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柴谷 滋郎, 濱田 衣美, 長屋 進吾, 柴田 大輔, 新名 惇彦, 加藤 晃
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0801
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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ヒアルロン酸は、グルクロン酸と
N-アセチルグルコサミンがβ1,3およびβ1,4結合した二糖の繰り返し構造を有する直鎖状の多糖である。現在、ヒアルロン酸は、鶏冠からの抽出、微生物を用いた醗酵法等により生産され、化粧品素材、医療用途、健康食品等での需要の拡大と共に、近年、その生産量は伸び続けている。我々は、ヒアルロン酸の新たな製法として、植物におけるヒアルロン酸の大量生産を目指している。これまでに、クロレラウイルス由来ヒアルロン酸合成酵素遺伝子(cvHAS)を導入したタバコBY-2培養細胞およびタバコ植物体において、ヒアルロン酸が生産可能であることを見出している。今回、BY-2細胞におけるヒアルロン酸生産能を向上させる目的で、ヒアルロン酸合成経路における鍵酵素として着目したUDP-グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子(Ugd)およびグルタミン:フルクトース-6-リン酸アミドトランスフェラーゼ遺伝子(GFAT)をcvHASに連結し、三重遺伝子を導入した形質転換体を作製した。高生産ラインを選抜した結果、ターミネーターを改変した三重遺伝子の導入系統は、ヒアルロン酸生産能が顕著に向上した。さらに、高生産ラインの生産するヒアルロン酸は、cvHAS導入系統に比較して、高い分子量を有していた。
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今井 剛, 伴 雄介, 山本 俊哉, 森口 卓哉
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0802
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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モモ果実は、開花後20日程度はアスコルビン酸量が2-3 μmol gFW
-1であり、葉とほぼ同レベルであるが、その後急速に減少し、92日後では約15分の1の0.2 μmol gFW
-1となりその後はほぼ一定であった。果実あたりのアスコルビン酸量を算出すると、その変化が緩・急・減・急から成る4期に分けられ、細胞肥大に伴う濃度の低下だけではなく、合成・代謝の結果として特徴的な変動を示していると考えられた。植物におけるアスコルビン酸の合成には4つの経路が報告されているが、果実組織への前駆物質投与によるアスコルビン酸量の変化を調べた結果、L-ガラクトースを経る経路にほぼ限定されると考えられた。そこで、この経路の6つの酵素をコードするcDNAを単離し、果実発達に伴う転写レベルの発現変化を調べた。上流の3ステップ(
GMPH, GME, GGGT)は開花後43日に発現がもっとも強く、下流の3ステップ(
GPP, GDH, GLDH)は21日、92日の2つのピークを示した。したがって、果実自身におけるアスコルビン酸合成酵素遺伝子の発現は約110日の発達期間のはじめ3分の1で比較的高く、エチレン放出が開始する約100日目より10日ほど前に再度一時的に高くなると考えられた。90日目以降の果実の急速な肥大に伴い、果実あたりのアスコルビン酸総量も急増するが、転写レベルと一致は見られなかった。
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中島 悠介, 戎 拓斗, 野末 はつみ, 野川 優洋, 野末 雅之
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0803
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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サツマイモ培養細胞の液胞にはクロロゲン酸などのカフェ酸エステルが著量に蓄積され、その生合成中間体である
p-クマロイルグルコース(pCG)も液胞に局在する。これらの事実から、カフェ酸エステルが液胞内で生合成される可能性が示唆されている。我々は先に、pCGの3位水酸化によりカフェオイルグルコースが生成される反応がポリフェノールオキシダーゼ(PPO)により触媒されることを明らかにした。しかし、植物PPOは葉緑体ストロマおよびチラコイド内腔へのターゲッティングドメインをN末端に持つ葉緑体(色素体)局在性タンパク質であり、液胞タンパク質ではない。今回、液胞内でのpCGの水酸化にPPOが関与する可能性を検証するため、液胞分画への色素体の移行について検討した。1)細胞を新鮮培地へ移植するとカフェ酸エステルが増加する。そのとき、色素体局在性60-kD型PPOが液胞局在性システインプロテアーゼによりプロセシングされ40-kD型PPOが出現する。2)その液胞には、細胞質由来と思われる構造物が電子顕微鏡で多数観察される。3)オートファジー過程で出現する膜構造物を染色するMDCにより蛍光染色される構造物が同時期の細胞で多数観察される。これらの結果から、カフェ酸エステルの生合成過程で色素体が液胞へ移行し、pCGの水酸化にPPOが関与している可能性が示唆された。
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小澤 友香, 嶋田 典基, 近藤 健太郎, 今泉 隆次郎, 佐藤 修正, 金子 貴一, 田畑 哲之, 由田 和津子, 作田 正明, 綾部 真 ...
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0804
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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ミヤコグサ
(Lotus japonicus)B-129系統から単離された
viridicaulis1(vic1)変異体はアントシアニンと縮合型タンニン(CT)がともに欠失している。CTは、カテキン類を含むフラボノイド重合体で、抗菌作用や食害昆虫に対する防御作用などが知られている。本研究ではCT生合成調節機構の解明を目的として、変異体における生合成酵素遺伝子の発現を調べ、
VIC1遺伝子のポジショナルクローニングを行った。
茎から抽出したトータルRNAを用いて、RT-PCRにより各生合成遺伝子の転写物蓄積量を解析した。
vic1 変異と標準系統MG-20および近縁種
L. burttiiを交配したF1世代を自殖して得られたF2集団を材料とし、SSRおよびdCAPSマーカーを用いて連鎖解析を行った。
生合成遺伝子の発現解析からVIC1タンパク質はジヒドロフラボノール4-還元酵素遺伝子の調節因子であることが示唆された。
VIC1は第5染色体のTM2085の近傍にマップされ、それを起点としたウォーキングクローン中にbHLHタンパク質をコードする遺伝子が見出された。野生型と二種の変異型
(vic1-1、vic1-2)対立遺伝子の塩基配列を比較したところ、
vic1-1と
vic1-2は別の箇所に変異が認められた。現在、この遺伝子を用いた変異体の相補実験を行っている。
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松本 征太郎, 水谷 正治, 清水 文一
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0805
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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クマリン化合物はさまざまな植物で見られる。抗菌,抗酸化活性を示し病原の侵入などで誘導蓄積することから、植物の生体防御に関与していると考えられる。我々はこれまでにシロイヌナズナのスコポレチン(7-hydroxy-6-methoxycoumarin)生合成の鍵酵素であるフェルロイルCoA 6'-位水酸化酵素(AtF6'H)を同定した。公開されているESTデーターベースの検索結果から、植物界にはAtF6'Hホモログが広く存在していると考えられるが、これらの機能は明らかにされていない。一方、サツマイモはスコポレチンに加えてウンベリフェロン(7-hydroxycoumarin)を病原の侵入などに応答して誘導蓄積する。本研究では、サツマイモにおけるクマリン化合物生合成を明らかにすべく、AtF6'Hホモログのクローニングを行った。
サツマイモESTデータベース上のAtF6'Hホモログ配列情報をもとに、サツマイモ根塊(高系14号)から作成したcDNAを鋳型にしてRACE法にてホモログ全長配列を取得した.さらにこれら配列を大腸菌発現系にて発現させ,組み換えタンパク質の基質特異性を検討した.またこれらの配列の部位別および刺激応答の発現パターンを調べた。
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佐藤 俊介, 前田 和寛, 木村 惣一, 野間 和香奈, 佐々木 伸大, 小関 良宏
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0806
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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フェニルプロパノイド合成系は、植物が自然環境の中で生存していく上で重要な化合物の合成を導く二次代謝系であり、phenylalanine ammonia-lyase (PAL) はその鍵酵素であるという重要性から研究が進められてきた。
当研究室では、ニンジン培養細胞系において、紫外線照射、エリシター処理、希釈効果などの外的シグナルにより誘導されるニンジン
PAL 遺伝子 (
DcPAL1) およびその発現制御に関与し、同様に外的シグナルによって誘導される MYB 転写調節因子 (
DcMYB1) を単離し、さらにそのプロモーター領域を解析したところ、-138 ~ -97 の領域に負のシス・エレメントが存在することが明らかになった。そこで、yeast one-hybrid 法を用いて、この領域に結合する因子の単離を試みたところ、エチレンのシグナル伝達に関与する転写調節因子
ETHYLENE-INSENSITIVE3 (
EIN3) と高い類似性を有する因子 (
DcEIL) が単離された。
DcEIL はストレス処理前後において、その発現量には差がなく、プロテアソーム特異的阻害剤を添加することで、ストレス処理による
DcMYB1 の発現量が低下することから、
DcMYB1 の発現制御には DcEIL の翻訳後における制御が関与していると示唆された。
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中川 陽子, 柳楽 洋三, 佐々木 伸大, 西村 一馬, 児玉 浩明, 小関 良宏
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0807
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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植物の紅葉は非常に身近な現象である。それに関する研究は古くから行なわれているが,温度、光、水分などの様々な外的要因が絡みあっていることから、機構や要因については未解明な点が多いのが現状である。トレニア (
Torenia fournieri Lind) は遺伝子導入のモデル植物として、様々な遺伝子の発現や花色に関する解析に利用されている。これまでの研究において、このトレニアのリーフ・ディスクからシュート再生時に、高濃度のショ糖を含む培地に移植することによって、アントシアニン合成を誘導するモデル実験系が確立された。また、ABA がこのアントシアニン合成の誘導に重要な役割を果たしている事が示された。この実験系においてアントシアニン合成誘導時に特異的に発現している遺伝子の解析を行うため、アントシアニン合成を誘導した植物体と、誘導していない植物体を用いて cDNA サブトラクションを行い、得られた 1200 クローンに関して cDNA マイクロアレイが作製された。本研究では、高濃度ショ糖培地に移植した場合と ABA を含む低濃度ショ糖培地に移植した場合のそれぞれの誘導条件について、マイクロアレイを用いた経時的な発現解析を行ったので報告する。
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梅基 直行
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0808
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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4クマロイルCoAリガーゼ(4CL)遺伝子はフェニルプロパノイド経路の生合成の基質である4クマロイルCoAを生成する酵素をコードする遺伝子である.この遺伝子は遺伝子ファミリーを形成し構造の系統樹解析からクラスI型とクラスII型に分けられる.クラスI型はリグニンの合成に,クラスII型はフラボノイドの合成に関係するとされる.しかし,それらの基質特異性や生体での役割は不明な点が多い.シロイヌナズナでも4つの遺伝子が見つかっており,
At4CL1,
2,
4 がクラスI型,
At4CL3 はクラスII型とされる.ラズベリーでも3つの遺伝子が同定され,系統樹解析と
Ri4CL3 が花と実で発現が多いことからフラボノイドと香気成分の合成にも関わっていることが指摘されている.ペチュニア(
Petunia )では多くの花の色素合成に関わる遺伝子が同定されているが,4CL遺伝子については報告がない.今回,ペチュニアの花弁で発現する4CL遺伝子を取得した.RNAi法で同遺伝子の発現を抑制した形質転換体を作成したところ,花弁でのアントシアニンの蓄積が顕著に抑制された.プロモーターを用いた形質転換体の解析から,本遺伝子は花弁で特異的に発現していることがわかった.これらの結果について考察する.
