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大沢 匡毅
2006 年 21 巻 1 号 p.
10-17
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
生体内の多くの組織は, 幹細胞システムによって成り立っている。幹細胞はニッチと呼ばれる組織の中の特殊な環境により厳密に制御されており, その制御機構の破綻は癌化の主要な要因であると考えられている。近年, 幹細胞ニッチにおける幹細胞制御機構を明らかにする数多くの研究が成されているが, その分子的制御基盤については未だ不明な点が多い。我々は, 毛包中に存在する色素幹細胞をモデル系として, 幹細胞制御の分子的基盤を明らかにすることを目的に研究を進めている。我々の研究成果は, 色素細胞の悪性腫瘍であるメラノーマ発症の機序を解明する手がかりを提供すると共に, メラノーマに対する新たな治療戦略を創造する可能性がある。
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亀山 梨奈, 八代 浩, 香西 伸彦, 清水 善徳, 岩田 正己, 加藤 良一, 松本 修一, 鈴木 加余子, 松永 佳世子
2006 年 21 巻 1 号 p.
18-22
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
51歳女性。20歳頃に出現した左大腿部の紅色隆起性腫瘤を当院形成外科で切除したところ, 悪性黒色腫と診断され当科を受診した。当科で拡大切除術+リンパ節郭清術を施行し, 化学療法 (DAV-Feron 2クール+D-Feron3クール) を施行した。拡大切除術施行9ヵ月後に肝転移巣と皮膚転移巣を認めたため, 肝転移巣に対してCDDP動注, 皮膚転移に対してINF-βの約4ヵ月間の静注に引き続き約3ヵ月間の局注を行った。CDDP 70mg/m
2/M動注時は肝転移巣, 皮膚転移巣共に縮小傾向を認めたが, 治療の有害反応が強く, CDDP投与量を7mg/m
2/2wに減量したところ皮膚転移巣は再び増大した。その後, 腹膜播腫によるイレウスが併発したため動注療法は中断し, 平成17年5月DICと脳転移により死亡した。本例では肝動脈塞栓療法は併用しなかったが, CDDP動注療法により一時転移巣が縮小したことから, 転移性肝腫瘍に対してCDDP動注療法は有効と考えた。
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林 美穂, 遠渡 舞, 米田 和史, 山田 鉄也
2006 年 21 巻 1 号 p.
23-26
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
58歳, 男性。いつ頃から出現したかは不明であるが, 初診の前日に背中の黒色腫瘤に気付き, 平成16年6月当科初診した。初診時, 背部右側に11×12×3mmの有茎性黒色腫瘤を認め, 全摘術を施行した。病理組織にて, くびれのある有茎性の病変で, 好塩基性の基底細胞様細胞の増殖巣を認め, 腫瘍巣辺縁の細胞は柵状に配列し, 周囲間質との間に裂隙の形成がみられた。腫瘍内部には角化した部位を認めた。有茎性の基底細胞癌と診断した。現在まで再発を認めていない。有茎性の基底細胞癌は本邦において現在まで, 自験例を含めて38例の報告があり, 比較的稀であると考えられる。また, 当科において1993年~2004年までの過去12年間に経験した基底細胞癌78症例, 84病変についての統計をまとめ, 加えて報告する。
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北畑 裕子, 岡田 知善, 鈴木 啓之, 下島 博之, 原 弘之, 照井 正
2006 年 21 巻 1 号 p.
27-30
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
51歳, 男性。幼少時より前胸部右側に黒色斑を認めた。数年前より次第に拡大し, 針で突いていた。2003年9月, 内科診察中に皮疹を指摘され当科を受診した。現症: 前胸部右側に12×8mmの境界明瞭な黒色から灰青黒色の色素斑を認め, ダーモスコピーでbluewhitish veilとstreaksを示した。同年10月, 生検で悪性黒色腫と診断した後, 辺縁より1cm離して切除・植皮した。組織型はSSM, Tumor Thickness (以下TTと略す) は0.9mmでpT1aN0M0 (Stage IA) であった。その後, 自己判断で放置していたが, 翌年12月右腋窩の腫瘤に気付き当科を受診した。尿中5-S-CDは926μg/dayと高値を示した。全身転移検索で多臓器転移が検出された。現在, DAC-Tam療法とインターフェロンβの局注で加療している。
Stage IAのearly melanomaであっても, 転移する可能性があり, 十分な患者の経過観察が必要であることを再認識させられる症例として報告した。
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中藤 奈美, 井上 香, 高木 裕子, 武藤 美香, 村田 浩, 松本 和彦, 高田 実, 斎田 俊明, 吉澤 さえ子, 武居 彰
2006 年 21 巻 1 号 p.
