環境感染
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16 巻, 4 号
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  • 坂田 宏
    2001 年 16 巻 4 号 p. 263-266
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1999年1月から2000年12月までの2年間に, 旭川厚生病院の外来を受診あるいは入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を検出した15歳以下の小児を検討した. 対象となった小児は64名, その中でMRSAが感染症の原因であったのは20名で, 中耳炎10名, 伝染性膿痂疹8名, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1名, 臍炎1名であった. 他の44名は保菌者と考えられた. MRSAが分離された検体は79検体であり, 咽頭・上咽頭36検体, 便12検体, 皮膚10検体, 耳漏10検体と気道と皮膚から検出される例が多かった. 年齢は生後1ヵ月から12歳の範囲に分布していたが, 1歳未満が27名 (42.2%) で最も多く, その中でも生後3ヵ月未満が15名と極めて多かった. 危険因子として6ヵ月以内に医療施設に通院または入院していた児は46名 (71.9%), 家族内にMRSA保菌者がいた児は2名であった. 危険因子を有せずにMRSAを保菌していたのは16名 (25.0%) であった. ampicillin, oxacillin, flomoxef, cefozopran, imipenem, clarithromycin, gentamicin, minocycline, levofloxacin, arbekacin, vancomycinの感受性試験ではarbekacinとvancomycinには全株感受性を示したが, 他の抗菌薬について10の感受性パターンが認められた. このことから, 単一の菌が播種される病院内感染と異なり, 多種のMRSAが市中に拡散されていると考えられた.
  • 清水 俊明, 高橋 聡, 本間 一也, 竹山 康, 国島 康晴, 堀田 裕, 松川 雅則, 廣瀬 崇興, 塚本 泰司
    2001 年 16 巻 4 号 p. 267-269
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    泌尿器科領域のopensurgery症例において, 術前の鼻腔, 尿培養の結果と創部感染 (SSI) の関連を検討した. 手術直前に経鼻胃管を挿入した54例を対象とした. 細菌検査としては, 経鼻胃管挿入直前に鼻腔培養を, 入院時に尿培養を提出した. これらの細菌検査の結果と創部感染の関連を検討した. 腸管を用いた尿路変向・再建を行わない腸管非利用群ではSSIの頻度は4.7%と腸管を用いた尿路変向・再建を行う根治的膀胱摘除術を行う腸管利用群での54.5%と比較して低く, 術前の培養結果とSSIの関連は認めなかった. 腸管利用群では, SSIの原因はいずれもMRSAであり, 術前の鼻腔からの分離と関連を認めたのは1例のみであった. したがって, 鼻腔培養は, 泌尿器科領域のopen surgeryの術前検査としては必須ではないと考えられた.
  • 吉田 菊喜, 遠藤 廣子
    2001 年 16 巻 4 号 p. 270-278
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Norwalk-like virus (NLV) 集団発生に, 患者ペア血清を用いた抗体ELISA法を試行し, PCRの結果と比較検討した. 平成12年4月初旬, 仙台市内の医療機関で約20人の入院患者・患者家族・医療機関職員が次々と下痢と嘔吐を訴えて発症した. 患者発生の経時的ヒストグラムでは発生後2~3日をピークとした一峰性を示したが, 喫食調査の結果, 食中毒は否定され, ヒトからヒトへの感染が疑われた. 患者糞便のPCR検査では15検体を検査して6例にPCR増幅産物が得られた. その塩基配列は6例すべてが同一で, NLV遺伝子II型のCamberwell株と94%の相同性を示すことが明らかになった.
    NLVのキャプシド遺伝子を組み込んだバキュロウイルスで発現させた中空ウイルス粒子を抗原とし, 患者血清を検体とした抗体ELISA法を試行した. その結果, 20検体中11例が陽性と判定され, PCRよりも多くの感染者を見出すことができた. NLVの各種抗原に対するプレ・ポスト血清の反応性を比較すると, ポスト血清においてCamberwellに近縁な104株に対して特異抗体価の上昇が観察され, PCR法の結果が再確認された. さらに抗体の交叉反応性, NLVの侵淫状況についても考察を加えた.
