外科と代謝・栄養
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56 巻, 6 号
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特集 「サルコペニア併存消化器外科手術に対する術前・術後栄養管理」
  • 亀井 尚, 小澤  洋平, 谷山  裕亮, 岡本  宏史, 佐藤  千晃, 小関   健, 石田  裕嵩
    2022 年 56 巻 6 号 p. 209-213
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     食道癌患者は高齢者が多く, 進行癌では狭窄による経口摂取量低下や癌腫による慢性炎症から低栄養に陥っているものも少なくない. そのため, サルコペニアを併存している患者も多いと思われる. 一方, 進行食道癌は集学的治療で成績向上が図られており, 本邦では切除可能cStage Ⅱ, Ⅲにおいて術前化学療法後の根治手術が標準治療である.最近は免疫チェックポイント阻害剤を含む術後療法も加えられるようになっており, 術前・術後の継続した栄養管理の重要性は高い. サルコペニアが周術期合併症・長期予後に影響する報告は多いが, 現時点でサルコペニア併存食道癌患者に有効な周術期栄養療法は確立されていない.術前療法による筋肉量の減少, 術後サルコペニアの発症, Performance Status(PS)維持と補助療法なども考慮しながら, それぞれのphaseで適切な栄養管理とリハビリテーションを行うことが求められる. 最終的には前向き試験による至適栄養・リハビリテーション療法の確立と適切な介入による短期・長期予後の改善が期待される.
  • 山本 和義, 黒川 幸典, 高橋 剛, 西塔 拓郎, 牧野 知紀, 田中 晃司, 山下 公太郎, 江口 英利, 土岐 祐一郎
    2022 年 56 巻 6 号 p. 214-217
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     高齢胃癌手術において, 術前の筋肉量の減少, サルコペニアが重篤な術後合併症発生のリスク因子であり, 予後不良因子であるというデータが多数報告されてきた.また, 術後1カ月時点での除脂肪体重の減少5%以上が術後補助化学療法のコンプライアンス低下や不良な無再発生存期間と相関することも報告されており, 術前・術後に筋肉量や筋力, 身体機能の評価が重要であるという認識が広がっている.われわれのグループで行ってきた観察研究や, 「術前栄養+エクササイズプログラム」について解説し, 現在行っているリハビリ+栄養療法(リハ栄養)のランダム化比較試験について紹介する.効果的に筋肉量を増加させるリハ栄養の開発, 術前の介入(プレハビリテーション)によって, 徐々に進行していく高齢者の筋力低下をベースラインから底上げし, 術後の継続したリハビリによって, 周術期の急激な筋力・筋肉量の低下を阻止できるのか, またそれによって原疾患の治療成績は改善するのか, きちんとデザインされた大規模なRCTで検証すべき問題である.
  • 三松 謙司, 吹野 信忠, 斎野 容子
    2022 年 56 巻 6 号 p. 218-224
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     大腸がん患者におけるサルコペニアは, 他の悪性腫瘍に比較して注目されることは少ない. しかし, 手術患者の高齢化, 担がん状態, 低栄養によりサルコペニアを有する患者が増加しているため, 大腸がん手術においてもサルコペニアへの対策が必要である. サルコペニア併存大腸がん手術患者では, 術後合併症の増加と予後の悪化が報告されている. サルコペニアに対する周術期対策は,診断時からの早期介入が推奨され, 運動療法を中心とした栄養療法と心理的介入を含む包括的アプローチによるプレハビリテーションが有用な可能性がある. 運動療法では, サルコペニアで萎縮が優位な速筋線維の増加を目的としたレジスタンス運動を主体とし, 個別化した専門的リハビリテーションが有用な可能性がある. 栄養療法では, 術前, 術後の管理栄養士による栄養カウンセリング, エネルギーと蛋白が摂取しやすい術後食の工夫, Oral nutritional supplement (ONS) の利用, ロイシン高配合アミノ酸,ビタミンDが有用と考えられる.また, 併存疾患の適切な治療, 生活習慣の改善や心理的介入による不安軽減などマルチモーダルな介入が術後アウトカムの改善につながる可能性がある.
