Skin Cancer
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26 巻, 3 号
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第27回日本皮膚悪性腫瘍学会
特別講演1
特別講演2
  • 田中 勝
    2011 年 26 巻 3 号 p. 258-266
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     皮膚悪性腫瘍学会ホームページでは,Skin Cancerの全論文がPDFでダウンロードできる。2008年まではJournal@rchive,2009年以降はJ-stageで,全文検索できる。
     日本皮膚科学会会員は皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインおよび皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインⅡ(悪性リンパ腫)の全文を読める。4つの皮膚癌(悪性黒色腫,有響細胞癌,基底細胞癌,乳房外パジェット病)の診療アルゴリズムは,日常診療での判断に役立つ。
     PubMedで論文を検索するには,Limitation,MeSHを用いると効率がアップする。
     国立がん研究センターのがん情報サービスは,患者に正しい情報を提供し,患者が病気を正しく理解するのに役立つ。その結果,治療や病状説明に対して,理解が得られやすい。
     がん情報サイトは,米国国立がん研究所からのがんに関する最新かつ包括的な情報を日本語で配信する。
特別講演3
  • 柴垣 直孝
    2011 年 26 巻 3 号 p. 267-273
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     癌患者に対する癌免疫療法による治療成績は決して満足できるものではない。これは,癌患者がすでに癌抗原に不適切な形で曝露されていること,また癌局所では免疫抑制状態が誘導されており,正常な免疫反応が誘導されにくいためであると考えられている。したがって,癌に対する免疫療法は,免疫反応誘導を目的とする予防的療法をそのまま癌患者に用いるのではなく,免疫抑制環境を是正することを柱に考える必要がある。すなわち,いくら積極的に癌に対する免疫反応誘導を行ったとしても,抑制しようとする状態を放置したままでは,強力な抗腫瘍効果が期待できないどころか,更なる免疫抑制を促進させてしまう危険性があるからである。
     そこで,今回は癌患者における免疫抑制誘導について,最近の報告を基にSTAT3の活性化機序の視点から総括し,がん組織が免疫細胞,特に樹状細胞,T細胞に与える影響について解説し,新たな癌免疫療法の治療戦略を述べていく。
シンポジウム2 皮膚悪性腫瘍取扱い規約「第2版」
  • 河井 一浩
    2011 年 26 巻 3 号 p. 274-277
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     皮膚悪性腫瘍取扱い規約第2版における菌状息肉症・Sézary症候群に関する初版からの主な変更点について解説した。診断はWHO分類に従うことが明記されたが,早期菌状息肉症については診断基準が示され,また菌状息肉症のバリアントおよびSézary症候群とそれ以外の紅皮症型皮膚T細胞リンパ腫の定義が明確化された。臨床所見・病理組織所見・血液学的所見の記載における用語は,2007年に改訂されたTNMB病期分類に従って定義され,病期分類における注意点についても解説が加えられた。生検検体の取扱いと検査に関しては,画像検査などの診断技術の進歩が取り入れられたが,原則として国内のほとんどの施設で施行が可能な最低限の基準が示されている。一方,治療に関しては,皮膚リンパ腫診療ガイドラインの公開に伴い,簡略な記載にとどめられた。
シンポジウム3 緩和皮膚科学2011
  • 熊野 公子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 278-281
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     50年前にイギリスのDr.シシリー・ソンダースがブロンプトン・カクテルを創作し,これを発端に,学問的なターミナルケアが始まりました。単なる経験論でなく,多数例での実践を踏まえて,科学的に検証し始めました。
     現在,ターミナルケアから緩和医療へと呼称が変化しています。緩和医療は,あらゆる時期のあらゆる苦痛からの解放を目指します。その対象となるのは,決して癌だけではなく,すべての疾患で,すべての患者に必要なものです。結局,緩和医療は医療の根本そのものであったのです。これを医療の回帰性と呼びます。この回帰性に医師が気付き始め,医学自体の方向性に変化が生じています。
     一方,皮膚科は専門領域の外の研究会に出席し,告知,身体的以外の痛み,終末期の家族への対応,などを学ぶべきです。