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北村 智, 峠 隆之, 松田 史生, 榊原 圭子, 斉藤 和季, 鳴海 一成
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0809
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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フラボノイドはその強力な抗酸化活性から我々人類にとって有用な高機能物質として注目されているが、植物体内においても、紫外線防護物質や花色などの有用機能を発揮することが知られている。植物細胞内においては、フラボノイドの基本骨格C6-C3-C6生合成は、細胞質領域の小胞体表面で進行すると考えられているが、多くのフラボノイド最終産物は液胞に蓄積される。このことは、フラボノイドが植物細胞内で輸送されることを示唆しているが、その輸送機構についてはほとんど明らかにされていない。モデル植物シロイヌナズナにおいて、種子でのみ生合成・蓄積するフラボノイドの一種であるプロアントシアニジンに関する細胞内輸送経路に関する研究が進められており、膜局在型フラボノイドトランスポーターTT12やサイトゾル局在型のグルタチオントランスフェラーゼ様タンパク質TT19などがフラボノイド輸送に関与すると考えられている。本研究では、これらのフラボノイド変異体を用いて、未熟種子ステージにおける代謝産物解析などを行い、得られた生化学的知見について報告する。
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山本 雅也, 遠藤 斗志也, 西川 周一
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0810
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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DnaJファミリーのタンパク質(Jタンパク質)は,Hsp70の機能を制御するパートナータンパク質であり,Jドメインとよばれる機能領域をもつ.小胞体Hsp70,BiPは小胞体Jタンパク質を使い分けることで,品質管理機構,膜透過等で機能する.われわれは,シロイヌナズナにも出芽酵母および哺乳動物細胞と同様の小胞体Jタンパク質が存在することを明らかにした.
AtERDJ3A,
AtERDJ3Bと
AtP58IPK遺伝子の遺伝子産物は出芽酵母
jem1Δ
scj1Δ株の30℃での増殖を抑圧した.これらの結果は,これら遺伝子が小胞体品質管理機構で機能することを示唆している.
T-DNA変異体を用いた解析を行ったところ,
AtERDJ3A,
AtERDJ3Bと
AtP58IPK遺伝子の破壊株は通常条件では野生株と同様の生育を示した.しかし,
aterdj3b破壊株を29℃で栽培すると,種子を付けず不稔性を示した.29℃で栽培した
aterdj3b破壊株は,花粉の形成やviabilityは正常だったが,葯から花粉が解離しにくくなっており,柱頭に付着する花粉粒が減少していた.走査型電子顕微鏡で花粉を観察したところ,葯は正常に裂開していたが,花粉同士が付着した様子が観察された.花粉同士の癒着は透過型電子顕微鏡観察でも観察された.
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海老根 一生, 岡谷 祐哉, 郷 達明, 井藤 純, 植村 知博, 中野 明彦, 上田 貴志
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0811
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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細胞内では小胞を介して様々な物質の輸送が行われており,SNAREとRABはこの小胞の融合を制御している鍵因子である.我々は小胞輸送が植物の高次現象において果たす役割を明らかにすることを目的とし,特にエンドサイトーシスに関与するSNAREとRABに注目し研究を行っている。近年のゲノム解析から,種子植物にはlongin domainに約20アミノ酸からなる挿入を持つR-SNARE(シロイヌナズナではVAMP727)が保存されており,より基部で分岐した植物はこれを持たないことが明らかになった.我々は,VAMP727がエンドソームにのみ局在し,VAM3,VTI11,SYP51(いずれも液胞膜とエンドソームに局在するSNARE)と,液胞膜とエンドソームの接する部分で複合体を作ること,この複合体が種子形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた.RAB5はVAM3と強い遺伝学的相互作用を示し,RAB7は液胞膜に局在することから,このSNARE複合体の融合を制御するRABの候補として,これら2つのRABが考えられる.そこで現在,VAMP727-VAM3複合体形成の制御機構を明らかにすることを目的とし,これらのSNAREとRAB5,RAB7の関係について詳細な解析を行っている.また,VAMP727にのみ存在するアミノ酸挿入の意義についての解析も進めており,今大会ではこれらの結果を報告する.
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植村 知博, 海老根 一生, 岡谷 祐哉, 矢野 大輔, 森田(寺尾) 美代, 齊藤 知恵子, 上田 貴志, 中野 明彦
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0812
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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SNAREは,細胞内の膜交通システムにおいて,輸送小胞と標的オルガネラ膜の正確な膜融合を制御する分子である.AtVAM3とAtPEP12はそれぞれ液胞膜と液胞前区画(PVC)に局在するQa-SNAREとして,液胞輸送経路でそれぞれ独立して機能すると考えられてきた.一方で,AtVAM3のT-DNA挿入変異体(vam3)は,葉の形態異常,花成遅延,ミロシン細胞分化昂進などの多面的な表現型を示すのに対して,AtPEP12のT-DNA挿入変異体(pep12)は,目に見える表現型を示さない.我々は,AtVAM3とAtPEP12の機能分化を明らかにすべく解析を行い,以下のことを明らかにした.(1)AtVAM3とAtPEP12の二重変異体は胚性致死となる.(2)AtVAM3プロモーターの制御下でGFP-AtPEP12をvam3変異体に発現させたところ,GFP-AtPEP12はvam3変異体の表現型を完全に抑圧した.(3)AtPEP12プロモーターの制御下でGFP-AtVam3をvam3変異体に発現させたところ,GFP-AtVAM3はvam3変異体の表現型を抑圧できなかった.以上の結果から,AtVAM3とAtPEP12は機能が重複し,一定の条件下で互いの機能を代替できることが示された.本大会では,AtVAM3とAtPEP12の詳細な細胞内局在についても報告したい.
