都市計画論文集
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41.3 巻
選択された号の論文の177件中151~177を表示しています
  • スペイン・ルネサンス期における都市計画規範の比較
    加嶋 章博
    2006 年 41.3 巻 p. 899-904
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿はスペインが植民地向けて公布した植民地法(インディアス法)の初期事例である『フェリーペ2世の勅令』に着目するものである。これにはスペイン国家が掲げた都市計画の考え方が示されている。そこに示された都市レイアウトと広場の整備を促す計画概念は、イタリア・ルネサンス期の理想都市論に強い影響を受けたものといえる。フェリーペ2世の勅令についてはこれまでもその都市計画規範について議論がなされてきたが、本稿は、アルベルティの『建築論』に示された都市計画の考え方との比較から見えてくる勅令の特異性を整理することが狙いである。総じて言えば、『建築論』の都市計画の主張は、都市空間の機能的、衛生的な観点とともに、装飾への意識が強いものといえる。しかし都市空間を断片的に規定しており、都市レイアウトの具体的なモデルを導くのは難しい。対する『フェリーペ2世の勅令』は、矩形の中央広場を起点としたグリッド・パターンの秩序的な都市レイアウトの上に様々な規定を当てはめるものであり、常に都市空間構成の視覚的イメージを強く導こうとするものであったことが両者の対比から窺える。
  • 中島 直人
    2006 年 41.3 巻 p. 905-910
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、昭和初期の民間保勝運動の全容把握のための初手として、日本保勝協会の活動の背景、実態、理念を明らかにすることを目的とする。日本保勝協会は、1928年に専門家と一般大衆との中間を志向し、各地の民間保勝団体の支援を目的に設立された民間団体であった。主な事業は、権威性と通俗性の両立を目指した機関誌の発行、及び全国の保勝会との協働の場を提供することも意図した旅行会の開催であった。しかし、両事業とも、保勝から観光へという大きな潮流の影響下で、当初の方針を維持できず、保勝運動に対する先導性を失っていった。しかし、日本保勝協会が有していた保勝運動理念は当時の民間保勝運動を理解する上で重要である。国本尊重を前提とした公の理念の下という限定条件付ではあったが、民間保勝運動を単に政府の事業の下部組織とするのではなく、独立した運動として編成する構想を有していたのである。
  • 野中 勝利
    2006 年 41.3 巻 p. 911-916
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は明治初期に城跡で開催された博覧会の意義や意図を明らかにすることである。研究の対象は、松本、甲府及び岡山である。松本では、博覧会を継続的に開催することで、天守閣の保存と活用を図った。甲府では、博覧会が山梨県による勧業の一環として位置づけられた。岡山では期間限定の博覧会から常設の博物館の設置へとつなげる意図があった。各博覧会とも、博覧会の開催を通じた目的は城跡の開放にあった。城や天守閣という前近代の為政者の権威的象徴の空間を博覧会の場とすることは、近代社会への変革を空間体験として知覚する機会となった。
  • 道県庁所在都市39を対象として
    松浦 健治郎, 巌佐 朋広, 浦山 益郎
    2006 年 41.3 巻 p. 917-922
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
  • 高橋 美寛, 久保 勝裕, 白木 里恵子
    2006 年 41.3 巻 p. 923-928
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道の上湧別町は、屯田兵が入植した当時の区画や文化が色濃く残っている。こうした固有の歴史を持つ都市には、固有の住民間の歴史的ネットワークが存在し、そのネットワークをうまく利用すれば、現代のまちづくりにおいて大きな役割を担えると考える。本論では、屯田兵の末裔である町民を「屯田衆」とし、それらの日常的な付き合いである「屯田ネットワーク」の構造を明らかにした。分析の結果、上湧別町では、兵村から中心街に移転した町民同士がネットワークを維持している実態などが明らかになった。
  • 広場状空地の出自とその経緯に着目して
    西成 典久
    2006 年 41.3 巻 p. 929-934
