日本レーザー医学会誌
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34 巻, 2 号
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平成24年度日本レーザー医学会総会賞受賞論文
  • 西村 智
    2013 年 34 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    最近の研究により各種生活習慣病の背景には,慢性炎症を基盤とした異常な細胞間作用が生体内で生じていることが明らかになっている.我々は,一光子・二光子レーザー顕微鏡を用いた「生体分子イメージング手法」を独自に開発し,生活習慣病にアプローチしてきた.著者らは,本手法を肥満脂肪組織に適応し,肥満脂肪組織で,脂肪細胞分化・血管新生が空間的に共存して生じ,また,脂肪組織微小循環では炎症性の細胞動態を生じている事を明らかにした.また,肥満脂肪組織にはCD8 陽性T 細胞が存在し肥満・糖尿病病態に寄与していた.さらに,本手法を用いて生体内の血栓形成過程の詳細も明らかになり,iPS 由来の人工血小板の機能解析も可能となっている.
  • 秋元 治朗, 村垣 善浩, 丸山 隆志, 生田 聡子, 伊関 洋
    2013 年 34 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    悪性脳腫瘍の代表である膠芽腫は浸潤性発育を特徴とする.脳機能部位への腫瘍細胞浸潤に対する摘出は不可能であることから,同部からの再発は必至であり,標準的治療を行っても平均生存期間は1 年強に過ぎない.著者らは光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)による浸潤腫瘍細胞の選択的傷害の可能性を,基礎,臨床研究にて証明してきた.今回はtalaporfin sodium と半導体レーザーを用いたPDT の悪性脳腫瘍への保険適応拡大を目指し,日本初となる医薬品と医療機器の複合型医師主導治験を施行した.成人テント上悪性グリオーマ連続27 症例を対象とし,摘出の22-26 時間前にtalaporfin sodium 40 mg/m2 を静脈注射,可及的腫瘍摘出後の摘出腔に波長664 nm,150 mW/cm2 の半導体レーザー光を 1.8 cm2 径のターゲット1-2 箇所に対し180 秒間表面照射(27 J/cm2)した.結果として,初発膠芽腫の1 年生存率は100%,生存期間中央値は24.8ヶ月であり,標準的治療の成績を凌駕する治療成果を得た.PDT に直接関連した重篤な有害事象は無く,皮膚光感受性反応も約8 割が投与後1 週間以内に消失した.悪性グリオーマ症例,特に初発膠芽腫例に対する術中局所照射としてのPDTは重篤な副反応も無く,従来の集学的治療への上乗せ効果を示すことができた.
一般
  • 土田 博光, Papaioannou Thanassis, S. Grundfest Warren, E. Wilson Samuel
    2013 年 34 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    目的:臨床使用上の安全性に対する基礎的検討として,in-vitro でエキシマレーザーの人工血管及び縫合糸に対する効果を検討した.方法:XeCl エキシマレーザー,波長308 nm,パルス幅130 nsec をコア径600 µm のシリカファイバーを用いて照射した.繰り返し周波数は5 Hz で,臨床に使用されるフルーエンス(35 と50 mJ/mm2)を選択した.Expanded polytetrafluoroethylene(PTFE)とDacron の人工血管,及びポリプロピレンとPTFE 糸にin vitro でレーザー照射し,その耐性を観察した.これらの人工血管を犬の動脈に移植し,18 週後に摘出した.内膜肥厚部,器質化血栓,及び対照として犬の大腿動脈を用いた.標本の厚さを,それを貫通するのに有したパルス数で除したものをアブレーションレートとして,エキシマレーザーに対する標本の耐性を定量化した.縫合糸の耐性評価には,それを破綻させるのに要するパルス数を測定した.結果:アブレーションレート(μm/pulse, mean±SD)は35 mJ/mm2で:大腿動脈 11.7±2.00,器質化血栓 10.5±3.50,内膜肥厚部 4.02±1.02†,摘出 PTFE グラフト 0.44±0.01†,摘出woven Dacron 4.15±0.24†,摘出 knitted Dacron 3.00±0.42†.結論:エキシマレーザーはPTFE グラフト閉塞に使用するには,人工血管には重大なダメージは生じないこと,しかしポリプロピレン糸はレーザーに対し極めて脆弱であることが示唆された.
