外科と代謝・栄養
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57 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集「がん化学療法における代謝栄養管理の意義」
  • 郡 隆之
    2023 年 57 巻 6 号 p. 179-182
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     非小細胞肺がんの治療には, 抗がん剤治療, 放射線療法, 免疫療法などが行われている. 最近では, 遺伝子検査による標的療法が進化し, 個別化された治療が可能になっている. しかし, 肺がん患者では栄養不良や体重減少の問題がしばしば認められる. 抗がん剤治療は肺がん患者の主要な治療法のひとつであるが, 栄養不良や体重減少は治療の耐性低下や生存率の低下と関連しており, 予後の悪化をもたらす可能性がある. 栄養状態の評価には体重や筋肉量の測定が用いられるが, PNIやCONUTは予後予測指標としても使用されている. 栄養状態の管理は肺がん治療において重要であり, 早期の栄養不良の発見と適切な介入が必要とされている. 一般的な栄養療法やω‐3多価不飽和脂肪酸などの特殊な栄養療法は, 抗がん剤治療中の肺がん患者の栄養状態を改善する可能性があるが, その効果はまだ明確ではない. さらなる研究が必要であるが, 早期の栄養評価と適切な栄養管理は, 肺がん患者の治療結果を改善するために重要である.

  • 木村 豊
    2023 年 57 巻 6 号 p. 183-191
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     進行食道癌に対して, 化学療法, 放射線療法, 化学放射線療法, 免疫療法などが行われるが, 癌による狭窄のために食事が十分に摂取できないだけでなく, 癌による慢性炎症によって体重減少や栄養障害をきたしていることが多い. 治療前の栄養状態が不良な場合, 治療の有害事象が増えるだけでなく, 予後が悪化するため, ガイドラインでは治療前からの栄養評価が推奨されている.栄養不良がある場合には, チーム医療で食事栄養指導, 経腸栄養剤の投与など栄養介入を行うことによって有害事象を低減できる可能性がある. しかし, 栄養介入が予後を改善するかどうかについては, ランダム化比較試験が乏しく今後の研究課題である.

  • 今村 博司, 川瀬 朋乃, 柳本 喜智, 野間 俊樹, 西川 和宏, 木村 豊
    2023 年 57 巻 6 号 p. 192-196
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     Ⅱ期, Ⅲ期の進行胃がんに対しては, 胃切除術とその後の術後補助化学療法が日本の標準治療である. 胃切除後の短期的な体重減少は術後補助化学療法の治療継続性の阻害因子であり, 生存率そのものにも影響する可能性が示唆されている. 胃切除術後に成分栄養剤による栄養サポートを行うことで術後短期的な体重減少を有意に軽減し, さらに, 術後補助化学療法の治療継続性を高める可能性が示唆された. 一方,切除不能・再発・進行胃がんの化学療法患者の体重減少も生存率そのものを低下させる可能性があり, 支持療法として栄養サポートを行うことで, 体重減少を軽減し, 生存率が改善する可能性が期待される. ただし, 担がん状態であるため, 患者や病態の違いによって差異はあるものの, 大なり小なり体重減少の原因にがん悪液質が関与していると考えられるため, 治療早期からの栄養サポートに加え, がん悪液質となった状況では, 速やかにアナモレリンを導入することが重要であると考えられた. 支持療法としての栄養サポートや適切なタイミングでのアナモレリンの導入においては, 医師のみならず, 看護師, 薬剤師, 管理栄養士など多職種連携によるチーム医療が極めて重要である.