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江波 和彦, 井田 貴之, 西谷 亜依子, 藤川 諭吉, 加藤 直洋, 佐藤 雅彦
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0813
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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シロイヌナズナ地下部においてはPMQa-SNAREは高度な組織特異的発現性を示す。我々は、これまでの研究で、このうちSYP132が恒常的に全細胞で発現する一方、SYP123は根毛細胞に特異的に発現しており、かつ根毛を形成する細胞膜領域に集中的に局在することを明らかにした。今回、小胞輸送阻害剤を用いて行ったライブイメージングの結果、この2つのQa-SNAREは根毛細胞においてそれぞれ異なる細胞内局在性制御を受けていることが示唆された。また、これらのQa-SNAREがそれぞれ異なる複数の小胞輸送経路に関与しているかについて解明するため、Qa-SNAREと複合体を形成するR-SNAREの同定を試みた。この結果、
in vitroにおけるSNARE複合体の形成に関する解析およびSplit Luciferase complementation解析により、相互作用を示唆させるQa-およびR-SNAREの候補が絞り込まれた。これらのR-SNAREの蛍光タンパク質融合体もまた発現組織特異性とともに細胞内で特有の局在を示すことから、先端成長が顕著な根毛細胞における、エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシスの高度な制御からなる複雑な小胞輸送メカニズムが存在することが明らかとなった。
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西村 浩二, Faulkner Christine, 中川 強, 日野 武, Oparka Karl
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0814
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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植物のクラスリン小胞輸送は、トランスゴルジ網 (TGN) から細胞膜 (PM) や細胞外にタンパク質を輸送させる経路、TGNから各種細胞内オルガネラへタンパク質を輸送させる経路、さらにPMからエンドソーム (ENDO) へタンパク質を輸送するエンドサイトーシス経路の三つの経路を有し、植物の生長、分化や環境応答と密接に関わっている。これまで、高等動物におけるクラスリン被覆小胞の輸送形態との類似性により、植物におけるクラスリン小胞輸送経路について論じられて来たが、植物のクラスリン小胞輸送の動的な細胞内挙動の詳細については不明が多い。本研究では、クラスリン蛍光タンパク質を用いて、植物におけるクラスリンの細胞内挙動を解析した。その結果、クラスリンタンパク質は主として、TGNおよびPMに局在した。またFM4-64を用いて、クラスリン小胞のエンドサイトーシスを追跡した結果、クラスリンは、PMから細胞内に移動し、ENDOへ輸送されることが示唆され、クラスリンは、ENDOマーカーであるAra7と共局在した。アクチン緑色蛍光タンパク質を発現するシロイヌナズナに、クラスリン赤色蛍光タンパク質を一過的に発現させた結果、クラスリン小胞はアクチン繊維に沿って移動することが示された。以上から、植物のクラスリン小胞は、TGM、PMやENDOに局在し、その輸送はアクチン繊維に沿ってなされる事が示された。
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岩崎 良輔, 森安 裕二
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発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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生物は外部から栄養を取り込めず飢餓状態になると、自身の構成成分を分解して再利用したり、さらに分解してエネルギーに変えようとする。この自己分解を担う現象の一つにオートファジーがある。オートファジーとは細胞質の一部が生体膜で包み込まれた後、リソソームや液胞に運ばれ分解される経路であるが、オートファジーがある細胞構成成分の分解をどの程度担っていて、その分解が選択的かどうかに関してはまだ充分に理解されていない。タバコ培養細胞をショ糖飢餓条件下におくとタンパク質と膜リン脂質が分解される。そのうち、タンパク質分解にはオートファジーが寄与するが、膜リン脂質分解にはオートファジーはほとんど寄与しないことが明らかになっている。本研究では、リボソームが飢餓時の栄養源として用いられる可能性を考え、ショ糖飢餓条件下でのrRNA量の変動を調べた。ショ糖飢餓処理に伴いrRNAは正味の分解を受け、この分解はオートファジー阻害剤3-methyladenineで約50%阻害された。一方で、形態学的観察は3-methyladenineが同条件下で起こるオートファジーをほぼ完全に阻害することを示した。これらの結果は、オートファジーがrRNA分解に寄与していることを示すとともに、オートファジー以外のrRNA分解経路の存在を示唆していると考えられる。本発表ではデータの詳細を報告し、rRNA分解の経路を考察する。
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Lombardo Fabien, Miwa Hiroki, Sato Shusei, Tabata Satoshi, Chen Zheng, ...
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0816
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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Molybdenum (Mo) is a transient element found in the cofactor of several prokaryotic and eukaryotic enzymes. During nodulation, the symbiotic interaction between legumes and soil-living bacteria, atmospheric nitrogen is reduced into ammonia by the nitrogenase, a Mo-containing bacterial enzyme. To investigate the requirements of Mo during nodulation, we set out to identify Mo transporters in L. japonicus. We searched L. japonicus database for homologous sequences of the A. thaliana Mo transporter MOT1 and identified four putative AtMOT1 orthologs (LjMOT1-4). An EMS mutant of L. japonicus, line 4-22, showing a dramatic reduction in its Mo content had previously been isolated. A mutation resulting in a early stop codon in the sequence of LjMOT1 was found in 4-22. Macroscopic nodulation phenotype as well as nitrogenase activity were investigated in this mutant and no significant differences were observed with wild-type plants, suggesting that low amounts of Mo are sufficient to sustain nodulation.
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樋口 みなみ, 三輪 京子, 奈良 篤樹, 藤原 徹
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発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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小胞膜を介した細胞膜タンパク質の細胞内輸送は、動物や酵母で多くの解析が進められているが、植物で報告されている例は驚くほど少ない。我々は、植物における細胞膜タンパク質輸送経路を解明することを目指し、シロイヌナズナBOR1タンパク質を用いた解析を進めている。
シロイヌナズナホウ素トランスポーターBOR1は、ホウ素栄養欠乏条件下で細胞膜に蓄積する排出型のトランスポーターであり、ホウ素栄養十分条件下ではエンドサイトーシスによって液胞へ運ばれ分解を受ける。BOR1は、エンドサイトーシスによって分解されることが明らかにされた初めての細胞膜トランスポータータンパク質であり、細胞膜タンパク質分解系における理想的なモデル分子である。
CaMV35S-BOR1-GFP形質転換体シロイヌナズナを用いて、ホウ素十分条件においても高いGFP蛍光を示すことを指標に、BOR1タンパク質のホウ素濃度依存的な蓄積に異常をもつ変異株の単離を行った。57,150株スクリーニングし、マップベースクローニング法によりいくつかの変異原因遺伝子の同定に成功した。このなかにはAT2G34780(EMB1611/MEE22)が含まれていた。これら変異株の解析を進めることによって、植物におけるエンドサイトーシス経路ならびにホウ素応答制御機構について新たな知見を得ることが期待できる。
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浦口 晋平, 花岡 秀樹, 相澤 加代子, 加藤 諭一, 中川 裕子, 藤原 徹
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0818
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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ホウ素(B)は必須元素であり、その欠乏症は,作物の収量・品質を低下させる。イネBOR1は,Bの排出型輸送体で,B欠乏時に根部から地上部への効率的なB輸送を担う分子である(Nakagawa et al., 2007)。本研究は,イネBOR1を過剰発現させ,B欠乏条件下でのイネの生育・収量の改善を試みた。
カリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター下流にイネBOR1cDNA-GFP連結しイネに導入した。得られた3つの独立なホモ系統の形質転換イネ(T2あるいはT3世代)を実験に用いた。このうち,2系統において導入遺伝子が高発現していた。B欠乏条件(0.18μM)で水耕栽培すると,導管液の B濃度は,BOR1-GFPを高発現している形質転換体では,非形質転換体および導入遺伝子の発現が弱い形質転換体に比べて 1.8-1.9倍高かった。B欠乏条件での収量は,BOR1-GFPを高発現している形質転換体において,非形質転換体および導入遺伝子の発現が低い形質転換体の1.7-1.9倍高かった。B十分条件(18μM)下では形質転換体は非形質転換体と同様の収量であった。これらの結果から,イネの内在性B輸送体BOR1の過剰発現によって,地上部へのBの輸送が向上し,B欠乏条件でのイネの収量が改善されることが示された。