31-35
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
57歳女性。初診の約2年前に左踵内側の褐色局面に気付いた。以後大きさ, 色調に変化はなかった。当科初診時, 同部に8.9×11.9×1.0mm大の, 淡褐色~褐色の扁平隆起性局面を認めた。全摘して組織学的に検討した。表皮には基底層部にメラノサイトの軽度の増数が見出され, 真皮浅層には顕著な線維化層が広範に認められた。この線維化層の下の真皮中深層部に異型細胞の増殖巣が見出され, 免疫染色にてS-100, MART-1陽性, HMB45陰性であった。組織学的に診断困難であったが, 悪性黒色腫を否定できないと考え, 原発巣の拡大再切除とセンチネルリンパ節生検を施行した。センチネルリンパ節の実質辺縁部にMART-1とHMB45陽性の細胞が数個散在性に見出された。本症例を悪性黒色腫と考え, 原発切除創周囲にインターフェロンβ蛋白の局注を施行している。
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田上 俊英, 影下 登志郎, 福島 聡, 丸尾 圭志, 若杉 正司, 小野 友道, 尹 浩信, 小川 久雄
2006 年 21 巻 1 号 p.
36-40
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
急性心筋梗塞を併発した悪性黒色腫の2例を報告した。症例1, 61歳女性。右上腕原発, pTXN3M1c, stage IVでDAC-Tam療法施行した。3クール目終了6日後に急性心筋梗塞を発症した。タモキシフェン, シスプラチンによる血清中性脂肪の急激な上昇との関連が示唆された。症例2, 69歳男性。右下腿原発, pTXN3M1a, stage IVでDAVFeron療法施行した。2クール第1日目に急性心筋梗塞を発症した。ダカルバジン,酸ビンクリスチン投与3時間後に施行した造影CTで冠動脈血栓が認められ, 学療法による凝固能亢進が血栓形成および心筋梗塞を惹起した可能性がある。化学療法施行にあたっては,筋梗塞のリスクを検討する必要がある。
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桑原 広昌, 村尾 尚規, ウイ リシア, 菊地 慶介, 皆川 知広, 蕨 雄大, 堤田 新, 杉原 平樹
2006 年 21 巻 1 号 p.
41-44
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
70歳, 女性。45歳時に左小指爪下の悪性黒色腫に対して, 指切断術を行った (Stage IA)。 術後10年間の経過観察中に局所再発や転移は認められなかった。術後24年目に左乳房に出現した腫瘤を, 当院外科で摘出したところ悪性黒色腫であった。当科へ転科して全身検索を行った結果, 左腋窩リンパ節, 両鼠径リンパ節, 全身の皮下脂肪織, 肺, 肝への転移を認めた。治療はDAC-Tam療法を3コース行った。各リンパ節転移, 皮下脂肪織転移巣および肺転移巣は縮小あるいは消失した。肝転移に対しては, TAEおよびCDDPとIFN-βの肝動注を行ったが, 不変であった。その後の経過中に脳への多発転移が出現し, 不幸な転帰をとった。
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大槻 祐可子, 土田 幸英, 青木 繁, 原科 孝雄, 伊崎 誠一, 濱松 寧
2006 年 21 巻 1 号 p.
45-48
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
悪性黒色腫切除による下眼瞼全層欠損を耳介軟骨と頬部皮弁により再建した症例を報告した。症例は74歳女性, 下眼瞼LMM, Stage IA (pT1aN0M0) 。切除生検の創縁より10mm離して下眼瞼全層を切除し, 欠損の水平長は15mmとなった。瞼板と眼瞼結膜の欠損は耳介軟骨膜付き耳介軟骨, 皮膚欠損は頬部皮弁にて再建した。耳介軟骨膜面は術後1ヵ月までに周囲からの粘膜再生により上皮化した。術後12ヵ月を経過し, 局所再発はなく整容的と機能的結果は良好である。
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八代 浩, 藤江 小百合, 亀山 梨奈, 外山 宏, 工藤 元, 石黒 雅伸, 加藤 弥寿子, 竹内 誠, 松永 佳世子
2006 年 21 巻 1 号 p.
