静脈経腸栄養
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23 巻, 3 号
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特集:NST 活動の活性化に向けた各職種の課題と方策
  • 井上 善文
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_255-3_260
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    本邦におけるNST活動は、稼動施設数やJSPEN会員の増加など、大きな成果を残しているように見える。しかし、このNST活動が施設内に定着し、すべての患者に対して適切な栄養療法が実施されるようになったかと考えると、数多くの問題が残されている。医療従事者の栄養療法に関する知識不足も1つの問題である。最も根本的な問題が医師の栄養療法に対する姿勢である。医学生に対する臨床栄養教育、卒後教育が明らかに不足している。医師が栄養療法の意義・重要性を認識し、適切な栄養療法を実施しようとすれば、自ずとNSTの必要性が実感されて活発なNST活動が実施できることになる。TNTおよびNST医師教育セミナーなどを積極的に推進し、医師の臨床栄養に関するレベルアップを図ることがNST活性化のための最重要課題である。
  • 大村 健二
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_261-3_265
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    現在、既に多くの医療施設でNSTが活動を行なっている。しかし、これからはその活動の質の向上が求められる。そのためにNST所属の医師に課せられた課題は多い。第一に、NST活動の責任の所在はNST所属の医師にあることを明確にしなくてはならない。NST活動の内容が高度になれば、それはまさに医療行為である。NSTのスタッフであるコメディカルを守る立場に医師はある。第二に、時には重症患者と直接接することになるコメディカルに適切な指導を行なわなくてはならない。第三に、NST活動のレベルアップのために尽力しなくてはならない。これが最も重要であると考えられる。NST活動の内容の適切性をチェックして指導することはもちろん、自身の栄養学に関する知識を高める努力を継続する。自己研鑽の姿勢が重要であるのは、NST活動に限ったことではない。NST活動が優れたチーム医療として完全に根付くか否かはNST所属医師の尽力にかかっているのである。
  • 岩川 裕美, 中西 直子, 栗原 美香, 丈達 知子, 仲川 真弓, 池田 麻美, 船越 紀子, 兼田 千尋, 野口 聡子, 杉原 華織, ...
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_267-3_273
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    管理栄養士は、栄養のプロフェッショナルとして必要栄養量を計算し、それを食品に置き換え、食事として提供するスキルを持っている。また、栄養評価の際に自ら足をはこび、患者から直接話を聞き、身体計測を行い、病棟スタッフと情報交換することもできる。このように栄養管理の中心として存在するのが管理栄養士であり、医療専門職としての管理栄養士の役割がますます大きく変化している。情報は常にベッドサイドにあり、学んだ栄養学の知識をしっかりと自分のものにするには、自分の足で病棟に出向き、実体験して、初めて臨床応用ができるのである。また、学会や研究会の場で自らの取り組みを発表することにより、エビデンスが構築される。特に、栄養マネジメント(栄養学の実践)とは、サイエンスとアートを統合することであり、栄養士が臨床の現場で活躍するには、コミュニケーション能力、共感力、コーディネート能力などの人間力が要求されることを強調したい。
  • 杉浦 伸一
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_275-3_278
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    Nutrition support team(NST)におけるNST薬剤師の認定制度は、職種横断的なNST専門療法士しか存在しない。そのため、薬剤師の専門性が明確にならなかった。その結果、NST専門療法士としての薬剤師像が見えにくくなり、専門性教育が遅れた。チーム医療は、チームワークとチームプレーが必要であり、薬剤師は栄養療法を化学的に捉え(1)生化学に裏付けられた患者病態の把握能力、(2)各種製剤の特色を理解する能力(3)経腸栄養療法と輸液栄養療法の選択能力を身につけなければならない。また、具体的な達成目標を整理する必要がある。薬剤師がNSTのスペシャリストとなるには専門職として目指すべき理想の姿が社会的にも薬剤師自身にも想像できなければならない。理想像が見えれば教育体制の整備は難しくない。薬剤師として関わるべき範囲をどこかで決める必要がある。
