日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
選択された号の論文の291件中151~200を表示しています
臓器毒性,代謝,毒性試験法等
  • 山口 敦美, 藤谷 知子, 大橋 則雄, 中江 大, 小縣 昭夫
    セッションID: P-39
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】QUATは2種の4級アンモニウム塩(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドとアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド)の消毒、殺菌剤である。布製品や室内空間を殺菌消臭する目的で、溶液を散布して用いられている。一般的な毒性については古いデータがあるのみで、マウスに経口投与した時、LD50は150-1000mg/kgと報告されている。これまでに我々は、QUATを含む消臭・ハウスダスト除去剤の噴霧で乳幼児が経口摂取する可能性を考え、健康に影響を及ぼすかどうかについての検討をおこなった結果、消臭・ハウスダスト除去剤2mL/kgを21日間新生マウス仔に経口投与した後それらのマウスの交配から生まれた仔マウスに、死亡率の増加と精巣重量の低下を観察した。QUATの免疫系への作用は不明なので、まず免疫毒性を持つかどうかを調べる目的で、8週齢雌ICRマウスにQUATを経口投与し、免疫系に作用を及ぼすかについて検討をおこなった。
    【方法】8週齢雌ICRマウスにQUATを0, 50, 100, 200mg/kg経口投与し、2日後に体重と臓器重量を測定、胸腺、脾臓と血中のリンパ球をフローサイトメーターで分析、脾臓細胞のサイトカイン産生能の変化をリアルタイムPCRで測定した。また、QUAT投与の1日後に卵白アルブミンを投与して、産生される抗卵白アルブミンIgM抗体をELISA法で測定した。
    【結果・考察】QUAT投与で用量依存的に血中B細胞の減少、B細胞分化に関与するサイトカインIL6, IL10の減少と、抗卵白アルブミンIgM抗体産生の減少が、有意な減少が200mg/kgの投与時に観察された。 今回の結果は、単回大量投与ではあるが、免疫系への抑制作用が用量依存的に見られたことから、繰り返し使用する時の安全性への考慮の必要性が示唆された。
  • 福井 元子, 柴田 誠司, 久田 茂, 鈴木 桂, 坂東 浩二, 長尾 英則
    セッションID: P-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)阻害剤であるpropylthiouracil(PTU)及びmethimazole(MMI)の免疫系に対する影響について検討した。 【方法】実験1: 6週齢の雌雄Crl:CD(SD)ラットにPTU(250 mg/kg)あるいはMMI(200 mg/kg)を2週間反復経口投与し,末梢血及び脾細胞のリンパ球サブセット分析を実施した。 実験2: 8週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットにPTU(2.5,25及び250 mg/kg)あるいはMMI(2,20及び200 mg/kg)を2週間反復経口投与し,T細胞依存性抗体(抗羊赤血球(SRBC)IgM及びIgG抗体価)産生(TDAR)並びに血漿中IgM及びIgGクラス濃度を測定した。実験1及び2共に,脾臓の病理組織検査も実施した。 【結果及び考察】実験1では,PTU群では主に脾臓の,MMI群では脾臓及び末梢血のT及びB細胞が減少した。実験2では,PTUの全群並びにMMIの中及び高用量群で末梢血リンパ球が減少し,PTU及びMMIの高用量群で抗SRBC IgG抗体価が減少したが,IgM抗体価及び血漿中IgM及びIgGクラス濃度は変化しなかった。脾臓重量はPTU及びMMI群で減少したが,各領域の萎縮は明確ではなく,両実験においてPTU及びMMI群ともに胚中心の発達が認められた。以上の結果から,TPO阻害剤の投与によりT及びB細胞の減少やTDARの低下等の免疫抑制変化が発生したにも係わらず,脾臓では抗体産生の亢進を示唆する組織像が認められた。これらのリンパ球の減少及びTDARの低下と脾臓組織像の関連について現在検討中である。
  • 岡村 隆之, 徳留 秀樹, 常深 慎, 深澤 清久, 原田 英樹, 大西 康之, 平塚 秀明
    セッションID: P-41
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】免疫毒性試験のリンパ球サブセット検査において,ストレスによる末梢血リンパ球数の減少は試験結果の評価に影響を与える恐れがある.今回,サルにおける投与ストレスに着目し,投与ストレスがどのように末梢血リンパ球サブセットデータに影響を及ぼすか検討した.
    【方法】<検討1>カニクイザルを用い,投与操作(静脈内および経口)に伴う末梢血リンパ球サブセット(T,CD4+T,CD8+T,B,NK)の変動について調べた.<検討2>7日間の投与馴化(1日1回モンキーチェアに保定して水を経口投与)を行い,投与操作に伴う末梢血リンパ球サブセットの変動への効果について調べた.<検討3>検討2において,血清コルチゾール(ストレスマーカー)およびT細胞のケモカインレセプター(CXCR4,CCR7:二次リンパ組織へのホーミングに関与)発現を測定し,リンパ球数の変動との関連性について検討した.
    【結果】静脈内および経口投与により,投与後2~6時間にリンパ球数(特にT細胞)の減少がみられた.この変動は,投与馴化により軽減される傾向が認められた.またリンパ球数の減少には,血清コルチゾールの増加およびT細胞のCXCR4発現の増加を伴っていた(CCR7は変化なし).
    【考察】投与時のストレスに関連すると考えられる末梢血リンパ球数の減少が投与後2~6時間に認められた.したがって,薬物の単回投与後数時間に末梢血リンパ球サブセット評価を行う場合には,投与馴化を行うなどの配慮が必要と考えられた.この末梢血リンパ球数減少(T細胞数減少)には,T細胞のCXCR4発現増加とそれに伴うT細胞の二次リンパ組織へのホーミングが関与している可能性が示唆された.
  • 加藤 雅一, 浜島 史泰, 小笠原 隆広, 畠 賢一郎
    セッションID: P-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【緒言】化粧品や化学物質の安全性を確認する眼刺激性試験は、ウサギを用いたドレイズ法が一般的な試験方法であるが、近年、動物福祉の観点からin vitro眼刺激性試験の検討が始まっている。これまで培養細胞を用いた方法が開発されているが、被験物質を直接適用できない点が課題である。本研究では、被験物質を直接適用可能な3次元ヒト培養角膜モデル(以下角膜モデル)培養法、及び角膜モデルを用いたin vitro眼刺激性試験法について検討した。
    【材料と方法】ヒト角膜上皮組織から分離した角膜上皮細胞を3T3-J2フィーダー細胞を用いて増殖させた。得られたヒト角膜上皮細胞をセルカルチャーインサートに播種し、気液層界面で13日間培養し、角膜モデルを作製した。この間、経時的にサンプリングしてヘマトキシリン&エオジン染色(以下H&E染色)及び免疫染色を行い、その組織構造を評価した。また、透過型電子顕微鏡による微細構造の観察を行った。また、in vivo眼刺激性程度(ドレイズスコア)が確認されている被験物質を角膜モデルに適用し、細胞毒性、及び組織構造変化を指標としたin vitroの刺激性試験法について検討した。
    【結果および考察】培養経過に伴い、細胞の重層化、および細胞間接着関連因子の発現増加を認め、培養13日目の角膜モデルではmicrovilliの形成が観察された。これらは、ヒト角膜上皮組織と類似していることから、培養13日の角膜モデルを用いて眼刺激性試験法の検討を行った。種々の検討から設定した条件(暴露時間1分、後培養時間24時間、生細胞率50%以下を眼刺激性)で被験物質を評価した結果、in vivo刺激性分類と85%が一致し、高い相関を示した。また、刺激性試験後の組織破壊の様子がin vivo刺激性の強度と相関する傾向にあった。これらの結果から、角膜モデルは眼刺激性試験の有用な代替材料となりうるころが示唆された。
  • 二宮 真一, 長塚 伸一郎, 大西 学, ハインズ ダリナ, 加国 雅和, 立野 知世, 島田 卓, 山添 康
    セッションID: P-43
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    目的】近年、ラットを用いたトキシコゲノミクス解析による薬物の毒性評価が注目されている。我々は肝実質細胞の70%以上がヒト型に置換された高置換ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)を用いたトキシコゲノミクス解析を検討し、種差の比較を行ってきた。PXBマウス肝ではヒト薬物代謝酵素が高レベルで発現しており、種々の薬物において代謝や排泄のパターンがヒト型を示すことが知られている。したがって、PXBマウスはヒトの薬物体内動態推定のためのモデル動物としてだけでなく、ヒト型の薬物代謝に起因する毒性、特に肝毒性発現を評価するために有用なモデル動物であると考えられる。我々はヒトにおいて肝毒性を示した16種類の薬物および7種類の非肝毒性薬物をPXBマウスに投与し、肝臓の遺伝子発現変動を解析することにより、ヒトにおける薬物性肝障害の発現予測を試みた。また、ラットを用いて同様の解析を行い、両者の結果を比較した。 【方法】7週齢のSDラットもしくは13~14週齢のPXBマウスに種々の薬物をLD50の約20~25%の投与量で3日間連続経口投与した後、最終投与の24時間後に肝臓のTotal RNAを調製し、Affymetrix社のGeneChip Rat Genome 230 2.0アレイもしくはHuman Genome U133 Plus 2.0アレイにより肝臓の遺伝子発現を測定した。ヒト肝毒性薬物において特徴的に変動する遺伝子を抽出し、これらの遺伝子の発現変動値を用いてスコア法によるヒト肝毒性予測を試みた。 【結果および考察】肝細胞壊死や肝炎などの急性症状、および脂肪沈着や胆汁うっ滞などの慢性症状のそれぞれについて最適化したマーカーを用いた結果、PXBマウスではヒト肝毒性薬物と非肝毒性薬物を完全に分別可能であった。スコア法の構築に用いた16種類のヒト肝毒性薬物とは別の8種類のヒト肝毒性薬物について評価した結果も正しかった。一方、ラットによる評価系ではヒト肝毒性薬物を非肝毒性と判定するケースが見られた。
  • 河野 茂生, 加藤 直樹, 高木 広憲, 西田 仁, 安木 大策, 堀籠 博亮, 佐村 恵治, 久田 茂, 木村 敬, 永山 隆, 山口 俊 ...
    セッションID: P-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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     日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会 一般毒性課題対応チームでは、遺伝子改変動物を用いる短期がん原性試験(以下、短期試験)の現状とその問題点に関する調査を実施した。加盟68社に調査票を送付し、44社(国内32社、米国系5社、欧州系7社)から回答を入手した。
     短期試験については、調査に回答した企業の約7割が発がん性評価に有用であるとの認識を示したものの、通常の発がん性評価に使用している企業は僅か約1割であり、普及していない実態が明らかになった。その主な原因として、バリデーションあるいは背景データの不足(79%)、実施経験がないこと(59%)を挙げる企業が多かった。
     ヒトへの発がん性を指標に分類された99化合物において、短期試験とラットの長期試験を組み合わせた場合の発がん性予測率は、げっ歯類2種による長期試験と比較して向上することが報告されている1)。また、短期試験は遺伝毒性が示唆される化合物に対しては発がん性の検出力が高いと考えられているが、同報告ではrasH2マウスを用いる短期試験は非遺伝毒性物質に対しても使用可能と判断しており、rasH2マウスを用いる短期試験とラット長期試験の組み合わせで偽陰性を示した化合物がなかったのは注目すべきことである。
     日・米・EUの行政当局も短期試験を推奨しており2, 3)、長期試験と比較して試験期間の短縮、使用動物数および試験費用の削減も短期試験を実施するメリットとして挙げられる。医薬品開発における短期試験の有用性は高いと判断され、その普及を期待したい。

    1) J. B. Pritchard et al., Env. Health. Perspect., 111, 444-454, 2003.
