環境感染
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9 巻, 3 号
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  • 辻 明良, 森下 浩美, 高森 スミ, 山崎 智子, 菊地 博達, 岡田 美砂, 菊地 京子, 山口 恵三, 五島 瑳智子
    1994 年 9 巻 3 号 p. 1-5
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    術前手洗いはスクラブ剤を使用したブラッシングが行われ, とくに再使用できるブラシを使用することが多い. 頻回の物理的刺激は皮膚を障害するおそれがあり, 手荒れが問題となっている. 今回, スポンジを使用したスクラブ法による除菌効果とアルコール含有製剤によるラビング法との併用による残留持続効果をグローブジュース法で検討し, ブラシ法と比較した. スクラブ剤として4%クロルヘキシジン (ヒビスクラブ ®), 7.5%ポビドンヨード (イソジン®), ラビング剤として塩化ベンザルコニウム/エタノール (ウエルパス®) を使用した. スポンジスクラブ法よる4分間の短時間手洗いは従来のブラシスクラブ法に比べ除菌効果は大差なく, 90%以上の除菌率であった. 2時間後の持続効果は, クロルヘキシジンでは著明な変化はなく, ポビドンヨードでは74.4%と低下した. しかしラビング剤との併用で持続効果は維持され, 除菌率は98.7%以上であった.
  • 上原 信之, 黒川 一郎, 広瀬 崇興, 熊本 悦明
    1994 年 9 巻 3 号 p. 6-11
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    MRSAおよび緑膿菌による院内感染は, 院内環境や医療従事者の手指を介しての交差感染であることが大きな要因であると指摘されている. 今回, 我々は実際の病棟環境において, 水拭き, 0.1%次亜塩素酸ソーダ液, 0.5%テゴー51液およびアクア酸化水などにより床の清拭・消毒を行い, 約2時間後のMRSAおよび緑膿菌に対しての除菌効果について検討した.
    MRSAについては, 各消毒液およびアクア酸化水ともに持続的な除菌効果は認められなかった. これらの結果から, 特にMRSAの床からの除菌は保菌患者がいる限り, 消毒薬を用いても困難であることが判明したことから, 通常の手洗いなどの徹底により環境の汚染菌を易感染患者に接触交差感染させないことが重要であることが再確認された. また, 緑膿菌は乾燥した病棟床からはほとんど検出されなかった.
  • 岩沢 篤郎, 中村 良子
    1994 年 9 巻 3 号 p. 12-18
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アクア酸化水の培養細胞に対する影響を, 他の市販消毒薬と比較し検討を行った.
    細胞増殖阻害試験, 細胞接着性試験, リンパ球毒性試験において, アクア酸化水は2倍希釈では蒸留水と比べ毒性を示したが, 5倍希釈以上では毒性は消失した.
    塩化ベンザルコニウム, グルコン酸クロルヘキシジンなど残留効果がある消毒薬は細胞毒性が強く, ポビドンヨードでさえ細胞機能障害が示唆された.
    以上, アクア酸化水は従来の消毒薬と比較し細胞に対する影響が少なく, 殺菌効力がある優れた殺菌水であった. 今後, 創部, 褥創などへ有効に使用できると考えられた.
  • 安藤 慎一, 片山 知美, 柳岡 正範, 名出 頼男
    1994 年 9 巻 3 号 p. 19-23
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当科病棟では, 易感染宿主である腎移植術後患者の周囲環境 (腎移植術後リカバリー区域: 腎移植室) の細菌数減少を目的として, 消毒剤を用いた清拭等の環境清浄化が実施されている. しかし, 0.1%塩化ベンザルコニウム (BzkCl) のみで実施していた期間に, その環境よりBzkClに耐性を示すPseudomonas aeruginosaが分離され, それらの株のバイオタイプは主として数種に限定された. 対象株119株のMBC90 (156μg/ml) は病棟内の腎移植室以外の環境から分離された株のMBC90 (20μg/ml) と比して3管高値であった.バイオタイプは生化学的性状がoxi/Ferm tube IIのインデックスナンバーで20303, 22303, 32303の3種が多く, また血清型がE群, Plasmidprofileは22-23kb付近のfragmentを有するA, B, C, Dタイプのいずれかを示す株が多かった.Glycocalyx高産生株が102株 (85.7%) 認められ, このうち11株 (10.8%) ではglycocalyx高産生によりBzkClのMBC値が2管以上上昇し, なかには常用濃度付近 (625μg/ml) まで上昇した株が認められ, glycocalyx産生と消毒剤感受性の変化に関する検討が今後の課題として残された. BzkClの単独使用は, 低感受性のPseudomonas aeruginosaが環境にて選択されると考えられたため, このような環境 (室内に洗面, トイレットを備えた病室) の整備にはBzkCl単独使用は適切ではなかったと判断された.
