22q11.2欠失症候群は,約2,000~6,000人に1人の割合でみられる,染色体の微細欠失を原因とする難病である。生涯を通じて身体疾患,神経疾患,知的障害など多様な併存疾患やそれらの重複(多疾病罹患)が生じる。このため22q11.2欠失症候群のある人は生活の質が低下しやすいと考えられるが,多疾病罹患と生活の質の関係に関する知見は不足している。本研究は日本の指定難病患者データベースを利用し,22q11.2欠失症候群のある人の多疾病罹患と生活の質の関係を調べた。
平成27年から令和2年に指定難病患者データベースに登録された22q11.2欠失症候群のある人87名分について,併存疾患(先天性心疾患,胸腺発達遅延・無形成による免疫低下,知的障害など)と生活の質(ふだんの活動,身の回りの管理,痛み/不快感など)の情報を得た。併存疾患の合計数の二値変数(3つ以下,4つ以上)と生活の質の各項目の二値変数(困難あり,なし)の関係をχ2検定で分析した。
併存疾患数4つ以上の人は,3つ以下の人より,ふだんの活動に困難ありと報告される割合が高かった(87% vs 63%,p=0.03)。統計的有意差は認められなかったが,併存疾患数4つ以上の人は,3つ以下の人より,身の回りの管理や痛み/不快感も困難ありと報告される割合が高かった。
22q11.2欠失症候群のある人の生活の質のうち,ふだんの活動を改善するためには,各併存疾患の治療や支援で多疾病罹患を軽減することに加え,より重い多疾病罹患を抱える人に対する支援体制の確立が必要かもしれない。
抄録全体を表示