  • 小坂 久, 松井 康輔, 山本 栄和, 中島 隆善, 松島 英之, 海堀 昌樹
    2023 年 57 巻 6 号 p. 197-201
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     近年, 肝胆道がんの薬物療法に免疫複合治療が加わり, 治療選択肢が広がりをみせている.これまでに, 肝胆道領域のがん患者において, 免疫複合治療においても薬物療法前の栄養状態が予後に関連する事が報告されている.薬物療法中にも副作用で栄養状態は悪化する事もある為, 薬物療法前や薬物療法中を問わず, 常に患者の栄養状態を評価し, 栄養介入する事が肝要である.肝胆道がん薬物療法中の患者に対する確立された栄養療法はないが, 肝細胞癌患者は, 慢性肝疾患を背景とした肝予備能の低下を認める場合があり, 胆道癌患者では, 繰り返す胆管炎による肝予備能の低下も少なくない事から, 肝硬変診療ガイドラインの栄養療法フローチャートを参考にした栄養介入が推奨される.また, 薬物療法中の筋肉量の低下が生存期間に悪影響を及ぼす事が報告されており, 筋肉量が低下傾向の患者には分岐鎖アミノ酸を含む栄養介入を積極的に実施する事が重要と考える.

  • 富岡 淳, 朝隈 光弘, 川口 直, 米田 浩二, 李 相雄
    2023 年 57 巻 6 号 p. 202
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     膵癌は5年生存率が極めて低く, 最も予後不良な悪性腫瘍であるが,少しずつ成績は向上してきていると言える. 既に術前補助化学療法と術後補助化学療法は標準療法として実践されている. 切除可能膵癌に対してはこれらの治療を計画通り施行する事が生存率を高めるために重要になってくるが, 膵癌ではさまざまな理由から化学療法の忍容性が十分でない事が多い. 化学療法に対する忍容性を高めるために, さまざまな角度からのサポートが必要である. その中でも不可欠なのが栄養面でのサポートであり, それには一般的な栄養管理に加えて, 膵癌・膵疾患の特殊性を理解した栄養管理を理解して実践する事が重要である.

  • 長主 祥子, 石橋 生哉, 藤田 文彦
    2023 年 57 巻 6 号 p. 209-
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

     消化器癌領域では化学療法が目覚ましい進歩を遂げ, 生命予後を改善する抗癌剤が多く治療ガイドラインで推奨されている. 治療効果を得るために有害事象に対する支持療法を強化させながら, 治療継続を行う症例が増加している. それに伴い, 抗癌剤の消化器毒性などにより栄養状態が悪化する患者も増加傾向にあり, 継続的な治療を行うには栄養管理を積極的に行うことが重要になってきている.
     本稿では, 消化器癌の中で結腸・直腸癌に対する化学療法について解説し, 「悪心・嘔吐」, 「味覚障害」, 「口内炎」, 「食欲不振」, 「がん悪液質」, 「末梢神経障害」の6項目に焦点をあて, 日常診療で直面する, 栄養状態に影響を与える有害事象についての知識とその対策について述べた.

原著(臨床研究)
  • 苛原 隆之, 田邊 すばる, Umme Salma, 尾崎 将之, 梶田 裕加, 櫻井 圭祐, 寺島 嗣明, 平山 祐司, 大石 大, 久下 ...
    2023 年 57 巻 6 号 p. 213-
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    【目的】COVID‐19肺炎の炎症と栄養代謝動態の特徴を明らかにし, 治療的介入の可能性につき考察する.
    【対象と方法】当院救急ICUにCOVID‐19肺炎の診断で入室した患者28名につき, 炎症や栄養代謝に関する血液検査や間接熱量測定にて得られたデータを分析した.
    【結果】COVID‐19重症度の内訳は中等症18例, 重症10例であった. 重症は全例に挿管管理を要し4例にvv‐ECMO管理を要した. 炎症データは重症で有意に高くリンパ球数が重症で有意に低下していた(p=0.005). 栄養代謝ではCONUT値およびPGC‐1α濃度が重症で有意に高値であった(p=0.03, 0.003). 間接熱量測定を行い得た5例では通常肺炎と比して脂質酸化量が低く呼吸商は高い傾向があった.
    【結語】COVID‐19肺炎では重症度に応じて高度炎症および免疫麻痺状態に陥っており, 栄養学的リスクも高いことが示唆された. また特有の栄養代謝動態の変化があり栄養療法において考慮すべきと思われた.

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