医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
64 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
原著
  • 山口 孝一, 大畑 雅彦
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    今回,好中球-リンパ球比(以下N-L比)を用いて褥瘡予測因子として客観的指標となり得るかOHスケールと比較検討した。対象は,脳神経外科および神経内科に入院し,経日的にOHスケールを観察し得た32例を対象とした。内訳は,脳梗塞後遺症:14例,脳梗塞:12例,くも膜下出血3例,硬膜下出血:3例であった。対象症例は,褥瘡発症例(褥瘡群:17例),非発症例(非褥瘡群:15例)として分類した。OHスケールは同一の皮膚排出ケア認定看護師の判定により軽度,中等度,高度に評価した結果を用いた。また,N-L比の基準値を5未満とした。非褥瘡群および褥瘡群の入院時から1週間ごとのN-L比の推移および褥瘡の有無の検討では,非褥瘡群はN-L比<5の症例の症例を多く認めるが,褥瘡群はN-L<5が少なく,N-L比≧10が一過性の上昇でなく,翌週以降もN-L≧5が持続する症例を多く観察した。また褥瘡発症当日はN-L比著高しており,さらに褥瘡を発症する1週前にN-L≧5の症例を高頻度に認めた(81.8%:9/11例)。入院時からのN-L比の経日的変化では,非褥瘡群はその推移に変化を観察しなかったが(入院時:4.9 ± 3.4,入院1~2週後:4.9 ± 3.4,入院3~4週後:3.9 ± 1.9),褥瘡群では(2~3週前:5.6 ± 3.8,1週前:11.1 ± 10.6,褥瘡発症日:19.9 ± 20.9)と漸次増加を観察した。特に褥瘡発症の1週間前のN-L比≧5の頻度は68.8%(11/16例)であった。N-L比は褥瘡を予測する因子として有用である可能性が示唆された。特に寝たきりや体動に障害を有する患者ではOHスケールなどの褥瘡予測因子にN-L比の推移を併せて判断することが大切であることが確認できた。
  • 服部 亮輔, 原 美津夫, 守 さと子, 南 緑, 青木 信子, 三上 千映, 佐野 和三
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    尿沈渣で観察される硝子円柱は,尿細管上皮から分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白と少量の血漿蛋白とがゲル状に凝固沈殿した成分である。その出現は尿細管腔が一時的に閉鎖されていたことと尿の再灌流があったことを意味する1)。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,主として心筋から心筋張力増大に伴い分泌され,血中BNP濃度は,心不全,高血圧症,虚血性心疾患などの循環器系疾患の重症度判定,治療効果判定,生命予後推定,心疾患のスクリーニング検査として有用である2)。硝子円柱の出現は前述の通り尿細管腔が一時的に閉鎖されていたことと尿の再灌流があったことを意味するが,日常尿沈渣検査において,腎疾患を伴わない心不全に代表される循環器科患者の尿中に硝子円柱が出現する症例を多数経験している。そこで今回我々は,循環器疾患における硝子円柱出現の臨床的意義の解析を目的として検討を行った。すなわち,循環器科受診患者群において,腎疾患による硝子円柱の出現を除外するため,腎機能低下患者を除外する条件を5つ設定し,各条件における硝子円柱の出現と心不全のマーカーであるBNPとの関連性について検討を行なった。その結果,硝子円柱の出現率がBNP値により推定される循環器疾患の有無や,重症度の推定に有用と思われる所見が得られたので報告する。
  • 海谷 慧, 岡野 こずえ, 松浦 亜由美, 宮原 悠太, 荒木 三奈子, 中野 かおり