  • 宮田 町子, 波多 宏幸, 江崎 孝行
    2001 年 16 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    夜10時過ぎに採水した岐阜市26銭湯 (72浴槽数) の内, 20の銭湯 (30の浴槽水) から抗酸菌群が検出された. これら抗酸菌群は他の菌種とは異なり, 温度, 残留塩素濃度, 通気, 循環などの浴槽環境では制御されず, いずれの環境でも30%以上の高検出率であった. 分離・同定された抗酸菌34検体の菌種分布はM. avium, 27; M. gordonae, 3; M. fortuitum, 2; M. intermedium, 1; M. phlei, 1であった. この検出率および菌種分布は「24時間循環風呂」における結果と同傾向であった. それ故, この結果は銭湯においても「24時間循環風呂」と同様に抗酸菌群防除対策を緊急に講じる必要性を警告している. 他方, いずれの菌種についても入浴剤 (バスクリン, 漢方, 薬草, ハーブ, NaHCO3など) 投入浴槽は無投入より, 溜め湯浴槽は通泡/循環及び循環より細菌検出率も菌濃度も理化学的汚染度も高いものが多かった. 特に40℃以下, 入浴剤投入, 溜め湯の3条件のそろった浴槽では汚染度が高かった.
  • 滅菌濾材の使用
    宮田 町子, 李 娜, 山田 博子, 江崎 孝行
    2001 年 16 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    非結核性抗酸菌群は24時間循環風呂を利用している家庭や施設の浴槽水において, 毎日1回塩素系殺菌剤投入 (遊離残留塩素初濃度2mg/L) をおこなっている場合でも高頻度に検出された. 今回は, 一般家庭5軒と業務用2施設 (老人福祉デイサービス施設と児童福祉施設) の浴槽水と濾材洗液を対象に抗酸菌群防除策を試みた. 第一は両性界面活性型殺菌消毒剤で濾材や全装置を殺菌処理後十分水洗する方法を1ヵ月に1回行った. その結果, 浴槽水は2ヵ月目から陰性になったが, 濾材洗液は陰性にはならず, しかも殺菌消毒剤の臭気が残留し苦情が出された. 第二は, 殺菌消毒剤を使わずに1ヵ月1回, 全装置の洗浄と換水をおこなった後, 高圧蒸気滅菌した濾材との交換を行った. その結果, 換水・洗浄・滅菌濾材交換後1週間目までは浴槽水も濾材洗液もほぼ陰性となったが, その後は陽性となる検体がでた. これに対し, 浴槽洗浄・換水と濾過槽の逆洗のみの場合は浴槽水も濾材洗液も処理直後から陽性のままであった.以上の結果から, 抗酸菌群は定着し易く除去しにくいことが分かる. 従って,(1) 少なくとも全装置洗浄・換水を週1回行い,(2) 濾材を滅菌濾材と交換 (濾材は洗浄・高圧蒸気滅菌して再利用) しなければならない. また,(3) 滅菌濾材の交換期間延長の為には, 循環系を60℃以上, 1時間の加熱処理で定着残留している抗酸菌群を部分殺菌する方法が有効である.
  • 千田 好子, 中尾 美幸
    2001 年 16 巻 4 号 p. 292-296
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    MRSAや緑膿菌など院内感染起因菌に有効な, 銀ゼオライト原糸練り込み型抗菌加工シーツの抗菌効果について臨床的に評価した. スタンプ法に比べてより多数の微生物が検出され, 検査も迅速にできる環境微生物検査用捕集器・Bio Air Checker® (日研) を使用し, シーツ上の一般細菌およびMRSAを吸引捕獲した. 一般細菌は, 臥床中の対象者 (2名) の腰部を中心に, 24時間使用後のシーツ表在菌を1区画毎, 計4区画をBAC専用培地バイオスタンプチェック® (日研) に捕獲した. 滅菌された抗菌加工シーツと無加工シーツを1日毎に交換し病室で12日間, 老人保健施設で20日間調査した. MRSAについては, 気管切開部よりMRSAが検出されていた患者の頭頸部周辺のシーツ上の菌を採取した. シーツ使用時間は8時間, 24時間, 72時間の3パターンとし1区画毎, 計4区画をMRSA培地に吸引捕獲した. この場合も滅菌の抗菌加工シーツと無加工シーツを8時間, 24時間, 72時間毎に交換して10日間調査した. Wilcoxon検定の結果, 一般細菌生菌数は2施設とも, 抗菌加工の有無による有意差は認められなかった (p>0.05). また, MRSA生菌数は8時間, 24時間, 72時間後とも, 無加工シーツに比べ抗菌加工シーツ上に多くカウントされる区画があり, 明らかな抗菌効果は認められなかった.