     皮膚科は緩和医療と接するところが少なくないにも拘わらず,皮膚科視野に立った緩和医療の研究は皆無です。今,緩和皮膚科学を考えるべき時です。
  • 爲政 大幾
    2011 年 26 巻 3 号 p. 282-288
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     転移性皮膚癌の大半は進行期や末期の患者に生じるため,積極的な治療が困難な場合が多く,患者も医師も治療に消極的になりがちである。しかし,放置した場合に,予想以上の増大や潰瘍化を来すことがある。このように腫瘤が増大し,潰瘍化やそれに伴う出血,浸出液,悪臭などの自他覚症状が著明になるものをfungating tumorと称する。この場合,患者のQOL低下や介護の困難さを招いてしまうため,安易に治療をあきらめるべきではない。治療の第1選択は外科的切除であるが,症例によっては全身化学療法の適応もある。支持療法としては腫瘤の増大や自他覚症状の抑制を目指して,種々の選択肢がある。たとえ腫瘤が消失しなくても,症状の軽減によって,患者のQOLが改善することも多い。このため,各治療法の特徴を十分に理解し,患者の全身状態や治療希望,腫瘍進行の速度や様式など,個々の症例の状態に応じた適切な治療を選択する必要がある。
  • 石黒 直子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     重度の神経性食思不振症や末期癌を基盤とした低栄養状態の患者で,下肢の急激な浮腫とともに出現する特異な皮膚症状“striaelike epidermal distension”を解説した。
     臨床像はいずれも下腿,足背の浮腫の強い部分に生じる一部隆起性の紅色ないしは紅褐色の線状皮疹で,水疱や潰瘍形成を伴うこともある。一見,臨床像はstriae distensaeや皮脂欠乏性湿疹の重症型を思わせるが,病理組織像は両者とは異なり,表皮の変性,壊死,真皮血管壁の腫脹や変性である。これらの線状皮疹はいずれも,浮腫の改善とともに速やかに軽快し,後遺症も残さないことから,浮腫に対する治療が肝腎である。この皮膚症状については教科書的には記載がなく,その概念についてはほとんど知られていないが,認識すべき皮膚症状の1つと考える。
  • 松村 由美
    2011 年 26 巻 3 号 p. 294-300
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     分子標的薬は高頻度に皮膚有害事象を生じる。マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群や手掌・足底発赤知覚不全症候群と呼ばれる手足の紅斑は,著明な疼痛と日常生活動作の低下をもたらす。そのために,キナーゼ阻害薬治療中の相当数の患者は,薬剤の中止を選択している現状がある。これらの皮膚症状は強力なステロイド外用薬や適切な靴の選択,正しいフットケアにてコントロール可能である。義肢装具士に依頼して靴を作成してもらうことも時に必要である。上皮成長因子受容体阻害薬による皮膚有害事象には,かゆみを伴うざ瘡様皮疹や痛みを伴う爪囲炎が含まれる。治療困難なことも多いが,前者はステロイド外用薬や抗生剤内服にて制御可能である。後者はテーピングや適切な靴の選択で対応する。皮膚科医は抗がん薬に伴う皮膚有害事象の制御で中心的な役割を果たすことが期待される。
  • 藤広 満智子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 301-304
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     緩和ケアを必要とする癌終末期患者の褥瘡について検討した。この2年間に当院に入院し,褥瘡を認めた患者を対象に検討したところ,寝たきり高齢者に比べて仙骨部に発生しやすい,持ち込みが少ない,栄養状態が悪いといった特徴があった。癌終末期に自立度が低下した場合は褥瘡の予防が重要であるが,発生した場合は創や処置による苦痛を最小限にするために,穴あきポリエチレンを用いたopen wet-dressing therapyが局所療法として有用であった。
教育コース 遠隔転移をどうするか
  • 有賀 悦子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     多くのがん患者の疼痛は,原因の治療と全身的な鎮痛薬を用いた治療によって緩和されることが可能となった。その基礎となっているのは,WHOによる3段階除痛ラダーで,オピオイドと非オピオイド(非ステロイド性抗炎症薬,アセトアミノフェンと鎮痛補助薬)による治療からなりたっている。痛みは,侵害受容性疼痛(内臓痛,体性痛),神経障害性疼痛などに分類されるが,神経障害による疼痛や突出痛はオピオイドが効き辛い傾向にある。例えば,褥瘡やがんの皮膚浸潤などによる痛みがそれにあたるが,病態に即した治療の選択が重要である。ここでは,がん疼痛の薬物治療の進め方の一つの方法について解説していきたい。
