外科と代謝・栄養
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特集 「器機を用いた栄養アセスメントを臨床に生かす」
  • ―骨格筋増加目的リハビリ効果の検討を加えて―
    桂 長門
    2024 年 58 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

     [背景] がん悪液質患者における骨格筋減少と体重減少の関係を細胞外液/総体水分量比;Extracellular Water/Total Body Water ratio(ECW/TBW)の値に応じて調べた報告はない. [目的] Body Mass Index(BMI)低下と骨格筋減少の関係をECW/TBW値別に調べ, 骨格筋増加をもたらすリハビリ介入指標を検討した.[対象] 2020年4月から2022年12月, 体組成計測が出来たがん悪液質患者108例. [方法] 骨格筋量;Skeletal Muscle Weight (SMW) , ECW/TBWを測定. ECW/TBW=0.39, 0.40, 0.41, 0.42各々のSMW/Body Weight (BW) とBMIの関係を非線形解析した. また, SMW増強リハビリ介入の有効性を有意差検定した. [結果] BMI低下時SMW/BWは, ECW/TBW≦0.41のとき, BMI=17.0まで増加後減少に, ECW/TBW=0.42のとき, BMI=17.0まで減少後増加に転じた. BMI=17.0をcut off値とすると, リハビリ介入は, ECW/TBW≦0.40かつBMI≧17群がBMI<17群に対し有効であった (p=0.0067). [考察] ECW/TBWは水分均衡調節機構の状態を表し, その程度ががん悪液質代謝に変化をもたらす可能性が示唆された. [結語] ECW/TBW≦0.40かつBMI≧17は骨格筋増強リハビリテーション介入有効性の指標になる可能性が示唆された.

  • 吉村 芳弘
    2024 年 58 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー
  • 山岡 大志郎, 中野 有也
    2024 年 58 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

     乳児期の栄養状態は, 成長や発達,成人期の疾病リスクまで見据えたうえでの重要なメルクマールであり, この期間に効率的に介入することによって, 将来生じうるさまざまな弊害を予防できる可能性がある点でその評価は非常に重要である. 特に低出生体重児では生下時から筋肉量が少なく, 出生後の成長によって体脂肪が蓄積しやすいことが知られており, 乳幼児期に栄養状態や成長を評価する際には体組成(成長の質)を意識することが重要である. 体組成を評価する方法は限定的であり, 体重, 身長, 頭囲やそのSDスコアのバランスをみて体組成を推測する間接的な評価方法が臨床では一般的である. 近年, 空気置換法 (ADP: air displacement plethysmograph) を用いた体組成評価は, 精度の信頼性と測定のデメリットが少ないという利点から, 小児の体組成評価の方法として推奨されている. 現時点で導入施設は限られており, 臨床的な栄養アセスメントには用いられていないのが現状であるが, 国内外から研究報告は蓄積しており, 今後普及が望まれる. 本項では乳児期の栄養, 体組成評価の重要性とADPを用いた体組成評価の実際について概説する.

  • 大島 拓
    2024 年 58 巻 2 号 p. 70-72
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

     間接熱量計による消費エネルギー量の測定は, 重症患者に対する栄養投与量を決定するための指標として本邦を含む各国の栄養関連学会がガイドラインの中で推奨している. 間接熱量計は呼吸ガス分析により, 重症患者の酸素消費量と二酸化炭素排泄量を測定し消費エネルギー量を解析する. 近年ではその結果をもとに栄養療法を行うことの有用性が示される一方で,実際の投与量設定の際には重症患者特有の急性期代謝の特性を理解し, 慎重な判断が求められる. 間接熱量計を用いた重症患者の栄養アセスメントを通じて, 個別の患者により適した栄養療法が提供できるようになることが期待される.

  • 橋詰 直樹, 古賀 義法, 升井 大介, 東舘 成希, 坂本 早季, 石井 信二, 小松崎 尚子, 深堀  優, 加治 建
    2024 年 58 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

     ブレステストは, 試験薬の摂取により腸管で産生された物質が吸収され, 血管内から肺に移行し呼気として排泄されたものを測定することによって評価する方法である. 安定同意体である13Cを標的化合物を摂取した後に13COを採取するブレステストと, 炭水化物摂取による腸内細菌叢の発酵から水素やメタンを採取するブレステストに分類され, 機能や疾患の診断に用いられる. Helicobacter pylori感染診断のスタンダードである尿素呼気試験を始め, 臨床研究ベースでは13Cを標的化合物としたブレステストの有効性について様々な報告がなされている. 特に胃排出能検査は消化管運動を数値化して判断でき, 今後の保険収載が望まれる方法である. また過敏性腸症候群や小腸内細菌増殖症 (Small intestinal bacterial overgrowth : SIBO) にもブレステストは用いられており, 小腸腸内細菌叢の異常増殖を簡便に測定することが可能である. 本稿では, 自験例をふまえ, 栄養アセスメントに役立つブレステストを概説する.

