MACRO REVIEW
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34 巻, 2 号
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研究ノート
  • 角田 晋也
    2022 年 34 巻 2 号 p. 29-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     海岸漂着物および生物多様性に関する公開情報を都道府県の地域計画を中心に調査して比較した。海洋の生物多様性と海岸漂着物の間では関係主体の重なりが大きい。とはいえ、博物館は生物多様性に、観光業、マリンレジャー関係者、および漁業協同組合は海岸漂着物に、それぞれ特徴的な関係主体である。沿岸県であっても、生物多様性地域戦略で海岸漂着物に言及していない県も存在する。海岸漂着物に関する課題は都道府県により非常に異なり、単純に、「漂着物のうち人工物の割合が低いから問題ない」とは結論付けられない。

総説
  • 松谷 泰樹
    2022 年 34 巻 2 号 p. 38-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     マクロ経済学を成立させているカレツキの有効需要の原理において,「合成の誤謬」を見出すことができる。それは,「貯蓄と投資の均等は,所得とのかかわりによってもたらされる」ものであり,また,その場合,「貯蓄は投資によって決定される」ものであるという,「マクロ経済学の基本前提」において核心を担う,投資にかかわる理論のなかに見出すことができるものである。そこに,5つの「合成の誤謬」を見出すことができる。まず,「基本前提」にかかわるものとして,第1に,投資資金調達において,そして,第2に,乗数理論において,見出されるものである。その場合,「基本前提」にかかわる投資支出にかんして,カレツキ自身によって言及されているものが,第3の「合成の誤謬」である。第4は,投資決意にかんする「合成の誤謬」である。投資決意は,粗収益性の増加関数であるとされているが,その粗収益性を数学的に分解した場合,設備稼働率との関係において,「合成の誤謬」が見出されるのである。第5は,その設備稼働率は,雇用水準の決定として反映されうるので,そこに,投資が,さらに労働市場とのかかわりをもつ性格のものとして,「合成の誤謬」を見出すことができる。「合成の誤謬」は,単なる個別経済主体の合計としては捉えることのできないマクロ経済についての分析を可能にしている,方法論的個人主義による「要素還元主義(reductionism)」ではない,「全体論(holism)」の重要性を示すものであり,マクロ経済学に「存在意義(raison d'être)」を与えているものなのである。

研究論文
  • 薗畠 ひとみ, 眞子 岳, 田邉 匡生, 北脇 秀敏
    2022 年 34 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     国立感染症研究所は、放置されたビニールシートの窪みや襞の水溜りが蚊の発生源になると警戒している。研究対象国であるパナマ共和国においても、住民のポイ捨てや廃棄物回収業者が回収できていないプラスチック製容器包装廃棄物が首都パナマシティの至る所に散乱しており、蚊の発生源となっている。プラスチック製容器包装は、水を溜められる形状のものや、ビニールシートの様なフィルム状のものがある。容器状の物は水を物理的に溜めることができるが、フィルム状のプラスチック製容器包装廃棄物の表面と雨水のぬれ性については研究がなされておらず、今後の蚊の発生対策の一助になると考え、本研究を実施した。主な放置廃棄物となっている13種類のプラスチック製容器包装を選出し、素材、厚み、接触角を分析した。その結果、放置廃棄物には単一素材のものや複合素材のものがあり、40度以下の接触角であった。つまり、放置されたプラスチック製容器包装廃棄物は親水性であり、雨水を受けやすいことから、放置廃棄物の回収が蚊の発生抑制に寄与すると考察した。パナマ市民への保健衛生環境教育の実施、蚊媒介感染症予防の啓発活動への取り組み強化などが求められる。

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