環境感染
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12 巻, 2 号
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  • 八木田 健司, 遠藤 卓郎, 太田 宗広, 藪内 英子
    1997 年 12 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    家庭用24時間風呂等, 循環式浴用水中の自由生活性アメーバ類の検出を行った.連続運転中の循環式浴槽の浴用水を43家庭より採取し, 遠心濃縮後に大腸菌塗布寒天平板に接種して2週間の培養を行った.この間に増殖したアメーバを単離し, 栄養体および嚢子の形態的特徴により分類・同定を行った.今回検査した43浴用水におけるアメーバの検出率は83.7% (36試料) で, 全体として8属のアメーバが確認された.このうち宿主アメーバは32の浴用水から検出され, その内訳はHartmannellaが65.1%, Vahlkampfiaが27.9%, Acanthamoebaが2.3%, およびVannellaが18.6%であった.その他のアメーバ類としてVexilliferaが46.5%, Filamoebaが11.6%, Aconchulimidaが4.7%, およびSacamoebaが2.3%の割合で検出された.ちなみにLegionella属菌はアメーバが検出された36件の浴用水において29検体 (80.6%) から検出された.一方, アメーバが陰性であった7試験水からは1例のみから検出されたに過ぎなかった.
  • 浦野 美恵子, 矢野 邦夫, 脇 慎治, 室久 敏三郎
    1997 年 12 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    HIV感染者への医療行為による職務上HIV感染の報告がなされて以来, 針刺し事故などの血液・体液曝露事故がクローズアップされてきた.事故後の適切な処置の重要性はいうまでもないが, 予防策を立てて事故が生じないように努力する必要性が強調されている.今回, 我々は米国やカナダの多くの病院で使用されている職務感染事故予防のためのサーベイランスシステム (EPINet) を用いて, 当院における針刺し・切創事故に関するサーベイランス (1994年6月~1996年3月) を施行した.報告された74件の針刺し・切創事故の内訳は, 職種別では看護婦が全体の89.2% (66件) ともっとも多かった.関連器材としては, 「使い捨て注射器」 (18件) と「翼状針」 (16件) での事故が多く報告され, 事故発生の状況は, 「使用後廃棄までの間」 (27件) と「リキャップ時」 (19件) に多発していた.また器材使用の目的は, 「血管確保」 (20件), 「経皮的注射」 (13件), 「静脈採血」 (10件) などであった.発生した事故のうち, 安全装置付器具により予防可能と思われた事故は「使い捨て注射器」では16件, 「翼状針」16件, 「真空採血針」3件, 「接続されていない針」9件, 「静脈留置針」6件と事故全体で54件であった.
    また同時に発生事故のフォローアップに要する費用を試算した.その結果, 労働災害対策として要する費用は一人当たり97,307円であったため, 安全装置付き器材を導入することにより削減可能であったと推定される費用は, 調査期間22ヵ月で5,067,468円であった.安全器材は従来の器材に比して割高であることが知られているが, 労働災害関連費用を考慮すると, むしろ病院全体としての経費削減が可能であると思われる.
  • 佐和 章弘, 山嵜 紘道, 尾家 重治, 神谷 晃
    1997 年 12 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    投与後の経腸栄養剤の残液計3検体の微生物汚染について調べた. 2検体からは103colony forming unit (cfu) /ml, また他の1検体からは106cfu/mlの細菌が検出された. 汚染原因はブレンダーボトルおよび投与ボトルの長期間にわたる繰り返し使用であった. 一方, 投与ボトルの消毒法の検討で (水道水での洗浄) + (0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬) では除菌ができなかったものの, (水道水下でのブラシ洗浄) + (0.05%次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬) などの方法では除菌可能であった. ブレンダーボトルや投与容器には, 使用のつどの消毒が必要である.
  • 粕田 晴之, 福田 博一, 池野 重雄, 清水 禮壽, 林 和
    1997 年 12 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    手術室看護婦と麻酔科医師10人 (看護婦医師群) と臨床実習生10人 (医学生群) について, 擦式アルコール消毒剤 (ウェルパス®3ml;丸石), 電解酸性水 (超酸化水®流水式500ml・1分;シオノギ) あるいは手術用滅菌手洗い水 (流水式5l・1分) を用いた衛生学的手洗いを行い, 寒天培地接触法を用いて除菌効果を比較検討した. 電解酸性水については手洗い時間 (250ml・30秒, 500ml・1分, 750ml・90秒, 1000ml・2分) と除菌効果との関係も検討した.
    擦式アルコール消毒剤を用いた手洗いによる除菌率は看護婦医師群, 医学生群それぞれ96.4±4.5%, 91.2±9.9%と差がなかったが, 流水式電解酸性水による手洗いではそれぞれ90.5±13.5%, 37.3±69.0%と医学生群で有意に低かった.流水式手術用滅菌手洗水による手洗いでは除菌されず, むしろ菌数の増加がみられた. 電解酸性水による手洗い時間と除菌効果との関係では, 看護婦医師群で手洗い1分から手洗い時間依存性に生菌数の有意な減少が認められたのに対し, 医学生群では30秒で菌数の増加がみられ, 1分30秒後から有意な減少が認められた.