    2) J. MacDonald et al., Toxicol. Sci., 77, 188-194, 2004.
    3) D. Jacobson-Kram, Proceeding for the 5th European Congress of Toxicologic Pathology, 39, 2007.
  • 橋本 まき, 田中 佐依, 小関 直輝, 出口 二郎, 山田 徹, 船橋 斉, 関 高樹
    セッションID: P-45
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】肝障害は医薬品において、最も問題となる有害事象の一つである。従来の非臨床試験での肝障害予測は困難なことが多く、新たな手法が種々試みられている。中でもミトコント゛リア機能障害は薬剤性肝障害の作用点の一つとして注目され、特にヒト特有肝障害のメカニス゛ム解析法として利用されている。一方、従来のミトコント゛リア機能評価法は、そのスループット性の低さより創薬初期段階でのスクリーニンク゛への応用には適さないため、ウシ心臓由来のSubmitochondrial Particle (SMP)を用いて新規スクリーニンク゛法の確立を試み、従来法との比較を行った。【方法】<従来法>ラット肝臓より調製したミトコント゛リア単離液を用い、呼吸能(溶存酸素濃度を指標)、膜電位(Rhodamine123を用いた蛍光強度を指標)及び膨潤(OD540を指標)に対するTroglitazone、Pioglitazoneの影響を検討した。<新規スクリーニンク゛法>ミトコント゛リア機能障害が既知である化合物(Rotenone, CCCP)、肝障害誘発が既知である化合物(Acetaminophen, Diclofenac, Troglitazone)及びその類似化合物(Pioglitazone, Zolpidem)を用い、SMPに基質(Succinate)を加え、NAD+からのNADH生成を指標にミトコント゛リア機能に対する化合物の影響を評価した(MitoScanTM、Harvard BioScience)。【結果・考察】従来法ではいずれの測定においてもPioglitazoneと比較してTroglitazoneで強い作用が認められ、肝障害誘発とミトコント゛リア毒性との関連が示唆された。また新規評価法では、Rotenone, CCCPで著明な作用を認めた他、PioglitazoneとTroglitazoneとの差別化も明確であり、他の肝障害誘発物質でもミトコント゛リア機能への影響が検出された。これら結果より、今回用いた新規ミトコント゛リア毒性スクリーニング法は従来法と同様の結果が得られ、スルーフ゜ット性の高いスクリーニンク゛法として有用と考えられた。
  • 和田 聰, 根岸 剛, 加門 正光, 中村 英人, 涌生 ゆみ, 大竹 誠司
    セッションID: P-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】網膜電図(ERG)記録は網膜機能検査の1つであり,薬剤誘発性網膜障害の評価系として有用である.国際臨床電気生理学会(ISCEV)が推奨している5種の応答(Rod ERG,Standard combined ERG,Oscillatory potentials,Single-flash Cone ERG,30Hz flicker ERG)により網膜の障害部位を推測する事が可能とされているが,カニクイザルでの報告例は少ない.今回,網膜障害を起こす事が知られているヨウ素酸ナトリウム(SI)をカニクイザルに投与しISCEV推奨ERGの有用性を評価した.【方法】4~5歳の雄カニクイザル4匹(2匹/群)にSI(20,40mg/kg)を単回静脈内投与し,投与前,投与後6,24,72,144または404時間にERGおよび眼底検査を行った.また,投与後144または404時間の検査終了後に病理組織検査を行った.ERGはLED内蔵コンタクトレンズを使ってISCEV推奨ERGを記録した. 【結果】20mg/kg投与群では眼底検査,ERGおよび病理組織検査で異常は認められなかった.40mg/kg投与群では眼底検査で異常は認められなかったが,ERGは投与後6時間から桿体応答であるRod ERGの振幅の大幅な低下が認められ,投与後72時間に他の4応答においても振幅の低下が認められた.しかし,投与後408時間に各応答の回復性が認められた.病理組織検査では投与後144時間の検査終了後に剖検を行った1例で色素上皮細胞の過形成が認められたが,投与後408時間の検査終了後に剖検を行った1例では異常は認められなかった.【考察】サルにおいてヨウ素酸ナトリウムで誘発された網膜障害はERGによって検出可能であり, ISCEV推奨ERGを行うことで桿体応答から障害が誘発されることが示された.このことからISCEV推奨ERGは網膜障害をより早期かつ鋭敏に検出可能であり,安全性試験に有用である事が示された.
  • 宗心 知美, 高居 宏武, 加藤 千恵, 藤井 悦子, 三好 昌夫, 伊藤 恒夫, 鈴木 雅実
    セッションID: P-47
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    ミニブタは、医薬品などの毒性試験においてイヌ、サルとともに非げっ歯類の動物種として活用されている。一方、ミニブタの上皮小体は、他の動物種と異なり、胸腺に埋没した状態で存在することが多く、解剖の際に肉眼的に同定することが困難であるとともに、組織学的にも検出できない場合がある。毒性試験を遂行する上では上皮小体の評価が必要なため、確実に病理学的評価を行うための上皮小体の採取ならびに標本作製法を検討した。【材料・方法】5~7ヶ月齢のミニブタ(CSK Miniature Swine)を雌雄各4例使用した。剖検時に、総頚動脈から分岐する血管の胸腺への付着部を目安として、上皮小体を肉眼的に確認した。肉眼的に同定された場合、上皮小体をマーキングした後に採取・固定を行い、組織標本を作製した。肉眼的に同定されなかった場合は、総頚動脈からの分岐血管が胸腺に付着している箇所をマーキングした後に頚部胸腺の先端部分を採取・固定し、組織標本を作製した。【結果・考察】肉眼的に左右いずれかの上皮小体を同定できた個体は3/8例であった。肉眼的に同定された個体では、組織学的にも胸腺表層に位置する上皮小体を観察できた。肉眼的に同定できなかった5例のうち3例では、組織ブロックを切り進めることで、胸腺組織に埋没する上皮小体を組織学的に観察できた。他の2例では組織ブロックを切り進めるたが、上皮小体を組織学的に同定することはできなかった。最終的に本検討では6/8例(75_%_)で上皮小体の組織学的観察が可能であった。その後、上記方法を用いた上皮小体の採取・標本作製を反復投与毒性試験に応用したところ、技術的な習熟もあり、全例の上皮小体の組織学的観察が可能であった。以上より、本法を用いることによって高率に上皮小体を検出することが可能となり、ミニブタの上皮小体の病理学的評価を実施する上で有用な採取・標本作製法であることが明らかとなった。
  • 大野 克利, 溝田 泰生, 東 幸雅, 仲野 茂, 山田 敏広
    セッションID: P-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    様々な化学物質や食品添加物などの発がん性リスクを評価するうえで、遺伝毒性試験の情報は重要である。Ames試験や哺乳類細胞を用いるin vitro遺伝毒性試験に比較して、ヒトへの外挿性に優れ、操作性や判定が容易な遺伝毒性試験法の開発を目的とし、DNA損傷時p53の結合により発現調節されるDNA修復遺伝子p53R2の発現に基づくヒト細胞を用いた遺伝毒性試験法を構築した(NESMAGET)。本試験系は、ヒト培養細胞(主にMCF-7)を用いたp53R2発現に基づくレポータージーン試験であり、特長として、様々なDNA損傷様式を検出可能、DNA二本鎖切断に対する反応性が高く、96穴プレートを使用しスループットが高く、少量の検体で試験可能、様々なヒト由来細胞に適用可能、などが挙げられる。今回、当試験法の応用検討として、以下の項目について検討したので報告する。(1)p53R2遺伝子とは異なるp53結合配列を持つ遺伝子の適用性検討:DNA損傷時にp53依存的に発現調節されるアポトーシス調節遺伝子p53AIP1の転写調節部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。これをMCF-7細胞に一過的に導入し、検体添加24時間後、ルシフェラーゼ試験を行い、p53R2の転写調節部位を用いる従来法と比較した。その結果、p53AIP1を用いた場合、B[a]PやMMCなどに対する反応性が弱く、p53R2を用いる従来法の方が遺伝毒性物質の検出に優れていることを確認した。(2)ヒト正常細胞の適用性検討:ヒト正常皮膚細胞NB1RGB細胞にp53R2の転写調節部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを導入し、レポータージーン試験を実施した結果、MCF-7細胞を用いる従来法に比べやや反応性は低いものの、従来法と同様に遺伝毒性物質を検出できることを確認した。よって、本試験法は、ヒト正常細胞にも適用できることが示唆された。(参照) K. Ohno et al., Mutat.Res. 588,47-57(2005). K. Ohno et al., Mutat.Res. 656,27-35(2008).
  • 桑原 孝, 金田 信也, 河野 えみ子, 阿南 節子
    セッションID: P-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】末梢静脈点滴液の局所障害性試験として、ウサギ耳介静脈を用いた血管障害性試験が一般的に用いられている。血管障害性の評価は、投与静脈を含む周辺組織の病理組織学的検査により実施されるが、適切な標本採取時期について検討した報告はない。そこで、物理化学的な細胞障害性を有する栄養輸液と、薬理学的な細胞障害性を有する抗癌剤について、適切な標本採取時期について検討した。 【方法】栄養輸液としてはプラスアミノ(2.7%アミノ酸・7.5%ブドウ糖・電解質液)を用い、ウサギ耳介静脈内に10 mL/kg/hrの速度で6時間投与した。抗癌剤としては、生理食塩液で希釈したビノレルビン(0.6 mg/mL) を5 mL/kg/hrの速度で30分間、またはドキソルビシン (1.4 mg/mL)を3 mL/kg/hrの速度で60分間投与した。投与終了後1日、2日、3日または7日に投与静脈を含む標本を採取、常法によりHE標本を作製し病理組織学的に検査した。 【結果】プラスアミノ投与では、1日後採取標本で「静脈内皮細胞の消失」、「炎症性細胞の滲出」等の静脈炎所見が最も明確に観察され、7日後には所見は全くみられなかった。一方、ビノレルビン投与では、1日後採取標本ではほとんど障害性所見がみられず、2日後採取標本で特徴的な所見である「表皮の変性」が明確に観察された。ドキソルビシン投与では、1日及び2日後採取標本ではほとんど障害性所見がみられず、3日後以降に特徴的な所見「軟骨細胞の壊死」を含む障害性が観察された。 【結論】これらの結果から、栄養輸液など物理化学的性状から障害性を有する点滴液の評価には、標本採取時期は1日後が妥当であると考えられた。しかし、薬理学的細胞障害性が予測される点滴液については、標本採取時期や特徴的な所見を探る予備検討を実施した後、適切な試験条件で評価する必要があると考えられた。
  • 仲野 善久, 菊地 聡美, 松本 茂樹, 松末 朋和
    セッションID: P-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【はじめに】安全性試験における行動薬理評価は、その動物の持つ特性に大きく影響を受ける。よって同じ種でも系統によって評価感度などが大きく異なってくることが想定される。国内では毒性試験でSD系ラットを用いることがまだ比較的多いが、Wistar系ラットも欧州のみでなく世界的に毒性試験のスタンダードになりつつある。そのような背景の中、我々は行動薬理試験におけるラット系統適性を確認することを目的として、FOB法におけるWistar系ラットとSD系ラットの比較を行った。 【方法及び結果】Slc:Wistar Hannover/Rcc(Wist.)ラットまたはSlc:SD(SD)ラット6~8週齢を用いFOB法(Mattson, J.L. et al., 1996)に準じ観察を行った。観察時点は投与前及び投与後0.5、1、2、4時間とした。反応性確認のための薬剤としてchlorpromazine(5mg/kg i.p.)、D-amphetamine(8mg/kg i.p.)を用いた。まず生理食塩水i.p.投与動物で1日内反復評価による経時的な反応性変動について検討した所、SDは特にオープンフィールドでの立ち上がり回数が初回から少なく2回目から明確に減少したのに対し、Wist.は初回の立ち上がり回数が多く測定回数を重ねても比較的低下が少なかった。本背景からchlorpromazine投与によるオープンフィールドでの抑制性変化をWist.ではSDに比べて明確に評価することが可能であった。またD-amphetamine投与によるケージ内、ハンドリングでの観察及び刺激反応性観察での興奮性変化についてもWist.の使用により明確な評価が可能であることを確認した。 【結論】今回の条件でSDに比べWist.は行動薬理試験評価のための適性がより高いことが示唆された。
  • 深田 ひとみ
    セッションID: P-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    ここ10年間の統計により、毒性が原因で申請にまで至らなかった新薬が数多く存在することがわかっており、毒性プロファイリングの重要性が広く検討されつつあります。 ヒトHepG2細胞を用いたCellCiphr細胞毒性アッセイは、ミリポアが開発した抗 体と検出試薬を用いて、11のヒト細胞毒性パラメータの検出と解析を効率的に行うことのできる薬剤誘導細胞毒性測定のための効果的なツールです。 顕微鏡観察と画像解析とを組み合わせたハイコンテント分析法により、多くのデータを得ることが可能です。 Cell Ciphr細胞毒性アッセイを用いることで、毒性作用について創薬研究の初期段階に幅広いスクリーニングの実施が可能となり、リード化合物のプライオリティ化の一助となり得ます。 本ポスター発表では、CellCiphr細胞毒性アッセイを用いて得られたデータについて考察します。
  • 是澤 友和, 野本 眞博, 吉田 千春, 三富 奈由, 庄司 陽子, 倉田 靖, 加藤 恵実子, 林 宏行, 芝崎 茂樹, 鈴木 尚, 黒沢 ...
