超音波医学
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44 巻, 3 号
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総説
  • 関口 隆三, 長基 雅司, 藤崎 純
    原稿種別: (第15回教育セッション)(腹部)
    2017 年 44 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/10
    ジャーナル 認証あり
    カラードプラ法は,目的とする血管の血行動態や腫瘍内血流の多寡を把握でき,通常のBモードによる形態情報に加え,血行動態という機能情報も得ることができることから,診断精度の向上に大いに貢献できる非常に有用な機能である.その利用にあたっては,流速スケール,カラードプラゲイン,カラー表示範囲,フィルター,ドプラ周波数などの各種パラメータを適切に設定することが大切である.
  • 岡庭 信司, 岩下 和広
    原稿種別: (第15回教育セッション)(腹部)
    2017 年 44 巻 3 号 p. 235-244
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/21
    ジャーナル 認証あり
    膵病変はその肉眼像から充実性病変と嚢胞性病変に分類され,充実性病変には膵管癌,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET),SPN(solid-pseudopapillary neoplasm),腫瘤形成性膵炎などが,嚢胞性病変には漿液性嚢胞性腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN),粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)などが含まれる.超音波検査(Ultrasound: US)は膵病変の病理肉眼像を詳細に反映するため,SCNの蜂巣状構造,MCNのcyst in cyst構造,IPMNのcyst by cyst構造などそれぞれの嚢胞性腫瘍に特徴的な構造を理解することは鑑別診断にも有用である.嚢胞性病変の鑑別診断に有用なUS所見には,(1)病変の占居部位,(2)病変の数,(3)輪郭,(4)内部構造,(5)内容液の性状,(6)膵管との交通の有無,(7)充実部分の有無といった所見がある.充実部分の有無は病変の悪性度の評価にも有用である.さらに,5 mm以上の膵嚢胞は膵管癌の高危険群としても認識されており,初診時に精検を行うとともに定期的に経過観察をしていく必要がある.
  • 伊藤 吾子
    原稿種別: (第15回教育セッション)(乳腺)
    2017 年 44 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/06
    ジャーナル 認証あり
    乳腺超音波検査には,正しい検査手技で撮像された説得力のある静止画の記録が必須である.まずはBモードで正しく所見をとらえ,判断に迷った際にはカラードプラやエラストグラフィ等の付加的所見を加味する.診断能を上げるためには,経験を積むだけでなく,病理診断結果をフィードバックすることが必要である.
  • 村上 司
    原稿種別: (第15回教育セッション)(甲状腺)
    2017 年 44 巻 3 号 p. 253-259
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/03/13
    ジャーナル 認証あり
    結節の良悪性の鑑別は甲状腺疾患の診療において超音波検査の重要な役割のひとつである.甲状腺癌の中で最も多い乳頭癌は超音波断層像上特徴的な所見を示すことが多く,大部分の症例は超音波検査により正確に診断できる.乳頭癌を含む甲状腺悪性腫瘍の超音波所見として形状不整,内部低エコー,境界不明瞭,境界部低エコー帯の欠如,微細高エコー,taller than wideを示す形状,充実性であることなどが報告されており,これらの所見の組み合わせによって悪性であるリスクが評価される.穿刺吸引細胞診は超音波所見から判断される悪性のリスクと結節径とにより判断される.本邦では,径5 mmを超え10 mm以下の充実性結節では超音波断層像に多数の悪性所見を認め悪性が強く疑われる場合に限って穿刺吸引細胞診が推奨されている.10 mmを超え20 mm以下の充実性結節では悪性所見が1項目でも見られる場合,20 mmを超える充実性結節では全例に穿刺吸引細胞診が推奨されている.嚢胞成分が優位な結節では充実部の所見について評価して判断する.米国甲状腺学会や韓国甲状腺放射線医学会の推奨基準では,悪性が疑われる場合は1 cm以上で,悪性の可能性が低い場合は1.5 cm以上で穿刺吸引細胞診が推奨されている.ただし,転移リンパ節や甲状腺外浸潤を疑う所見,遠隔転移の疑いなどの予後因子も考慮して穿刺吸引細胞診の適応を判断すべきである.
