当科病棟では, 易感染宿主である腎移植術後患者の周囲環境 (腎移植術後リカバリー区域: 腎移植室) の細菌数減少を目的として, 消毒剤を用いた清拭等の環境清浄化が実施されている. しかし, 0.1%塩化ベンザルコニウム (BzkCl) のみで実施していた期間に, その環境よりBzkClに耐性を示す
Pseudomonas aeruginosaが分離され, それらの株のバイオタイプは主として数種に限定された. 対象株119株のMBC
90 (156μg/m
l) は病棟内の腎移植室以外の環境から分離された株のMBC
90 (20μg/m
l) と比して3管高値であった.バイオタイプは生化学的性状がoxi/Ferm tube IIのインデックスナンバーで20303, 22303, 32303の3種が多く, また血清型がE群, Plasmidprofileは22-23kb付近のfragmentを有するA, B, C, Dタイプのいずれかを示す株が多かった.Glycocalyx高産生株が102株 (85.7%) 認められ, このうち11株 (10.8%) ではglycocalyx高産生によりBzkClのMBC値が2管以上上昇し, なかには常用濃度付近 (625μg/m
l) まで上昇した株が認められ, glycocalyx産生と消毒剤感受性の変化に関する検討が今後の課題として残された. BzkClの単独使用は, 低感受性の
Pseudomonas aeruginosaが環境にて選択されると考えられたため, このような環境 (室内に洗面, トイレットを備えた病室) の整備にはBzkCl単独使用は適切ではなかったと判断された.
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