外科と代謝・栄養
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57 巻, 5 号
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特集 「術後早期のDREAM達成を目指して」
  • 竹之内 正記
    2023 年 57 巻 5 号 p. 145-148
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

     術後回復を阻害する因子として, 痛み・不動・消化管機能不全の3つが指摘されている. また, 患者が術後早期に飲み始めること (DRinking), 食べ始めること (EAting), 動き始めること (Mobilizing) が術後の在院日数の短縮に関与することが示されている. つまり, 術後早期にDREAMを達成することが術後早期回復につながる. 術後疼痛や術後悪心嘔吐 (Post operative nausea and vomiting:PONV) は術後早期のDREAM達成を阻害する最たるものである. それらのマネジメントにおいて, 重要な役割を担うのがAPS (Acute pain service) チームであり, APSチームなくして, 十分な術後早期のDREAM達成は困難であると言っても過言ではない. 令和4年度の診療報酬改訂において「術後疼痛管理チーム加算」が新設された. これは, 本邦の周術期管理において画期的な行政の支援策であり, 以降, APSチームを設置する施設が増加した.
     本稿では, APSチームに関する概論を踏まえ, 如何にしてAPSチームが術後疼痛やPONVをマネジメントすべきかを最新の見識を含めて概説する.

  • 伊藤 圭子
    2023 年 57 巻 5 号 p. 149-153
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

     術後回復力強化 (Enhanced Recovery After Surgery:ERAS) プログラムは管理項目のひとつに早期経口栄養をあげている. 従来, わが国の術後食は, 段階的にアップする食事が提供されてきたが治療効果についてのエビデンスは少ない. 近年, ERASの普及に伴い術後食の開始時期が早まりステップアップ数の見直しが行われ, 術後早期からの普通食摂取が推奨されている. しかし, 術後早期の経口摂取量は少なく食事のみで必要量を充足させることは困難であるため, 不足分はONSや末梢静脈栄養で補充することが現実的である. 早期経口摂取支援のためには, 画一的に段階食または術直後から普通食を提供するのではなく, 管理栄養士が積極的に栄養治療に介入し, 患者個々の状態や喫食量をモニタリングし, 患者の希望を取り入れつつ柔軟に食事のステップアップを図ることが必要である. 患者が口からしっかり食べられるよう術後食の改善を定期的に行うとともに, 個々の病態に適した食事療法や具体的な料理法の提案を行うことが重要である.

  • 内村  公亮
    2023 年 57 巻 5 号 p. 154-157
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

     近年, 医療技術の進歩により高齢者やサルコペニアやフレイルといった虚弱体質の患者に対しても安全に手術を行うことが可能になってきた. 術後の不必要な安静は筋力低下や肺換気機能障害など廃用症候群を助長し日常生活動作 (ADL) の低下や入院期間の長期化をもたらす.ERAS® (Enhanced Recovery After Surgery : 術後回復の強化) が提唱されてから開腹術後の早期離床が注目されるようになった. 廃用症候群の進行を防ぎADLを維持するなど有益な影響をもたらすことがわかってきており高く推奨されている. しかし術後の患者は疼痛コントロールや循環動態, 呼吸管理などあらゆる面で注意が必要となる. 早期離床における中止基準や予測される有害事象を把握することで安全に離床を進めることができる. またリハビリテーション以外の時間は吸気努力訓練機の使用や自主練習指導を行うことで他職種でも指導がしやすい. 術前よりプレハビリテーションとして身体機能の向上や術前オリエンテーションを実施することにより離床を早めADLや生活の質 (QOL) の維持を期待することができる.

  • 山内 俊之
    2023 年 57 巻 5 号 p. 158-161
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
  • 真貝 竜史
    2023 年 57 巻 5 号 p. 162-167
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

     消化器外科手術, 特に消化管吻合を伴う結腸・直腸手術におけるenhanced recovery after surgery (以下ERAS®) プロトコールで推奨されてはいるものの対処の分かれる項目として, 術後早期からの経口摂取 (Early feeding) がある. Early feedingにより術後早期回復が得られるというのが大筋であるが, 実施するにあたり特に嘔気嘔吐, 術後縫合不全などの有害事象の増加が危惧される. これまで報告されてきた早期経口摂取やPOI (postoperative ileus) 予防のエビデンスから, 早期経口摂取導入が可能であることを述べる. 次いで, 術後早期経口摂取開始を実践してきた筆者所属施設のプロトコールを紹介する.

  • 尾形 高士
    2023 年 57 巻 5 号 p. 168-171
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
症例報告
  • 平川 雄太, 溝口 資夫, 白尾 貞樹, 尾本 至, 牧角 寛郎, 奥村 浩
    2023 年 57 巻 5 号 p. 172-176
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

     症例は67歳男性,上腹部痛,体重減少を主訴に精査し,小彎中心に胃上下部に広がる進行胃癌(cT4aN1M0stageIIIA)と診断された.審査腹腔鏡により腹膜播種のないことを確認後,原発巣の縮小を目的として,術前化学療法(S‐1+オキサリプラチン)を開始した.腫瘍による幽門狭窄で経口摂取困難であったため,EDチューブを空腸に留置し経管栄養を行った.1コース終了後に嘔吐がみられ,画像上増悪所見はないが臨床上増悪,切除不能胃癌と考えレジメン変更(カペシタビン・オキサリプラチン+トラツズマブ)を行った.また,経管栄養と胃内減圧を同時に施行することが可能な2重管構造のW‐ED®チューブを留置し,嘔吐なく経管栄養を行うことが可能となった.1コース終了後に退院され,在宅栄養管理を行いながら外来化学療法2コースを行い,合計3コース完遂した後,胃切除術を施行し,術後合併症なく退院された.術後補助化学療法(S‐1)施行後,現在1年9カ月無再発生存中である.W‐ED®チューブを用いた栄養管理で,集学的治療経過中の栄養指標が維持,改善できたことは手術施行のために極めて重要であったと考えられた.

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