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    播種性血管内凝固症候群(DIC)の原因の一つとして敗血症が知られている。その原因成分としてグラム陰性菌細胞壁構成成分であるLipopolysaccharide(LPS)が最重要視されている。LPSは単球や血管内皮細胞に炎症性サイトカインや組織因子(tissue factor:TF)を産生させ,DIC発症に影響を与えるとされるが,LPSを持たないグラム陽性菌や真菌も敗血症性DICの原因菌となることも報告されている。我々は,敗血症の原因菌の菌種および菌株の違いがDICの発症機序や病態にどのような影響を及ぼすのかを検索するために,グラム陰性桿菌(Escherichia coliKlebsiella pneumoniae),グラム陽性球菌(Staphylococcus aureusCoagulase-Negative-Staphylococci),真菌(Candida albicans)を用いて,ヒト単球細胞株U937細胞とヒト末梢血単核球(PBMC)を刺激した。それらの反応性についてフローサイトメトリー法を用いてTF とInterleukin-6(IL-6)の各細胞の陽性率を比較し,細菌由来刺激物質と各種細胞反応性との関連を証明することを試みた。また,細菌由来刺激物質として,細菌菌体と細菌菌体抽出物の両方を比較検討した。グラム陰性桿菌,グラム陽性球菌,真菌すべてがU937細胞とPBMCにIL-6およびTFを産生させた。U937では,TF陽性率はEsherichia coli,IL-6陽性率はCoaglase-Negative-Staphylococciが最も陽性率が高かった。一方,PBMCではTF,IL-6陽性率の個人差が大きく,最も陽性率が高い菌も人によって様々であった。このことより,敗血症における生体の反応性は,菌種の違いよりもヒト個体差のほうが大であると考えられた。
  • 佐藤 英洋, 内海 真紀, 宮川 英子, 山﨑 宏人, 安江 静香, 高見 昭良
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    急性白血病など血液がん患者の一部に血液型A・B抗原の発現低下が認められる。血液型亜型・キメラなどのA・B抗原の発現低下と鑑別するために,フローサイトメトリー(FCM)法でABH抗原に転換するオリゴ糖末端付近にあるI抗原発現動態を解析した。A・B抗原減弱を伴う血液疾患と非血液疾患の発現率と蛍光強度を統計学的に比較したところ,I抗原の発現率が血液疾患のみ有意に低下していた。よって,FCM法によるI抗原解析で,血液疾患によるA・B抗原発現低下と先天性の特殊血液型を鑑別できる可能性が高い。
  • 黒沢 秀夫, 佐藤 亮, 阿部 美佐子, 真仁田 大輔, 廣渡 祐史, 吉田 博
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    高血圧,心筋虚血は動脈硬化と密接な関連性があるが,慢性心不全の主たる病理学的な原因でもある。脂質異常症は動脈硬化の主たる1つのリスク因子である。このたび,我々は慢性心不全(CHF)患者の脂質プロファイルとBNPとの関連性を検討した。CHF患者(n = 81)と健常者(n = 90)を対象とした。BNPはエンザイムイムノアッセイにより,リポ蛋白プロファイルは陰イオン交換クロマトグラフィーにより測定した。そして,CHF患者の脂質プロファイルとBNPとの関連性を評価した。CHF患者のHDL-Cは健常者に比べ低値であり,VLDL-Cは高値であった。CHF患者のBNPとHDL-C,LDL-C,VLDL-Cは有意な負の相関関係を示した。また,重回帰分析においては,HDL-Cと有意な負の相関関係を示した。これらの結果は,脂質異常症を有するCHF患者の動脈硬化病態の対策において,低HDL血症を考慮して治療することが望ましいと考えられたが,さらなる検討が必要である。
  • 村山 未来, 古野 貴未, 下地 法明, 伊藤 愛美, 忠地 花代, 赤津 義文, 大塚 喜人
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    染色体上にAmpC型β-lactamase産生遺伝子を有しているEnterobacter cloacaeは,抗菌薬の存在下で過剰産生が誘導される。今回,臨床検体から分離されたE. cloacae菌株を用いてAmpC型β-lactamase過剰産生株の検討を行った。第3世代セフェム系薬感受性株でディスク拡散法による誘導後,シカベータテストにてAmpC型β-lactamaseを検出した株は3.7%であり,CAZをSub-MIC値(MIC以下の濃度範囲)に調整した液体培地の振盪培養による誘導では80%という結果となった。後者はヒト体内の環境に近く,臨床分離株からAmpC型β-lactamase検出が無い場合でも,患者体内で過剰産生株が存在する可能性があると考える。血中濃度のピーク値がMICを超えない抗菌薬投与量はAmpC型β-lactamase過剰産生を誘導させ難治化する恐れがあるため,適切な投与量を守った治療を行うことは非常に重要である。