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    石川栄耀が新宿歌舞伎町(広場を持つ理想的盛り場)をつくったことは有名であるが、本稿により、麻布十番においてもその関わりが明らかとなった。石川は東京の戦災復興区画整理を通じて、日本にはなかった西欧広場を石川なりに解釈して日本に根付かせようとした。本研究は、特に、麻布十番地区にある広場状空地(パティオ十番)の出自と経緯に着目して、石川と麻布十番の関わりを記述していく。以下、結論である。1.石川栄耀は、麻布十番を戦災復興区画整理区域に指定し、盛り場としての復興を支援した。2.石川の盛り場計画論と麻布十番の復興計画には、広場の創出、街路の曲行、映画館の集積という共通点が見出された。麻布十番の広場状空地は、市民交歓の場としての盛り場形成のため、意図的に創出されたと考えられる。3.復興計画後、麻布十番の広場状空地は標準的な道路断面であった。しかし、80年代に麻布十番商店街は広場状空地をコミュニケーションの場として利用できるよう改修した。結果的に石川の理想とした広場と近い使われ方になったといえる。
  • 永井 恵一, 十代田 朗, 津々見 崇
    2006 年 41.3 巻 p. 935-940
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、東京都内のキリスト教会を対象に、教会の立地の変遷と移転の要因から、教会が都市空間においてどのような位置付けにあるのかを考察することを目的とする。その結果、(1)東京都内における教会立地の変遷は、築地居留地を起点に、徐々に西進、郊外化が進んでいる。(2)教会の移転理由として大きく5種類が抽出され、戦後には、区画整理等や財政・立地の問題等、内部的問題による移転が多く見られた。特に区画整理による移転は、戦後に教会の移転が減少する中で、大きな割合をしめるようになっている。(3)教会史から移転に関する議論を抽出することにより、初期においては、教会の財政や伝道の進展の問題の原因を、教会の立地の悪さに起因するものと見なし、会員の獲得のために移転を議論する傾向がみられた。また、震災後の議論では区画整理が多く見られるとともに、教会の周辺の「環境の変化」が議論されており、移転の要因のひとつとなっていることが明らかになった。
  • 岡村 祐, 中島 直人
    2006 年 41.3 巻 p. 941-946
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の国会議事堂は永田町の高台に位置し、遠くは桜田門外から正面の広幅員直線道路を介したヴィスタが形成されている。このヴィスタは、お雇い外国人ベックマンによって1886(明治19)年によって初めて見出されたものである。それ以後、1936(昭和11)年の議事堂という眺望対象の出現を経て、1964(昭和39)年の正面道路の整備をもって完成に至る。そこで、本研究はこの約80年間にわたるヴィスタの構想と形成の過程、そして構想・計画図に描かれたヴィスタの具体的デザインを明らかにすることを目的とする。その結果、以下のことが明らかになった。1)ヴィスタの構想と形成の過程は4つの時代に区分される。2)その背景には、国会議事堂の建設という一つの揺るぎない軸と、明治期や東京五輪直前期にみられる首都東京としての顔づくり、または震災や戦災からの復興都市づくりというものが存在した。3)現在のヴィスタに較べて、道路の概形や視点場としての広場など、はるかに壮大で華麗なヴィスタが構想されていた。
  • 皇居造営に伴う周辺土地の皇宮地編入の過程と市区改正への影響の分析から
    大澤 のり子, 小場瀬 令二
    2006 年 41.3 巻 p. 947-952
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、明治近代国家形成期に行われた皇居造営が、同時期に行われた市区改正をはじめとする周辺の都市づくりに影響を与えた、という仮説を実証したものである。研究方法としては歴史史料の蒐集・分析を行った。実証は皇居造営に伴う皇居周辺土地の皇宮地編入、すなわち宮城附属地指定の取り組みに着目して行った。実証の過程ではいくつかの事実が明らかとなった。皇居造営に伴って皇居周辺の土地を皇宮地に編入する際、市区改正に伴って丸の内の所轄地を払い下げようとしていた陸軍省から反発が起きていたこと、内務省の市区改正による道路配置は、皇宮地に編入された場所に道路を通さないよう配慮していたことなどである。さらに現在の内濠の景観は、宮城附属地指定によって保全されたことも明らかとなった。
  • 東京都中央区全域及び月島地区の街区の歴史性
    松倉 史英, 宮脇 勝
    2006 年 41.3 巻 p. 953-958
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    大都市江戸東京は江戸時代以来、急速に発展し変化を遂げてきた。しかし、その変化の大部分は都市の表層部である建物の更新によるものであるため、より大きなスケールで都市を捉えれば、その都市基盤には400年間の都市計画の歴史が形となって残っていると予想される。本研究の目的は江戸東京の中心である、中央区の道路と街区の形成年代を基に、その歴史性を明らかにすることである。中央区の街区形成に最も大きな影響を与えたのは、大正12年(1923)の関東大震災後の帝都復興事業であるが、分析の結果、日本橋や銀座、月島には現在も江戸時代や明治時代の街区が残っていることが明らかとなった。また、月島地区において、私道に着目し「みなし街区」を定義し、より詳細な分析を加えると、多くの「みなし街区」に変化が見られるものの、明治時代の「みなし街区」が今も残されていることが明らかとなった。