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及川 胤昭, 渡辺 弘恵, 菅野 晶子
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発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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素焼きの極性を有するセラミックボール(特願2002-382862)を利用し、切り花に対するその影響を観察した。このセラミックボール(以下CB)は、水中でプロチウム化によって出来たH
-を放出することが明らかになっており、仙台市水道水に入れると、ORPが-250mV前後、pHが10前後になり、その後90時間以上は還元水状態を維持するものである。(H
2⇔H
++H
-)(日本薬学会東北支部大会発表2008,10,26)このCBが水中で放出したH
-が、切り花にどのような影響を与えるのかを観察した。
実験には、青色の着色剤を吸い上げさせた市販のカーネーションの切り花を使用した。
CB(H
-)の量の違いによる水の変化は、
1)水のみ200mlの場合はうっすら色がつく。(付着していた色素が溶けだしたと考えられる)
2) CB0.65g/200mlの水に入れた場合は水が透明のままである。
3) CB0.80g/200mlの水に入れた場合は水が濃い青色になった。この事実は水が植物体内を循環したと考えられる。
以上の結果から、投入したCBの量、即ちプロチウム化によりできたH
-量が、切り花の水の循環に関係していることを示唆する。この現象は、まさに水素イオンチャンネルがコントロールされたかのような現象を示すものであると推測される。現在そのメカニズムについて解析中である。
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岩崎 郁子, 伊藤 耕太, 松本 直, 北川 良親
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発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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アクアポリンは動植物、微生物を含め生体膜に存在する主要なタンパク質のひとつであり、水の透過孔(水チャネル)を形成し、生物体内の水の流れ、細胞の浸透圧調節などに重要な役割を果たしていることが分かってきた。
植物のアクアポリンは、PIP(原形質膜型、plasma membrane intrinsic protein), TIP(液胞膜型、tonoplast intrinsic protein), NIP(NOD26-like intrinsic protein, マメ科植物の窒素固定菌のアクアグリセロポリンと類似), SIP(small basic intrinsic protein, 他のアクアポリンに比べN端側が短い)の4つのグループに分類され、シロイネナズナでは35種、トウモロコシでは31種、イネでは33種(最近37種まで判明)の分子種が存在し、大きなタンパク質ファミリーを形成している。
私たちは、イネの花の葯におけるアクアポリン遺伝子の発現について調査した。葯では花粉母細胞は減数分裂を開始して4分子期をむかえ、さらに小胞子期(前期と後期)を経て成熟花粉となる。やがて葯は裂開して花粉は飛散し、柱頭への受粉にいたる。本研究では、花粉細胞の発達過程の時間軸にそって、どのようなアクアポリン遺伝子が発現しているのか、冷温により変化するのか、得られた知見について報告する。
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松本 直, Lian Hong-Li, Su Wei-Ai, 田中 大介, Liu Cheng wei, 岩崎 郁子, 北川 良親
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0821
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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低温とアクアポリンとの関係はこれまでいくつか報告されているが、アクアポリンが低温に対してどのように機能するか未だ明らかになっていない。我々はリアルタイムPCRを用い、イネの耐冷性品種と低温感受性品種のアクアポリンの発現を比較したプロファイルから、イネの耐冷性に関係が深い遺伝子を7種類特定した。さらに、耐冷性イネを薬剤処理によって耐冷性を失わせる実験から、PIP1群の遺伝子が特に耐冷性と関係が深いと推測した。中でも、OsPIP1;3の発現変化が耐冷性と最も関係が深い。我々が推測した通り、OsPIP1;3遺伝子を過剰発現したイネOE1は耐冷性形質を示した。OE1では、低温においてもOsPIP1;3の遺伝子発現量が減少しない。この性質は耐冷性品種が持つ性質と同じである。一方、OsPIP1;3の水透過性を計測したところ、OsPIP2群遺伝子の水透過性に比べて、はるかに低い値を示した。しかし、OsPIP1;3はOsPIP2;2やOsPIP2;4と共発現させると、OsPIP2;2やOsPIP2;4の水透過性を向上させることが解った。OE1のイネでは、OsPIP1;3の過剰発現で増加したタンパク質がOsPIP2群のタンパク質と相互作用し、水透過性を向上させることによって、低温下での水分バランスを改善し、イネを耐冷性にすると推測される。
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金子 智之, 堀江 智明, 且原 真木
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0822
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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塩ストレスは作物の成長・収量を減少させる代表的な非生物的ストレスの一種である。塩ストレスにさらされたオオムギの根の水輸送特性及び制御機構を解明するため、プレッシャーチャンバー法を用いて、塩耐性の異なるオオムギ3品種の根の水透過性測定を行った。発芽後4日齢のオオムギの根に100 mM、200 mM のNaClを4時間処理した結果、塩耐性の強い品種ほど水輸送活性が強く抑制された。100 mM NaCl処理条件で経時変化を測定した結果、興味深い事に、耐塩性品種では処理後1時間で水輸送活性は急激に低下するが、4時間で一過的な回復を示し、その後減少する傾向がみられた。一方、塩感受性品種では一貫して水輸送活性の低下は起こらなかった。我々は耐塩性品種のみに起こる4時間での一時回復機構に着目し、各種生物活性阻害剤を用いて実験を進めたところ、この制御機構には少なくともタンパク質のリン酸化が関与している事が判明した。現在、アクアポリンのリン酸化の分子機構についても解析を進めている。
我々の研究室において、現在までに10種の原形質膜型アクアポリンのcDNAが単離されている。予想されるリン酸化部位に点変異を加えたものをアフリカツメガエルの卵母細胞で発現させ、水輸送活性の変化を解析する作業を行っている。
また、この研究は生研センター基礎研究推進事業の支援を受けて行った。
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土平 絢子, 半場 祐子, 加藤 直樹, 土居 智仁, 河津 哲, 前島 正義
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0823
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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アクアポリンは生体膜において水および多様な小分子を輸送することで植物の生育を支えている。本研究では樹木におけるアクアポリンの機能解明のために、形質転換法の確立しているユーカリを対象として、細胞膜アクアポリン
PIP1と
PIP2を導入し、形質転換株における生育特性を解析した。なお導入したダイコンのPIP2は水チャネル活性が高く、PIP1では活性が検出できない。
ユーカリに、35Sプロモータに連結した
PIP1あるいは
PIP2のDNAを、アグロバクテリウム感染法により導入した。形質転換カルスを植物体へと誘導し、その挿し木により個別植物体へと生育させた。同じ生育段階にある葉を試料として、光合成量、蒸散量、そしてPIPのmRNAとタンパク質量を測定し、枝の生育を測定した。
PIP2導入株では、導入
PIP2のmRNAが確認でき、PIP2タンパク質が明確な量として確認できた。野生株に比べ、
PIP2導入株では光合成速度、蒸散量当たりの光合成速度、枝の成長量において顕著な増大が見られた。一方、
PIP1導入株ではPIP2タンパク質量に変化はないが、内在性PIP1も含めたタンパク質量が著しく減少し、一部の株は枯死し、他の株では上記の指標において顕著な低下が見られた。いずれもアクアポリンの重要性を示していると判断される。自然林のユーカリ樹種におけるアクアポリン量の生育特性との関連も合わせて考察する。
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斉藤 貴之, 秋山 有紀, 田野井 慶太朗, 中西 友子
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0824
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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マグネシウム(Mg)欠乏症はウリ科植物等で最もよく見受けられる障害の一つであり、果実期に下位葉から急速な黄化症状を呈し、深刻な影響を与える。Mg欠乏症を理解するためには、Mg輸送に関する知見が求められる。そこで我々は、モデル作物であるイネを用い、Mgの分布および吸収様式を調べ、Mg輸送体遺伝子の単離を試みた。まず、Mg欠乏処理を施したイネ中のMg含量の変化を調べた結果、-Mg処理をしたイネ幼植物中のMg含有量は、根および各葉で直ちに減少し、およそ1週間で下位の成熟葉にネクロシスが現れた。次に、導管液中Mg濃度を測定したところ、水耕液中Mg濃度が低いほど導管液中Mgの濃縮率が高かったことから、根においてMgを積極的に吸収していること、すなわち能動輸送であることが示された(
Km値は約50 μM)。これらの結果から、Mgの吸収及び移行には輸送体の役割が重要であることが示唆された。そこで、イネゲノムからシロイヌナズナMg輸送体(AtMGT10)のホモログである6つの候補(OsMGT1-6)を挙げて解析を行っている。Mg輸送能欠損酵母を用いた機能相補実験により、OsMGT1など複数がMg輸送能を有することを確認した。現在、発現組織および細胞内局在について、リアルタイムPCRを用いたmRNA蓄積量の解析及び、細胞内発現部位の解析を行っている。
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石丸 泰寛, 増田 寛志, 青木 直大, 大杉 立, 井上 晴彦, 高橋 美智子, 中西 啓仁, 森 敏, 西澤 直子
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0825
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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鉄欠乏症の人は,世界中に20億人を越えるといわれ,ヒトの微量栄養素欠乏症の中で特に深刻である。遺伝子組換えの手法によって,種子,特に可食部である胚乳の鉄含有量を高めたイネを創製することができれば,鉄欠乏症の改善に大きく貢献できる。胚乳の鉄含量を高めるためには,適切な鉄トランスポーターを選択し,それを厳密に制御することが必要となる。