  • 河野 浩善, 三好 夏季, 井上 芳彦, 野田 昌昭, 兼丸 恵子, 飯伏 義弘
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    炎症性疾患における好中球新規パラメーター(NEUT-X,NEUT-Y)と中毒性顆粒との関係について報告はあるが,敗血症の重症度を反映する空胞変性との関係については未だ報告がない。そこで,今回,我々は炎症性疾患におけるNEUT-X,NEUT-Yについて,好中球形態を含め,改めて多角的に解析した。その結果,健診群に比べNEUT-X,NEUT-Yともに患者群の方が有意に高値を示し,炎症性マーカーであるPCT,CRPとは有意な相関関係を認めたが,白血球数,好中球数とは認められなかった。また,中毒性顆粒や空胞変性は,細胞内構造の複雑さとしてNEUT-Xに,好中球回転の短縮による未成熟好中球の動員は,細胞内RNA量の増加としてNEUT-Yにそれぞれ反映されていた。一方,血液培養検査の結果では有意差を認めず,NEUT-X,NEUT-Yは細菌感染を直接反映するものではなく,あくまで炎症に対する好中球の変化を捉えていることが分かった。さらに,今回の検討では,敗血症の重症度に順じてNEUT-X,NEUT-Yともに高値傾向を示した。NEUT-X,NEUT-Yは診断感度,特異度ともに十分とは言えなかったが,多項目自動血球分析装置から得られる迅速性,簡便性に優れた客観的データであり,敗血症重症度の鑑別にも一定の有用性を認めたことから,敗血症診療の一助となる可能性が示唆された。
  • 岩下 千奈美, 末木 茜, 松田 和之, 井出 裕一郎, 菅野 光俊, 石田 文宏, 本田 孝行
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    Epstein-Barr virus(EBV)DNA定量検査は,EBV感染症および関連疾患において疾患の発見や予防のために重要な検査である。EBV DNA量の定量には,標準物質を用いたReal-time PCR法が用いられているが,使用される標準物質は各施設さまざまであり,施設間で定量値を比較できないという問題がある。本研究では,EBV DNA定量検査の第一次国際標準品1st WHO International Standardを用いて,二次標準物質を作製した。また,過去に測定したEBV DNA定量値を,二次標準物質に基づく定量値に換算するための変換係数を求めた。EBV関連造血幹細胞移植後リンパ球増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorder: PTLD)疑い症例及びEBV関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-related hemophagocytic lymphohistiocytosis: EBV-HLH)症例について,新規検体は二次標準物質を,過去測定済み検体は換算係数を用いて末梢血中EBV DNA定量値を求めた。それぞれ8.74 × 102~1.51 × 104 IU/μg DNA,1.58 × 104~1.33 × 106 IU/μg DNAであった。多施設で利用可能な二次標準物質が普及することで,EBV関連疾患毎の診断基準となるEBV DNA定量値が設定できると考えられる。
症例報告
  • 小保方 亜光, 新後閑 俊之, 武谷 洋子, 柴﨑 真由美, 深澤 恵治, 伊藤 理廣, 櫻井 信司
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    子宮内膜細胞診にて莢膜を有する桿菌が確認され,腟分泌物よりKlebsiella pneumoniaeが検出された子宮内膜炎重症化の2例を経験した。症例①:帯下増量で受診。腟分泌物細菌培養でK. pneumoniaeを検出。子宮内膜細胞診で莢膜を有する桿菌が確認される。一ヶ月後,他院を救急受診し,卵巣・卵管膿瘍,腹膜炎の診断で加療された。症例②:不正出血,下腹部鈍痛,高熱で受診。子宮頸部及び内膜細胞診にて莢膜を有する桿菌を認めた。子宮内膜炎,卵管留膿症及び多発子宮筋腫の診断にて,子宮全摘・両側付属器切除術が施行された。細胞診の依頼目的は悪性病変の確認であり,感染症の診断を目的としていない。一方,内膜組織の細菌培養検査が行われることはほとんどない。婦人科領域感染症の早期診断には,細胞診の報告書においても積極的に感染,炎症の所見を報告する事が重要である。
  • 土手内 靖, 尾崎 牧子, 西山 記子, 長谷部 淳, 谷松 智子, 西山 政孝