    擦式アルコール消毒剤による衛生学的手洗いは, 日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群に対しても看護婦医師群同様に有効な除菌法であることが示された.日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群が流水式電解酸性水による手洗いで有効な除菌を得るためには, 看護婦医師群よりも30~60秒長い手洗い時間が必要で, 手洗い対象を考慮した手洗い時間を設定する必要のあることが示された.
  • 境 美代子, 北川 洋子, 村藤 頼子, 廣上 真里子, 石金 恵子, 杉政 美雪, 吉田 郁子, 中川 輝昭, 水島 豊, 落合 宏
    1997 年 12 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染防止対策の実態を把握する目的で, 富山県内の病院を対象に院内感染防止対策に関するアンケート調査を行った. 回答率は70% (35/50) であった.回答を得た35施設の内訳は公立病院21, 私立病院14であった.感染対策委員会は, 回答のあった施設の94% (33施設) に設置されていた. 委員会の活動は「職員への教育, 啓蒙活動」, 「感染防止対策マニュアル作り」, 「感染の実態調査」などであった.感染防止対策マニュアルは公立病院で100%, 私立病院で60%が保有していた.感染対策実施上の問題点として, 「予算不足」, 「専門医の不在」, 「職員の非協力」などが挙げられていた, MRSA感染防止対策としては, 「手洗い設備の充実」, 「患者の療養環境の改善」や「抗生物質の使い方」などが重点視されていた. 病院の母体組織や規模に関係なく, ほとんどの施設が感染防止対策に取り組んでいる現状が明らかとなった.
  • 土井 研人, 木村 哲, 小林 寛伊, 荒記 俊一
    1997 年 12 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    二つの独立に機能している一般外科A, Bの臨床分離菌および抗菌薬使用状況を比較した. その結果, 分離菌では創感染部位などからの分離患者数において, Staphylococcus aureus, Enterococcus faecalisが外科Bのほうが有意に多く, 抗菌薬使用においては外科Bでの第三世代セフェム系抗菌薬の使用頻度が外科Aより多いことがわかった. このことから両外科の分離患者頻度の差は, 第三世代セフェム系抗菌薬の使用によりグラム陽性球菌が選択的に増殖した結果と考えられる.
  • 特に血清型, 薬剤感受性について
    鈴木 理恵, 奥住 捷子, 石塚 紀元, 小林 寛伊, 木村 哲
    1997 年 12 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1991年7月~1994年12月に当院の臨床材料より分離されたPseudomonas aeruginosa6,899株のうち, 同一患者の同一血清型株を除いた1,791株について, 血清型と薬剤感受性を中心として疫学的分析を行った. 検出数は材料別では喀痰が, また病棟別では一般外科病棟, 膠原病・血液疾患患者の多い病棟で多かった. 血清型の分離頻度はG, B, E, Iの順であった.材料別では型別分離率に大きな違いはみられなかった. 推移では全体を6ヵ月ごとの7期に分けたうちの第6期 (1994年1月~6月) と第7期 (1994年7月~12月) にB型が上昇しており, この時期にB型株の流行があったと思われる. また薬剤耐性株分離率は, 消化器系材料ではアミノグリコシド系が, 泌尿器系材料ではニューキノロン系が特に高かった.血清型を加味した場合, E型の薬剤耐性株分離率はgentamicin (GM) では経過とともに低下していたが, imipenem (IPM) では上昇傾向であった. 以上より, 易感染患者の多い病棟と呼吸器系材料からP.aeruginosaが多く分離されたこと, 耐性パターンが分離臓器によっては特徴を有することなどが示された. また各病棟別に血清型などを指標として解析することにより, その病棟におけるP.aeruginosaの院内感染の状況が把握しやすくなることが立証された.疫学調査の面からは, 各診療科へのフィードバックを目指し, 簡便で有効な分析方法を考えていくことが今後の大きな課題である.