  • 山田 繁代, 矢吹 浩子
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_279-3_284
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    看護師は、24時間のベッドサイドケアを通じてあらゆる場面の栄養管理に関わっていることから、NST看護師には病棟看護師の栄養管理技術の向上を目的とした活動が必要である。しかし、NST看護師の活動は、病院の規模や機能、稼動しているNSTの特徴などによって差異があり、おそらく実際に目的どおりに活動できているNST看護師は少ないであろう。NST活動を活性化させるには、臨床現場の医師や看護師から日常的にNSTが活用されるような土壌を作らなければならない。そのためには、病棟看護師の栄養管理に関する意識を啓発するに足るだけの、NST看護師自身の栄養管理の知識と技術を成熟させるような方策が必要である。
    本稿では、NST看護師の活動の現状を推察し、今後の課題と方策について述べる。
  • 杉山 昌晃
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_285-3_289
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    臨床検査技師は、臨床検査に関する知識と技術を持ち迅速かつ正確に情報を提供している。臨床検査はまさにデータの宝庫であり、豊富な検査データを臨床栄養にどう生かすかが大切ある。また、NST活動には、基礎的な輸液の知識、経腸栄養剤の知識が必要である。臨床検査技師教育のなかでは輸液や栄養に関するカリキュラムがないため、外部の研修会や院内の研修会やミニレクチャーなどに積極的に参加することで知識を高めることが必要である。エビデンスに基づいた検査項目の選択と臨床的意義や基礎的データを提供することでNST活動に貢献できる臨床検査技師、臨床検査部の取組みが必要と考える。
  • 飯島 正平, 篠木 敬二, 正木 克美, 岩井 明子, 古里 雅子, 松宮 依子, 土井 聖子, 見戸 佐織, 仲下 知佐子, 金井 秀行
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_291-3_300
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    医療業界の電子化の中で、NST活動でも着実に電子化がすすんでいる。しかし、他の業務に比べると歴史の浅いNSTのアプリケーション開発は遅れ気味であり、現在は暫定的な運用と言える。NSTでは多くのファイルに分散している医療情報を集約・分析して、栄養管理(栄養処方)を計画して、これらを記録・蓄積し、その活動履歴からアウトカムを出すことが必要である。このような情報の処理は電子化での最大のメリットであり、これらの効率化で得られる時間的な余裕をNSTのようなチーム医療ではかねてから求めてきた。したがって、これらの関連情報を効率よく一元化管理し、ユーザーに快適なアプリケーション開発が望まれる。さらに、業界側でも活動の標準化が求められており、そのためには過去の運用にとらわれることなく、これからの栄養療法の標準化やエビデンス構築のために、合理的なコンセンサスを得る努力も必要となってくるであろう。
原著
  • 合志 聡, 麻植ホルム 正之, 前川 智, 森 健次, 太幡 敬洋
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_301-3_306
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下、PEGと略)を施行した症例は、経腸栄養剤によって長期間栄養管理される場合が多い。今回n-6/n-3系多価不飽和脂肪酸(以下、PUFAと略)の比が低く設定された経腸栄養剤を使用し、その栄養評価と脂肪酸分画を長期的に比較し、その意義を検討した。
    【対象及び方法】PEGルートの投与によって栄養管理を実施している完全経腸栄養施行中の18症例に対して、n-3 PUFAの含有量が他剤よりも比較的多い半消化態経腸栄養剤ラコール®を使用し、脂肪酸分画の推移を平均して132±54日間で比較した。
    【結果】n-3 PUFA分画の血中α-リノレン酸、ドコサペンタエン酸は有意に増加し、n-6 PUFA分画ではリノール酸が有意に減少を示した。全体としてn-6/n-3 PUFAは有意に減少を示した。
    【結論】n-6、n-3 PUFAの長期間投与による観察の報告は現在までに数少なく、長期投与の結果で、その経腸栄養剤の組成が体組成に影響を与えることが明らかになった。基準に合致した脂肪酸分画を含有している栄養剤のみを投与することは血中脂肪酸も同様な挙動を示した。
  • 藤 重夫, 金 成元, 神谷 しげみ, 近藤 美紀, 小井土 啓一, 平野 貴子, 桑原 節子, 高上 洋一, 造血幹細胞移植後栄養管理研究 ...