植物体内の鉄移行には,鉄のキレーターであるニコチアナミン(NA)が必須であることを明らかにしている。そこで,我々は鉄-NA,マンガン-NAを輸送するトランスポーター,OsYSL2の解析を行った。OsYSL2のRNAiイネを解析したところ,種子中の鉄含有量,特に胚乳部分の鉄含有量が減少し,OsYSL2は,胚乳への鉄の移行に重要な役割を持つことを明らかにした。そこで,種子中の鉄含有量を増加させようと,OsYSL2の過剰発現イネを作製したが,鉄含有量は逆に減少していた。適切なプロモーターによってOsYSL2を制御しなければ,種子中の鉄含有量は増加させることができないことが明らかとなった。そこで,登熟期にアニューロン層に強く発現するスクローストランスポーターのプロモーターの下流に
OsYSL2をつないだコンストラクトをイネに導入した。その結果,胚乳部分に2~4.4倍もの鉄を蓄積させることに成功した。
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戸松 創, 吉本 尚子, 高橋 秀樹, 藤原 徹
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0826
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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モリブデン(Mo)は生物の必須元素であり、補酵素の構成成分として硫黄代謝や窒素利用、植物ホルモン生合成に必須である。シロイヌナズナモリブデン酸イオン輸送体MOT1は硫酸イオン輸送体と相同性がある。本研究では硫酸イオン輸送体のMo輸送への関与を調べた。
硫酸イオン輸送体ファミリーに分類される12個の遺伝子のすべてについてT-DNA挿入変異株をそれぞれ1系統以上取得し、それらを通常培地(170 nM Moを含む)で栽培し、地上部と根についてMo含量と生育量を調べた。地上部についても根についてもMo濃度に有意な差がみられたのは高親和型硫酸イオン輸送体SULTR1;2の破壊変異株のみであった。この変異株のMo濃度は地上部では野生型株の78%に低下し、根では37%に低下していた。この現象が
sultr1;2の変異によるものであることを確認するために、3つのアリル(
sel1-8,
sel1-9,
sel1-10、
sel1は
SULTR1;2の変異株である)についてMo濃度を測定したところ、地上部ではそれぞれ野生型株の56%, 55%, 68%に低下しており、根では22%, 37%, 32%に低下していた。これらの結果はSULTR1;2がMoの輸送に関与していることを示している。一方、生育については、特定の変異株で抑制がみられたものの、これらの変異株で共通に見られる違いはなかった。
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瀬上 紹嗣, 河内 美樹, 小八重 善裕, 岩野 恵, 前島 正義
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0827
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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亜鉛は多くの酵素の活性中心などに存在し、あらゆる生物にとって必須微量元素である。一方、過剰量では障害をもたらす元素でもあり、例えば植物ではクロロシスを誘導する。亜鉛ホメオスタシスは多数の因子で維持されているが、とくに亜鉛の膜輸送に注目している。シロイヌナズナでは12種類存在するMTP(metal tolerance protein)ファミリーのうち、MTP1及びMTP3が液胞膜に存在し、過剰亜鉛の液胞への隔離機能を担っていることが知られている。本研究では、これらと約46%の配列同一性をもつMTP4に注目し、GFPタグ法と細胞分画法によって、この分子が細胞膜に存在することを明らかにした。酵母の機能相補実験では、亜鉛感受性酵母
zrc1cot1に対してMTP4導入株は亜鉛耐性を示した。MTP4プロモーター-GUS株では、成熟した花粉に多く発現していたほか、葉、茎、根の維管束組織にも発現していた。pMTP4::MTP4-GFP株の解析では花粉管にもMTP4は存在していたが、T-DNA挿入破壊株は稔性を示し花粉管伸長も正常であった。MTP1との構造類似性も考慮すると、MTP4は細胞膜上で、H
+勾配を利用して亜鉛を細胞外へ排出する輸送を分担していると予想される。他の亜鉛輸送体との関連も含めて、生理機能を議論したい。
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西田 翔, 水野 隆文
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0828
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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植物において、ZIP(Zrt-/ Irt-like proteins)トランスポーターは亜鉛、鉄、マンガン、銅などの必須重金属元素の取り込みに極めて重要である一方、有害重金属を誤って輸送しうるために植物の有害重金属の蓄積の原因ともなる。しかし、この問題に起因するZIPファミリーの基質特異性に関する構造学的な知見は、いまだ乏しい。昨年度の本学会年会において発表者は
Thlaspi japonicum(
Brassicaceae)から単離されたZIPトランスポーターTjZNT2のN末端領域(36 a.a.)を欠損させると亜鉛輸送能が付与されることを発見し、ZIPトランスポーターのN末端領域の基質特異性への関与が示唆されたことを報告した。本発表では、このN末端領域の機能の検討を行なったので報告する。N末端長の異なる3種類の変異
TjZnt2を構築し、Zn
65の輸送活性を調べたところ、亜鉛輸送能の阻害率はN末端長にほぼ比例した。また、出芽酵母の各種遺伝子欠損株をもちいてマンガン、銅、鉄の輸送能を検討したところ、N末端の欠損によりマンガン輸送能が消失し、他金属種への特異性にも影響していることが明らかとなった。現在、植物体におけるTjZNT2の機能の解析を行っている。
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上野 大勢, 山地 直樹, 馬 建鋒
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0829
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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我々はカドミウム(Cd)超集積植物
Thlaspi caerulescens (ecotype, Ganges)が高濃度のCdを液胞に局在させ、無毒化することを明らかにしているが、それを担う輸送体は未だ明らかにされていない。本研究ではまず、Cdを液胞へ輸送する膜タンパク質をコードする遺伝子を探索するため、ArabidopsisのGenechipを用いて、Cd非集積性のエコタイプPrayonに対してGangesで高発現している遺伝子を網羅的に解析した。そのうち、Gangesで高発現し、P-type ATPaseに属するHMA3に着目してその機能解析を行った。GangesとPrayonからそれぞれ
TcHMA3の全長を得、配列を比較したところ、アミノ酸レベルで99%の高い相同性が認められた。酵母発現系において、両エコタイプ由来のHMA3は共にCdを輸送する活性が見られたが、亜鉛(Zn)に対する活性は見られなかった。また
TcHMA3の発現は根と地上部の両方で見られ、高濃度Zn及びCd処理による影響を受けなかったが、Gangesの方がPrayonより常に約4倍高く発現していた。TcHMA3:GFP融合タンパクの発現及びウェスタン解析の結果、HMA3が液胞膜に局在していることが観察された。これらの結果は、GangesにおいてTcHMA3がCdの液胞への輸送に関与していることを示唆している。
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佐々木 孝行, 古市 卓也, 源治 尚久, 戸澤 譲, 山本 洋子
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0830
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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コムギのアルミニウム(Al)耐性は、主に細胞膜に局在するAl活性化型リンゴトランスポーターALMT1により制御されている。コムギ以外の植物にもALMT相同タンパク質があり、Alにより活性化されるものと、されない相同タンパク質の存在も明らかとなってきた。これら輸送活性の性質はタンパク質の立体構造に依存すると考えられるが、
ALMTタイプの遺伝子ファミリーは植物にのみ存在し、また知られているどのタイプのイオン輸送体とも相同性を示さないため、構造については不明な点が多い。本研究では、ALMT輸送体の機能および構造の解明を目的に、タンパク質の精製を行っている。
これまでの解析から、大腸菌と酵母(
Saccharomyces cerevisiae)でのタンパク質発現は見られなかった。そこで、タバコ培養細胞(BY-2)にC末端Hisタグ融合ALMT1を発現させた。この形質転換タバコ細胞は、Alで活性化されるリンゴ酸輸送を示したことから、His融合タンパク質は機能を持つ構造を保っていると考えられた。現在、アフィニティカラムを用いてタンパク質の精製を行っている。また、酵母
Pichia pastorisを用いたタンパク質発現系、ならびに、コムギの無細胞タンパク質合成系を用いてALMT1タンパク質合成を試みており、合わせて報告する。
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河野 治, 山本 祥平, 門脇 正徳, Uddin Md.Imtiaz, 上中 弘典, 田中 浄
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0831
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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液胞膜のアンチポーターは細胞質と液胞間のイオンバランスを取ることにより塩や浸透圧ストレスから植物を守っている。我々は、冠水耐性イネ品種FR13Aを冠水ストレス処理することで誘導される数種の遺伝子の一つとして大腸菌のアンチポーター(ChaA)を調節するChaC遺伝子と相同性を持つOsChaC遺伝子を単離した。OsChaC遺伝子を過剰発現したタバコにおいて、塩ストレス下で野生型に比べ、成長阻害が軽減し、高い光合成活性と水分保持量を示した(Uddin, Tanaka et al.: PCP 2008)。本タンパク質はイネの液胞膜表面に局在していることから、液胞膜にあるアンチポーターを調節していると考えた。今回は、シロイヌナズナにOsChaCと相同性の高い3種の遺伝子の存在が確認されたので、それぞれのChaC(AtChaC1, AtChaC2, AtChaC3)をクローニングし、それぞれのChaCのストレス誘導性について検討した。過剰発現、機能抑制シロイヌナズナを作出し、機能解析、ストレス耐性評価を試みた。ChaCを大腸菌で大量発現、単離し、ChaCアフィ二ティークロマトグラフィーにより、ChaCと相互作用するアンチポーターの単離も試みた。また、食糧作物であるジャガイモ(Solanum tuberosum L. cv. Atlantic)に導入し環境ストレス耐性評価を行った。
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山口 利男, 堤 文範, 高村 アキ, 宝輪 紀之, 廣井 真, 福原 正博, 中村 辰之介
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0832
