当院ではMRSA対策として手洗い, 無菌手技, 環境消毒などの対策のほかに, 第三世代セフェムを中心とした抗菌剤の使用規制を行った.
MRSA検出率の年次推移としてその効果を検討した結果, MRSAの検出率は総検体数に対する比率で対策2年後から, MRSAの黄色ブ菌に対する比率では症例ごとの重複を補正しない場合は3年後から, 補正を行った場合は4年後からそれぞれ有意差を持って減少した.
検体ごとの検出率は血液, 尿, 膿, 糞便で有意差を持って減少したが, 喀痰, 咽頭粘液, カテ先培養では減少傾向は著明ではなかった.対策の効果は手洗いなどの感染予防手技が関係する閉鎖系の領域で顕著であり, 環境が関係する開放系の領域での効果ははっきりしなかった.
市中病院34施設におけるアンケートの結果, MRSA検出率が減少した施設は少なかったが, 統計的には有意な差はなく, また抗菌剤の使用規制の有無でみても有意差は得られなかった.
抗菌剤の使用規制は, 院内環境におけるMRSA対策として取り上げた経緯からみると著明な効果はないとも考えられるが, 人体の細菌環境における影響は大きいと考えられ, 耐性菌の出現を最小限にとどめる施策という意味でMRSA対策上, 有効な条件の一つであると考えられる.
抄録全体を表示