49-52
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
我々はγプローブの代わりにガンマ線検査用測定器であるシンチレーションサーベイメーターを使用して, Sentinel node biopsy (SNB) を行う機会を得た。症例は89歳,女性。右足底の悪性黒色腫に対して色素法とリンパシンチグラフィー, そしてシンチレーションサーベイメーターを併用することにより, 2個のSentinel node (SN) が同定された。術中シンチレーションサーベイメーターはγプローブと同様に使用することが可能であったが, センサーの先端が大きいため, (1) SNBの手術創が大きくなってしまう。 (2) 複数のセンチネルリンパ節が近接する場合は, SNとNon-SNを区別することが困難である。 (3) 腋窩のように立体的に複雑な場所での使用は困難であるといった短所もあるため, 適応を吟味して使用すれば有用であると考えられた。
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加口 敦士, 石原 剛, 増口 信一, 伊方 敏勝, 影下 登志郎
2006 年 21 巻 1 号 p.
53-57
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
悪性黒色腫では, 原発巣の切除および所属リンパ節郭清の術後にin-transit転移を生じることがある。これは原発巣と所属リンパ節間のリンパ管に残存している腫瘍細胞が原因と考えられる。in-transit転移を予防するには, 腫瘍細胞が存在する可能性のあるリンパ管をできるだけ切除するSubtotal integumentectomyが行われることがある。しかし本術式は侵襲が大きく, その適応には十分な検討が必要である。当科で本法を施行した19例の検討では通常のリンパ節郭清に比べ予後が良好であった。最近はセンチネルリンパ節生検などの導入によって, 手術は縮小傾向であるが, in-transit転移を生じる可能性が高い症例に対しては本法も考慮すべき治療法である。
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高橋 早苗, 河田 守弘, 近藤 千晴, 水谷 建太郎, 渡辺 大輔, 玉田 康彦, 松本 義也, 原 一夫, 河村 敏紀
2006 年 21 巻 1 号 p.
58-61
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
83歳, 男性。頭頂部, 右側頭部および後頭部に辺縁より軽度隆起し, 浸潤を伴った紅色隆起局面を認め, 背部, 前胸部にも茶褐色斑が数箇所みられた。頭頂部の紅色隆起局面からの皮膚生検では, 表皮基底層に沿って核周囲が抜けたやや大型のリンパ球が浸潤する像がみられ,一部は表皮内で小集塊をなしていた。真皮上層の毛包周囲および毛包内にも同様のリンパ球浸潤とムチンの沈着がみられたことからfollicular mycosis fungoides (FMF) , stage Iaと診断した。内服PUVA療法 (計100J/cm
2)後, 前胸部, 背部の皮疹は消退したが頭部の紅斑局面では表皮内および毛包に腫瘍細胞の浸潤が残存しており, 局面内には新たに腫瘤が生じ腫瘍期への移行が認められた。頭部の腫瘤を中心に電子線照射を施行し, 腫瘤は平坦化, 浸潤局面も軽快してきている。
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寺師 浩人, 一瀬 晃洋, 田原 真也, 北吉 光
2006 年 21 巻 1 号 p.
62-66
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
43歳女性の上腹部に発生したMyxofibrosarcomaを経験した。Myxofibrosarcomaは別名Myxoid variant (type) malignant fibrous histiocytoma (以下MFH), もしくはLow-grade MFHと呼ばれている腫瘍で, 四肢発症が多い。MFHの中では比較的予後の良い悪性間葉系腫瘍であるが, 再発を繰り返し転移することがないように, 初回手術にて充分に取りきることが肝要である。
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河合 正博, 鈴木 さやか, 藤田 直昭, 山田 元人
2006 年 21 巻 1 号 p.