第25回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 増井 由紀子, 田中 英一郎, 土屋 和夫, 藤原 浩, 川島 寛之, 生越 章, 伊藤 雅章
    2011 年 26 巻 3 号 p. 311-315
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     20歳,男性。2008年5月頃より頭頂部に腫瘤が出現し,近医で切開・吸引されたが,短期間で腫瘤が再増大した。同年8月20日に当科を初診した。表面に凹凸のある約15 cm×10 cmの腫瘤が頭頂部にあり,血痂や潰瘍を伴い,易出血性であった。病理組織学的に,真皮,皮下組織に小型円形で均一なCD99陽性の腫瘍細胞がシート状に増殖し,RT-PCRでEWS-FLI1,EWS-ERGは陰性であった。免疫学的検索,FISHの結果よりEwing肉腫と診断した。原発巣と所属リンパ節に対する放射線照射と化学療法を行ったが,無効であった。腫瘍の重さ,悪臭と外観が患者のQOLを損なっていたため,Mohs軟膏を用いた腫瘍の硬化療法と,腫瘍減量術を施行した。その結果,手術時の出血量を少量に抑え,腫瘍を約半分の大きさに減量することができ,患者のQOLの改善をみた。Mohs軟膏は根治不能な皮膚悪性腫瘍の姑息治療に有用である。
第27回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 岩田 洋平, 小寺 雅也, 臼田 俊和, 豊田 徳子, 大城 宏治, 山岡 俊文, 村上 榮, 西村 景子, 松永 佳世子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 316-322
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     66歳,女性。2007年頃より近医で慢性湿疹として加療を続けるも難治であったため,2010年8月からシクロスポリンを開始された。内服開始約2ヵ月後に,皮疹の増悪を主訴に当科を受診した。皮膚生検では表皮内にCD4陽性異型リンパ球の密な浸潤を認め,末梢血にも異型リンパ球を認めた。Southern blot法を用いてTCR遺伝子再構成を検索したところ,cβ1遺伝子の再構成バンドが検出された。シクロスポリンを中止したところ,血液中のリンパ球数は減少したものの,皮疹は改善せず紅皮症の状態となりSézary症候群と診断した。シクロスポリン投与前の病理組織所見を再検討したところ,少数ではあるがリンパ球の表皮内浸潤像を認めたことから,シクロスポリンによりSézary症候群が顕在化した可能性が高いと考えた。シクロスポリンを開始する際には適応を慎重に検討する必要があると考えた。
  • 持田 耕介, 天野 正宏, 石井 千寸, 瀬戸山 充
    2011 年 26 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     センチネルリンパ節生検が広く施行されるようになり,原発巣と解剖学的所属リンパ節の間にある「interval node」の重要性が明らかになってきた。今回我々は膝窩部にセンチネルリンパ節を認める症例について検討した。2007年1月から2010年4月まで,宮崎大学皮膚科において原発部位を下腿,足部とする皮膚悪性腫瘍は21例であった。悪性黒色腫が17例,有棘細胞癌が4例で,膝窩部にセンチネルリンパ節を認めた症例は6例(29%)であり,うち転移を認めた症例は1例(5%)のみであった。また,症例の解剖学的分布は踵部4例,アキレス腱部1例,「P領域」(原発巣が踵部からアキレス腱部付近の領域)以外では左足外側1例であった。原発巣が下腿~足部にある場合,膝窩部にセンチネルリンパ節が存在する可能性があり,その認識を持つ事は重要である。
  • 上中 智香子, 豊澤 聖子, 米井 希, 国本 佳代, 古川 福実, 山本 有紀
    2011 年 26 巻 3 号 p. 327-332
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     我々は高齢者の表皮内癌に対し,外来で行える非観血的治療としてフェノール治療を行っている。今回はその治療効果を組織学的に検討し,ケモカインレセプターに関する免疫組織化学的検討をあわせて報告する。対象は2001年より2010年までに当科で治療を行った日光角化症44例とボーエン病18例で,平均年齢は76.6歳であった。そのうち治療により完全寛解した9例と無効7例,コントロールとして正常皮膚9例,有棘細胞癌6例について比較検討した。組織学的検討として初診時生検標本の腫瘍の厚さを測定し,免疫組織化学的検討としてCXCR4,CCR6,CCR7を用いて免疫組織化学的染色を施行し,治療効果との関連性を検討した。正常皮膚や完全寛解例と比較して,無効例では腫瘍の厚さが厚く,SCCと同様に初診時のCXCR4の発現が有意に高値を示した。その結果,腫瘍の厚さとCXCR4の発現は,治療効果と関連性があると考えられた。
  • 眞鍋 泰明, 加藤 正幸, 金子 友紀, 鈴村 多美, 山岡 華児, 水上 晶子, 赤坂 江美子, 生駒 憲広, 田宮 紫穂, 松山 孝, ...
