医療と社会
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16 巻 , 2 号
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研究論文
  • 大日 康史, 菅原 民枝
    2006 年 16 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/08/22
    ジャーナル フリー
    目   的:医療や公衆衛生における費用対効果分析における政策意思決定では,社会における1単位のQALYを獲得するためのWTPの情報が不可欠である。日本では先駆的な調査があるが,それは直接法でされており,問題が多い。本稿では先行研究と同じ目的を,コンジョイント分析を用いて行う。
    対象と方法:2005年度に全国において実施された調査における回答を分析した。調査は,772世帯から回収を得た(回収率88%)。分析対象者は20歳以上の成人1,297人である。質問では,経済社会的属性に加えて,仮想的な費用,期間,患者数,健康状態での医療を賛成するかどうかをコンジョイント分析で行う。また,推定式における説明変数,割引率,健康状態のQOL評価で感度分析を行う。
    結   果:全ての場合総費用は負で有意,獲得するQALYは正で有意である。QALYあたりWTPは,635~670万円である。所得によるQALYあたりWTPへの影響は確認されない。
    考   察:本稿で求められたQALYあたりのWTPは先行研究よりもやや高いが,大きく変わらなかったことは特筆に値する。これは,QALYあたりのWTPがほぼ600~700万円であるとする根拠が頑健であることが示唆される。
  • 縄田 和満, 井伊 雅子, 石黒 彩, 川渕 孝一
    2006 年 16 巻 2 号 p. 167-181
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/08/22
    ジャーナル フリー
     我が国においては,水晶体手術には単眼の手術を行う場合と一度の入院で両眼の手術を連続して行う場合がある。本論文では,単眼の手術と両眼の手術を行った場合の水晶体の手術における在院日数を離散型の比例ハザード・モデルを用いて分析した。手術方法の違いによる在院日数への影響を除くため,水晶体にたいする主な手術として,水晶体超音波乳化吸引・水晶体乳化・白内障の水晶体乳化吸引術・白内障手術(超音波摘出術)のデータを分析した。また,両眼施術の実施率に影響すると考えられる要因についての分析を判別分析およびトービット・モデルによって行った。
     この結果,単眼手術においては,子供であること,退院先が他施設であることの推定値が負の値で有意で退院率に影響しており,これらの患者の入院期間が長くなることが認められた。附属する手術を行った場合,退院率が低く入院期間が長くなることが認められた。両眼手術に関しては,退院先他施設ダミー,硝子体への手術,その他の手術の推定値は負の値で有意であり,退院率に影響していることが認められた。単眼手術での在院日数が長い病院では両眼手術においても在院日数が長くなる傾向が認められた。1病院を除き,両眼手術の平均在院日数は,単眼手術の場合の2倍以下となった。両眼手術の患者は,単眼手術に比較して年齢が高く,退院先が他施設で割合が低い傾向があることが認められた。さらに,病院の規模が大きく利益率が高いほど,両眼手術の実施率が高い傾向が認められた。
  • 涌水 理恵, 上別府 圭子
    2006 年 16 巻 2 号 p. 183-200
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/08/22
    ジャーナル フリー
     鼠径ヘルニア根治術を受ける3~7歳の子どもと保護者を対象に,家庭でのVTR視聴をメインとしたプレパレーションの有効性をランダム化比較試験により検証した。入院前の時点で,2群への無作為割り付けを行い,対照群(n=31)には従来のケアすなわち「外来での術前オリエンテーションビデオ(以下,VTR)の1回のみの集団視聴」を行い,介入群(n=28)には従来のケアに加え「各家庭におけるVTRの反復視聴」を小冊子に沿って子どもに行うよう保護者に依頼した。経時的な子どもの心理的混乱を主要アウトカムとし,介入前1回,周手術期2回,退院時1回,退院後3回(退院後1ヶ月の時点まで)の計7回,測定した。周手術期のバイタルサインや,親の不安も評価した。
     結果,「子どもの心理的混乱(代理評価)(p=0.01)」,「麻酔導入時の協力行動(p=0.04)」,「周手術期の体温(p=0.003)および心拍数(p=0.02)」において介入効果が得られた。
     一方で,介入の有無に関わらず,退院後の子どもの退行行動は問題を呈したことから,医療者は,術前のみならず術後においても,子どもと保護者の精神面のアセスメントとフォローを行う必要性が示唆された。
     今回,VTRの反復視聴をメインとする家庭でのプレパレーションによって,子どもの周手術期の心理的混乱や生理反応が緩和された一方で,子どもの退行行動および母親の不安に関しては介入の有効性が明らかにはならなかった。
  • 二木 立
    2006 年 16 巻 2 号 p. 203-212
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/08/22
    ジャーナル フリー
     本稿は,平成18年度第1回医療経済研究会(2006年4月24日)での講演(座長:田中滋氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授),講演:二木立氏(日本福祉大学社会福祉学部教授),権丈善一氏(慶應義塾大学商学部教授))「医療経済・政策学の視点と方法」における二木氏の講演内容を,氏が書き起こし・加筆したものである。
研究ノート
  • 小島 愛
    2006 年 16 巻 2 号 p. 213-226
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/08/22
    ジャーナル フリー
     今日のイギリスでは,先進的な病院が,世界で注目されている「企業不祥事の防止」と「企業競争力の強化」とを目的としたコーポレート・ガバナンス改革を実践している。そこでは,潜在的な患者である地域住民が,評議会と理事会との運営に積極的に関与し,病院の経営者によるコーポレート・ガバナンス改革に貢献している。
     本稿では,ファンデーション・トラストにおける経営構造を明らかにするとともに,経営機構改革(狭義のコーポレート・ガバナンス)の内容に加え,情報開示・透明性の向上(広義のコーポレート・ガバナンス)に関する現状と課題を浮き彫りにしている。特に,情報開示・透明性に関しては,ほとんどの病院において,年次報告書などの詳細な開示がすすみ,コーポレート・ガバナンスとコーポレート・ガバナンス原則に関する記述もみられる一方で,独立監査人の意見や各々の病院で抱える問題点の未掲載などの課題が浮き彫りになった。
     ファンデーション・トラストでは,今日における日本の病院にとって少なからず参考にできるコーポレート・ガバナンス改革が展開されている。今後は,コーポレート・ガバナンス改革の実践後に行うべきことも視野にいれて,最終的に,患者が医療現場において最善な医療をうけられる手段を考えなくてはならない。具体的には,コーポレート・ガバナンスの効果をいかに医療現場に浸透させるか,また,コーポレート・ガバナンス改革を可能とする経営構造をどのように作り上げるか,といった体制づくりに関する検討が重要であろう。
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