  • 藤田 次郎, 根ヶ山 清, 横井 博信, 末包 裕美, 河西 浩一, 高原 二郎
    1994 年 9 巻 3 号 p. 24-27
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    肺機能検査装置の細菌汚染の有無を検討した. 被検者の口にもっとも近い部分, および蛇腹を中心に滅菌生食を浸した滅菌綿棒での拭き取り検査を行った. 拭き取った綿棒は血液寒天培地で培養し, 検出された細菌を同定した. 肺機能装置のマウスピース部分および蛇腹にはきわめて多数の細菌が存在した. 同定された菌種はPseudomonas paucimobilis (P. paucimobilis) であった. 慢性気道感染症を有する2症例において, 患者保有菌が回路を汚染することはなかった.またフィルターは肺機能検査値に影響しなかった. 肺機能検査によって発生したと思われるP. paucimobilis感染症は特定しえなかった.P. paucimobilisは環境由来と考えられた.またアルコール噴霧消毒によりP. paucimobilisによる汚染は消失した.
  • 小穴 こず枝, 沖村 幸枝, 赤羽 貴行, 川上 由行
    1994 年 9 巻 3 号 p. 28-33
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1989年5月から1991年6月までに信州大学医学部附属病院中央検査部において臨床材料から分離されたMRSA 333株について, 標準型別ファージを用いたファージ型別による疫学的検討を行った.
    ファージ型別不能が199株 (59.8%) ともっとも多く, ついで混合群が75株 (22.5%), III群が26株 (7.8%), IV群が22株 (6.6%) およびI群が11株 (3.3%) であった.経時的推移をみると, 型別不能株の占める割合は増加傾向を示した. III群に型別された株の減少は著明であり, 特に85のファージにより溶菌した株の減少が認められた. 混合群に型別された株は二つのタイプに大別された. 一つは29/52等を中心としたファージタイプを示した株で経時的に減少がみられ, 一方, 81/94等のファージタイプを示した株は若干の増加が認められた.
    ファージ型別は, 特別の機器・試薬が必要なく, 低コストで済み, 比較的容易に実施することができる. また, 型別された株についてはファージ群だけでなくファージタイプをみることにより, 疫学的指標として有用な情報を与えてくれるものと考えられる.
  • 堀 勝幸, 斉藤 博
    1994 年 9 巻 3 号 p. 34-37
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染防止および抗生物質適正使用の目的で院内臨床カンファレンスの場を利用し, 当院における抗生物質の使用状況と臨床分離菌の具体的な資料を提示し院内教育を行った. その後の抗生物質の使用状況変化を, 医師と各製薬企業MRに対するアンケートと抗生物質の使用量より調査し院内教育の効果を検討した. その結果, 院内カンファレンス以降, 抗生物質の総投与量には変化がみられなかったが, 使用抗生物質品目には変化がみられた.特に第三世代セフェム, MINOなど広域スペクトラムを有する抗生物質の使用量は約30%~50%減少し, 院内教育の影響が大きく作用したと思われた. またアンケート調査より院内カンファレンスには医師および各製薬企業MRとも高い関心が示された.臨床の場より導かれる資料をもとに行う院内教育は施設ごとの特色が把握でき, 抗生物質の選択, 適正使用に大きな効果があると感じた.