  • 平岡 徹郎, 桑原 正雄, 中村 優
    2001 年 16 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    目的: 病院における針さし事故の発生状況を把握し, 事故予防策を検討する. 設定: 3次救命救急センターを持つ病床数755床の臨床研修病院. 方法: 質問紙法とエピネット日本版による針さし事故調査. 測定項目: 職種, 年齢, 経験年数, 職場, 感染症有無, 原因器材, 原因作業, 安全装置の使用状況など. 結果: 約3年6ヵ月の間に169件の針さし事故報告があった. 感染症はHIV1件, C型肝炎44件, B型肝炎5件であった. 原因器材は翼状針53件, ディスポ注射針37件, 縫合針19件, 静脈留置針12件の順であり, 原因作業としては器材使用中33件, リキャップ時33件, 使用後廃棄までが56件であった. 安全装置がありながら, 未使用の事故5件が報告された. 結論: 医療現場における職務の安全性確保のためには針さし事故サーベイランスを含めた病院感染対策の組織作りが重要である.
  • 諏佐 理津子, 布施 克也, 石沢 真幸, 中俣 正子, 塚田 弘樹, 下条 文武
    2001 年 16 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院職員がインフルエンザに罹患した場合, 個人の健康被害だけではなく多方面に様々な影響を及ぼす. 今回我々は病院職員に対するインフルエンザワクチンの有効性, および適切な接種回数を実際に評価するため, 1999年12月~2000年3月, 十日町病院に勤務する全職員362名をワクチンを接種しない群 (V0群) 166名, ワクチンを1回接種する群 (V1群) 112名, 2回接種する群 (V2群) 84名の3群に分けて, 前向きな検討を行った. 感冒罹患率は有意差をみなかったが, インフルエンザ様疾患 (以下ILI) にはV0群11名, V1群3名, V2群1名が罹患し, 接種群の方が未接種群より有意に罹患率が低かった (p<0.05). 感冒・ILIのための延べ欠勤日数は, それぞれ100名当たりV0群29.5日, V1群19.6日, V2群14.3日で, 接種群の方が未接種群より有意に短かった (p<0.05). 38℃以上の延べ発熱日数は, 100名当たりVO群38.0日, V1群26.8日, V2群19.0日で, 接種群の方が有意に短かった (p<0.05). いずれの項目もV1, V2群間で有意差を認めなかった. 以上の結果より, 冬期間の病院職員の医療提供能力を維持するためには, インフルエンザワクチン接種は有効であり, 接種回数は1回でも十分であると考えられた.
  • 池上 美智子, 大野 令子, 信国 圭吾, 河原 伸, 波多江 新平, 豊福 睦子
    2001 年 16 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    最近, 実践的な院内感染対策を行うべくインフェクションコントロールチーム (ICT) を設置する施設が増えてきている. 国立療養所南岡山病院でも1999年9月にICTを立ち上げ, 2000年5月からは英国で実施されているオーディットを参考にして院内感染対策ワードオーディットを行っている.
    オーディットは院内感染対策マニュアルに沿った感染対策が行われているか否かを検証できる点, 臨床現場での問題点を明らかできる点で成果をあげ, リンクナースや現場のスタッフに対しては教育効果をも持ち合わせていた. 実践的な院内感染対策を行うために院内感染対策ワードオーディットは有用であると考えられた.
  • 田代 隆良, 浦田 秀子, 松本 麻里, 志水 友加, 福山 由美子, 松田 淳一, 宮崎 義継, 平潟 洋一, 梁 柄善, 金 鳳壬
    2001 年 16 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 2001/12/07
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    日本のN大学病院と韓国のK大学病院において, 病院環境と臨床検体からのMethicillinresistant Staphylococcus auyeus (MRSA) の分離状況を検討した. 病院環境からのMRSA分離率は, N大学病院は147検体中6検体 (4.1%), K大学病院は136検体中7検体 (5.1%) で, 黄色ブドウ球菌に占めるMRSA比率はそれぞれ35.3%と63.6%であり, いずれもK大学病院が高かったが, 有意差は認められなかった. MRSA分離病棟は, N大学病院では内科病棟と小児科病棟2箇所, 外科病棟とICU1箇所で, K大学病院ではICU3箇所, 小児科病棟2箇所, 内科病棟と外科病棟1箇所であった. また, N大学病院では看護室・処置室から, K大学病院では病室からMRSAが分離された. 臨床検体からのMRSA分離率は, N大学病院は10,529検体中623検体 (5.9%), K大学病院は4,468検体中385検体 (8.6%) で, 黄色ブドウ球菌に占めるMRSA比率はそれぞれ62.5%, 84.6%といずれも有意差が認められた. また, MRSA分離検体はN大学病院では喀痰・咽頭が, K大学病院では血液が有意に多かった. 病院環境, 臨床検体ともK大学病院の方がMRSA分離率が高く, 抗菌薬使用の見直しとともに手洗いの徹底と隔離を含めた接触感染防止対策の必要性が示唆された.
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