    セッションID: P-52
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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     医薬品の毒性評価においては、薬物の全身的曝露状況を明らかにし、曝露と毒性知見との関連付けを行うために、トキシコキネティクス試験が有用とされており、広く実施されている。しかし、動物種により組織移行性が異なるケースにおいては、毒性所見を解釈する上で全身的曝露では必ずしも十分ではない場合があり、臓器毒性を評価するにあたっては、臓器内曝露を把握し、それに基づいて毒性試験結果を解釈することが重要であると考えられる。今回、我々は、腎毒性の評価系として汎用されているウサギにおける腎毒性試験結果を適切に解釈することを目的とし、注射用カルバペネム系抗生剤Biapenem(BIPM)及びその類薬を用いて、ウサギにおける腎への曝露量と腎毒性の関連性及び腎排泄機序の検討を試みた。各検体中の薬物濃度測定には、UPLC/MS/MSを用いた。
     BIPM及びその類薬を雄性ウサギに単回静脈内投与し、腎皮質中薬物濃度推移を検討したところ、薬物間で腎曝露量(AUC)/投与量比に差を認めたことから、薬物の腎毒性ポテンシャルは、腎への曝露量によって考察する必要があると考えられた。次にウサギにおけるBIPMの腎排泄機序を検討するため、BIPMを雄性ウサギに単回静脈内投与あるいは定速静注した時の薬物動態に及ぼす分泌阻害剤(プロベネシドあるいはベタミプロン)併用時の影響について検討した。その結果、分泌阻害剤の併用によりBIPMの腎クリアランス及び腎皮質中濃度の低下が認められ、BIPMの腎への曝露には能動的な輸送機序の関与が示唆された。一方、臨床においてBIPMの血中動態はプロベネシドの併用によって影響を受けないことから、BIPMの腎排泄機序には種差が存在するものと考えられた。これらの結果を基に、さらに、ウサギでの腎毒性試験結果からヒトにおける毒性予測についても検討を行った。
  • 宮田 昌明, 外舘 史祥, 野本 眞博, 山添 康
    セッションID: P-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    内在性物質であるリトコール酸(LCA)は細胞傷害作用や胆汁鬱滞誘発作用を有する遅延性の肝障害誘発物質である。げっ歯類においてLCA誘発肝障害は核内受容体PXRのリガンドであるpregnenolone-16α-carbonitrile (PCN)併用により軽減され、この原因として薬物代謝酵素(hydroxysteroid sulfotransferase (St2a) やCyp3a)の誘導が報告されている。しかしながらSt2aの発現が認められない雄性マウスにおいてもPCNはLCA誘発肝障害を軽減させる。またPCNは脂質合成酵素も誘導し、肝内脂質レベルを上昇させることからLCA誘発肝障害の防御と脂質代謝との関連が考えられる。本研究ではLCAおよびPCNをマウスに処置し、LCA誘発肝障害の防御と脂質代謝の関連について解析した。 C57BL/6N雌性マウスに0.5% LCAを含有する食餌を1, 3, 5, 9日間摂取させた。またLCA処置5日目より腹腔内投与によりPCN(100mg/kg)あるいはcorn oilをLCAと併用した。 病理組織解析、血清の肝障害マーカーの解析からLCA処置日数に依存して肝障害が増強し、PCN併用により肝障害が軽減した。肝内脂質(遊離脂肪酸、リン脂質、トリグリセリド)レベルはLCA処置日数に依存して減少し、PCN併用あるいはPCN単独処置でコントロール群よりも増加した。血清脂質レベルはLCA処置により減少せず、PCN併用あるいはPCN単独処置で遊離脂肪酸とトリグリセリドレベルが増加した。LCA処置により複数種の脂肪酸合成酵素とリン脂質合成酵素遺伝子の肝臓mRNAレベルの減少が認められ、PCN併用により回復した。肝臓のfatty acid synthaseとcholinphosphotransferase 1活性はLCA処置で経時的に減少したが、PCN併用あるいはPCN単独処置でコントロール群よりも増加した。これらの結果はLCA誘発肝障害と肝内脂質レベルの密接な関連を示唆しており、PCNによる肝脂質合成の亢進に起因する肝内脂質レベル低下の抑制が、LCA誘発肝障害の防御に寄与する可能性が示された。
  • 村上 千晴, 沼澤 聡, 吉田 武美
    セッションID: P-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】miRNAは、遺伝子発現の制御を介して発生、細胞増殖、アポトーシスなど様々な生命現象に深く関与することが明らかになっている。薬物処置により生じる遺伝子発現変動にもmiRNAが役割を演じていることが推察されるが、これまでほとんど報告がない。もし、薬物による遺伝子発現におけるmiRNAの関与が明らかになれば、新たな毒性の評価指標につながることが期待される。さらに、特定のmiRNAの機能が明らかになれば、薬物間相互作用の分子レベルでの理解も深まることが期待できる。そこで、多くの遺伝子発現を誘導することで知られているフェノバルビタール(PB)を用いて、遺伝子発現とmiRNA発現の関連性について検討を行った。
    【方法】8週齢のC57BL/6系雄性マウスにPB (100 mg/kg)を腹腔内投与し、12、24、48時間後に肝臓を摘出した。抽出した総RNAを用いて、アジレント社製DNAマイクロアレイ及びmiRNAマイクロアレイにより、それぞれ遺伝子発現及びmiRNAの網羅的発現解析を行った。さらに、特定の遺伝子産物についてreal time RT-PCRを用いて詳細な検討を行った。
    【結果及び考察】マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析の結果、期待通りCyp2b9やCyp2b10を始め、多くの遺伝子の発現誘導が見られた。遺伝子発現について対照と比較し、5倍以上増加あるいは減少した遺伝子を抽出したところ、12、24、及び48時間後にはそれぞれ129個、58個、及び56個の遺伝子に発現変化が認められた。miRNA発現解析の結果、12時間後、24時間後、48時間後にそれぞれ25個、17個、25個のmiRNAに2倍以上の発現変動が見られた。発現変動した遺伝子とmiRNAの関連性については、現在検討を行っている。
  • 藤澤 紘, 鈴木 孝太郎, 西堀 頼史, 樅山 貴也, 山崎 則之
    セッションID: P-55
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【背景・目的】高齢者は若年者に比べ薬物有害作用の発生が多く,問題となっている.その要因として,薬物の代謝能低下などが挙げられている. SAMP8は,老化促進モデルマウスであり,その老化促進は酸化ストレスにより引き起こされるといわれている.  酸化ストレス防御系の遺伝子発現調節に関与していると考えられているNrf2という転写因子がある.SAMP8は,酸化ストレス防御系の遺伝子発現が減弱しており,それにより生体が酸化に傾いている状態にあると仮定している.そしてNrf2は,一部の薬物代謝型CYPの発現にも関与しているという報告がある.  この背景に着目し,SAMP8は一部の薬物代謝型CYPの発現も低下を起こしており,高齢者の薬物代謝能低下モデルに利用することが可能ではないかと考えた.またSAMP8における他の薬物代謝型CYPの発現の低下も調べることで,よりその可能性を検証出来ると考え,本検討を行った. 【方法】C57BL/6(8週齢),SAMP8(13週齢)及びSAMR1(13週齢)にそれぞれtBHQを腹腔内投与した.3日目の投与約24時間後,エーテル麻酔下で採血を行い,肝臓を摘出した.血清は抗酸化能測定に用い,肝臓は超遠心分離によりミクロソームを分画し,CYPタンパク発現量(CYP1A2,CYP2B,CYP2C,CYP2E1,CYP3A)をWestern Blotting法により確認した. 【結果】血清中抗酸化能は,SAMP8で他の系統に比べ低下が確認された.これにより酸化ストレスの状態にあると考えられた.肝臓中CYPタンパク発現量は,系統の違いによる差が見られた.
  • 村田 宏行, 二宮 憲子, 出口 細香, 河野 牧子, 谷口 寿生, 小村 弘, 小粥 基弘
    セッションID: P-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    [目的] 前臨床において,イヌは非げっ歯類の薬物動態,薬効及び毒性評価動物として広く使用されている。しかし肝細胞を用いたin vitro評価において,イヌの凍結肝細胞は入手できるものの凍結による機能低下により評価が制限され,非凍結で入手できるラットに比べ報告が少ない。ラットと同様,イヌ非凍結肝細胞が利用できれば,種々の薬物動態,薬効及び毒性評価を可能とし,その有用性は高いと思われる。例えば毒性試験時の血漿中濃度の低下など,in vivoにおいて酵素誘導が示唆された場合,イヌ非凍結肝細胞はその原因を検討する上で有用なツールとなる。そこで今回我々は,イヌ非凍結初代肝細胞を用いて代表的な酵素誘導剤の誘導能を評価し,その有用性について検討した。
    [方法] イヌ初代肝細胞は株式会社ナルクにて24wellプレートに播種したものを購入した。代謝酵素誘導剤β-naphthoflavone (β-NF), rifampicin (RP), phenobarbital (PB),phenytoin (PT), ritonavir (RV), pregnenolone 16α-carbonitrile (PCN)を24時間毎に添加し,48時間刺激を加えた後,phenacetin及びmidazolamを用い,CYP1A及びCYP3Aの酵素活性を評価した。また同じ細胞からmRNAを抽出し遺伝子発現量を測定した。
    [結果] phenacetin O-deethylase活性及びCYP1A2 mRNA発現量はPB及びβ-NFにより上昇し,CYP1Aの誘導が確認された。またmidazolam 1’-hydroxylase活性及びCYP3A26 mRNA発現量はPB及びPHEにより上昇し,CYP3Aの誘導が確認された。その他の代謝酵素の結果も合わせて報告する。
  • 小林 雅典, 加藤 杏子, 杉山 明男
    セッションID: P-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    薬剤性肝障害は,動物実験で検出可能な場合と特定の少数患者層で起こる予測困難な特異体質性肝障害に大別されるが,いずれの場合にも薬物代謝による反応性代謝物(Reactive Metabolite: RM)の生成が関与することが示唆されている. RM生成ポテンシャルの評価系の1つに,肝ミクロゾームを用いたin vitro代謝反応によるGSHトラップ法がある.さらに,GSHをdansyl chlorideで蛍光ラベル化したダンシルグルタチオン(dGSH)を用い,RM生成を定量的に評価する方法が知られている. 我々は,dGSHトラップ法を一部改良し,肝障害性が報告されている25化合物および肝障害性の報告がない10化合物についてdGSH付加体の定量的評価を行い,RM生成量と肝障害性の程度との関係について考察した. dGSHトラップ法での肝障害性に関する検出力,特異性および一致率は,いずれも80 %であり,RM生成に関する有用なin vitro評価系と考えられた.また,dGSH付加体の生成量に1日の最大臨床投与量を掛けた値と肝障害性の程度との関係について考察したところ,その定量値が大きくなるほど肝障害性の程度が強くなる傾向にあった. 以上の結果から,dGSHトラップ法を用いたRM生成に関する定量的評価は,開発初期における医薬候補品の肝障害性リスク低減を目的とした評価系として有用であると考えられた.