  • 施設内感染の経験と栃木県内の施設におけるアンケート調査
    粕田 晴之, 北島 康雄, 豊田 雅司, 西田 健一
    1994 年 9 巻 3 号 p. 38-43
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1990年に開設した老人ホームにおいて, 2回の疥癬症施設内感染を経験した. 発端者は灰色の鱗屑を特徴とするノルウェー疥癬の新入居老人で, 診断の遅れから入居老人と介護職員に多数の二次感染者を認めた. 6%安息香酸ベンジル加クロタミトン軟膏の塗布, 硫黄剤添加浴, その他の一般的処置で対処したが, 鎮静化に2ヵ月を要した. 疥癬の確定診断はなかなか困難で, ノルウェー疥癬は易感染者に発生することが多く, 老人施設が急増している現在, 見逃せぬ問題となっている. 栃木県下の特別養護・養護・軽費・有料の各老人ホーム, 計58施設にアンケート用紙を送付し, 疥癬症の施設内感染の現況について調査した. 42施設から回答が寄せられ (回収率72%), 25施設で延べ29回の疥癬が経験されていた. ホームの種類別では特別養護老人ホームが19施設と最多の発生で, 年次別では23施設が最近の3年間に集中していた. 施設内感染の発端者が入居者であるのが20施設, このうち新入居時あるいは病院退院後の再入居時の発生が11施設, 発端者がショートステイ利用者であるのが3施設で, すべて入居時の発生であった. ノルウェー疥癬の認められた4施設では平均45.3名 (平均感染率45.3%) の二次感染者が報告された. 老人福祉施設での疥癬症はMRSA感染よりもはるかに実害のある感染性疾患であり, ショートステイも含めて利用者入所時の皮膚所見の観察や, 職員の接触感染に対する教育など, 的を絞った対策が必要である.
  • 渡部 節子, 井原 育子, 奥田 研爾
    1994 年 9 巻 3 号 p. 44-48
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染予防の一つとしてMRSAの病院内での伝播防止対策が重要視されている. そのMRSAの感染経路の遮断を目的にナース・シューズの靴底部に視点をあて, 粘着マット・消毒液を浸した布マット・消毒液の噴霧などによるMRSAの除菌方法について比較検討を行い, 以下の結果を得た.
    1.靴底部に対するベンクロジドエタノールとウエルパス両薬剤による除菌効果に有意差は認められなかった.
    2.消毒剤を浸した布=消毒剤の噴霧>粘着マット>無処置の方法順に除菌効果が高かった.
    3.無処置コントロール群におけるMRSAの検出率は歩行開始時100%に対し, 歩行3m地点で靴底より15.1%, フロアより0.99%であった. さらに5m地点での靴底よりの検出率は1.8%であり, フロアよりの検出率は0.09%であった.
    以上のことからナース・シューズの靴底に付着したMRSAは歩行することでフロアに散在する可能性があるため靴底の除菌にはなんらかの消毒剤を用いることが有効的であると考えられた.
  • 生方 公子, 杉浦 睦, 加藤 正久, 安達 実樹, 沖永 功太, 紺野 昌俊
    1994 年 9 巻 3 号 p. 49-55
    発行日: 1994/12/27
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    男女各1室づつの6人部屋を対象として, 入院患者全員の鼻腔内MRSA保菌検査を3週間にわたって検索し, 患者間における交叉感染の有無を調べた. 検出されたMRSAは, 薬剤耐性型, ファージ型, コアグラーゼ型, エンテロトキシン産生性, およびmecA遺伝子の有無を調べ, それらの成績から菌の伝播状況を推定した. 得られた結果からは, 患者間どうしで交叉感染が生じていることを示唆する成績が得られた. 特に.MRSAの濃厚なキャリアーの隣に収容された患者においては, 鼻腔内にMRSAを保菌しやすく, 加えて手術が施行され, 各種のカテーテル類が挿入されると付着したMRSAは増殖しやすいことが明らかにされた.
    複数以上の患者を収容する病室での院内感染防止には, 手術直前と直後に鼻腔や咽頭の監視培養を行うことが必要で, その結果, MRSA保菌者とそうでない患者の場合には手術前後の対応を違える必要のあることを述べた.
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