  • 小林 大樹, 末光 浩太郎
    原稿種別: (第15回教育セッション)(血管)
    2017 年 44 巻 3 号 p. 261-269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/21
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    近年,バスキュラーアクセス(vascular access: VA)に対する超音波検査が普及している.その主な検査目的は,作製前の血管評価と作製後におけるVAの状態や合併症の評価である.作製前においては,血管径や血管壁の性状,連続性などを観察し,自己血管内シャントや人工血管内シャント,動脈表在化などの術式の判断に用いられる.第一選択は自己血管内シャントであるが,表在静脈荒廃などの理由で作製が困難と判断される場合は,人工血管内シャントや動脈表在化も考慮する.最終的には動脈と静脈を吻合すると,どのような血行動態を示すVAになりうるかを考えることが重要である.VA作製後,恒久的にそれが維持できれば良いが,大部分は何らかの合併症を発症する.最も多いのは,狭窄病変の発現であり,その進行により閉塞に至る.閉塞すれば治療の成功率も低下することから,可能な限り狭窄の段階で適切な時期に治療介入することが理想的である.そこで,超音波パルスドプラ法を用いた血流量や末梢血管抵抗指数(resistance index: RI)の計測と,血流量に相応する狭窄病変の程度や形態,部位,範囲を評価し,血行動態を把握したうえでVAの良否や治療の適応を判断する.超音波によるVAの評価は,その機能と形態を非侵襲的に同時に観察できることから,今後も多用されるべき方法のひとつであり,長期維持に大きく寄与するものと考えられる.
シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 高橋 広樹, 長谷川 英之, 金井 浩
    2017 年 44 巻 3 号 p. 275-285
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/03/24
    ジャーナル 認証あり
    目的:心内腔血流の超音波イメージングはヒトの心臓のポンプ機能を評価するのに非常に有用なツールである.スペックルトラッキング法は血流速度ベクトルの推定を可能にする.しかし,微小な血球からのエコーの信号対雑音比が低いため,血流速度ベクトルを安定的に推定することは難しい.本研究では,血流速度ベクトルの推定精度向上のために,2次元相関関数の時間平均化を行うスペックルトラッキング法を用いた.方法:拡散ビーム送波を用いた高フレームレート超音波断層法によって収集されるエコーデータを利用することで,複数の2次元相関関数を非常に短い時間幅で平均化することができる.擬似血液(平均流速0.2 m/s,トランスデューサ表面からの流れ角56°)を使った定常流実験を行い,6,024 Hzのフレームレートで2次元相関関数の平均化の効果を調べた.結果:まず初めに,血流速度ベクトルの安定的な推定に必要な平均化時間を検討するために,定常流測定にて,2次元相関関数のさまざまな平均化時間幅に対して速度ベクトル推定精度を評価した.8フレームを超える平均化時間幅を用いることで,ベクトル推定の方向推定誤差は従来のスペックルトラッキング法のほぼ半分に低減できることが分かった.次に,平均化時間幅を2 ms に相当する12フレームに設定し,より速い速度の定常流に対する計測を行った.速度0.2 m/sのエコーデータのフレーム間隔を変えることで,0.4 m/sおよび0.6 m/sの流速の定常流計測を模擬した.平均化時間幅はわずか2 msであったが,平均血流速度0.2 m/s,0.4 m/s,0.6 m/sにおける方向推定誤差は著しく減少した.健常者の心臓を対象としたin vivo実験では,高画質なBモード画像を生成するために,さまざまな偏向角の拡散波を送信する送信シーケンスを内挿した.実験の結果,左心室腔の血流速度ベクトルが駆出期および拡張初期における心内腔を流入および流出する血流を示した.さらに,推定された血流方向は拡張期における心内腔での渦流を可視化した.結論:提案する手法を用いることで,造影剤を使用せずに,速度ベクトルによる心内腔血流動態の可視化を実現する可能性が示された.