    2011 年 26 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     67歳,男性。2008年12月頃より左腋窩に皮疹出現し,徐々に拡大。2009年8月26日当科初診時,9×5 cm大の鱗屑を伴い浸潤を触れる紅斑局面を認めた。湿疹病変を疑いステロイド外用治療を開始するも改善せず,9月16日生検術施行。病理組織所見で表皮内に明るい胞体を有する異型細胞の増殖を認め,一部は真皮に浸潤していた。以上より乳房外Paget病と診断した。12月7日リンパシンチグラフィーでセンチネルリンパ節を同定し,同日左腋窩センチネルリンパ節生検および腫瘍拡大切除術を行った。本症例のように腋窩に限局する乳房外Paget病は稀であるとされ,過去20年間に本邦で報告された腋窩に限局した乳房外Paget病31例(本症例を含む)および当院過去20年間における乳房外Paget病75症例をまとめ,若干の文献的考察を加えた。
  • 横井 郁美, 石川 絵美子, 細川 洋一郎, 森上 純子, 木暮 鉄邦, 田中 嘉雄, 池田 政身, 窪田 泰夫
    2011 年 26 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     49歳女性,神経線維腫症1型。思春期から全身に神経線維腫が多発。初診数ヵ月前より,背部と左腋窩の腫瘍が痛みを伴い急速に拡大し,高松赤十字病院を受診。背部腫瘍の生検結果は神経線維腫だった。加療目的で当科紹介。初診時,背部と左腋窩に手拳大の皮下腫瘤を認めた。当院形成外科にて,2ヵ所とも切除された。病理検査では背部腫瘤は悪性末梢神経鞘腫,左腋窩の腫瘤はそのリンパ節転移と判明した。画像検査で多発骨・リンパ節転移があり,アドリアマイシン,イホスファミド併用療法を3クール施行も転移は増大。化学療法に反応がなかったためソラフェニブ内服(800 mg/日)を開始したが,転移巣は漸次拡大した。ソラフェニブが原因と思われる肝障害,黄疸が出現し内服を中止した。中止後,転移巣は急速に拡大し,多臓器不全のため中止より2ヵ月後に永眠。本邦では悪性末梢神経鞘腫に対するソラフェニブ使用例は過去になく,文献的考察を含めて報告する。
  • 笹岡 俊輔, 松尾 明子, 田中 了, 牧野 英一, 太田 知子, 秋山 博伸, 常 義政, 森谷 卓也, 藤本 亘
    2011 年 26 巻 3 号 p. 342-347
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     79歳,男性。陰茎亀頭部のびらんと黒色斑を主訴に受診した。生検にて悪性黒色腫と診断。FDG-PET検査では遠隔転移は認めず,センチネルリンパ節(SLN)生検を施行のうえ陰茎を部分切除した。病理組織検査では腫瘍細胞のリンパ管浸潤像とSLNには顕微鏡的転移像を認め,Tumor Thickness 3 mm,陰茎悪性黒色腫pT3bN2aM0,Stage Ⅲbと診断した。両鼠径部・骨盤内リンパ節郭清を追加施行し,左鼠径部リンパ節1個に顕微鏡的転移像を認めた。DTIC単独とFeronによる補充療法を施行したが,術後4ヵ月頃から右鼠径部と陰茎上部に母指頭大の腫瘤が出現し急速に増加,Taxolによる化学療法を追加施行するも術後1年2ヵ月で永眠した。In-transit転移のリスクが高い悪性黒色腫の患者においては患者のQOL維持を考慮した治療計画を立てることが重要と考えられた。
  • 本間 英里奈, 青柳 哲, 馬場 慶子, 秦 洋郎, 清水 宏
    2011 年 26 巻 3 号 p. 348-353