  • Ulziikhishig Enkhbaatar, 李 康広, Quazi Sohel Hossain, 比嘉 由美子, 今泉 直樹, 安仁屋 ...
    セッションID: P-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    Effect of mitochondrial permeability transition (MPT) inhibitors on mitochondrial membrane-bound glutathione transferase (mtMGST1) in rat liver was investigated in vitro. When mitochondria were incubated with MPT inhibitors such as cyclosporin A (CsA), bongkrekic acid (BGK), ADP or ATP, mtMGST1 activity was decreased dose dependently and the 50% inhibition concentration (IC50) was 1μM (CsA), 70μM ( BGK), 5mM (ADP), and 4mM (ATP). The inhibitory action of MPT inhibitors on mtMGST1 was not observed in the presence of detergents such as Triton X-100 or NonidetP-40. On the contrary, GST inhibitors cibacron blue and S-hexylglutathione decreased the mtMGST1 activity in the absence or presence of detergents. Although mtMGST1 was detected both in the inner (IMM) and outer mitochondrial membranes (OMM), only mtMGST1 activity in IMM was inhibited by the MPT inhibitors in which the inhibitory action was also disappeared in the presence of detergents. Since CsA binds to cyclophilin D (Cyp-D) in the mitochondrial matrix whereas ADP and BKA bind to adenine nucleotide translocator (ANT ) in the IMM, these results suggest that mtMGST1activity in IMM is modulated through ANT and/or Cyp-D.
  • 浅岡 由次, 酒井 洋樹, 平田 暁大, 佐々木 淳, 御領 政信, 宮本 庸平, 柳井 徳磨, 柵木 利昭, 岡田 幸助
    セッションID: P-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】従来の7週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法では、被験物質投与前に高い肝細胞増殖活性を誘導するために肝部分切除等の細胞増殖刺激を行う必要があり、細胞増殖刺激の煩雑な手技、個体への負荷および個体差等が解決すべき問題であった。今回細胞増殖刺激を行わない4週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法の有用性を検討した。 【方法】[実験1:肝細胞増殖活性および肝代謝能]4、4.5、8週齢のF344雄ラットに100 mg/kgのBrdUを腹腔内投与して肝臓を採材し、各週齢のCytochrome P450(CYP)蛋白量、CYP酵素活性(CYP1A、CYP2A、CYP2B、CYP2C、CYP2E、CYP3A)、ならびに抗BrdU免疫染色によるS期肝細胞率を調べた。[実験2:中期イニシエーション活性検索法]4週齢のF344雄ラットに大腸発がん物質である1,2-dimethylhydrazine(DMH)を単回経口投与(4, 16 mg/kg)または4日間反復経口投与(1, 4 mg/kg)し、プロモーション処置として初回DMH投与後1週間からの2-acetylaminofluoreneの2週間混餌投与および四塩化炭素の単回経口投与を行った。また、DMH投与後にプロモーション処置を行わない群も設定した。初回DMH投与後4週間に肝臓を採材し、免疫組織学的手法により、肝臓の前がん病変である胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P)陽性巣の数および面積を求めた。 【結果およびまとめ】実験1より、4および4.5週齢は8週齢と比較して、S期肝細胞率が約3倍高く、CYPの蛋白量ならびに酵素活性はほぼ同じであったことから(CYP2Cを除く)、4週齢ラットは8週齢と同様な肝代謝能を有しながら高い細胞増殖活性を有していることが示された。実験2の結果、DMHの単回投与群および4日間反復投与では溶媒対照群と比較してGST-P陽性巣の有意な増加が認められた。これらより、細胞増殖刺激を行わない4週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法の有用性が示された。
  • 國枝 正幹, 小林 吉彦, 赤根 弘敏, 諸角 芳友, 塚原 みゆき, 清水 茂一, 秋江 靖樹, 齋藤 明美, 門田 利人, 三森 国敏
    セッションID: P-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    diheptyl phthalate(DHP)は,フタル酸エステルの一種で,di-2-ethylhexyl phthalate (DEHP)と同様に,塩化ビニル樹脂の可塑剤としてレザー,フィルム,シート,壁紙,雑貨及び塗料などに広く使用されている.DHPは,peroxisome proliferator-activated receptor alpha(PPARα)アゴニストに分類され,ラットに精巣障害及び肝重量の増加や肝細胞の肥大・空胞変性を誘発することが報告されている.しかし,遺伝毒性や発がん性については明確にされていない.最近の研究では,DHPのラットを用いた28日間反復投与毒性試験を実施したところ,肝臓に前がん病変が観察され,DHPがラットの肝臓において発がん性を示す可能性があることが推察された.そこで本試験は,DHPの発がん性の可能性をより明確にすると共に全身臓器・組織への毒性を検索する目的で,ラットを用いた26週間反復投与毒性試験を実施した. 【方法】雄F344/Nラットを3群に分けて各群にDHPを0,1000及び2000 mg/kg濃度で26週間反復強制経口投与し,一般状態の観察,体重,摂餌量及び摂水量の測定を行った.さらに,最終投与の翌日に血液学的検査,血液生化学的検査を行い,剖検後,臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施した.また,肝臓については,GST-P抗体を用いた免疫組織学的解析を行った. 【結果】体重においては,DHP投与群で体重の増加抑制が認められた.逆に,摂餌量及び摂水量については,DHP投与群で増加傾向がみられた.現在,被験物質の投与実験が進行中であり,26週間投与終了後に血液学的検査,血液生化学的検査,臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施する予定である.また,今後,DHPの遺伝毒性についても検索する予定である.
優秀研究発表賞応募演題
  • 五十嵐 芳暢, 箕輪 洋介, 奥野 恭史, 中津 則之, 小野 敦, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
    セッションID: P-61
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトにおいてSVM等の判別器と病理所見を用いた遺伝子発現プロファイルの分類によって毒性マーカー遺伝子が同定されつつある。これらマーカー遺伝子のパスウェイ等のコンテキストを調べるため、大規模トキシコゲノミクスデータベースを使用して、網羅的な解析を検討した。 【方法】各サンプルを表現型ではなく実験条件によって分類、比較した。実験条件で分類することで、例えば、投与量と投与時間を固定して化合物を変えることによって、遺伝子発現の変化の原因を化合物の違いに絞ることができる。さらに、遺伝子単位ではなくパスウェイ単位で比較し、有意差を計算することで毒性の特異性とは関係のない遺伝子の影響を減らすことができる。例えば、高投与量と低投与量のサンプルを比較した場合、 タンパク合成系の遺伝子の多くに発現変動が観察されるが、パスウェイ単位で比較することでその数の重みは軽減される。パスウェイの有意差の算出にはGSEA法を用いた。GSEA法では、遺伝子の発現差によるランキングとSN比を用いて、2つのサンプル間の特定の遺伝子セット(パスウェイ)の有意差を算出する。また、これらの遺伝子セットのプロファイルに基づいたサンプル間の関係の可視化についても検討した。 【結果】上記方法によっていくつかの毒性マーカー候補が有意差のある遺伝子セット上に観察され、そのコンテキストを推測することができた。
  • 齋藤 文代, 松本 博士, 横田 弘文, 美濃部 安史, 矢可部 芳州
    セッションID: P-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】我々はこれまでに計94化合物をF344ラットに28日間反復投与し、肝臓の遺伝子発現データから短期の発がん性予測システム(CARCINOscreenTM)を構築した。本研究では開発したCARCINOscreen(TM)のSDラットへの適用性を調べるために9化合物をSDラットに投与し、肝臓における遺伝子発現データを取得した。また、F344ラットとSDラットの系統差についても検討した。 【方法】5週齢雄Crl:CD(SD)ラットに9化合物(媒体、低及び高用量)を28日間連続強制経口投与した後、肝臓を採材し、カスタムアレイ(ToxArrayIII)を用いて遺伝子発現解析を行った。得られたデータを短期発がん性予測システムに供して発がん性予測を行った。一部の化合物については系統差を検討するためにAgilent社Whole Rat Genome Arrayを用いた遺伝子発現解析を行った。 【結果と考察】動物試験の結果、9物質についてはF344ラットとSDラットで毒性に大きな差はみられなかった。SDラット肝臓における遺伝子発現データを短期発がん性予測システムで予測した結果、9物質中8物質については発がん性既知情報と一致し、本予測システムがSDラットにおいても高い予測性を示すことが分かった。また、媒体対照群のF344ラットとSDラットの遺伝子プロファイルを比較した結果、高い相関性(R2=0.97)を示したものの、系統間で2倍以上の差を示す遺伝子は数千個あり、さらにThioacetamide投与群では媒体対照群に対して有意に変動した遺伝子群の重なりは系統間で約80%と系統差を示す遺伝子群が認められた。しかし、発がん性予測に用いた遺伝子セットはこれら系統差のある遺伝子群には含まれておらず、発がん過程に普遍的であることが示唆された。
  • 神吉 将之, 中津 則之, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P-63
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒトでの肝毒性を早期に検出あるいはモニターするためには,血液などの非侵襲性サンプルの使用が望まれる。TGP2血液ゲノミクスワーキンググループでは,血液中のヒト肝毒性マーカー遺伝子の同定を目的として,肝毒性を惹起する薬剤を投与したラットの血液を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し,血液中の肝毒性マーカー遺伝子の探索を試みた。 【方法】ヒトで肝障害の報告があり,ラットでは肝細胞壊死の惹起が報告されているチアオセトアミド,メタピリレン,クマリン,ブロモベンゼンをCrl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復経口投与し,単回投与後3,6,9,24時間および3,7,14,28日間反復投与後に剖検を実施した。RNA抽出用血液はPreAnalytiX社 Paxgene Blood RNA採血管に採取し,キアゲン社Paxgene Blood RNA Kitを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAはAmbion社GLOBINclear KitによりグロビンmRNAを除去後,Affymetrix社 Rat Genome 230_2.0 Gene Chipを用いて遺伝子発現データを取得し,肝機能パラメータおよび肝臓組織所見との関連を調べた。 【結果】AST, ALT値の増加および肝細胞の壊死が単回投与6時間後および3日間反復投与後から認められ,特に高用量群においてより明確な変化が認められた。遺伝子発現解析の結果,4薬剤共通で変動を示す遺伝子が単回投与後で約30遺伝子,反復投与後で約880遺伝子が抽出され,これらの中には肝細胞壊死や炎症反応との関連が報告されている遺伝子が複数含まれていた。本検討により抽出された変動遺伝子セットは,肝細胞壊死を非侵襲的に検出あるいはモニターできる可能性があり,現在肝細胞壊死のマーカー遺伝子としての妥当性を確認する為の検討を進めている。
  • 木上 大輔, 松田 喬, 田村 幸太朗, 大村 功, 神吉 将之, 宇波 明, 小堀 正人, 渡部 浩治, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 ...
