日本レーザー医学会誌
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28 巻, 2 号
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受賞論文
  • 櫛引 俊宏, 粟津 邦男
    2007 年 28 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    骨髄から採取できる間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells, MSCs)は自己複製能をもち,さらに骨芽細胞や脂肪細胞といった間葉系の組織細胞へと分化する能力を有している.本研究では波長405nmのレーザーをMSCsに照射することにより,骨芽細胞への分化を促進できた.さらにそのメカニズムとして,体内時計(サーカディアンリズム)関連因子のCryptochrome 1の細胞内局在の変化を明らかにした.本研究結果であるレーザー技術による細胞の分化制御は,疾病の新しい治療方法,体内時計リズムと細胞機能の解析に新規レーザープロセスとして用いることができる.
原著
  • 平野 達, 河野 栄治, 郷渡 有子, 尾花 明
    2007 年 28 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    インドシアニングリーン(ICG)は波長600nmから800nmを越す広い波長範囲で光を吸収し,最大吸収波長の800nm付近の光の照射により,眼科での蛍光眼底造影検査,発熱を利用した色素増強光凝固が行われている.ICGの光照射により得られる効果については不明な点が多く,これを明らかにするためにICG照射時に発生する一重項酸素を高感度な近赤外光検出装置を用いて測定した.更にマウスに作成したHeLa腫瘍にICG(40mg/kg)を局注して,波長635nm, 670nm, 823 nmのレーザー光をパワー密度100 mW/cm2,エネルギー密度100 J/cm2で照射し,組織の障害性を検討した.
    光照射によりICGの溶液からは1270nmのスペクトルが検出され,アジ化ナトリウムを添加すると濃度依存的にその強度が減少した.これによりICGの光照射により一重項酸素が発生することが確認された.マウスのHeLa腫瘍の照射では635nm,670nmではPDT同様の腫瘍壊死や血管障害が認められたが,823nmの照射ではこれよりもはるかに大きな障害が認められ,これはPDTの効果に熱効果が加わってもたらされたものと理解された.眼科でのICGを用いる蛍光眼底造影検査では,血管閉塞をおこさないように,過剰な光照射は避けることが望まれる.
  • 平川 靖之
    2007 年 28 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    レーザースペックル顕微鏡を開発し,ヒト細胞と植物組織の観察を行った.ヒトの生細胞と固定化細胞を比較すると,生細胞でのレーザースペックル揺らぎは明らかに固定化細胞よりも活発であることが分かった.また,レーザースペックル揺らぎの温度依存性を計測したところ,生細胞のレーザースペックル揺らぎは,温度に比例して活発になり,細胞活動を反映していることを確認することができた.さらに,細胞の周囲環境が細胞に及ぼす影響を,細胞の単一層上と多重層上に存在する細胞について調べたところ,細胞核におけるスペックル揺らぎに差異が存在する可能性が示唆された.植物組織観察に適用すると,時間の経過とともに葉が萎れていく様子を可視化できることが分かった.植物において観察されるバイオスペックルは,ヒト細胞のそれと比較すると特性が異なるため,植物に対応した解析が必要なことも明らかとなった.
  • 山本 淳考, 山本 清二, 平野 達, 河野 栄治, 難波 宏樹, 寺川 進
    2007 年 28 巻 2 号 p. 136-143
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    光線力学療法(PDT)時に発生する一重項酸素(1O2)は,殺細胞効果において重要な役割をすると考えられている.今回,新しい近赤外微弱光検出器を用いて,PDT中に発生する1O2をリアルタイムにモニタリングを行い,1O2の発生とPDTの効果との関連について検討した.5-アミノレブリン酸(5-ALA)によるPDTを,9Lグリオーマ細胞(in vitro)および9Lグリオーマ細胞を移植したラット皮下腫瘍モデル(in vivo)に対して行い,1O2のモニタリングを行った.さらに異なる光照射の条件下で,1O2の発生パターンと誘導される細胞死への影響について検討した.我々の方法でPDT中の1O2の発生パターンをモニタリングすることが可能であった.低いワット数での光照射では,1O2発生量のピークは低いが緩やかに減少していた.一方,高いワット数では,1O2発生量のピークは高いが急激に減少していた.結果的に,1O2の総量は,低いワット数の光照射では1O2がより多く発生する傾向があり,強い殺細胞効果が得られた.また低いワット数での光照射は,細胞死をアポトーシスに誘導する傾向にあり,高いワット数の場合は,ネクローシスに誘導する傾向が見られた.本研究の結果から,1O2をモニタリングすることにより,PDTによる効果の予測や,患者それぞれに対して光照射の最適条件を選択できる可能性があることが示唆された.
