日本経営工学会論文誌
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原著論文(理論・技術)
  • 植田 和樹, 森田 浩, 太田 豊, 岩田 章裕
    2024 年 75 巻 2 号 p. 37-48
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/08/15
    ジャーナル フリー

    近年,太陽光発電の普及により,電力事情が変化している.時間によって電力市場価格や発電時の二酸化炭素排出量が大きく変化している.電気自動車の経路問題についての研究の多くは,電気自動車の走行距離に着目して配送経路を検討したものである.我々は,走行距離よりも充電コストと二酸化炭素排出量を最小化する電気自動車による配送問題を考える.提案する数理モデルを用いて適切な経路を示し,充電コスト,二酸化炭素排出量,走行距離のトレードオフを議論する.また,モデルの適用事例として,実在の地域を想定した数値実験を行い,利用する充電ステーションの特徴や電気自動車による充電コスト,二酸化炭素排出量の削減効果を示す.

  • 良川 太河, 阪井 優太, 楊 添翔, 後藤 正幸
    2024 年 75 巻 2 号 p. 49-59
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/08/15
    ジャーナル フリー

    近年,オンラインショッピングサイトでは,利益向上のために様々なビジネス施策が行われている.クーポンの発行やポイントの還元などがこれらのビジネス施策に該当し,管理者はクーポンの割引額やポイントの還元額を設定してビジネス施策を行う.このとき,クーポンの割引額などの施策内容は利益に大きな影響を与えるため,利益最大化のためにこれらのビジネス施策を最適化することが重要な課題となっている.これらの課題に対する方法の1つに,入力をビジネス施策,出力をアウトカム変数とした関数を推定し,最適な入力を探索する機械学習のアプローチが存在する.しかし,このような関数は一般的に未知である上に,初めて施策を打つ場合には関数を推定するための学習データが存在しない.そこで,逐次的に学習データを追加しつつ,入力の逐次最適化を行う手法が近年注目されている.このような入力の逐次最適化手法の1つにベイズ最適化が挙げられる.ベイズ最適化では,学習データから出力の事後分布を推定し,獲得関数と呼ばれる評価指標に基づき,入力の最適化に寄与すると考えられる次のデータ点を推定することができる.しかし,通常のベイズ最適化を実務の業務に適用した場合,入力によって分散が異なるなどのデータの特性を考慮していないため,必ずしも適切な結果が得られない.そこで,本研究ではビジネス施策に対応した関数推定法であるHeteroskedastic Gaussian Process (hetGP) に対して,これらのビジネス施策特有の状況を考慮可能な獲得関数を提案する.はじめに,出力の誤差分散を考慮するためにhetGPを用いて関数の推定を行う.その後,データ数に依存する誤差分散の推定精度を考慮するために,hetGPで推定された分散に対して各入力ごとのデータ数による重みを掛け合わせる. 最後に,各入力を選択した際の取得データ数を考慮するために,次のステップで各入力のデータが追加された場合の分散の更新率を獲得関数に組み込む. 本研究では,人工データを用いて提案手法がビジネス施策最適化において有効な探索を行うことができることを示し,これまでベイズ最適化では扱われていなかった入力に依存する誤差分散を持つ関数データに対しても効率的な探索を行うことで,ビジネス施策の規則的な最適化を可能とした.

原著論文(事例研究)
  • 川上 達也, 山下 遥, 三浦 豊史, 後藤 正幸
    2024 年 75 巻 2 号 p. 60-75
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/08/15
    ジャーナル フリー

    各社員をノードとして社員間の関係をネットワーク構造で表現するネットワーク分析は,密に繋がりを持つコミュニティや影響のある社員の発見を可能とする.特に,最近活用がなされるようになったビジネスチャットに蓄積された会話データから,ネットワーク可視化が可能になれば,ビジネスのための職場チーム内のコミュニケーションの実態が明らかになり,様々な施策や意思決定に役立つと期待できる.この社員間のコミュニケーションを可視化したネットワークは,各ノードが表す社員を一意に定義できる反面,発言内容やトピック,所属グループなどのエッジの定義に用いる会話の条件(コミュニケーション条件)によってノード間の関係が変化する.そのため,コミュニケーション条件の違いに伴うネットワーク構造の変化や,全体的なコミュニケーション構造と大きく異なる構造を持つコミュニケーション条件を定量的に把握すると共に,ネットワーク同士の構造上の類似性や個々のネットワーク構造を解釈しやすい形で可視化することが有意義となってくる.そこで,本研究ではコミュニケーション条件の違いによる社員ネットワーク構造の変化を定量的に分析し可視化を行う,ビジネスチャットのためのネットワーク分析手法を提案する.その際,KK Algorithmのエネルギー関数をネットワーク間の乖離度指標として用いることで,全体的なコミュニケーション構造から乖離した,特徴的なネットワーク構造を持つコミュニケーション条件を発見することが可能となる.本研究では,実際の会話履歴データを用いた分析により,本手法を用いた社員間の関係性の分析が有効であることを示す.

  • - ガス焼けの状態の数値化 -
    山崎 友彰, 榊原 新, 仲田 義敏, 志田 敬介
    2024 年 75 巻 2 号 p. 76-87
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/08/15
    ジャーナル フリー

    樹脂成形プロセスで生じるガス焼けは,成形過程でのガスの発生や排出が適切に行われないことが原因となるが,多くの要因が複雑に絡み合っているため,根本的に解決することが極めて困難である.成形機や金型のメンテナンスにおいて,定期的な検査や部品の交換,清掃などを実施し,機械の状態を維持することが,現実的で有効的な対策になる.適切なタイミングでメンテナンスを実施することが品質管理において重要な要素となるが,メンテナンスを実施するタイミングの判断が主に経験や勘に依存することが多く,明確な基準が欠けている.本論文では,品質と効率の観点から適切にメンテナンスを実施するタイミングを明確化するために,深層学習の分類モデルを利用した手法を提案した.提案する手法では,初期ロットにおいて類似度を算出した後,類似度をもとに分類する深層学習モデルの転移学習を行い,最後にFine-tuningをする.特にFine-tuningにおいて,特徴量を直接的に制御する損失関数を利用したことが主なポイントとなる.

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