    セッションID: P-64
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トキシコゲノミクスは薬剤候補化合物の毒性評価に活用できる有用なアプローチである。ラット肝臓の網羅的遺伝子発現データベース(トキシコゲノミクスプロジェクトDB;TG-GATEs)を用いて,薬剤誘発性の胆汁鬱滞に関連した遺伝子マーカー探索と判別モデル構築を試みた。
    【方法】陽性薬剤として,胆汁鬱滞を惹起することが知られている5薬剤(α-ナフチルイソチオシアネート,クロルプロマジン,カルバマゼピン,アザチオプリン,エチニルエストラジオール)を選択した。これら5薬剤の各3用量群(溶媒対照,中用量,高用量)につき,3, 7, 14, 28日間反復投与後各24時間の肝臓遺伝子発現データを,また胆汁鬱滞を惹起しない薬剤の全用量・時点の肝臓遺伝子発現データを用いた。判別モデル構築には線形判別分析を用い,F統計量を指標とした前向き属性選択・クロスバリデーション精度を指標とした後向き属性選択によりマーカーprobesを抽出した。
    【結果】マーカー候補として39 probesを抽出し,クロスバリデーションによる予測精度94%の判別モデルを構築した。これらのprobesの多くは胆汁鬱滞との関連は不明であったが,酸化ストレスに関連する遺伝子(DUSP1,ALDH1A1)や胆汁鬱滞と関連する遺伝子(CLDN1)が含まれていた。判別モデル構築には利用していないテスト化合物を用いてROC曲線による予測精度を評価した結果,陽性判定率約80%において偽陽性が約25%となる判別モデルであった。今回構築した胆汁鬱滞判別モデルは,創薬の初期段階において開発化合物の胆汁鬱滞ポテンシャルを予測するツールとして利用できる可能性がある。今後は,構築したモデルを他施設でも活用できるかトキシコゲノミクスインフォマティクスプロジェクトにおいて検討する。
  • 箕輪 洋介, 上原 健城, 近藤 千晶, 中津 則之, 奥野 恭史, 小野 敦, 五十嵐 芳暢, 丸山 敏之, 加藤 育雄, 山田 弘, 大 ...
    セッションID: P-65
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    薬剤誘発性腎障害は,創薬において最も注意すべき副作用の一つである.従って,創薬研究の初期段階に,医薬品候補化合物の腎障害誘発リスクをいち早く見極め,安全な化合物を効率的に選び出すことが肝要である.今回,トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトにおいて構築された大規模トキシコゲノミクスデータベース(TG-GATEs)を使用して,単回投与毒性試験において活用可能な薬剤誘発性腎尿細管障害の予測マーカーの探索を実施した.【方法】6週齢の雄性ラットに,種々の化合物(低,中,高用量)を1日1回,最長28日間反復投与し,投与開始後,1,4,8,15,29日目に屠殺した.採取した腎臓の病理検査を実施すると共に,Affymetrix社製のGeneChipを用いて網羅的遺伝子発現解析を実施した.【結果】反復投与時(投与後4 から29日目)の病変の有無によりアンカリングした投与後1日目の遺伝子発現データ(10/14化合物が単回投与後翌日の時点では病変なし)に対してfilter-typeの遺伝子選択法を適用し,マーカー候補遺伝子(feature gene)を抽出した後,これを用いて線形判別器を構築した.5-fold cross validationによる判別精度検証を実施した結果,偽陽性率が約10%のとき,検出力は約93%となった.feature geneには,Kim1,Timp1,Clusterin等良く知られた既知の腎尿細管障害マーカーに加え,新規のマーカー候補遺伝子も幾つか含まれていた.また,これらの既知マーカーを単独で判別に用いた時の予測精度と比較して,今回構築した複数個の遺伝子を用いた判別器で大幅に高い予測精度が得られた.【結論】今回構築した腎毒性の判別モデルは,薬剤誘発性腎尿細管障害の有無を早期に予測する有用な手段になり得ると考えられた.
  • 堀内 雅史, 山中 秀徳, 武吉 正博, 美濃部 安史
    セッションID: P-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は第35回日本トキシコロジー学会でエストロゲン作用2物質(EE及びBisA)について、エストロゲン作用の短期検出マーカーを探索した結果を報告した。今回、前述の2物質に加え、新たにエストロゲン作用4物質(17alpha-Estradiol、4-(1-Adamantyl)phenol、Diphenyl-p-phenylenediamine、4-tert-Octylphenol)及び非エストロゲン作用2物質(Indigo、Flutamide)の実験を行ない、エストロゲン作用物質間で共通変動する短期検出マーカーの探索を試みた。
    【方法】7週齢雄SDラットに媒体、エストロゲン作用4物質及び非エストロゲン作用2物質を1、3及び7日間投与し、血清及び蓄積尿を採取した。血清及び尿中のタンパク質成分は、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システム(2D-DIGE)で発現量を定量比較解析した。更に血清は低分子領域の微量成分に着目し、分子量分画解析も実施した。
    【結果と考察】血清からはアポリポタンパク質2種(Apolipoprotein A-I及びApolipoprotein E)の発現減少を含め、計3種のタンパク質成分をエストロゲン作用物質間で共通変動するタンパク質成分として抽出した。更に血清の分子量分画から30 kDa以下の微量タンパク成分を探索し、現在まで6スポットのタンパク質成分の変動を検出した。尿からはSerum albuminがエストロゲン作用5物質間で、Glandular kallikrein-7は弱エストロゲン作用物質(Diphenyl-p-phenylenediamine、4-tert-Octylphenol)を除く4物質間で発現量が減少した。これらを含め計5種のタンパク質成分を尿から抽出した。以上のタンパク質成分はエストロゲン作用の有望な短期検出マーカーと推察される。
    【謝辞】本研究は経済産業省委託事業「平成20年度環境対応技術開発等(化学物質の内分泌かく乱作用の試験・評価手法の国際標準化及び有害性情報の整備)」の研究成果の一部である。
  • 清澤 直樹, Joshua C Kwekel, Lyle D Burgoon, Timothy R Zacharewski
    セッションID: P-67
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】殺虫剤DDTにはげっ歯類肝腫瘍プロモーション活性が報告されており、またo,p’-DDTに関してはエストロゲン受容体(ER)結合を介したエストロゲン様活性による内分泌撹乱作用が報告されているものの、詳細な分子機作には不明な点が多い。本試験ではo,p’-DDTがラットおよびマウス肝臓に及ぼす影響を網羅的遺伝子発現解析により精査し、その毒性学的意義を考察した。 【方法】生後25日齢雌性SDラットおよびC57BL/6マウスに対して300 mg/kgのo,p’-DDTを単回強制経口投与後2、4、8、12、18および24時間後、あるいは一日一回強制経口投与を3日間行い、最終投与24時間後に血液および肝臓を採取した。マイクロアレイ解析により肝臓遺伝子発現プロファイルを、GC-MS解析により肝臓o,p’-DDTレベルを、ELISAにより血中Dehydroepiandrosterone(DHEA)レベルを、またウエスタン解析により肝臓CYP17A1タンパク質レベルをそれぞれ確認した。 【結果と考察】ラット、マウス共に肝臓o,p’-DDTレベルは投与後2時間後に高値を示した後、速やかに低下した。ラット、マウス共に肝重量増加が認められたものの、病理組織学的には目立った所見は観察されなかった。ラット肝臓では核内受容体PXR/CAR活性化(Cyp2b、Cyp3a遺伝子発現誘導等)が示唆され、フェノバルビタール型腫瘍プロモーション作用が示唆された。一方マウス肝臓では、PXR/CAR活性化に加えてCyp17a1遺伝子とCYP17A1タンパク質の発現誘導、およびCYP17A1により生合成される血中DHEAレベル上昇が観察された。Cyp17a1誘導および血中DHEAレベル上昇には時間的な相関が認められたことから、マウスにおいては肝Cyp17a1誘導を介した性ホルモン動態への影響が、o,p’-DDTによる内分泌撹乱作用の機作の一つである可能性が推察された。
  • 豊田 泰之, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-68
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】薬物誘導性肝障害は今日の医薬品開発および臨床における主要な問題の一つである。その発症メカニズムとして、チトクロムP450による代謝的活性化、すなわち反応性代謝物の生成が挙げられる。本研究では、薬物代謝において主要な役割を担っている分子種CYP1A2とCYP2E1をターゲットとして培養細胞を用いた評価系を構築し、副作用として肝障害の報告がある15種類の薬物の代謝的活性化について明らかにすることを目的とした。
    【方法】CYP1A2およびCYP2E1発現アデノウイルス(AdCYP1A2とAdCYP2E1)を作成し、解毒酵素の発現誘導を制御している転写因子Nrf2をsiRNAにより発現抑制させたヒト肝癌由来HepG2細胞に感染させ、肝障害の報告がある薬物とともにインキュベートし、ミトコンドリア内脱水酸化酵素活性およびATP産生量を測定することにより細胞生存率を測定した。
    【結果および考察】AdCYP1A2感染siNrf2処置HepG2細胞にアセトアミノフェン、トルカポンおよびレフルノミドを処置することにより有意な細胞生存率の低下が認められた。AdCYP2E1感染siNrf2処置細胞においてもアセトアミノフェンとトルカポン処置により有意な細胞生存率の低下が認められ、さらにフルタミド処置によっても細胞生存率の低下が認められた。siNrf2の代わりにネガティブコントロールとしてsiScrambleを処置した細胞ではこれらの薬物による細胞生存率の低下は減弱された。アセトアミノフェンとトルカポンはCYP1A2およびCYP2E1により代謝的活性化を受けることが示唆されており、本研究結果と一致した。またCYP1A2またはCYP2E1がレフルノミドおよびフルタミドの毒性に関与する可能性が本研究において新たに見出され、これらの薬物による毒性の解毒機構にNrf2が関与していることが明らかとなった。本試験系は薬物誘導性肝障害の予測の有用な手段となることが示された。
  • 岩村 篤, 深見 達基, 細見 浩子, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-69
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】薬物誘導性肝障害は今日の医薬品開発および臨床における主要な問題の一つである。その発症メカニズムとして、チトクロムP450による代謝的活性化が挙げられる。本研究では、薬物代謝において主要な役割を担っている分子種CYP2C9をターゲットとして培養細胞を用いた評価系を構築し、副作用として肝障害の報告がある10種類の薬物の代謝的活性化について明らかにすることを目的とした。
    【方法】CYP2C9発現アデノウイルス(AdCYP2C9)を作成し、解毒酵素の発現誘導を制御している転写因子Nrf2をsiRNAにより発現抑制させたヒト肝癌由来HepG2細胞に感染させ、肝障害の報告がある薬物とともにインキュベートし、ミトコンドリア内脱水酸化酵素活性およびATP産生量を測定することにより細胞生存率を測定した。CYP2C9による解毒についても解析するため多くの薬物の代謝的活性化を担うCYP3A4発現アデノウイルス(AdCYP3A4)とともにAdCYP2C9を感染させ、同様に細胞生存率を測定した。
    【結果および考察】AdCYP2C9感染HepG2細胞にベンズブロマロン、チエニル酸、ジクロフェナク、ロサルタンおよびアミオダロンを処置することにより有意に細胞生存率の低下が認められた。また、チエニル酸とジクロフェナクについてはAdCYP3A4感染細胞においても有意に細胞生存率の低下が認められ、アミオダロンについてはAdCYP2C9とAdCYP3A4の同時感染により更なる細胞生存率の低下が認められた。ロサルタンとアミオダロンについてはCYP2C9による代謝的活性化の報告は無く、本研究においてCYP2C9の毒性に対する関与を新たに見出した。テルビナフィンはAdCYP3A4感染細胞において細胞生存率の低下が認められたが、AdCYP2C9との同時感染により細胞生存率の低下は認められなくなった。よって、CYP3A4により誘発される毒性はCYP2C9により減弱されることを見出した。本試験系は薬物誘導性肝障害の予測の有用な手段となることが示された。
  • 関本 征史, 佐野 慎亮, 根本 清光, 西川 秋佳, 出川 雅邦
    セッションID: P-70