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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pha1遺伝子群(
pha1AB-G)は、根瘤菌
Sinorhizobium melilotiが細胞内に寄生する際に必須の遺伝子群として同定された。変異体の表現型解析から
pha1遺伝子群はK
+/H
+ antiporterをコードすると考えられているが、輸送活性の詳細はほとんど不明である。Pha1システム類似の複合体型cation/H
+ antiporter(CPA-3 family)は、枯草菌を始め数種の細菌からも同定されているが、興味深い事に輸送活性が確認されているCPA-3 family輸送体の殆どは、Pha1システムと異なりNa
+選択性が極めて高く、K
+の輸送能は無いという報告がある。そこで我々は、異種発現によりPhaシステムのイオン輸送活性の詳細な解析を試みた。アルカリ及びNa
+感受性の大腸菌株(TO114株、
nhaA-, nhaB-, chaA-)に
pha遺伝子群を導入した生育実験の結果、PhaシステムがTO114株のアルカリ及びNa
+感受性を相補することを確認した。さらに、輸送活性の解析から、Pha システムがK
+/H
+ antiport活性を持ち、かつNa
+/H
+ antiport活性を持つという新規の知見を得た。またPha システムがアルカリ側に至適pHを持つこと、及びK
+もしくはNa
+に対するK
m、V
maxがpH依存的に変化することを明らかとした。
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中野 正貴, 飯田 和子, 丹生谷 博, 飯田 秀利
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0833
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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我々は、植物の機械刺激受容の分子機構を明らかにする目的で、シロイヌナズナのCa
2+透過性機械受容チャネル候補の遺伝子
MCA1と
MCA2を単離した(Nakagawa
et al.,
PNAS 104:3639-3644, 2007)。MCA1とMCA2は、互いにアミノ酸配列上73%の同一性をもち、出芽酵母のCa
2+透過性機械受容チャネル候補の欠損株(
mid1)の低Ca
2+取込み能を完全に相補する。しかし、MCA1とMCA2はMid1や既知のイオンチャネルとの間にアミノ酸配列上の相同性がない。MCA1とMCA2の構造上の共通した特徴は5つあるが、そのうちの1つがCa
2+結合領域と予想されるEF-ハンド様モチーフである。Ca
2+の結合はこの分子の機能制御に重要と予想されるので、
45Ca
2+オーバーレイ実験により両タンパク質のCa
2+結合能を調べた。その結果、両タンパク質ともこのモチーフを含む領域が、確かに
45Ca
2+を結合した。さらに、出芽酵母高発現系で発現させたMCA2のショ糖密度勾配遠心法による解析から、MCA2は細胞膜と小胞体膜とは異なるオルガネラ膜に多く存在するが、一部は確かに細胞膜に局在することも明らかにした。これまで及び今回の結果は、MCA1およびMCA2は細胞膜でそれぞれ四量体を形成し得るCa
2+透過チャネルであり、Ca
2+によって活性制御を受けることを示唆する。
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森 研堂, 中川 祐子, 山中 拓哉, 岩元 明敏, 飯田 秀利
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0834
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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根は伸長するとき、根端で土に接触しその強度を感受しつつ伸長方向を決定する。その接触のセンサーの一つとしてCa
2+透過性機械受容チャネルが考えられている。最近我々はその有力候補としてMCA1およびこれとアミノ酸配列上73%同一なMCA2を報告した(Nakagawa
et al.,
PNAS 104:3639-3644, 2007)。この報告で、1.6%寒天培地を下層、0.8%寒天培地を上層にした二層寒天培地において
mca1欠損株の根は野生株の根に比べ、下層寒天培地に入る割合が低いことを示した。しかし、今回
mca2欠損株の根は野生株の根と同程度の割合を示すことを見出した。一方、この結果に関連して、
MCA1p::
GUSと
MCA2p::
GUSを用いた組織化学的解析から興味深い知見を得た。すなわち、播種後10日目の植物体において、
MCA1p::
GUSは葉脈と根の維管束に加えて根端分裂組織で発現していた。それに対して、
MCA2p::
GUSは葉肉、葉脈および根の維管束に発現していたが、根端分裂組織には発現していなかった。根端分裂組織における両遺伝子の発現の有無は、
mca1欠損株の根は寒天の硬さを感受できず下層寒天培地に侵入できないが、
mca2欠損株の根はできるという結果をうまく説明できる。現在、より詳細な組織化学的解析を進めている。
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中村 英, 木下 俊則, 島崎 研一郎
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0835
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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気孔は青色光に応答して開口するが、この時、青色光は孔辺細胞の青色光受容体フォトトロピンに受容され、細胞膜H
+-ATPaseを活性化し気孔開口の駆動力を形成する。これまでの研究により、孔辺細胞の細胞膜H
+-ATPaseは、C末端スレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合により活性化されることが明らかとなっているが、この反応を触媒するプロテイン・キナーゼやホスファターゼは不明である。本研究では、細胞膜H
+-ATPaseのリン酸化反応について解析を行った。
ソラマメ孔辺細胞より単離したミクロゾーム画分を用いて
in vitroでの H
+-ATPaseのリン酸化反応を調べた結果、ATPに依存したH
+-ATPaseC末端スレオニン残基のリン酸化が検出された。そこで、シロイヌナズナの黄化芽生えより単離した細胞膜画分を用いて解析を行った結果、孔辺細胞と同様にリン酸化反応が検出された。これらの結果は、H
+-ATPaseのリン酸化に関わるプロテイン・キナーゼは、細胞膜に存在しており、孔辺細胞のみならず、他の細胞種にも共通して存在することを示している。現在、シロイヌナズナ細胞膜より精製したH
+-ATPase複合体におけるリン酸化反応について解析を行っており、これらの結果についても報告する予定である。
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林 優紀, 島崎 研一郎, 木下 俊則
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0836
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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細胞膜H
+-ATPaseは、ATP加水分解のエネルギーを利用して、水素イオンの能動輸送を行い、細胞膜を介した水素イオンの電気化学的勾配を形成する一次輸送体である。これまでの研究により、H
+-ATPaseはC末端スレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合により活性化されることが明らかとなっているが、H
+-ATPaseのリン酸化反応を触媒するプロテイン・キナーゼやホスファターゼは不明である。本研究では、H
+-ATPaseの脱リン酸化反応に関わるホスファターゼについて生化学的な解析を行った。
まず、細胞膜H
+-ATPaseの脱リン酸化反応について、ソラマメ孔辺細胞を用いて解析を行った結果、孔辺細胞より単離したミクロゾーム膜画分にH
+-ATPaseを脱リン酸化するホスファターゼ活性が存在することが明らかとなった。そこで、各種阻害剤による効果を調べた結果、EDTAによりこの脱リン酸化活性は阻害され、2価カチオン要求性のホスファターゼが関与していることが示唆された。次に、シロイヌナズナ黄化芽生えより単離した細胞膜を用いて脱リン酸化反応を調べた結果、孔辺細胞と同じ性質をもつホスファターゼが関与していることが明らかとなった。現在、シロイヌナズナ細胞膜H
+-ATPase複合体を用いた脱リン酸化反応を調べており、これらの結果についても報告する予定である。
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豊岡 公徳, 後藤 友美, 佐藤 繭子, 黒森 崇, 吉本 光希, 前島 正義, 松岡 健
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0837
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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液胞は、植物細胞の体積の90%を占め、タンパク質の貯蔵や分解、二次代謝物の蓄積だけでなく、細胞伸長や発生など多種多様に関与するオルガネラである。根端分裂組織の形態学的解析により、液胞はトランスゴルジネットワーク(TGN)からProvacuoleと呼ばれる構造体が形成され、それらが融合して大きな液胞が形成されると言われている。
我々は、生きた状態に限りなく近い状態で電子顕微鏡観察を行うために、高圧(加圧)凍結技法により、植物培養細胞および植物組織に最適な固定法や包埋法など検討してきた。また、様々な抗体を用いて高感度で検出可能な免疫電顕法の検討を行ってきた。その中で、シロイヌナズナおよびタバコ根端分裂組織において、液胞型H
+ピロフォスファターゼ(V-PPase)が、TGNや液胞膜の他にリング状構造体に高度に局在することを見出した。このリング状構造体は、直径0.3~2μmで扁平膜構造と二重膜構造が存在し、一部の構造体では、分解途中の細胞内物質を含んでいた。また、この構造体はV-PPaseが存在しない小さい液胞や中央液胞と融合している像も観察された。このことから、V-PPaseは液胞形成や細胞内物質分解に重要な働きがあることが示唆された。現在、様々な抗体を用いた免疫電顕観察を進めるとともに、V-PPaseやオートファジー関連遺伝子欠損株等の微細構造解析を進めている。
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加藤 友彦, 佐藤 修正, 金子 貴一, 中村 保一, 田畑 哲之, 日尾野 隆
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0838
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
会議録・要旨集
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microRNA(miRNA)は20-24塩基からなるnon-coding RNAで、真核生物において遺伝子発現を調節する分子として知られている。植物においてもmiRNAは形態形成や花成などさまざまな現象に関与していることが多数報告されてきた。私たちは樹木におけるmiRNAの機能を調べるため、これまでにユーカリmiRNAの探索を行なってきた。今回ユーカリから単離した低分子RNAの配列をもとにゲノムデータを調べたところ、ユーカリゲノムには236種からなる370のmiRNA候補の存在が確認された。これらの中にはシロイヌナズナやイネには存在しない多数の新規なmiRNAが見出された。次にこれらのターゲットとなる遺伝子をゲノムデータより調べたところ、65種のmiRNAに対して404のターゲット遺伝子候補または遺伝子断片が同定された。これらのターゲット遺伝子候補には、転写因子のほか耐病性遺伝子、ホルモン合成遺伝子、ペルオキシダーゼ遺伝子、オリゴペプチドトランスポーター遺伝子などが含まれていた。さらに4つのターゲット遺伝子候補についてRACE実験を行なったところ、4遺伝子ともmiRNA結合部位の中央付近で切断されることを確認した。以上のことより、ユーカリにおいてもmiRNAは遺伝子発現を調節する重要な分子としてさまざまな現象を制御している可能性が示された。