特集:消化器科におけるレーザーの現状と新展開
特集:光線力学診断・治療の最新動向
  • 松村 明
    2013 年 34 巻 2 号 p. 132
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
  • 守本 祐司, 田中 優砂光, 木下 学
    2013 年 34 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)は,病巣局所に集積した光増感剤が光によって励起され,発生した活性酸素種が病変を傷害することによって治療効果を発揮すると信じられている.しかし最近,PDTによる免疫反応が治療効果の一翼を担っていることを示唆する報告が増えてきた.本総説では,自然免疫である好中球へのPDT作用ならびにPDT作用を受けた好中球の病巣・病態への働きかけについて言及する.
  • 長崎 幸夫
    2013 年 34 巻 2 号 p. 138-140
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素(NO)分子の生理機能を利用する新しい治療法として光NO 分子放出を可能にするナノ粒子を設計し,その評価を行った.ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(パラ- クロロメチルスチレン)(PEG-b-PCMS)と3-トリフロロ-4- ニトロフェノールとの反応によりPEG-b-ポリ[ パラ-(3- トリフロロ-4-ニトロフェニルオキシ)メチルスチレン](PEGb-PNTP)を合成した.PEG-b-PNTP は水中で会合し,直径40 nm 程度のナノ粒子を形成した.このナノ粒子は光照射によりNO を発生することを電子スピン共鳴スペクトルを用いたスピントラップ法により確認した.さらにin vitro 細胞試験で,光照射により細胞毒性が向上することから,光NO リリースによる抗がん治療への展開が期待される.
  • 小松 洋治, 中村 和弘, 伊藤 嘉朗, 益子 良太, 上村 和也, 松村 明
    2013 年 34 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    インドシアニングリーン(indocyanine green: ICG)の近赤外蛍光を用いたICG ビデオ血管撮影(ICG video angiography: ICG-VA)は,手術用顕微鏡に搭載され脳神経外科手術においてリアルタイムに術野の血管を評価できる.従前から術中血管評価にもちいられてきた術中digital subtraction angiography( DSA)と比較して簡便かつ多方向から細かな血管まで観察可能であることが評価されている.本総説では,自験例を紹介して,その有用性,課題,展望について論じる.脳動脈瘤手術においてICG-VA を用いることにより,動脈瘤の不完全遮断や温存すべき正常血管の狭窄や閉塞を,術中DSA より細部にわたって評価可能となった.この所見に基づいて手技を術中に修正でき,手術の安全性向上に寄与した.動静脈奇形ではnidus 摘出が完全に行われたことの評価,流入血管と通過血管の鑑別に有用であった.バイパス手術では,バイパス開存および灌流領域を術中に評価できるようになった.頚動脈内膜剥離手術では,血管切開前にプラーク存在部位を,術後には遠位端の狭窄残存の有無の評価が可能であるが,血管壁の厚さによる蛍光不均一に注意が必要である.有用性を高めるためには,出血がなく,血管の重なりのない方向からの観察が可能な術野を展開することが重要であるとともに,視認できない部分は評価できないことを理解したうえで活用する必要がある.
  • 川瀬 悠樹, 伊関 洋
    2013 年 34 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    PDT の有効性・安全性の評価体系を確立するための基礎検討として,日米で過去承認されたPDT に関して,至適治療条件の評価,検証的試験,後発機器の同等性評価について体系的な調査を行い,現状を分析し,今後の取り組むべき課題を抽出した.その結果,PDT の有効性・安全性に関する評価の現状が体系的に整理されるとともに,PDT の治療条件評価に関するコンセンサスの形成,効率的な評価手法の導入,臨床エビデンス蓄積のためのインフラの整備と活用といった今後取り組むべき課題が明らかになった.
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