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】ヒトCYP3A4酵素は、肝臓の薬物代謝において中心的な役割を占める。肝CYP3A4は、プレグナンX受容体(PXR)の活性化を介して誘導されることが知られていることから、PXR活性化能を有する化合物(PXR ligand)の検索・評価は異物(薬物)相互作用を理解する上で重要である。そこで、本研究では、ヒトPXR活性化物質検索用レポーター細胞株(HepG2-PXRLucA3)を樹立し、その応用として4種の食品添加物のPXR活性化能を検索した。 【方法】肝CYP酵素の発現を変動させることが知られる4種の食品添加物(クルクミン(CUR)、チアベンダゾール(TBZ)、没食子酸プロピル(PG)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT))を被検化合物とした。また、既知のヒトPXR活性化物質としては、リファンピシン(PIF)を使用した。HepG2-PXRLucA3細胞に対し、RIFあるいは各被検化合物の単独処理、もしくはRIF(10 µM)と各被検化合物の同時処理を行い、24時間後のPXR活性化をルシフェラーゼアッセイにより検討した。 【結果】用いた4種の食品添加物のうちTBZのみに、弱いPXR活性化能が見られた。また、TBZはRIFとの同時処理により、濃度依存的にPXR活性化を促進した。一方、CUR、PGあるいはBHTは、RIFによるPXR活性化をそれぞれ濃度依存的に阻害した。 【考察】本研究で用いた4種の食品添加物はいずれもヒトPXR活性化に影響を与えること明らかにし、これら化合物がCYP3A酵素の発現誘導に影響を及ぼす可能性を示した。現在、これら化合物によるCYP3A酵素の遺伝子発現レベルおよび酵素活性レベルでの誘導について解析を進めている。
  • 端 秀子, 三木 康宏, 長崎 修治, 笹野 公伸
    セッションID: P-71
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】主に肝臓に発現している薬物代謝酵素は摂取された物質を生体にとって無害な形に変換して生体防御にあたっている。薬物代謝研究によく用いられている実験動物は、遺伝的背景が均一化されており、また薬物代謝酵素の発現パターンやその発現制御機構は種によって異なる為、ヒトへの影響を知る上で重要な個人差を考慮することが難しい。そこで本研究では、実際のヒト肝組織を用いてAmes試験を行い、また薬物代謝酵素の発現の個人差について剖検・手術標本を用いて比較検討した。 【方法】当分野で凍結保存している0歳~82歳の肝組織23例からS9を採取してAmes試験に用いた(東北大学医学部倫理委員会承認済)。TA98およびTA100株を使用し、被験物質は2-Aminoanthracene (2-AA)、Benzo[a]pyrene (B[a]P)およびAcrylamideを用いた。また同症例のホルマリン固定パラフィン包埋標本からHE染色標本を作製し、病変の有無(脂肪肝、線維化)を確認し、免疫組織化学にてCytochrome P450を評価した。さらに肝組織からRNAを抽出し、マイクロアレイおよび定量的PCRにて解析を行った。Ames試験および病理学的所見の結果と各遺伝子の発現プロファイルの個人差の比較検討を行った。 【結果および考察】Ames試験の結果、Acrylamideはすべての症例において陰性であったのに対し、2-AAおよびB[a]Pは個人差が見られた。免疫組織化学においてもその局在に個人差が見られた。また、マイクロアレイ解析および定量的PCRの結果、Ames試験にて2-AAおよびB[a]P陰性症例は、これらの代謝活性に関与するCYP1Aの発現が低い傾向が見られた。このように実際のヒト組織を用いてその発現プロファイルや個人差を明らかにすることは重要と考えられる。現在さらに例数を増やし比較検討中である。
  • 真田 尚和, 関本 征史, 根本 清光, 出川 雅邦
    セッションID: P-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】ラットを用いたAdjuvant関節炎モデルは、炎症性サイトカインの過剰産生に加え、局所的な反応(1次反応)に続いて全身性の反応(2次反応)が誘発されることから、ヒト慢性関節リウマチのモデルとして用いられている。このような炎症モデル動物では、薬物代謝酵素の発現が変動し、医薬品の体内動態が変化する可能性がある。そこで、本研究では、ラットAdjuvant 関節炎モデルの発症過程における、薬物代謝酵素(CYP3A1、CYP2B2)並びにそれらの遺伝子発現を調節する核内受容体(PXR、CAR)の発現変動を検討した。 【方法】雄性Lewisラットのfoot padにM. tuberculosis/liquid paraffin 0.1 mlを投与することで、Adjuvant関節炎を誘発させ、各誘発過程(投与1、4、7、12、17及び25日後)における肝臓を採取した。各時期の肝臓からRNAを抽出し、cDNAに変換後、各種遺伝子(CYP3A1, CYP2B2, PXRおよびCAR) の発現量をそれぞれリアルタイムPCR法により測定した。 【結果】CYP2B2及びCARは、Adjuvant関節炎誘発全過程を通じて発現が低下し、その低下は特に1次反応及び2次反応が認められる投与1日後及び12日後で顕著であった。CYP3A1の発現は、投与1日後から急激に減少し、その減少は25日まで継続した。一方、PXRの発現は投与1日後に一過的に減少したに過ぎなかった。 【考察】本Adjuvant関節炎誘発過程において、CYP2B2CARとは類似の発現変動パターンをとることから、CYP2B2発現の低下はCARの発現減少に起因することが示唆された。一方、CYP3A1PXRの発現には相関は認められず、CYP3A1の発現低下はPXR以外の因子により制御されていることが示唆された。
  • 浦底 嘉仲, 鷹野 正生, 伊差川 由里, 渡邊 章仁, 澤畑 延寿, 出野 悦子, 松澤 蘭, 高田 直祥, 中村 大地, 脇田 篤, 枝 ...
    セッションID: P-73
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    [目的]妊娠動物では妊娠の経過に伴い種々の生理学的パラメータが変動することが知られており、我々は、第34回本学会においてラットの妊娠経過に伴う血液及び血液化学パラメータの変動について報告した。アセトアミノフェン(APAP)は解熱鎮痛薬で、風邪薬などの一般用医薬品に含まれおり、多量に摂取するとCYP2E1による代謝産物が肝障害を誘発することが知られている。我々は今回、妊娠末期ラットにAPAPを投与し、検索した。[方法]14~15週齢のCrl:CD(SD)妊娠ラットを用い、妊娠17~19日にAPAP (1000 mg/kg/day)を強制経口投与した。妊娠20日にエーテル麻酔下で腹大動脈から採血して血液化学検査を実施した。また、肝臓を摘出してホルマリン固定後、病理組織学的検査を実施した。さらに、妊娠17及び19日に血漿内薬物濃度を測定した。対照動物として同様の処置をした非妊娠動物を用いた。[結果]血液学的検査では、妊娠動物ではAPAP投与による影響は認められなかったが、非妊娠動物では個体によってASTが高値を示した。肝臓の病理組織学的検査においては、妊娠動物では病変は全く認められなかった。一方、非妊娠動物の肝臓では約半数の個体で小葉中心性の肝細胞壊死と細胞浸潤が認められたが、その程度には個体差がみられた。なお、APAPの血漿内薬物濃度は妊娠動物と非妊娠動物の間に有意差は認められなかった。[考察]妊娠末期ラットでは、非妊娠ラットとは異なり、APAPによる肝毒性は認められなかった。これは、妊娠末期ラットの肝臓ではCYP2E1の発現が半減する(He et al., 2005)ことを反映しているものと推察された。
  • 清水 郷美, 城所 祐里, 大石 巧, 北澤 隆宏, 梅下 和彦, 鎌田 貴志, 岸 大輔, 鈴木 沙織, 西原 義人, 中村 大地, 望月 ...
    セッションID: P-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    〔目的〕新生児はビタミンK(VtK)欠乏による「新生児出血性疾患」に罹患しやすく、母親がフェノバルビタール(PB)などの投薬治療を受けると、その乳児にしばしば認められる。我々は第34回本学会学術年会で、SD系雄ラットにPB(100 mg/kg)を反復経口投与し、投与1日からAPTTが延長することを報告した。今回は、PBを非妊娠、妊娠及び授乳期のラットに反復投与し、母動物の血液凝固時間への影響と授乳期の仔ラットへの影響についても検討した。 〔材料及び方法〕妊娠及び非妊娠ラットに妊娠13~19日の7日間、PB(80 mg/kg)を経口投与し、妊娠20日に採血して無処置の妊娠及び非妊娠ラットと比較した。また、授乳ラットに分娩後7~13日の7日間、PBを同様に経口投与し、分娩後14日に採血して無処置の授乳ラットと比較した。更に、PB投与及び無処置の毋ラットのそれぞれの仔ラットから採血し比較した。検査項目は、PT、APTT、FIB、トロンボテスト(TBT)、第VII、IX及びX因子(F-VII、IX及びX)並びにアンチトロンビンIII(ATIII)である。 〔結果及びまとめ〕PB投与非妊娠ラットでは、無処置非妊娠ラットと比べ、ATIIIの増加がみられたが、血液凝固時間の延長は認められなかった。PB投与妊娠ラットでは、無処置妊娠ラットと比べ、血液凝固時間の延長は認められなかった。また、PB投与授乳ラットでは、無処置授乳ラットに比べ、APTTの延長及びATIIIの増加が認められた。更に、PB投与毋ラットの仔ラットでは、無処置毋ラットと比べ、PT及びAPTTの延長(雌雄)、F-VIIの減少(雄)及びF-IXの減少(雌)が観察された。こうした結果から、PB投与は授乳期の母仔ラットの血液凝固系に影響を及ぼすことが明らかになった。現在、授乳期の毋ラットへのPB及びVtK併用投与の影響について検討中である。
  • 北澤 隆宏, 鈴木 沙織, 望月 雅裕, 吉長 洋妥, 岡崎 恵美, 長田 ちさと, 松下 秋子, 古賀 美代子, 出野 悦子, 大石 巧
    セッションID: P-75
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    〔目的〕  抗凝固薬であるワルファリンを用いて、妊娠ラットと非妊娠ラットおよび授乳ラットと非授乳ラットにおける血液凝固系の変化を比較し、妊娠あるいは授乳がワルファリンによって生じる血液凝固系の変化にどのような影響及ぼすかについて検討した。 〔材料と方法〕  妊娠ラットおよび非妊娠ラットに妊娠17日から19日の3日間、ワルファリン (0.5 mg/kg/day)を強制経口投与し、無処置の妊娠ラットおよび非妊娠ラットを対照群として用いた。また、授乳ラットおよび非授乳ラットに分娩10日から12日の3日間、ワルファリン(0.5 mg/kg/day)を強制経口投与し、無処置の授乳ラットおよび非授乳ラットを対照群として用いた。投与終了の翌日(妊娠20日または授乳13日)に採血し、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン量(FIB)、トロンボテスト(TT)、第_VII_因子(F-_VII_)、第_X_因子(F-_X_)およびアンチトロンビンIII(AT-III)を測定した。 〔結果とまとめ〕  非妊娠ラットでは、ワルファリン投与によりPTおよびAPTTの著明な延長がみられ、TT、F-_VII_およびF-_X_にも影響がみられたが、妊娠ラットではAPTTおよびTTに影響がみられたのみで、その程度も軽度であった。また、授乳ラットでも同様にAPTTに影響がみられたのみで、その程度も軽度であった。こうした結果から、ワルファリンによるラットの血液凝固系への影響は、妊娠期および授乳期には軽減することが明らかになった。その原因については、エストロゲンとの関連も含めて、目下検討中である。
  • 加藤 善久, 岡田 将平, 跡部 一孝, 松原 大, 遠藤 哲也, 尾熊 隆嘉, 原口 浩一
    セッションID: P-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】 Atmospheric pressure chemical ionization (APCI)(-)-LC/MS/MSを用いて、臭素系汚染物質、PBDEs、methoxy (MeO-) PBDEs、OH-PBDEsの同時定量法の確立を試みた。【方法】 2,2',4,4'-tetrabromodiphenyl ether (BDE-47)、2,3',4,5'-tetrabromodiphenyl ether (BDE-68)、3,3',5,5'-tetrabromobiphenyl (BB-80)の各MeO体及びOH体について、APCI-LC/MS/MS (API 3200Q TRAP)を用いて定量法を検討した。【結果・考察】 目的物質のQ1とQ3の組合せから測定するMRMモードを用いて、Q1をプリカーサーイオン([M-Br+O]-あるいは[M-H]-)のm/zに、Q3をプロダクトイオン(Br-など)のm/zに設定し、高選択的に9化合物を測定できることを見出した。このAPCI-MRM法による定量条件の最適化を行い、LCカラムにFC-ODS(150×4.6 mm)を、移動相に90%アセトニトリルを用いて、9化合物を約20分で同時定量する方法を確立した。この方法を用いて、パラオ産海綿や沖縄産イタチザメの肝臓中残留汚染物質の分析を行った。サメ肝臓には、6-MeO-BDE47、2'-MeO-BDE68、2,2'-diMeO-BB80がBDE-47より高濃度に含まれ、サメ肝臓から6-OH-BDE47、2'-OH-BDE68、2,2'-diOH-BB80が初めて検出された。以上、GC/MS法と同程度の感度、精度及び検出限界を示し、GC/MS法よりも前処理が簡便で、PBDEsのMeO体とOH体を同時定量することできるAPCI(-)-LC/MS/MSによる定量法を確立した。