  • 環境検査は必要か
    犬塚 和久
    1997 年 12 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
  • 布施 克也
    1997 年 12 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    職員および患者のMRSA保菌調査の有効性と妥当性を明らかにするために, 1993年から1996年の間, 当院および関連病院の患者・職員の保菌状態について経時的に調査, 検討した. 職員の鼻腔保菌陽性率は概ね約3~5%であったが, 保菌調査回数が1回では一過性保菌と持続保菌を区別することができず, 判定のためには複数回の調査が必要であった.職員の多くは一過性保菌者であり, 保菌調査はMRSAの蔓延度の指標, 職員の啓蒙のためという意味合いが強く, 実施するならば複数回実施すべきと思われた. むしろ全員が常に一過性保菌者になりうることを自覚し, 交差感染を予防する基本的手技を心がけることが大切であると思われた.患者の鼻腔保菌率は, MRSA分離頻度に応じて病棟間のばらつきはあるが約8~10%で, 一律の検査は疫学的指標としての意味合い以上のものではない. 一方, 長期臥床例や基礎疾患を有する患者の鼻腔保菌者は疾や褥創などの他の臨床検体からの持続保菌・排菌者であることも多く, 長期間追跡すると最終的にMRSA感染症をきたす例もあった. このような患者群は院内感染菌のリザーバーとして, また将来の感染症発症者として適切なマーキング・除菌の対象となる例も多いため, スクリーニング検査の適応があると思われた. スクリーニング検査は一律ではなく, 適切な対象について行うことが, 対費用効果, ならびに対労働効果を高めるものと思われた.
  • 中澤 堅次
    1997 年 12 巻 2 号 p. 140-149
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院ではMRSA対策として手洗い, 無菌手技, 環境消毒などの対策のほかに, 第三世代セフェムを中心とした抗菌剤の使用規制を行った.
    MRSA検出率の年次推移としてその効果を検討した結果, MRSAの検出率は総検体数に対する比率で対策2年後から, MRSAの黄色ブ菌に対する比率では症例ごとの重複を補正しない場合は3年後から, 補正を行った場合は4年後からそれぞれ有意差を持って減少した.
    検体ごとの検出率は血液, 尿, 膿, 糞便で有意差を持って減少したが, 喀痰, 咽頭粘液, カテ先培養では減少傾向は著明ではなかった.対策の効果は手洗いなどの感染予防手技が関係する閉鎖系の領域で顕著であり, 環境が関係する開放系の領域での効果ははっきりしなかった.
    市中病院34施設におけるアンケートの結果, MRSA検出率が減少した施設は少なかったが, 統計的には有意な差はなく, また抗菌剤の使用規制の有無でみても有意差は得られなかった.
    抗菌剤の使用規制は, 院内環境におけるMRSA対策として取り上げた経緯からみると著明な効果はないとも考えられるが, 人体の細菌環境における影響は大きいと考えられ, 耐性菌の出現を最小限にとどめる施策という意味でMRSA対策上, 有効な条件の一つであると考えられる.
  • 松月 みどり
    1997 年 12 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症が多発しやすい3次救命救急センターで実際に我々が行っている感染予防の対策を述べる.コストはかかるが, ユニバーサルプリコーションの徹底と病室を陰圧と陽圧に調節できる空調設備は重要である.次にDevice Rateによる感染症サーベイランスを継続し環境の微生物学的調査をした.医療従事者の手洗い対策として,(1) 手洗い呼びかけポスターの掲示.(2) ベッドに一台ずつの自動噴霧擦り込み式消毒剤の設置.(3) ICUと病室内の手洗い流しの設置.(4) サーベイランス結果の掲示.患者の対策として,(1) カテーテル由来の敗血症防止対策としてCDCガイドラインに準じた管理を行い, 刺入部に半透明の抗菌フィルムを使用し交換した日付けの記入.(2) 人工呼吸器装着患者には閉鎖式気管内吸引装置使用し, 気道分泌物の飛沫よる2次感染の防止.(3) イソジンガーグルによる口腔ケアで肺合併症予防.(4) ネブライザー消毒の週1回実施.
  • 辻 明良
    1997 年 12 巻 2 号 p. 154-156
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
  • 深山 牧子, 畠山 勤, 伊藤 雄二
    1997 年 12 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 1997/09/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院ではS.aureusの72-75%をMRSAが占めており, 細菌検査を受けた症例の約13-15%からMRSAが検出されている. MRSA対策の主体はスタンダード・プレコーションにのっとっており, 生命予後不良の重症例, 広範囲の褥瘡例などを除き個室隔離は行っていない. このような状況でMRSAがどの程度蔓延しているのか, 感染症科病棟入院40名のMRSAの保菌状況につき検査した. 入院40名のうち調査前にMRSAが確認されていたのは2名のみであったが, 新たに7名のMRSA保菌者を確認した. 検出された9例からのMRSAの薬剤感受性はすべて異なっており, 院内感染の可能性は低いと考えられた. しかし外科病棟では院内感染例がみられ, より厳重な対策が必要と思われた. 病院全体の検出率について, ほぼ同様の患者構成であるがMRSA検出例を原則として個室隔離している東京都多摩老人医療センターの結果と比較, 検討を行った. S.aureus のうちMRSAの占める割合は1989年以降70-80%を推移しており, 細菌検査を受けた患者のうちMRSAが検出されたのは15-19%と, 決して当院より低い数字ではなかった. 内科系病棟では個室収容をしなくとも, 院内感染防止対策上, 特別に不利な点は認められなかった.
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