  • 古川 勝規, 鈴木 大亮, 大塚 将之
    2022 年 56 巻 6 号 p. 225-228
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     膵頭十二指腸切除や胆管切除を伴う肝葉切除などの肝胆膵外科領域における高度侵襲手術は,合併症発生率も高く, 術後管理に難渋する症例も多い. さらに患者の高齢化によりサルコペニア併存患者の増加は避けられず, 周術期管理の重要性は増すばかりである.
     慢性炎症やimmunosenescenceの状態であるサルコペニア併存患者に対しては, われわれが以前から導入しているimmunonutritionのより高い効果が期待できるのではないかと仮説を立て, immunonutritionを行った症例に対して, 後方視的に検討した.
     その結果, サルコペニア併存患者(低骨格筋量)に対するimmunonutritionの感染性合併症の防止効果は, 非サルコペニア併存患者のそれと比べて,約7倍以上であった.
     Immunonutritionは, 膵頭十二指腸切除術だけでなく, その他の高度侵襲手術でのサルコペニア併存患者に対する栄養管理として, 術後合併症を軽減することができる有用な手段の一つであると考えている.
  • 中西 信人, 小谷 穣治
    2022 年 56 巻 6 号 p. 229-234
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     救急・集中治療領域では重症状態にある消化器外科手術患者の管理をすることが多い. 重症患者の栄養管理において, 早期経腸栄養,経静脈栄養 , 蛋白質 , カロリー , リフィーディング症候群 , 急性期後における栄養管理の重要点をまとめた. 早期経腸栄養は48時間以内に開始する必要がある. しかし, ノルアドレナリンを約0.2 μg/kg/min以上使用するような超重症な病態では非閉塞性腸管虚血をきたす可能性があり, 経腸栄養を遅らせるのが望ましい. 経静脈栄養は急いで投与する必要はなく, 約1週間以上経腸栄養が開始できない場合に検討が必要である. 蛋白質は筋萎縮を予防するためにも1.2‐2.0 g/kg/day程度必要であり, 透析を施行している患者などより蛋白質が必要な患者にはさらの高容量の蛋白質が必要である. カロリー投与は間接熱量計を使用して消費エネルギー量に基づいて投与するのが望ましいが, 間接熱量計を使用できない場合は25 kcal/kgなどの計算式を用いて過剰にならないように, Permissive underfeedingで投与する必要がある. 一方で, 栄養開始後のリフィーディング症候群に関しては常に注意する必要があり,リスクの高い患者では連日の血中のリンの値を測定することが望ましい. 急性期離脱後は十分量の蛋白質とともにカロリーもフルフィーディングに移行していく. これらの栄養管理は栄養士とともに多職種で行うことが望ましく, 多職種で重症患者の栄養状態向上して, 社会復帰を目指していく必要がある.
原  著(臨床研究)
  • 神賀  貴大
    2022 年 56 巻 6 号 p. 235-239
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー
     【目的】進行再発の消化器癌患者のがん薬物療法中止時のCONUT変法による評価が治療の中止決定に有用であるかを検討する. 【対象および方法】平成23年8月から平成29年2月までの間にがん薬物療法を施行して癌死した進行再発消化器癌患者92例を対象とする後ろ向き研究である. 治療終了時のCONUT変法による栄養評価で正常・軽度障害群, 中等度障害,高度障害群の3群に分類し, 治療中止後の生存期間の差を検討する. 【結果】3群間の生存曲線の解析では正常・軽度障害群に比較して中等度および高度障害群は予後が不良であった. 多変量解析にて年齢, 癌腫, 転移時期, CONUT変法による分類が予後予測因子であった. 中等度および高度障害の生存期間中央値はそれぞれ39日, 31.5日であり, 予後が非常に不良であった. 【結論】がん薬物療法の中止を検討する時期のCONUT変法による中等度または高度栄養障害という評価は予後不良因子であり, 治療中止を決定する一助となり得る.
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