特集「眼科におけるレーザー:最近の話題」
  • 大路 正人
    2007 年 28 巻 2 号 p. 145
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
  • 板谷 正紀
    2007 年 28 巻 2 号 p. 146-159
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    光干渉断層計(OCT)は,さまざまな眼底疾患の病態の理解を促進した.OCTは,また,網膜厚や網膜神経線維厚を計測することができ,早期緑内障診断,疾患進行のモニター,治療効果の評価に有用である.最近,フーリエドメイン(スペクトラルドメインまたはフリークエンシードメインともいう)検出により撮影速度および撮影感度が,著しく改善した.撮影速度は,標準のタイムドメインOCT(TD-OCT)に比べ40~100倍速い.スペクトラルドメインOCT(SD-OCT)は,網膜病変の3次元解析を可能にする.すなわち,網膜硝子体界面の3次元可視化や網膜内部構造の包括的観察が可能になる.SD-OCTは,網膜神経線維層,網膜内層,または視細胞外節などの網膜層構造をセグメンテーションすることを可能とし,その肥厚や菲薄化をモニターできる.SD-OCTは,ドルーゼン,網膜色素上皮剥離,漿液性網膜剥離のセグメンテーションを可能とし,疾患の進行や治療効果の評価をTD-OCTより精密に行うことが可能となる.SD-OCTは,3次元画像を,眼科診療で使用する眼底カメラや蛍光眼底造影のイメージとレジストレーションすることが可能になる.このように,SD-OCTは,眼底疾患や緑内障の診断における光干渉断層計の潜在力を著しく高めるであろう.
  • 島袋 幹子, 前田 直之
    2007 年 28 巻 2 号 p. 160-166
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    ArF excimer laser is now applicable to refractive surgery in ophthalmology. Detailed observation of the cornea have been needed. We show the devices using laser in the examinations.
  • 稗田 牧
    2007 年 28 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
  • 芝 大介
    2007 年 28 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    緑内障の治療は眼圧下降が唯一エビデンスのある治療であり,点眼薬と外科的治療が主に行われてきた.選択的光加熱分解を応用した選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の実用化により,組織破壊を伴わず再照射による治療も可能なレーザー眼圧下降治療が完成した.Qスイッチ発振による波長532nmのNd:YAGレーザーを用いており,レーザー照射は数分で完了する.有効率は70%の程度で,眼圧下降率は20~30%となっている.一度の照射で効果は長期に持続し,最も強力な点眼薬一剤に匹敵する眼圧下降効果が認められている.初期治療として点眼薬でなくSLTを選択することも検討されており,今後の広い普及が期待される.
  • 尾花 明
    2007 年 28 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    わが国では滲出型加齢黄斑変性に対するビスダインを用いた光線力学療法(PDT)が2004年から始まり,現在,約179施設で治療が行われている.これまでの患者数は推定16000人である.PDTにより良好な視力維持成績が報告されているが,一方で,術後出血や高い再発率などの問題点もある.また,網膜の直接障害はないが,脈絡膜毛細血管閉塞,網膜色素上皮細胞障害という正常組織の障害も起こる.再発率を抑制する目的で,トリアムシノロンアセトニドや抗VEGF製剤との併用療法が試みられている.併用によって視機能成績も向上するとの報告もあるが,確定はしていない.インドシアニングリーン蛍光造影検査による脈絡膜新生血管の診断結果に基づいてPDTを行うIA guided PDTが試みられ,その効果が検討されている.PDTに難治の病態としてretinal angiomatous proliferation, 大きな漿液性色素上皮剥離を伴う例などがある.PDTには長所と短所があるが,将来的にも新生血管の閉塞を可能にする治療法としてその有用性がある.
  • 大越 貴志子
    2007 年 28 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2008/07/16
    ジャーナル フリー
    目的:糖尿病黄斑浮腫に対するマイクロパルス閾値下凝固(SDM)の臨床結果の検討.方法:22例25眼のclinically significant macular edemaのSDM後の経過を調査した.調査項目は視力,OCT scan による中心窩網膜厚,黄斑体積の測定値である.結果:6ヶ月以上の経過観察でレーザー照射部位に明らかな瘢痕は観察されなかった.治療を受けた眼の92%で6ヶ月間視力が改善またはLog MAR0.2以内の変化に維持された.OCTにて黄斑部の厚さを測定できた19眼では,平均中心窩網膜厚が,治療前の340.6μmから治療後有意に減少し,1ヶ月で315.5μm(P=0.019), 3ヶ月で 295.3μm(P=0.013), 6ヶ月で 286.3μm(P=0.006)であった.平均黄斑部体積も経時的に減少し,治療前8.245 mm3 であったのが,1ヶ月で8.235 mm3 , 3ヶ月で8.117 mm3 , 6ヶ月で7.897 mm3(P=0.04)であった.結論:マイクロパルスダイオードレーザー閾値下凝固は,視機能を保有する黄斑部網膜組織への障害を最小化させながら浮腫を減少させ,視力を改善または維持するのに有効な治療である.
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