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加藤 真理子, 長崎 菜穂子, 井出 悠葵, 前島 正義
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0839
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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AtPCaP2(
plasma-membrane associated
cation binding
protein-
2)はアミノ酸168個で構成される親水性のタンパク質であり、Caとホスファチジルイノシトールリン酸(PIPs)を結合する。本研究では、AtPCaP2の細胞内局在と遺伝子発現の細胞特異性について解析した。PCaP2::GFPをシロイヌナズナ培養細胞に発現させて蛍光を観察したところ細胞膜に緑色蛍光が観察された。PCaP2のN端にはミリストイル化シグナルが存在し、その結合残基となる2番目のGlyをAlaに置換したPCaP2
G2A::GFPを発現させたところ、局在が細胞質に変化した。このことはこのGlyを介して
Nミリストイル化され細胞膜に局在することを意味している。またPCaP2プロモータ::PCaP2:GFPを発現させた形質転換体を観察したところ、根の成熟領域の細胞膜に緑色蛍光が観察された。さらにPCaP2プロモータ::GUSの解析によって、PCaP2は根の表皮細胞と根毛、花粉管で強く発現することが明らかとなった。PCaP2は環境要因の影響を受けやすい表層細胞に発現し、細胞膜上でCaやPIPsを介して生理機能を発揮しているものと推定される。なお、AtPCaP2は表層微小管に結合するMAP18として報告されており(Wang
et al. 2007)、この点も考慮して考察する。
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市村 和也, 溝口 剛, Alex Graf, 篠崎 一雄, 白須 賢
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0840
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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病害抵抗性における防御反応では、MAPキナーゼカスケードが重要な役割を果たしていると考えられている。シロイヌナズナMEKK1 (MAPKKK)は、MKK1およびMKK2 (MAPKKs)、MPK4 (MAPK) と相互作用し、一連の経路MEKK1-MKK1/MKK2-MPK4を構成する。この経路は通常は防御反応を抑制する一方、感染時はシロイヌナズナの主要なファイトアレキシンであるcamalexin生合成系遺伝子の転写を促進させる。MEKK1はPAMPやH
2O
2によるMPK4の活性化に必須であるが、MEKK1の活性やタンパク質レベルがこの時どのような制御を受けているか明らかにされていない。
本研究ではMEKK1の制御因子を同定する目的で、MEKK1に結合するタンパク質をツーハイブリット法によりスクリーニングを行い、U-box型ユビキチンリガーゼであるPUB26を同定した。PUB26はユビキチンリガーゼ活性を有し、パラログであるPUB25と共に、MEKK1に特異的に結合した。また、
pub25/26二重変異体を作製し、PAMPによるMAPKの活性化を解析したところ、野生型に対して
pub25/26ではMPK4とMPK6の活性が低下していた。これらの結果から、PUB25とPUB26はMEKK1に結合し、活性を正に制御する可能性が示唆された。
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丸田 五月, 石平 智美, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 森山 裕充, 福原 敏行
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0841
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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環境応答におけるシグナル伝達にはタンパク質のリン酸化、脱リン酸化が重要な役割を担っている。シロイヌナズナにおいては、タンパク質脱リン酸化酵素タイプ2C(PP2C)であるABI1、ABI2、HAB1、AtPP2CA/AHG3がABAシグナル伝達に関与することが報告されている。我々は酵母のPP2CであるPTC、ヒトのPP2CであるPPM1Gと高い相同性を持つAPC4と名付けたシロイヌナズナのPP2Cに着目し、機能解析を行っている。PTCとPPM1Gは共にストレス応答性のシグナル伝達経路に関与することが報告されており、相同性の高いAPC4遺伝子もシグナル伝達への関与が期待される。これまでに我々はAPC4のPP2C活性を確認しており、次に生体内での機能を明らかにする目的でT-DNAタグラインよりスクリーニングを行い、異なる挿入位置を持つT-DNA挿入変異ラインを2系統単離した。前回の年会では、APC4のより内側にT-DNAが挿入した系統ではホモ個体が得られず、へテロ個体の自家受粉集団においては遺伝子型の異常な分離比を示していることを報告した。現在、APC4の過剰発現などの形質転換体を作製しており、これら変異体と野生型を様々なストレス条件下で生育させることで、表現型の差異からAPC4の機能解析を目指している。
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安喜 史織, 岡 穆宏, 青山 卓史, 柘植 知彦
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0842
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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COP9シグナロソーム(CSN)は、ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解を制御するタンパク質複合体であり、動植物の発生に不可欠である。本研究は、シロイヌナズナを用いてCSNサブユニット1(CSN1)とその結合因子との相互作用を解析することにより、CSNの生体内での新規機能を明らかにすることを目的とする。
CSN1相互作用因子の一つであるSAP130は、スプライソソームを形成するU2snRNP構成因子であり、遺伝子転写調節複合体であるSTAGAやTFTC、N-CoRでも同定されている。しかし、SAP130そのものの機能やこれらの複合体内での動態は明らかでない。シロイヌナズナSAP130は、第3染色体上の2つの遺伝子(
SAP130a, SAP130b)にコードされ、両遺伝子が植物の全器官で発現することを確認した。また共沈降法と免疫沈降法により、CSN1のアミノ末端領域とSAP130のカルボキシル末端領域が直接結合することを明らかにした。蛍光タンパク質を用いたCSN1とSAP130の細胞内局在解析より、両タンパク質は主に核に局在することが判明した。本発表では
SAP130過剰発現体、
sap130発現抑制体の解析結果について報告し、CSNとSAP130の相互作用がタンパク質分解とmRNA代謝において担う役割について議論する。
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中井 秀人, 安喜 史織, Heyl Alexander, 青山 卓史, 柘植 知彦
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0843
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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COP9シグナロソーム (CSN)は8つのサブユニットからなる複合体であり、核内で情報伝達を制御する。この制御機構を解明するためにCSN1サブユニットの機能に着目して解析をすすめている。CSN1のN末端領域 (CSN1N)は、動物で転写抑制能を示し、植物では生存に不可欠である。この分子機構を明らかにするためにCSN1Nと相互作用する因子群を、シロイヌナズナのcDNAライブラリからYeast Two-Hybrid法を用いて単離した。
その結果、結合候補因子として転写因子を新たに2つ同定し、そのひとつは3つのヘリックスが2つのループによって繋がれた、新規の構造保存領域を含んでいると予測された。この保存領域をもつ転写因子群はシロイヌナズナにおいてファミリーを形成し、さらに、イネ、ブドウ、タバコ、ヒメツリガネゴケと広く存在した。また、この転写因子は動物にはないことから、植物界全体で用いられている転写因子の一種と考えられた。そこで、シロイヌナズナより単離した、この新規の保存領域を保有する転写因子と最も保存性の高い転写因子2つについて、
in vitro でCSN1Nとpull-downを行なったところ、3つの転写因子全てがCSN1Nと特異的に結合した。今回、この3つの転写因子それぞれの機能と、これら転写因子とCSN1の相互作用が担う役割について議論する。
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刑部 祐里子, 田中 秀典, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
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0844
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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シロイヌナズナのReceptor-like Protein Kinase1, RPK1は膜局在性の受容体型キナーゼであり、我々は欠失変異体
rpk1-1,
rpk1-2が植物の水ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に対し非感受性を示すことを明らかにした。RPK1の高発現がシロイヌナズナに与える影響を解析するために、
CaMV35Sプロモーター制御下でRPK1を過剰発現する形質転換植物体を作製した。得られた植物体は、ABAによる根の伸長抑制,気孔閉鎖等に対しABA高感受性を示した。また、RPK1過剰発現植物体は乾燥ストレスに対し耐性を示すことが明らかになった。さらに、マイクロアレイ解析の結果、RPK1過剰発現体では水分ストレス応答性遺伝子および活性酸素(ROS)生成系遺伝子の発現が誘導されており、ROS消去系酵素活性が上昇していた。RPK1過剰発現体は活性酸素ストレスに対する耐性を示した。以上の結果は、RPK1の高発現により、水分ストレスだけでなく活性酸素ストレス耐性に関与するシグナル伝達経路が増強されたことを示唆している。RPK1-GFPの局在性の解析の結果、RPK1は通常の生育条件下では細胞膜に局在し、高浸透圧下では細胞膜および未知の顆粒状の細胞内小器官に局在がみられた。現在, 高浸透圧下におけるRPK1局在性がどのように制御されるかを解析している。
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蛭子 雄太, 高橋 洋平, 木下 俊則, 島崎 研一郎