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    Levofloxacin(LVFX)により激しい溶血性貧血を起こしたと推測される症例を経験したので報告する。症例は69歳男性。腹痛・発熱が1週間続くため近医を受診,腸間膜リンパ節炎と診断されLVFXが処方された。2日間内服したが症状の改善なく,当院に緊急入院となり,抗生剤をLVFXからCefmetazoleに切り替えた。入院3病日,嘔気,血圧低下,褐色尿および眼球黄染が出現,血液検査で著明な貧血(Hb 6.7 g/dL)と溶血所見を認めた。翌日にはHb 4.0 g/dLと貧血が進行し,直接抗グロブリン試験(direct anti globulin test:DAT),間接抗グロブリン試験(indirect anti globulin test:IAT)強陽性を呈したことより,自己免疫性溶血性貧血と診断された。その後赤血球濃厚液を4単位輸血,ステロイド剤を大量および漸減投与し,貧血は改善,自己抗体は急速に減弱し,IATは13病日に,DATは28病日に陰性化した。43病日に薬剤リンパ球刺激試験を施行したところ,LVFXに対し陽性であり,臨床経過と併せ,本例はLVFXによる薬剤性免疫性溶血性貧血(Drug-induced immune hemolytic anemia:DIIHA)と推測された。DIIHAは稀な疾患であるが抗生物質,降圧剤など身近な薬剤での報告があり,本例のように重症化することもあるため,注意が必要である。DAT陽性例に際しては患者の貧血,溶血の有無に留意し,薬剤が原因であることも念頭に置いた精査が重要である。
技術論文
  • 山本 美由紀, 脇田 満, 石井 清, 堀井 隆, 三宅 一徳, 大坂 顯通
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    原因アレルゲンの同定は,アレルギー疾患の診断,治療およびアレルゲンの回避において重要である。この度,その同定装置であるEIA法を原理としたアレルギー特異IgE測定装置DiaPack2000(日本ケミファ株式会社)の後継機として,1時間あたりの最大テスト数が増加し,測定時間が約4分短縮され,随時検体測定が可能となったDiaPack3000が開発されたため,基礎的性能を検討した。比較装置としてDiaPack2000とFEIA法を原理とした免疫蛍光測定装置ファディア5000(ファディア株式会社)を用いて検討を行った。再現性,最小検出感度においてDiaPack3000で向上が認められた。DiaPack2000との相関は,6項目において相関係数r = 0.882~0.999以上であり,ファディア5000との一致率は,6項目において80.7%~91.9%以上と良好な結果が得られた。直線性は100 IU/mLまで確認でき,キャリーオーバーも認められなかった。基礎的検討において良好な結果が得られたDiaPack3000は,操作性の向上,測定時間の短縮により診療前の迅速検査への対応が可能となり,即日の治療方針の決定や迅速な治療の開始に貢献できる装置と考えられる。
  • 金山 和樹, 今井 裕, 米田 操, 白石 泰三
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    Fluorescence in situ hybridization法(以下FISH法)は,分子標的治療薬の効果予測や病理診断において重要な検査法である。常光のヒストラHER2 FISHキットは操作法が簡便化され短時間で検出可能なシステムである。今回我々は,加熱処理時間と酵素処理時間を改変し各処理時間でのシグナル視認性の比較を行い,最適条件を検討したので報告する。2009~2011年の間に三重大学医学部附属病院で施工された,胃癌生検材料10例を対象とした。加熱処理40分・酵素処理10分と加熱処理60分・酵素処理10分で良好なシグナルの視認性が得られ,加熱処理時間のみを延長した改変プロトコールがシグナルの視認性の改善に有効と考えられた。
  • 古川 聡子, 河口 勝憲, 加瀬野 節子, 岡本 操, 佐藤 正一, 佐々木 環, 通山 薫