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     60歳,女性。1年前に左眉毛部に小結節を自覚し,徐々に増大したため当科を受診した。初診時左眉毛部に14 mm大の皮下結節を認めた。病理組織学的には,真皮から脂肪織にかけて腺管構造を形成した腫瘍細胞が粘液様物質中に浮遊するように増殖していた。CK7,GCDFP-15(Gross cystic disease fluid protein-15)陽性,CK20陰性であり,P63陽性の腫瘍細胞の裏打ちを認めた。また全身検索にて他に原発腫瘍を疑う所見はなかったため,Primary mucinous carcinoma of the skinと診断した。本疾患の本邦での治療方針は基底細胞癌に準じるとされているが,切除範囲について依然として統一した見解がない。欧米ではMohs surgeryがスタンダードな治療法となってきており,今回我々は術中迅速病理診断にその手法を加えた切除法で腫瘍を全摘した。術後1年半経過した現在,再発は認めていない。
  • 堀江 啓太, 青柳 哲, 水野 修, 本間 英里奈, 秦 洋郎, 清水 宏
    2011 年 26 巻 3 号 p. 354-358
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     39歳,女性。約4年前に右第5趾の褐色斑を自覚し,徐々に拡大してきたため当科を受診した。初診時,右第5趾背側に径15×14 mmの不整形な一部鱗屑を伴う褐色斑を認め,それに連続して爪甲にも2 mm幅の色素線条を認めた。病理組織学的には表皮全層にわたって異型ケラチノサイトが不規則に配列し,核分裂像や個細胞角化を認め,爪母にも異型ケラチノサイトの増殖とメラニン顆粒を認めたため,Bowen病と診断した。治療は5 mm離しての拡大切除術および全層植皮術を施行した。爪甲色素線条を伴ったBowen病は比較的稀であり,特に臨床的に悪性黒色腫との鑑別を要すると考え,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 佐藤 英, 安田 聖人, 川見 健也, 清原 隆宏, 熊切 正信
    2011 年 26 巻 3 号 p. 359-363
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     色素沈着性有棘細胞癌は有棘細胞癌の稀な病理組織亜型である。今回,我々は左側頭部に生じた色素沈着性有棘細胞癌の1例を経験したので報告する。症例は81歳男性で,左側頭部に生じた約30×25 mm大の潰瘍を伴った黒褐色の腫瘤を主訴に来院した。ダーモスコピー所見は中央に潰瘍があり,び漫性の青灰色領域と葉状領域がある。病理組織学的所見は表皮から真皮にかけて連続性に大小様々な腫瘍胞巣があり,癌真珠を形成する部分もある。腫瘍胞巣内にはメラノサイトが共生し,間質にはメラノファージが散在する。
     色素沈着性有棘細胞癌は臨床所見やダーモスコピー所見からは基底細胞癌との鑑別が困難な場合がある。
治験論文
  • 斎田 俊明, 川島 眞
    2011 年 26 巻 3 号 p. 364-377
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/27
    ジャーナル 認証あり
     国内の日光角化症患者に対するイミキモド5%クリームの有用性を,ランダム化比較試験にて検討した。同クリームの塗布頻度は週2回または週3回とし,塗布期間は4週間または8週間とした。日光角化症の完全消失率は,イミキモド週3回群,同週2回群,基剤群で,それぞれ57.1%,37.1%,16.9%であり,用量反応関係が認められた(p<0.001)。イミキモド週3回群の完全消失率は同週2回群,基剤群に比し有意に高く,同週3回群の完全消失例のうち,1年間の追跡調査を完了した32例に再発は認められなかった。有害事象の発現率は,イミキモド週3回群,同週2回群,基剤群で,それぞれ93.7%,85.5%,81.4%であった。主な有害事象は紅斑等の塗布部位の有害事象であり,ほとんどが軽度または中等度で,忍容性は良好と考えられた。以上より,日光角化症に対するイミキモド5%クリームの有用性が確認された。
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