医療と社会
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9 巻, 4 号
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  • 中村 真規子
    2000 年 9 巻 4 号 p. 73-91
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    財にかかわる所有の形態とその権利問題については,従来からかなりの議論が展開されてきている。しかしながら,多くの財のうち,本来的には最も私的であると思われる臓器の所有権については殆ど考察の外に置かれてきた。非血縁で行われる臓器移動には,財としての臓器を流通させる仲介機関が介入する。そのため所有権移転に関わる問題が鮮明なかたちでクローズアップされてくるのである。すなわち,自己の所有物を処分するのに際して,必ずしも所有者の意思が認められるとはいえない状況が生じることとなる。
    本稿は,このような移植のために所有者から切り離されて移動する臓器の所有権にかかわる意思決定問題を検討する。生体から非血縁で提供される骨髄を客体としてまずドナーが自己の骨髄を非血縁者に提供する際に踏まなければならない手続を述べ,次いでそれが客体として移動する段階で生じる所有権の変化を考察する。そこでは, 所有権の下位概念としての処分権, 配分権などの変容の問題を論ずる。そして最後に,今後の「骨髄」配布の機能を担う仲介機関の課題を検討する。
  • 中村 洋
    2000 年 9 巻 4 号 p. 93-111
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    旧西ドイツにおいて参照価格制度が導入された89年に薬剤費総額の上昇は抑制されたが,その後は以前と同様かそれ以上に上昇している。このことから,参照価格制度導入の薬剤費上昇抑制効果は一時的であると論じられている。その薬剤費抑制効果について個別成分レベルで分析した結果,89年から91年にかけて制度対象になった成分の売上変化率の平均値は,制度対象外成分のそれに比べ一時的に有意に低くなったことが判明した。しかし,89年9月の制度導入前後のデータを分析した結果,参照価格制度が89年における薬剤費上昇の一時的な抑制に殆ど寄与していないことが示唆される。つまり,参照価格制度は制度対象成分の売上を一時的に低下させたものの,薬剤費総額の上昇を抑制するほどの大きな効果は一時的にも存在しなかったと考えられる。
  • 渋谷 健司
    2000 年 9 巻 4 号 p. 113-123
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    費用-効果分析は,ある指標により示された健康量を最大化するために,限られた医療資源を効率よく分配するための情報を提供する「道具」であり,先進国のみならず発展途上国における医療政策においても頻繁に用いられてきている。費用-効果分析のための標準的な手法についてのガイドラインは多くあり,それに従った費用-効果分析も行われてきている。しかし,実際には異なったアプローチがさまざまな条件のもとに用いられているため,その費用-効果比はどのようにして算出されたものであるかを考慮することなく単純に異なる保健サービス間で比較しその結果を用いることは,不適切であると言わねばならない。また,まったく同じ保健サービスの評価をしながらも異なる政策選択にいたることがあり,費用-効果分析の結果を解釈し適用する際には,より慎重な検討を要することが強調されるべきである。本稿においては,費用-効果分析の解釈の問題点を検討し状況に応じた費用-効果比の新しい算出法を提示する。そして,政策決定者の置かれた条件や受ける制約により費用-効果分析方法は異なることを具体例を挙げて解説する。
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