症例報告
  • 中澤 悠, 長谷川 潤一, 吉岡 範人, 本間 千夏, 高橋 由妃, 竹内 淳, 大原 樹, 近藤 春裕, 戸澤 晃子, 鈴木 直
    2017 年 44 巻 3 号 p. 283-287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/03/13
    ジャーナル 認証あり
    SMIはカラードプラの中でも,独自のアルゴリズムを用いて,組織の動きの特徴を解析してその信号を分離し,モーションアーチファクトを大幅に減らすことができる技術で,微細で低流速の血流を捉えて画像化することが可能である.本報告では,妊娠の初期で,パワードプラを用いても血流を描出するのが困難な頸管妊娠に,SMIを用いて評価が可能であった1例を示す.症例は,最終月経より妊娠6週1日,経腟超音波で子宮内膜は均一にややhighechoicに肥厚していたが,子宮内に胎嚢を認めなかった.子宮頸管内にhighechoicな輪郭をした類円形の嚢胞状の無エコー領域があり,white ringを有する胎嚢と考えられた.胎児心拍を認めず,頸管妊娠もしくはその流産と診断した.従来の超音波パワードプラ検査では,絨毛周囲,脱落膜に血流を描出できなかったが,SMIでは,絨毛を取り囲むような脱落膜の微細な血管を描出できた.血中hCGは2,899 IU/lであった.経過観察中に上昇傾向を認めたため,頸管妊娠が継続していると考えてMTX 50 mg/m2(70 mg/body)を筋注した.7日後,頸管内に同様に胎嚢認め,SMIではその周囲に血流を描出できたが,入院時のものと比べて減弱していた.MTX投与12日後,出血と腹痛があり絨毛,胎嚢の娩出を認め,血中hCG は39 mIU/mlとなった.SMIでは頸管や子宮下節の内膜にドプラ信号を検出しなかった.その後,病理組織診断で娩出物に絨毛を確認し,hCGの再上昇は認めていない.
  • 成田 啓一, 金田 智, 陣崎 雅弘
    2017 年 44 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳男性で,1ヵ月前より陰嚢の無痛性腫大を自覚した.陰嚢超音波検査で右精巣上体頭部が腫大し不均一な低エコーを呈していた.低エコー域は右精巣に連続しており,精巣上体との境界が不明瞭であった.また,陰嚢内には結節状の低エコー域を散見した.中等量の陰嚢水腫,軽度の白膜肥厚や陰嚢壁の浮腫を伴っていた.カラードプラ上は精巣上体の辺縁にのみ血流信号を認めた.右精巣腫瘍を疑って,右高位精巣摘除術を実施した.病理組織診断で,膿瘍を伴う肉芽腫形成や炎症細胞浸潤を認めた.中心壊死やラングハンス巨細胞も見られたため,Ziehl-Neelsen染色を実施したが抗酸菌は検出できなかった.結核の既往歴はなく,術後の喀痰・尿培養検査ともに結核菌は検出されなかったが,インターフェロンγ放出試験陽性や胸部CTで陳旧性結核性胸膜炎を示唆する所見があり,最終的に結核性肉芽腫性精巣上体精巣炎と診断した.肉芽腫性精巣上体精巣炎と精巣腫瘍の鑑別は困難とされているが,自験例のように精巣上体の腫大や精巣内部に複数の低エコー結節,血流信号が辺縁のみで内部では乏しいことが診断に有用と考えられた.腫瘍よりも炎症性疾患を示唆する所見として,陰嚢壁肥厚,白膜肥厚,陰嚢水腫も参考になる.
  • 井上 茂, 藏本 昭孝, 猪俣 慶, 稲村 真世, 藤 真理子, 黒川 裕介, 大田 俊一郎, 吉里 俊幸, 八浪 浩一, 石松 順嗣
    2017 年 44 巻 3 号 p. 295-299
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/15
    [早期公開] 公開日: 2017/04/28
    ジャーナル 認証あり
    胎児Loeys-Dietz症候群と臨床的に診断した症例を経験したので報告する.33歳の初妊初産婦.特記すべき既往歴,家族歴はなかった.妊娠26週1日に大動脈の弁直上の著明な拡張と弁逆流,上行・下行大動脈の拡張と下行大動脈の蛇行所見,肺動脈弁直上の著明な拡張と弁逆流を認めた.心嚢液貯留,全身の皮下浮腫,腹水貯留が出現し,妊娠31週3日に帝王切開分娩となった.胎児期には重症な動脈弁逆流と大動脈逆流を合併した胎児心不全と診断したが,Marfan類縁疾患との明確な診断には至らなかった.出生時体重2,262 g (+3.11 S.D)の男児,身長は45.0 cm(+1.91 S.D.),Apgar scoreは1分値が1点,5分値3点であった.クモ状指,口蓋裂,二分口蓋垂や関節拘縮は認めず,心臓超音波検査では出生前と同様の所見を認めた.心不全状態の進行により21生日に死亡した.染色体検査では正常核型であった.遺伝子検査については両親の同意が得られなかった.本症例のように胎児期より両大血管起始部の拡張所見を認めるような症例では結合組織の脆弱性に起因する疾患である新生児Marfan症候群に加えてLoeys-Dietz症候群を念頭において周産期管理を行う必要がある.胎児発症のLoeys-Dietz症候群は非常に予後の悪いことが予想され,出生前から遺伝子診断を勧めることで出生後の予後説明が可能となる.
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