので炭鉱近くで発電する坑口発電所の建設も盛んである。中国の主要炭田は華北に存在する。中国産炭量の約97%は国内で消費されている。浙江省泰山原子力発電所の稼働開始,四川,湖北両省にまたがる長江三峡ダム建設のゴーサインにみられるように徐々にエネルギー供給形態は変化し,石炭の消費割合も変化するが内外における中国石炭の重要性は変わらない。
  • 大澤 悦治
    1992 年 5 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    中国の電気事業では電力不足,資金不足が深刻であり,電気の消費には割当制がとられている。また電力投資が不十分であるから経営効率の改善も遅れている。 このような背景の下で,電気事業は経済発展に必要な電力生産を充たし,さらに経常収支の改善,省エネルギーの推進などに寄与するため各種のインセンティブ対策が導入されている。統制価格としての電気料金に対しては,電力需給条件の変化に対応した弾力的措置がとられ,また内部留保が認められるなど,市場的要因を導入する対策が活発化している。しかし,家庭でもクーラーが普及し始めるなど電力消費が増加する中で,経営効率化の一層の推進,環境保全対策の充実などの要請を充たしていくには,海外からの技術移転,資金協力が不可欠と思われる。わが国でも,とくに電気事業において,技術面ならびに経営面の広範囲にわたる協調体制を確立し,それを効果的に実施していくことが求められている。
  • 坂本 和彦
    1992 年 5 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    東アジア全域の二酸化硫黄の発生量は年間2,000万トンにも及び,酸性雨問題が生じている欧州や北米の発生量にも匹敵しているが,その大部分を中国が占めており,中国の発生量は今後もさらに増加し続ける可能性が高い。既に,現在中国で石炭を多く使用している大都市のほぼすべてでその燃焼による粉塵と二酸化硫黄による激しい大気汚染が生じている。しかし,土壌等の酸中和能力の違いを反映して,北部では酸性雨による被害がまだ生じていないが,西南部では酸性雨による被害も生じている。中国の大気汚染とそれに関連した越境汚染の可能性を考えるとともに,これらの環境問題解決のための新たな経済援助の仕組みの必要性を指摘した。
  • 新田 義孝
    1992 年 5 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    わが国の日本海側では,冬の季節風に乗って中国大陸から硫黄酸化物が飛来している。未だ森林や土壌を劣化するほど酸性度は高くないが,中国本土にとってみればかなりの被害が出るレベルに達しているものと思われる。中国では一次エネルギーの約8割を石炭に依存しており,電気集じん機がようやく取り付けられ始めたものの,脱硫装置は未だ設置されていない。よって石炭中に含まれる硫黄は硫黄酸化物として大気に放出されている。中国の大気汚染対策を今の内から進めておかないと,2000年頃には中国国民の健康が損なわれるおそれがある。日本の冬の季節風の川上に位置する本渓市に焦点を合わせて,中国大陸の大気汚染対策をマクロエンジニアリングと把えてみた。
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