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    メンテナンスフリーカートリッジを使用した血液ガス分析装置ラピッドポイント500(RP500)の導入を目的に,その基本性能の評価を行った。検討項目はpH,pCO2,pO2,tHb,Na+,K+,Cl,Ca2+,血中グルコース(Glu),乳酸(Lac)の10項目とした。対照機器は血液ガス分析装置ラピッドラボ1265(RL1265),さらにNa+,K+,Cl,Gluについては生化学分析装置LABOSPECT 008(LAB),LacはDimension(Dim)を使用した。併行精度・室内精度は良好であったが,Lac測定値がカートリッジ装着時より徐々に上昇する傾向を認めた。RL1265との相関および血漿検体を用いたLABやDimの相関ともに良好な結果であった。RP500のメンテナンスはカートリッジ交換(洗浄カートリッジ:10日,試薬カートリッジ:28日)のみとなっており,従来機器に比べメンテナンス作業が非常に軽減される。さらに全自動精度管理(AQC)カートリッジや血液ガス分析装置データマネージメントシステムRAPIDCommを使用することにより,ICU,救命救急センターや病棟などに設置している血液ガス分析装置をネットワークで一元管理することが可能となる。RAPIDCommの端末上から遠隔操作で各装置のモニタリングやトラブル対応も行えるため,検査技師の機器管理時間の削減につながり,省力化・効率化に貢献できると思われる。
  • 大栗 聖由, 佐藤 明美, 今井 智登世, 原 文子, 本倉 徹
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    昨今超音波診断装置の発達により,比較的容易に末梢神経を描出することが可能である。しかし,加齢が末梢神経の形態に及ぼす影響を超音波検査で解析した報告は認められない。そこで今回正中神経に与える加齢の影響を超音波検査で評価できるか検討したので報告する。対象は健康なボラティア34名(平均値±SD 38.3歳±14.4,22~78歳)の右手34手で施行した。超音波検査を施行する際,12 MHz高周波リニアプローブを用いて検査を行った。運動神経伝導速度(MCV)は既に加齢による影響が報告されているため,運動神経伝導検査も同時に施行し,超音波検査で測定した正中神経の断面積とMCVとの相関を検討した。MCVは加齢により有意に減少していたが,断面積は有意な減少を認めなかった。MCVと断面積との相関を確認したところ,20歳~30歳代に統計学的有意差を認めたが,残りの年齢群に有意差は認められなかった。今回の結果から,MCVで加齢による影響は確認できたが,超音波画像上神経の断面積で確認はできなかった。手根管症候群のような病的診断に超音波検査は有用であるが,加齢による影響は観察できないと考えられた。
  • 八木 道隆, 阿部 正樹, 渡邊 孝子, 鈴木 晴美, 中村 由佳, 高橋 加奈, 杉本 健一
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    今回,新たに開発されたFEIA法を測定原理とするAIA用SCC測定試薬の基本性能,SCC抗原との反応性,各種疾患の測定値等の検討を行った。検討の結果,本法の基本性能に関しては,良好な精度と特異性を有していることが確認された。また,従来から用いられているSCC測定法であるARCHITECTとの相関関係においては一部の乖離症例が認められた。その原因のひとつとして,リコンビナントSCCA-1抗原とSCCA-2抗原に対する反応性の検討結果から,AIAはSCCA-2抗原とARCHITECTは,SCCA-1抗原と強く反応する事が確認され,この反応性の差が測定値乖離の原因のひとつである可能性が示唆された。このほかにもARCHITECTが高値に乖離した良性疾患の乖離症例に遭遇したが,本症例に関しては,血中でのIgGとSCCの結合により生じた高分子化SCCが,ARCHITECTの偽高値に関与しているものと考えられた。他の検討については,疾患別陽性率が扁平上皮癌で高率に陽性となり,各種疾患との陽性率はARCHITECTと同様である事が確認された。今回の検討の結果,AIAによるSCC測定試薬は良好な精度と特異性を有し測定時間も約20分であることから,診察前検査を中心とした日常検査における有用性が高いと思われた。
  • 鈴木 優治
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    試験紙法による尿比重測定におけるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの反応性について検討した。両イオンはNaClよりも著しい高値を与えた。カルシウム塩およびマグネシウム塩はクエン酸/Na2HPO4緩衝溶液,NaH2PO4/Na2HPO4緩衝溶液およびEDTA2Na溶液のpHを低下させる特性を示した。このことから,カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンは試験紙法の検出系緩衝物質と反応し,水素イオンを遊離させ,正誤差を引き起こすものと解釈された。
