救急告示病院としての告示や在宅療養支援病院としての届出という病院の地域での役割に関する経営方針や,高額な医療機器設備への投資方針,入院病棟管理に関する経営方針は,病院の財務状況に影響を与えている可能性が高い。そのため,とりわけ厳格に経営的自立性が求められる医療法人病院にとっては,これらの病院経営方針が財務的にどのような影響をもたらす可能性が高いのかを把握して経営上の知見を得ることが大切である。また診療報酬政策や病院経営支援の政府担当部局にとっても,こうした経営方針による病院財務への影響状況を把握することは重要である。しかしながら,従来,こうした病院経営方針による財務的影響について,損益面でさえも基本的に明らかにされてこなかった。そこで本稿では,病院を一つのみ経営する医療法人病院群を対象として,各種要因間の影響を統制しつつ,各経営方針が採算性・資産効率性・資産収益性の各財務側面に有意な影響を与えているかを検証した。その際,前回の医療介護同時改定前後という制度環境を若干異にする二つの経営環境下で検証することで,各経営方針の財務的影響の制度環境によらない一貫性も確認した。本研究により,各制度環境の下での各種経営方針の多様な財務側面への影響が明らかにされるとともに,特定の経営方針の特定の財務側面への影響の根深さも明らかとなった。
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