  • 永山 裕子, 関戸 徹, 桃澤 由妃, 田中 春樹, 桂川 永美子, 江崎 健, 堀 宏行, 藤川 康浩, 菅沼 彰純, 青木 豊彦
    セッションID: P-77
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】近年,EMEA/FDAにより腎障害を早期に把握するバイオマーカー(BM)として,7種類の尿中BMの有用性が示唆されたが,BMの変動と腎の病理組織学的変化を体系的に比較したデータは利用しうる状況にない。そこで,腎障害部位の異なる腎毒性物質,Puromycin aminonucleoside (PA), Cisplatin (CDDP)及びGentamicin (GM)をラットに単回及び7日間反復投与し,Kim-1, Albumin (ALB), Clusterin (CLU)を経時的に測定,腎病理組織像・臨床検査と比較検討し,その有用性を検討した。【方法】8週齢雄SDラット(5例/群)にsaline, PA 150 mg/kg(ip), CDDP 5 mg/kg(ip), GM 100 mg/kg(sc)を単回投与し,2, 4及び8日目に血液と22時間蓄尿を採取し8日目に剖検した。血液生化学検査,尿検査及び腎の病理組織学的検査を行うとともに,Kim-1, ALB, CLUの尿中排泄量をSector Imager 6000 (MSD社)で測定した。反復投与では,saline, PA 20, 40 mg/kg, CDDP 0.5, 2 mg/kg, GM 10, 50 mg/kgを7日間静脈内投与し,単回投与と同様に試料採取し測定した。【結果,考察】糸球体を障害するPAでは,単回及び反復投与に関わらず,4日目にALBが上昇し,近位尿細管上皮に病変が波及した8日目にはKim-1, クレアチニンが上昇した。一方,近位尿細管を障害するCDDPの単回投与では,2日目にKim-1の上昇,4日目にBUN, クレアチニン, ALBが上昇した。反復投与の低用量では,Kim-1のみが4日目に上昇し,高用量では単回投与の変化に加え4日目にCLUも上昇した。近位尿細管を障害するGMの単回投与では腎毒性は発現せず,反復投与の高用量で軽度の尿細管障害がみられたが,8日目にKim-1及びCLUが上昇傾向にあった。Kim-1は近位尿細管上皮に,CLUは尿細管全体に分布しており,ALBは糸球体機能に関係しているが,今回の検討で,障害部位によってBMが古典的な臨床病理検査に先立って変動することが示された。
  • 小野寺 章, 荻田 郁弥, 柏村 麻子, 吉田 恵, 堤 康央, 伊藤 徳夫
    セッションID: P-78
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】ミトコンドリアは、化学物質を含めた各種ストレスの標的になりやすく、ミトコンドリアDNA (mtDNA)の8-oxo-guanine蓄積量は、核DNAの数倍から数十倍と言われている。mtDNAの安定性低下は、発がんや老化のみならず、各種疾患の原因とされ、化学物質がこれらの加速因子として作用することが指摘されている。しかし、化学物質による細胞傷害とmtDNAの安定性がどのように関わっているのかに関しては、未だ不明な点が多い。すなわち、1つのミトコンドリアにはmtDNAが複数コピー存在し、細胞全体では数千コピーにも及ぶ、仮にその中のいくつかに変異があったとしても、残りの正常なmtDNAがその働きを補うため、mtDNAを標的とする解析が困難とされている。このため、細胞傷害とmtDNAの関連は、mtDNA損傷の定量的な解析を基に、化学物質の暴露から毒性発現に至る一連の過程を検討することが望まれる。そこで本研究では、mtDNA損傷の簡便な評価法の確立を行い、アルキル化剤N-Methyl-N'-Nitro-N-Nitrosoguanidine(MNNG)をモデルに、mtDNAのアルキル化損傷に関する解析を行う。【方法】mtDNAのアルキル化損傷は、アルキル化DNA感受性制限酵素Pst I、mtDNA損傷部位特異的プライマー、real time PCR法を用いた新規mtDNA損傷の簡易解析法により行った。【結果・考察】Balb/c 3T3細胞を用いた解析から、MNNG暴露によるmtDNAの増加、すなわち、mtDNA損傷部位特異的プライマーによる増幅が確認された。これは、MNNGの標的としてmtDNAが損傷を受けることを示唆している。現在、MNNG暴露から細胞がん化に至る一連の課程において、mtDNAの安定性がどのように関連しているのについて、活性酸素種の産生、細胞老化、アポトーシスに注目し、検討中である。
  • 井上 知紀, 田崎 雅子, 石井 雄二, 岡村 俊也, 鈴木 裕太, 増井 則夫, 能美 健彦, 梅村 隆志, 西川 秋佳
    セッションID: P-79
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】ビタミンE群の一つであるTocotrienol(TTE)は従来の変異原性試験では陰性を示すが、2年間混餌投与によりラット肝臓に弱いながら発がん性を有している。そこで今回、TTEの発がん機序解明を目的に、gpt deltaラットを用いたin vivo mutation assayならびにdiethylnitrosamine (DEN)をイニシエーターとした肝発がんプロモーション作用の検討を行った。【方法】実験1:雌6週齢のF344 gpt deltaラット各群6匹にTTEを2および4%の濃度で13週間混餌投与し、肝臓中のgpt遺伝子突然変異頻度(MF)解析を行った。その他、対照群には基礎飼料のみ、あるいはDEN 20 mg/kgを週1回、計13回腹腔内投与した。実験2:雌7週齢のWistar Hannoverラット各群25匹にDEN 200 mg/kgを単回腹腔内投与し、その2週後よりTTEを0.4、1および2%、phenobarbital (PB)を0.05%の濃度でそれぞれ6週間混餌投与した。実験開始後3週目に2/3肝部分切除を行い、実験期間8週で屠殺剖検後、GST-P陽性肝細胞巣の定量解析を行った。【結果】実験1:MFはDEN投与群で有意な上昇が認められたが、TTE投与群では有意な変化は認められなかった。実験2:PB投与によりGST-P陽性肝細胞巣の単位面積あたりの個数および面積の有意な上昇が認められたが、TTE投与群では変化は認められず、病理組織学的に結節性肝細胞過形成が認められた。【結論】本実験条件下ではラット肝におけるTTEのin vivo変異原性ならびに発がんプロモーション作用は認められなかった。結節性肝細胞過形成を構成する肝細胞は非常に高い細胞増殖活性を有していることから、長期間投与により生じるこのような過形成性病変の発がん過程への関与が示唆された。
  • 岡村 俊也, 石井 雄二, 井上 知紀, 田崎 雅子, 鈴木 裕太, 児玉 幸夫, 能美 健彦, 梅村 隆志, 西川 秋佳
    セッションID: P-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】慢性炎症は発がんリスクを高める要因の一つであり、炎症反応によって生じる種々の炎症関連因子の発がん過程への関与が示唆されている。本研究では、慢性炎症下の遺伝毒性発がん物質暴露の生体影響を検索するため、四塩化炭素(CCl4)誘発肝障害モデルを用い、B6C3F1 gpt delta マウス肝に対する2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f]quinoxaline (MeIQx)のin vivo変異原性を検討した。【方法】8週齢の雌マウスにMeIQxを300 ppm混餌で13週間投与した。投与2週目より、CCl4を0.2 mL/kgの用量で1回/週の頻度で腹腔内投与した。投与終了後に解剖し、肝臓を採取してgpt 及びSpi- mutation assayに供した。また、肝臓からRNAを抽出してMeIQxの代謝・排泄に関わるCYP1A2及びGSTのmRNA発現量をreal-time RT-PCR法を用いて検索した。【結果】gpt 及びSpi- assay共に、MeIQx投与により対照群と比べてmutant frequency(MF)の有意な増加が認められ、更に併用投与群では、MeIQx単独群と比べてMFの有意な増加が認められた。gpt assayで得られた変異体のスペクトラム解析の結果、MeIQx投与によりGC:TA transversionが高い頻度で観察され、併用投与群ではclonalな増加が高頻度にみられた。CYP1A2及びGSTのmRNA発現量に併用投与による影響はみられなかった。【考察】本実験条件下では、gpt delta マウスの肝臓におけるMeIQxのin vivo変異原性はCCl4投与によって増強された。これはMeIQxの代謝活性化の上昇や排泄経路の抑制によるものではなく、細胞増殖活性の増加に起因する可能性が示唆された。
  • 石井 雄二, 岡村 俊也, 田崎 雅子, 井上 知紀, 児玉 幸夫, 能美 健彦, 梅村 隆志, 西川 秋佳
    セッションID: P-81
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】ルシジン配糖体(lucidin-o-primeveroside; LP)はラット腎臓および肝臓に発がん性を有するアカネ色素の構成成分の一つで、代謝を受け変異原性を有するLucidin (Luc)を生成する。また、LPを投与した齧歯類の腎臓及び肝臓ではLuc特異的DNA付加体の形成も報告されており、その代謝活性化にはsulfotraspherase(SULT)の関与が想定されているが、その詳細は不明である。本研究では、LPによるgpt deltaマウス腎臓でのin vivo突然変異誘発性に対するSULT阻害剤pentachlorophenol(PCP)の併用投与の影響を検討した。 【方法】10週齢の雄性B6C3F1 gpt deltaマウス20匹を各群5匹に分け、0.3%LPと0.02%PCPの複合投与群、それぞれの単独投与群ならびに基礎飼料のみの対照群とした。投与は全て粉末飼料に混じて行い、PCPの投与はLPの投与1週間前から開始した。LP投与後13週間目に動物を解剖し、腎臓の病理組織学的検索および腎臓DNA中のgpt点突然変異頻度(MF)の検索を行った。 【結果】病理組織学的検索の結果、LP群では腎臓の髄質外帯に核の大小不同が顕著に認められたが、LP+PCP群では明らかな変化は観察されなかった。さらに、各群2~3例のgpt assayの結果、MFはLP群で基礎飼料群に比べ明らかな上昇が認められたが、LP+PCP群では抑制傾向が認められた。 【考察】LPの投与によって認められた核の大小不同およびMFの上昇に、SULTによるLuc代謝活性化体の関与が示唆された。さらに例数を増やしたgpt assayの解析結果、ならびにSULT含めた代謝酵素に関する検討を加えて報告する予定である。
  • 林 庚澤, 金 秀珍, 曺 海源, 金 鉉榮, 梁 貞善
    セッションID: P-82
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    プ-ラレン Fullereneの遺伝毒性を評価するためにChinese hamster由来の卵巣乳児細胞(CHO-K1 cell)を利用して,直接法(-S9)と大使活性化法(+S9 mix)の染色体以上試験を実施した。 試験物質は1% CMCナトリウム炎の懸濁液(1 % CMC溶液)に薄めて,調剤した。 大使活性化をさせなかった直接法の染色体以上試験で24時間投与郡は8段階の濃度(0.078,0.156,0.313,0.625,1.25,2.5,5,10 mM)で投与して,実施した。 投与濃度増加にともなう染色体以上の頻度が増加する様相が現れなかった。 48時間の投与郡では8段階の濃度(0.078,0.156,0.313,0.625,1.25,2.5,5,10 mM)で投与して,実施したが投与濃度増加にともなう染色体以上の頻度が増加する様相が現れなかった。 倍数体の染色体以上は直接法で観察されなかった。 大使活性化法を利用して,6時間試験物質を投与した試験においては8段階の容量段階(0.078,0.156,0.313,0.625,1.25,2.5,5,10 mM)を設定したが投与濃度が増加するのに伴った染色体以上頻度の増加様相が観察されなかった。 以上の結果を総合する時に見た試験物質は本試験条件下でCHO-K1細胞で大使活性化をさせた時,染色体以上を誘発しないことと判断される。
  • 林 庚澤, 金 鍾圭, 金 秀珍, 金 鉉榮, 梁 貞善