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_307-3_314
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】欧米では造血幹細胞移植後の栄養管理はガイドラインに基づいて行われるが、本邦ではそのようなガイドラインは存在しない。本邦の栄養管理の現状調査のために、全国130の移植施設の医師に対して質問数34項目のアンケート用紙を送付し、80施設(62%)から回答を得た。
    【結果】経口摂取が不可能な患者における投与カロリーは1.0 ~ 1.3×基礎エネルギー消費量とする施設が最も多く(39%)、次に特に決めていないとする施設が多かった(38%)。脂肪乳剤の使用は18%に過ぎず、糖質とアミノ酸のみを用いる施設が最も多かった(58%)。院内NSTは86%の施設で存在するが、実際に移植患者の食事相談に対応している施設は24%に過ぎなかった。
    【結論】本邦においては、移植後の栄養管理は施設間で大きく異なる実態が明らかとなった。栄養管理は移植患者の予後にも影響する可能性が強く、その普及には医師のみならず、看護師、栄養士、薬剤師の積極的な参加が期待される。
  • 丸山 道生, 長浜 雄志, 佐藤 栄吾, 丸山 祥司, 真田 貴弘, 小出 綾希, 大日向 玲紀, 江淵 正和
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_315-3_320
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的】流動性が低く酸性の半消化態栄養剤ファイブレンYH®(以後、YHと略)を、細菌増殖と凝固、カテーテル(以後、カテと略)閉塞に関して他の(非酸性の)半消化態栄養剤と比較検討した。
    【方法】(1)E. coli、E. faecalis、K. pneumoniaeを栄養剤内培養し、経時的に細菌数、PHを測定、栄養剤凝固の有無を観察した。(2)空腸瘻から栄養剤を持続投与、カテ閉塞を観察した。
    【結果】】(1)対照3種の栄養剤では3菌種とも経時的に増殖し、24時間でPHは約1低下し、凝固が観察された。YHでは細菌数は低下し、24時間でPHは4から変化せず、凝固も認めなかった。(2)YH持続投与21症例ではカテ閉塞は認めず、観察期間は5~61日(平均21日)であった。対照の栄養剤では9例中8例(89%)が2~28日で閉塞をきたした。
    【結語】粘調な栄養剤YHはカテ閉塞をきたさなかったことから、カテ閉塞の原因は栄養剤の細菌汚染によるPH低下に続く凝固が一因であると考えられた。YHはカテ閉塞がなく細いカテーテルでも使いやすい製剤である。
症例報告
  • 佐藤 武揚, 児山 香, 早坂 朋恵, 中村 隆司
    2008 年 23 巻 3 号 p. 3_321-3_325
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は35歳女性。先天性胆道拡張症に対し15才時に手術治療を受けた。その後膵炎症状を繰り返し、計3回の膵管減圧手術を受けたが改善しないため、2年前より静脈ポート挿入の上、在宅経静脈栄養を行っていた。平成19年4月に腹痛を主訴に前医へ入院したが麻薬などの保存的治療では疼痛が改善しないため、手術目的に平成19年8月当院へ転院しFrey手術を施行した。術後は膵炎所見や仮性のう胞形成を認めず良好に回復した。これまでの経過から食事に対する恐怖心が強くまた、不自然な排便習慣となっており術後の食事摂取に際して困難が予想されたため、周術期栄養療法として栄養科と連携を図りつつ術前より栄養強化を行ったところ自然な排便習慣と食事ができるようになった。今回の方法は慢性膵炎手術時の栄養管理と、長期絶食時の手術治療に際しての周術期栄養療法として意義あるものと考え若干の文献的考察を加えて報告する。
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