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0845
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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孔辺細胞のアブシジン酸(ABA)情報伝達において蛋白質リン酸化反応が重要な役割を担うことが示されているが、リン酸化を介した情報伝達の分子機構は不明な点が多い。我々は以前、ソラマメを用いてABAに応答してリン酸化され、14-3-3蛋白質と結合する孔辺細胞に特異的な61 kDa蛋白質を報告した。今回、シロイヌナズナ孔辺細胞を用いて、ABAに応答して14-3-3蛋白質と結合する53 kDaと43 kDaの二つの蛋白質について報告する。これらの蛋白質と14-3-3蛋白質との結合はABA処理後数分で飽和する速い反応で、ABA濃度依存性や二次メッセンジャーH
2O
2に対する応答がソラマメ61 kDa蛋白質とよく似ていた。我々は、ABA非感受性突然変異株の孔辺細胞を用いて、これら53,43 kDa蛋白質のABA情報伝達における位置づけをおこなった。その結果、
abi1-1や
abi2-1突然変異株ではABAに依存したこれら蛋白質への14-3-3蛋白質の結合が抑制されていた。したがって、これらの蛋白質はABI1やABI2が関与する経路の下流で働くと思われる。一方、
ost1/srk2e突然変異株では53,43 kDa蛋白質の両者とも野生型並に14-3-3蛋白質と結合した。このことから、53,43 kDa蛋白質はOST1/SRK2Eの上流または別経路に位置すると考えられる。
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戸梶 賀仁, 増田 真二, 横井(西澤) 彩子, 重岡 成, 太田 啓之
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0846
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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ジャスモン酸(JA)生合成の中間体である12-oxo-phytodienoic acid(OPDA)はJAの前駆体であるだけでなく、それ自身がオキシリピンシグナルとして機能し、遺伝子発現を制御している。しかし、OPDAのシグナル伝達機構はほとんど明らかにされていない。本研究ではOPDAのシグナル伝達機構を明らかにするために、OPDAに特異的応答を示す遺伝子群の中の熱ショック転写因子HsfA2及び、乾燥・高温耐性の獲得に関わる転写因子DREB2Aに着目し、タンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)やHSP90阻害剤(ゲルダナマイシン)存在下での転写応答を解析した。
HsfA2及び
DREB2Aの発現はよく似た挙動を示し、OPDA処理により8~10倍程度に増大するが、シクロヘキシミドとの同時処理によりその発現は数百倍にまで増大した。このことから、OPDAによるこれらの遺伝子発現に抑制的に作用するタンパク質の存在が示唆された。また、ゲルダナマイシンを単独処理した場合、及びOPDAと同時処理した場合、これらの遺伝子の発現が一過的に誘導されたことから、これら2つの転写因子の発現にHSP90が抑制的に作用することが示された。しかし、OPDAとシクロヘキシミドとの同時処理の場合とは異なる発現プロファイルを示したことから、HSP90以外にも未知の抑制性タンパク質が存在する可能性が示唆された。
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伊藤 裕介, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
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0847
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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植物の生育は乾燥、高塩、低温のような環境ストレスの影響を受ける。シロイヌナズナのDREB1/CBFはシスエレメントDRE/CRTに結合し、多くのストレス応答性遺伝子の発現を制御している転写因子である。我々はイネのDREB1ホモログ遺伝子としてOsDREB1を単離した。これまでに、OsDREB1A遺伝子は低温誘導性を示し、この遺伝子を過剰発現したイネではlip9などの多くのストレス誘導性遺伝子の発現が上昇して、乾燥・高塩・低温ストレス耐性になることを報告した。また、イネはOsDREB1遺伝子ファミリーとして10遺伝子を保持しているが、乾燥・高塩誘導性のものがあること、9遺伝子は転写活性化因子としての機能を持つこと、DNA結合特性に違いがあると推察されることを報告した。
今回、我々は各OsDREB1遺伝子の発現の組織特異性を調べるために、それぞれの遺伝子のプロモーターでGUS遺伝子の発現を制御した形質転換イネを作製した。OsDREB1Cは、低温処理により根において強く発現することが確認された。またシロイヌナズナのT87細胞を用いた一過的発現実験を利用して、各OsDREB1タンパク質がイネのlip9遺伝子のプロモーターを直接活性化できるか調べた。OsDREB1A, 1C, 1E, 1G, 1Iはlip9遺伝子のプロモーターを直接活性化できることを確認した。
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Jan Asad, Nakashima Kazuo, Todaka Daisuke, Ito Yusuke, Shinozaki Kazuo ...
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0848
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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We report two Oryza sative stress-related CCCH-type Zinc Finger proteins genes (OsSCZF1 and OsSCZF2), involved in drought, salt and cold stress responses in rice. The expression of OsSCZF1 was induced by drought and NaCl treatment, whereas OsSCZF2 was induced by drought and cold. Further, the expressions of both genes were induced by methyl jasmonate and salicyclic acid. GFP localization showed that OsSCZF1 was localized to tonoplast and shifted to nucleus upon treatment with abscisic acid, while OsSCZF2 was mainly localized to nucleus. Transgenic plants over-expressing OsSCZF1 gene showed a mimic lesion mutant phenotype. These transgenic plants had an increased expression of pathogenesis related genes, PR1 and PBZ1, compared to control. Transgenic plants over-expressing OsSCZF2 were short in stature and exhibited reduced seed setting. Taken together, these results demonstrate that OsSCZF1 and OsSCZF2 encode functional proteins and may be involved in modulating stress tolerance in rice.
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宮本 皓司, 岡田 憲典, 宮尾 安藝雄, 廣近 洋彦, 野尻 秀昭, 山根 久和
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0849
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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ジャスモン酸(JA)は病虫害などのストレス応答や生長調節・老化などに関わる植物ホルモンである。我々はイネのJA応答性転写因子として
RERJ1を単離し、その機能解析を行っており、これまでにRERJ1が転写活性化因子として機能することなどを報告した。今回、
RERJ1の
Tos17挿入変異株の取得とこれを用いたマイクロアレイ解析を行い、RERJ1標的候補遺伝子の探索を試みたので報告する。
Tos17挿入変異株のDNAプールを用いてPCRスクリーニングにより単離した
rerj1変異株は、
RERJ1ゲノム領域中の第1イントロンと第2エキソンの境界配列を重複する形で
Tos17が挿入されており、完全長
RERJ1 mRNAの発現はJA処理時においても見られなかった。そこで、野生型株および変異株の培養細胞に対して終濃度100 μMで JAを処理し、処理後0, 2, 4, 6 hのサンプルからRNAを抽出後、経時的マイクロアレイ解析を行った。階層的クラスタリング解析を行ったところ、RERJ1の標的候補遺伝子として51遺伝子が絞り込まれた。現在、これらについて発現解析および上流域へのRERJ1の結合の有無の解析を行っている。
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高橋 幸子, 隠岐 勝行, 藤澤 由紀子, 加藤 久晴, 北野 英巳, 岩崎 行玄
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0850
発行日: 2009年
公開日: 2009/10/23
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イネ3量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子欠失変異体
d1のアリル、10種類の転写産物と翻訳産物を解析した。各変異体からRNAを抽出後、全長約1.2 kbの転写産物を増幅するプライマーを用いてRT-PCRを行った結果、全ての変異体で転写産物が確認できた。この中で、3種類はin-frame 変異体であった。具体的には、
d1-3が効果器結合領域(2)内に48塩基欠失、
d1-4がGTA結合領域(A)内に1塩基置換、
d1-8が効果器結合領域(3)内に3塩基欠失が生じていた。正常なαサブユニット(Gα)は380アミノ酸からなり、SDS-PAGEでは約46 kDaを示す。上記3種類のin-frame 変異体は、およそ、40 kDa, 46 kDa, 45 kDaの変異タンパク質の蓄積が期待された。そこで、各変異体から水性2層分配法で細胞膜画分を調製後、抗Gα抗体でWestern blot 解析を行ったところ、
d1-3と
d1-8ではGαが全く検出できず、
d1-4ではわずかな量のGαが検出された。残り7種類のアリルは、遺伝子内の各所に欠失、挿入などが生じていたが、期待されるサイズのGαは全く細胞膜に蓄積していなかった。以上の結果より、イネ3量体Gタンパク質が細胞膜上に蓄積するためには、安定な高次構造を必要とすることが示唆された。
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