原著(臨床研究)
  • 田附 裕子, 鈴木 真由, 菊地 沙恵, 石黒 佳織, 奥山 宏臣
    2024 年 58 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

     Short Bowel Syndrome‐Quality of Life(SBS‐QoL™)は, 成人短腸症候群 (short bowel syndrome, SBS) 患者のQuality of Life (QoL) 測定のために開発された信頼性・感度が高い評価尺度である. 日本でもSBS患者の治療でQoL評価が注目されているが, SBSに特化した日本語のQoL評価尺度は存在しないことから, 原版 (英語) SBS‐QoL™をもとに日本語版SBS‐QoL™ (©2023武田薬品工業) を作成した.
     International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Researchタスクフォースのガイドラインに準拠し, 順翻訳, 調整, 及び逆翻訳を経て日本語暫定版を作成した. この日本語暫定版を用いて日本人SBS患者6名を対象に認知デブリーフィングを実施し, その結果をもとに日本語表現の妥当性を評価・調整した上で, 日本語版を最終化した. 英語版と言語的妥当性のある日本語版SBS‐QoL™は, 日本人SBS患者のQoL改善を治療目標とした診療の一助となることが期待される.

  • 並川 努, 田中 智規, 宇都宮 正人, 横田 啓一郎, 川西 泰広, 藤澤 和音, 宗景 匡哉, 前田 広道, 北川 博之, 小林 道也, ...
    2024 年 58 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】胃癌患者における血清亜鉛の動態について評価すること.
    【方法】2013年1月から2021年12月まで当科において胃癌に対して治療された702例を対象とし, 血清亜鉛値と臨床病理学的所見を比較検討した.
    【結果】亜鉛中央値は73 μg/dL (13.5‐152.0 μg/dL), 亜鉛低値は478例 (68.1%) にみられ, 亜鉛低値群は亜鉛正常群に比して, 有意に年齢が高く (71歳 vs.67歳, P<0.001), 血清アルブミンが低値(3.9 g/dL vs.4.2 g/dL, P<0.001) であった. 術後化学療法施行群は非施行群に比して有意に亜鉛中央値が低値であった (72 μg/dL vs.76 μg/dL, P<0.001). 術後1カ月および3カ月に比して3‐6カ月で有意に亜鉛は低値を示し, その後12カ月で回復傾向にあった.
    【結論】胃癌患者は血清亜鉛低値をきたす頻度が高く, 術後3‐6カ月にかけて亜鉛は低値を示し, 化学療法は低亜鉛血症のリスクになる可能性が示唆された.

臨床経験
  • 稲垣 雅春, 岡村 純子, 上田 翔, 柳原 隆宏
    2024 年 58 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】アナモレリンの実臨床における有用性を明らかにする.
    【対象と方法】当科非小細胞肺癌等13例について, 患者背景, アナモレリンの効果, 有害事象, 投与期間, 経過を, 後方視的に検討した.
    【結果】年齢中央値は78歳. BMI 18.5未満が9例, 体重減少率10%以上が9例, ECOG PSは2が8例, 食欲不振はG2が8例で最多であった. 疲労または倦怠感は13例全例で, 全身筋力低下は11例であった. 薬物療法中8例, BSC中5例. 経口栄養剤5例, オピオイド3例, プレドニゾロン3例で併用. 主治医の問診によるアナモレリンの食欲に対する効果は, 有効11例, 無効2例. 有効11例中7例は投与開始から3日以内, 10例は7日以内に食欲が増加した. 投与期間は有効11例では11から177日 (中央値62). 無効2例では7と27日. 有害事象はCTCAE G1悪心1例, G1 QTc延長1例, G2心不全1例.
    【結論】非小細胞肺癌等のがん悪液質患者において, アナモレリンの有用性が, 実臨床での検討で認められた.

あとがき
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