67-70
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
左前腕伸側に生じた皮下型平滑筋肉腫の1例を報告する。症例は39歳の男性。左前腕の皮下腫瘤を主訴に当科を受診した。生検にて, 皮下に腫瘍細胞を認め, 腫瘍細胞は円形から紡錘形の大小不同な核を持つ細胞であり, 抗α-smooth muscle actin抗体陽性で皮下型平滑筋肉腫と診断した。皮膚平滑筋肉腫は稀な腫瘍であり, 文献的考察を加え報告した。
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櫻井 敦, 寺師 浩人, 田原 真也, 長野 徹, 堀川 達弥
2006 年 21 巻 1 号 p.
71-76
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
Spindle cell lipomaは, EnzingerとHarveyによって報告された, 成熟脂肪細胞様細胞と紡錘形細胞の混在を特徴とする比較的稀な腫瘍である。症例は39歳, 男性。2000年頃から右大腿後面に母指頭大の腫瘤を自覚していた。その後徐々に増大し発赤, 腫脹を繰り返すため当科を受診した。BiopsyにてLipomaと診断され, 全摘出術を施行した。Well differentiated liposarcomaと診断され追加切除を行ったが, 明らかな脂肪芽細胞を認めなかったため, 病理組織を再検討したところ, Spindle cell lipomaとの最終診断に至った。Spindle cell lipomaは, Well differentiated liposarcomaとの鑑別がときに難しく, Well differentiated liposarcomaと誤診され, 治療される可能性がある。診断により治療方針が大きく異なることから, Liposarcomaが疑われた際には, 鑑別すべき疾患として, 念頭に置き, 慎重に診断を下す必要があると思われた。
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小川 香里, 宮嵜 敦, 宇原 久, 河内 繁雄, 高田 実, 斎田 俊明, 八町 祐宏, 池川 修一
2006 年 21 巻 1 号 p.
77-80
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
74歳女性。初診の10年前, 子宮頸癌に対し広汎子宮全摘術と計50Gyの術後放射線療法を受けた。その後, 下腹部から下肢に浮腫が持続していた。約1年前より, 下腹部に暗紫紅色斑が出現し, 一部に結節も生じ, 2ヵ月前より急速に増大してきた。生検組織像にて血管肉腫と診断した。遠隔転移は認められなかったが, 病変が下腹部から外陰にかけて広範かつ深部にまで及んでいたため, 外科的根治術は不可能であった。docetaxelのweekly療法 (計8週間) , 次いでcyclophosphamideの内服療法を行ったが, いずれも無効であった。そこでinterleukin-2の局注療法を行ったところ, 一部の結節が縮小した。このinterleukin-2局注の効果は約6カ月間持続したが, その後再増悪し, 当科初診より約1年後に全身状態が悪化し, 死亡した。
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坂 義経, 神谷 秀喜, 北島 康雄
2006 年 21 巻 1 号 p.
81-84
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
45歳女性。右大腿部の結節を主訴に, 近医で全摘出された。病理組織学的にeccrine porocarcinoma (以下EPCと略す) と診断し, 腫瘍拡大切除および右鼠径リンパ節郭清術を行った。郭清したリンパ節の12個中10個に転移を認め, 術後にアジュバント療法として, low dose FP療法, 遠隔リンパ節転移に対してFECOM療法を行った。しかし, 術後2年2ヵ月後, 急激に右下肢に境界不明瞭な熱感を伴う局面と大小の紅色小結節が出現。皮膚生検でEPCの広範囲逆行性皮膚転移と診断した。しかし, 徐々に右下肢が壊死に陥り, 同部からの感染症を併発してDICのため死亡した。EPCにおいて, 広範囲皮膚転移が直接の死因となるケースは稀であり, 若干の文献的考察を加え報告した。
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苅谷 清徳, 新谷 洋一, 山本 あい, 金子 夏美, 菅野 正芳, 森田 明理, 榎並 寿男, 亀井 壯太郎, 馬場 二三八, 水野 章
2006 年 21 巻 1 号 p.