資料
  • 佐藤 浩司, 原 稔晶, 加藤 克幸, 鈴木 利明, 松本 祐之, 松下 正, 下山 芳江
    原稿種別: 資料
    2015 年 64 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    当院では病理システムを新規構築するにあたり,Micro QR Codeを用いた2次元コード運用が可能なカセット印字機の新規導入を行ったが,印字されたMicro QR Codeのパラフィン包埋後の認識率が低いことを経験した。そこで今回我々は,カセット上の印字部分のレイアウトを再構築し,同一の条件下でMicro QR Code(Micro QR)と別の規格であるData Matrix ECC200(Data Matrix)の認識の違いを検討した。その結果Micro QR(実業務における検討対象522件中14件)と比較し,Data Matrix(同566件中1件)では読み取り速度が早く認識率においても良好な結果が得られた。読み取りに問題があった2次元コードの印字面を観察すると,Micro QRではそのほとんどに切り出しシンボルの傷や欠損が認められ,2次元コードにおいて重要な位置検出パターンが明瞭に印字されることが読み取り速度や認識に大きく関与することが推察された。以上より,パラフィン包埋後のカセットに印字する方法として,Data Matrixは位置検出パターンを正確に保持することで,Micro QRと比べて優れた読み取りスピードと認識率の向上が得られると考えられる。
  • 堀口 久孝, 河合 昭人, 横山 雄介, 平田 龍三, 阿部 正樹, 杉本 健一
    原稿種別: 資料
    2015 年 64 巻 1 号 p. 110-116
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    我々は,病院の建て替えに伴い情報システムを一新する機会を得た。このプロジェクトにおいて,検査所要時間の短縮と検査過誤防止対策の強化を2大目標とした。検査所要時間を短縮するため,従来の外来患者受付から検査完了までの工程を検証し,採血,採尿,生理機能検査の受付業務を一元化した効率の良い検体受付システムを構築することとした。検査過誤防止対策を強化すべく,要求仕様に応える部門システムを選定し,輸血検査では認証機能などに対策を施した。外来患者受付業務の一元化は,標準機能だけでは実現できなかったが,検査種別やマスターコード体系が異なる依頼情報を集約する手段を構築することにより,一括で患者受付を行える仕組みを作ることができた。システムの仕様上回避できなかった問題は,運用の工夫で解決した。今回の取り組みの結果,至急検査の平均報告時間は約45分から約35分に短縮した。その反面,検査過誤防止の対策には課題が残った。
機器検討
  • 菅﨑 幹樹, 三井 和之, 三宅 秩代, 山本 明毅, 山本 良, 高松 典通, 土井 俊夫
    原稿種別: 機器検討
    2015 年 64 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 2015/01/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    わが国の透析患者は30万人を超え,多額の医療費が透析に使用されている。この医療費を軽減していくためには,腎障害を早期に発見することが重要となる。今回我々は,シーメンス社から発売されたクリニテックノーバスを使用し,試験紙法と定量法による尿中アルブミン値と尿中クレアチニン値の相関について調べた。同時に,それぞれの値を用いたアルブミン/クレアチニン比の相関も調べた。さらに,eGFRやCKD重症度分類による腎機能評価を用いて試験紙法の有用性に関して検討を行った。試験紙法と定量法は,アルブミンでは85.9%と良好な相関を示したが,クレアチニンでは65.7%と,やや低めの相関となった。しかし,これらの値を用いたアルブミン/クレアチニン比は,試験紙法と定量法で85.9%と良好な相関を示した。試験紙法によるアルブミン/クレアチニン比は,試験紙法による蛋白より,より鋭敏に腎機能を反映すると考えられ,試験紙法は迅速スクリーニングとして有用性が高いことが示唆された。
feedback
Top