比較生理生化学
Online ISSN : 1881-9346
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ISSN-L : 0916-3786
41 巻, 3 号
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総説
  • 志垣 俊介, 大橋 ひろ乃
    2024 年41 巻3 号 p. 118-130
    発行日: 2024/12/05
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    生物は長期的な試行錯誤ともいえる進化によって,多様な形態の身体や能力,知能を獲得してきた。様々な研究チームはこの生物の知的要素や身体構造を生物・情報・工学などの分野から多面的に調査することで,生物らしさを人工的に再現することに挑戦してきた。このような境界領域研究によって発展してきた生物模倣型ロボティクスとソフトロボティクスについて紹介する。本稿では,特に,著者らがこれまでに取り組んできた研究事例である,昆虫用仮想現実(VR)を用いた行動実験,行動実験から得られた結果に基づく適応性の抽出とロボットへの実装,生体素材を用いたソフトロボット身体の設計,を中心に紹介を行う。

  • 河野 大輝
    2024 年41 巻3 号 p. 131-140
    発行日: 2024/12/05
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル フリー

    ハチ目には,単独性から社会性までの異なる社会性段階の種や,植食性,寄生性,営巣性などの多様な行動を示す種が存在する。これらの行動は系統分岐に従って段階的に獲得されてきたと考えられており,ハチ目昆虫は行動進化と関連する脳基盤を比較解析により探索する上で有用な系統である。ハチ目昆虫の行動や脳の組織学的な研究は古くから行われており,脳の大きさや構造といった形態の種間比較により行動と関連する脳基盤が探索されてきた。一方,近年のシングルセル解析の興隆により,社会性ハチ目において脳を構成する細胞種の網羅的な同定や,分業に応じて構成や遺伝子発現が変化する細胞種の解析が行われ,細胞種レベルでの種間差異の探索が可能になってきている。また,複数のハチ目昆虫種で遺伝子改変法が確立され,遺伝子や神経細胞の行動制御における機能解析も可能になりつつある。本稿では,まずハチ目昆虫の系統と行動について概観する。次に,ハチ目昆虫種間の脳の比較解析によって明らかになった行動進化と関連する脳基盤について,筆者らの最近の研究例も交えて解説する。さらに,種間差異が見つかった脳基盤の行動制御における機能を調べる上で重要な遺伝子改変技術について,ハチ目昆虫の現状を技術的な側面に触れつつ紹介する。

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