85-90
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
43歳男性。10年程前から存在する左後頭部の丘疹が, 2002年11月頃から増大。2003年1月31日初診。20×20×15mmの紅色腫瘤, 後頭・頸部リンパ節腫大なし。2月19日切除。表皮と連続せず管腔構造を有す転移性腺癌を疑う像のため全身検索施行するも他の原発巣なし。病理組織像, 免疫染色, 全身検査の結果からclassic type of eccrine adenocarcinomaと診断。7月と10月左頸部リンパ節郭清施行。12月左頸部リンパ節転移の再発と多発肺転移出現。リンパ節部に電子線照射でcomplete response, CF療法4クールは肺転移に無効。外来にてTS1内服4クールと肺転移1ヵ所に放射線治療を行うもさらに縦隔リンパ節, 骨, 肝多発転移出現。癌性疼痛にX線照射で著明に症状軽減。通常放射線に抵抗性だが, 本例では癌治療・緩和治療に放射線が奏効した。
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角田 孝彦, 岡田 修子, 湯田 文朗, 三橋 善比古
2006 年 21 巻 1 号 p.
91-95
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
78歳女性。初診の半年前より頭頂部に小指頭大の腫瘤が生じ, 初診時は1.5×2cmの赤色有茎性の腫瘤がみられた。5mmはなして帽状腱膜上で切除し植皮をしたが, 術後1年後まで再発はない。組織学的に腫瘍の大部分を占めるsarcoma様部分と腫瘍下部の一部に腺様構造部がみられた。両者の間には移行がみられ, 免疫染色もほぼ同じ傾向を示したので, 一元的に考えるのが妥当と思われた。以上より, 今回の腫瘍は, 先に存在するeccrine spiradenomaははっきりしないが, Ackermanの記載したsarcomatous typeのspiradenocarcinomaとしてよいのではないかと思われた。
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黒川 晃夫, 上村 理恵, 松木 勇人, 清金 公裕
2006 年 21 巻 1 号 p.
96-100
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
62歳, 男性。2004年5月頃より右肩に毛包炎様の皮疹が出現し徐々に拡大してきたため, 同年11月当科受診。初診時, 右肩外側に直径2.5cm, 嚢腫状に触れる弾性硬の腫瘤が1個存在し, 表面毛細血管の拡張を伴っていた。辺縁より約5mm離し全切除した。病理組織学的検索の結果, 血管肉腫と診断した。2004年12月より, IL-2計800万単位を腫瘍切除部およびその周囲に局所注射した。IL-2療法終了約1ヵ月後に局所再発が認められ, 再切除した。2005年4月より電子線治療を開始し, 計60Gy照射した。2005年7月現在, 局所再発および転移は認められない。肩に発生した血管肉腫の報告例はほとんどなく, 稀なケースと考えられた。
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苅谷 直之, 須山 孝雪, 株本 武範, 高橋 明仁, 高塚 純子, 伊藤 雅章
2006 年 21 巻 1 号 p.
101-104
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
70歳, 女性。神経線維腫症1型の既往はない。10年来の左大腿部に多発した皮下腫瘤を切除し, 神経線維腫の診断で経過観察されていた。1年半後, 左鼠径部に自覚症状を伴わない3cm大の皮下腫瘤が出現。生検標本の組織像では皮下に巨大な腫瘍として認められ, 個々の腫瘍細胞は異型性の強い大小さまざまな核を持っており, 細胞密度も高かった。また免疫組織化学染色では, S-100蛋白とビメンチンが腫瘍細胞に陽性であった。組織学的に悪性末梢神経鞘腫 (malignant peripheral nerve sheath tumor, 以下MPNSTと略す) と診断した。拡大切除術およびリンパ節郭清を施行したところ, 摘出したリンパ節に転移を認めた。追加治療として, 局所に合計63Gyの4MeVのX線照射を行った。術後1年の時点で再発・転移は認めていない。MPNSTのリンパ行性転移は極めて稀であり, また, 自験例が神経線維腫症5型である可能性を考えた。
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水野 愛, 松葉 祥一, 瀧本 玲子, 高森 建二
2006 年 21 巻 1 号 p.
105-108
発行日: 2006/06/15
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
63歳女性。出生時より存在していた右胸部から右上肢の扁平母斑に対し, 約40年前に放射線療法を受けた。その後放射線治療後の萎縮性瘢痕が存在していたが, 右上腕に紅斑局面が出現した。皮膚生検の結果基底細胞癌であり, 全摘出を行った。
慢性放射線皮膚炎では数年から数十年を経て癌が発生する可能性もあり, 長期間にわたり十分な経過観察が必要である。
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