    セッションID: P-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    抗発癌および抗突然変異物質を含有した天然抗酸化物質(phytochemicals)の高麗人参抽出物ginsenoside Rb1,Rg1の遺伝子変二元性の抑制効果を遺伝毒性確認試験方法の染色体以上試験およびFLARE/Comet assayで確認して,染色体以上発生抑制効果およびDNA損傷抑制効果に対する基礎資料で活用しようと思って,同一発ガン物質による染色体以上試験およびComet assay結果の一致性および敏感度を比較評価して,遺伝(油田,流転)毒性評価時活用しようとする。 細胞毒性試験結果ginsenoside Rb1を処理した濃度郡で音声対照郡より平均8.3%高い細胞増殖率を見せ,Ginsenoside Rg1で処理した濃度郡で対照群より平均10.4%高い細胞増殖率を見せた。 染色体以上試験結果ginsenoside Rb1処理すべての濃度郡で染色体以上発生率は減少し,またginsenoside Rg1処理すべての濃度郡で染色体以上発生率も減少した。 FLARE assay試験結果ginsenoside Rb1処理すべての濃度郡でOlive tail moment値段が減少し,またginsenoside Rg1処理すべての濃度郡でOlive tail moment値段が減少した。 従って、本研究では天然抗酸化物質のginsenoside Rb1,ginsenoside Rg1が染色体以上発生率抑制効果およびDNA損傷に対する抑制効果があるということを見せている。
  • 荻田 郁弥, 小野寺 章, 柏村 麻子, 堤 康央, 伊藤 徳夫
    セッションID: P-84
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】放射線による発がんは確率的影響に分類され、いかに低線量であっても害があると考えられてきた。一方、ごく低線量の被爆は、むしろ生物にとって有益であることを示す報告が複数存在する。化学発がんにおいても類似の現象が認められる可能性を考え、アルキル化剤N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)をモデルに、低用量の化学物質が細胞のin vitro transformation(悪性形質転換)感受性に影響するか否かを検討した。【方法】使用した低用量の設定は、Balb/c 3T3細胞を用いたコロニー形成試験法により生存細胞率が98%あるいは95%を示す用量とした。細胞のin vitro transformationはfocus 形成試験により解析した。【結果・考察】低用量のMNNGで細胞を処置すると、自然発生focusの出現頻度が有意に低下し、高用量域では濃度依存的なfocus形成の増加を認めた。さらに、低用量で一過性に前処置することで、以後の高用量処置で誘発されるfocus形成が顕著に抑制させることを見いだした。低用量のMNNG処置が細胞にどのような変化をもたらすのか、抗酸化系や損傷修復系、細胞周期、アポトーシス等に注目した解析を行っている。
  • Ya-Wen Cheng
    セッションID: P-85
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    Lung cancer is the leading cause of cancer death in Taiwanese women since 1982. Cigarette smoking is considered to be the major cause of lung cancer, however more than 90% of female patients are nonsmokers. Therefore, different etiology may be expected in developing lung cancer in Taiwanese women. In the first case-control study indicated that human papillomavirus (HPV) 16/18 subtype was associated with lung cancer development in Taiwanese women nonsmokers, not in male smokers and nonsmokers. Here, we provide the following evidences to demonstrate that HPV16/18 is really involved in lung tumorigenesis. In the first, HPV16/18 E6 oncoprotein is indeed expressed in lung tumors, and p21WAF1/CIP1 and Mdm2 mRNA expressions are reduced through p53 protein degraded by E6 oncoprotein in HPV-infected lung cancer cell lines which are successfully established from patients’ plural effusion. Secondly, the involvement of HPV infection in lung tumorigenesis may be partially through a concomitant increased expression of the autocrine and/or paracrine IL-6 and the downstream antiapoptic Mcl-1 in lung tumors and HPV-infected lung cancer cells. Thirdly, we evidence that hTERT transcription activated by HPV-16/18 E6 oncoprotein is required for HPV-infected lung tumorigenesis. Therefore, telomerase inhibitor may be chosen to be as a molecular targeting therapeutic in HPV-infected lung cancer. Collectively, these results provide the crucial data to evidence that HPV 16/18 infection is indeed involved in lung tumorigenesis, particularly in Taiwanese women nonsmokers.
  • Lee Young Sook, Yoon Seokjoo, Yang Young-Su, Kim Jin Hwa, Lee Jeung-Ho ...
    セッションID: P-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    In this study, we determined whether p53 expression affected the sensitivity of non-small cell lung cancer (NSCLC) and colon cancer cells to bleomycin. Cells were treated with various concentrations of bleomycin and cellular viability was assessed by formazan assay using CCK-8 reagents. To investigate the role of p53 in bleomycin sensitivity, we transduced cells with adenovirus expressing wild-type p53 or dominant-negative p53 and analyzed the effect of bleomycin on cellular viability. The expression of p53 and p21, as a control, was examined using Western blot analysis. Cells expressing wild-type p53 were more sensitive to bleomycin than p53-null cells in both lung cancer and colon cancer cells. In addition, bleomycin sensitivity was dramatically increased or decreased by overexpression of wild-type and dominant-negative p53, respectively. We propose that p53 plays an essential role in the response to bleomycin and may be considered a target in bleomycin therapy.
  • 水上 さやか, 嶋田 悠子, 市村 亮平, 鈴木 輝政, 松本 明, 渋谷 淳, 三森 国敏
    セッションID: P-87
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】鉄や銅は生体内の酸化性ストレスの生成に関与し、これらの蓄積異常と発がん性の関連は知られている。本研究では、内因性の鉄や銅の発がんに対する関与を検討する目的で、ラットの肝発がん促進時でのこれら必須元素の輸送や代謝に関与するトランスフェリン受容体(TfR)、セルロプラスミン(Cp)、メタロチオネイン(MT)について、誘発された肝前がん病変及び腫瘍での発現局在を検討した。【方法】6週齢の雄性F344ラットを用いて肝中期発がん性試験法に従ってポストイニシエーション期でのフェノバルビタール(PB)、フェンベンダゾール(FB)、ピペロニルブトキサイド(PBO)、チオアセタミド(TAA)の混餌投与を6週間行い、FB投与群では57週間投与を継続して肝腫瘍を誘発し、肝臓について肝前がん病変マーカーであるGST-Pとともに、TfR、Cp、MTの免疫組織化学的な局在解析を行った。【結果】FB、PB、PBOの6週間投与で誘発されたGST-P陽性巣にTfRに共陽性を示すものが出現し、FB、PBOでGST-Pとの一致性がDEN単独群より増加したが、TAA投与では逆にGST-P陽性巣に一致したTfR陰性巣の形成が増強した。また、CpはGST-P陽性巣に一致して陰性巣を形成し、各物質の発がん促進により一致性が増強した。FB誘発腫瘍は全てGST-Pに陽性を示し、変異肝細胞巣に比べTfR陽性及びCp陰性所見の一致率が高かった。一方、MTは島状の陽性巣を形成したが、GST-P陽性巣及び腫瘍とは共発現しなかった。【考察】TfRは発がん物質によりGST-P陽性巣での局在性が逆転し、発がんに伴う二次的な発現変化を示唆した。Cpは発がん促進に応じてGST-P陽性巣に陰性を示す巣が増加し、腫瘍でも高い陰性率を示したことから、これらの病変では発がん促進によって鉄の酸化を伴う酸化性ストレスが特異的に減少しているか、あるいはストレスに関わらずCpの欠落に伴い抗酸化作用が減少している可能性が示唆された。一方、MTは肝発がん促進には寄与しないと考えられた。
  • 徳本 真紀, 藤原 泰之, 長谷川 達也, 瀬子 義幸, 永瀬 久光, 佐藤 雅彦
    セッションID: P-88
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
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    【目的】我々は、カドミウム (Cd) で処理したラット腎近位尿細管上皮(NRK-52E)細胞において、p53が過剰蓄積した後に、細胞毒性が出現することをすでに本学会にて報告した。p53はアポトーシス誘導因子であることから、今回、Cdによるアポトーシス誘導とp53のリン酸化をNRK-52E細胞を用いて検討した。 【方法】NRK-52E細胞をコンフルエントまで培養後、2および5 µMのCdで24時間処理した。非特異的な細胞毒性をLDHアッセイおよび形態学的観察により評価した。細胞中のCd濃度をICP-MSにより、p53タンパク質濃度をELISA法によりそれぞれ測定した。また、アポトーシスは断片化DNAの検出により確認し、リン酸化p53はWestern blot法により検出した。 【結果および考察】2および5 µMのCd処理によって濃度依存的に細胞毒性が出現し、細胞中のCd濃度もこれと同様に上昇した。細胞内p53濃度もCd処理濃度に依存して高値を示した。なお、Cd 12時間処理後の細胞内p53濃度を測定したところ、両Cd処理群でともにp53濃度の顕著な増加が認められた。アポトーシスは両Cd処理群で認められ、Cd 5 µM処理群では多くの断片化DNAが検出された。また、p53が活性化してアポトーシスを誘導するためにはリン酸化されることが必要であるが、Cd処理濃度に依存してリン酸化p53 (Ser 15) が増加することが確認された。以上の結果より、Cdは、NRK-52E細胞内でp53を過剰蓄積し、その一部がリン酸化されて活性型となってアポトーシスを誘導することにより細胞毒性を引き起こす可能性が示唆された。また、Cdによるアポトーシスは細胞内p53蓄積量に依存して引き起こされると考えられる。
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