  • 鹿内 京子, 石川 幹子
    2006 年 41.3 巻 p. 959-964
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    21世紀を迎え、都市において、オープンスペースと公共空間の創出は地球環境の維持、社会的環境の回復のために、重要な課題である。それに伴い、新しい都市空間として都市を再生するために、川と一体化したオープンスペースを創出し、公共空間を生み出す様々な取り組みが行われている。江戸時代に荷揚げ場として川沿いに設置された「河岸」は、明暦年間にはオープンスペースとして規定され、街と密接に関わりあいながら、時代の近代化に柔軟に対応させながら、今日まで継承されてきた。本研究では東京の下町の河川における「河岸」を対象として土地利用と土地所有の2つの視点から、土地利用ではオープンスペースに、土地所有では公有地に焦点をあてながら、明治維新、市区改正、帝都復興事業、戦災復興事業で5期に分けて、その歴史的変遷を分析する。本研究は、江戸期より400年の文化を継承してきた「河岸」を研究することで、オープンスペースの創出の原理原則を把握し、開発速度の速い現代社会においてオープンスペースを維持する方策を講じるための知見を得、これからの新しい公共空間をもった複合都市の再生に向けた政策提案に導くことが、目的である。
  • 松本 幸正, 古井 良典, 伊東 裕晃, 松井 寛
    2006 年 41.3 巻 p. 965-970
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ある生活環境要因に対する良い評価は暮らしやすさに結びつくものの,悪い評価は暮らしにくさには結びついていない場合や,逆に,ある生活環境要因に対する悪い評価は暮らしにくさに結びついているものの,良い評価は暮らしやすさに結びついていない場合のような,生活環境要因に対する評価が暮らしやすさのどちらか側にだけ関連があるような非線形の評価構造を捉えるため手法を提案した.この手法を用いて,実際の住民意識構造を明らかにするため,実際に調査を行った都市地域および農山村地域を対象にしたアンケートの結果を分析し,住民の意識構造を明らかにした.続いて,各要因に対する満足度を同時に考慮して,満足度が高く,それが暮らしやすさにつながっている要因や,満足度が高いものの,それが暮らしやすさにはつながっていない要因などの要因ごとの特性を把握した.
  • 堺 総一郎, 中西 正彦, 中井 検裕
    2006 年 41.3 巻 p. 971-976
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、土地の有効利用を図るべき地域として文京区を対象とし、敷地分割を伴う戸建住宅の(1)発生状況の把握、(2)居住者の属性を把握、を行い、都心居住と土地有効利用の観点に立ち考察することを目的としている。その結果、(1)文京区では相当数の敷地変化が生じており、分割は統合の倍以上発生していること、(2)分割を伴う戸建住宅は容積率指定が中程度までの住居系地域に多く発生していること、などが明らかとなった。またその居住者は比較的所得が高く、また郊外からではなく近隣からの移住者が多く、都心回帰という現象にはあまり貢献していないことが明らかとなった。これらのことから今後敷地分割規制の活用が図られるべきと思われる。
  • 氏原 岳人, 谷口 守, 松中 亮治
    2006 年 41.3 巻 p. 977-982
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年わが国において、人口減少社会へと移行しつつある中、中心市街地のみならず郊外部からの都市活動の撤退という問題に着目が必要となっている。そして、それら都市活動撤退パターンによっては、空間利用や基盤整備の効率がさらに悪化したり、環境負荷が増大したりする可能性がある。しかし、それらパターンは、長期的にミクロな視点から実態が明らかにされてきたわけではない。本研究では、市街地形成時の整備手法が異なる複数の郊外市街地を対象に、住宅地図を用いたミクロな視点で経年的に都市撤退の実態を分析した。その結果、スプロール開発が蚕食型のパターンを有していたように、都市撤退も蚕食型の撤退パターンを呈していることが明らかとなった。それら撤退パターンを、ここでは「リバース・スプロール」と命名した。そして、「リバース・スプロール」は、スプロール型地区において顕著に発生する傾向があり、基盤整備が進んだ地区においては、都市活動の撤退が発生しても、その跡地が再利用される割合は非常に高いこと、さらには一体的に整備された地区は、その後の開発、撤退ともに現段階では少ないことなどを明らかにした。
  • 日本の通りとフランスのRue(通り)
    石田 恵一, 森田 喬
    2006 年 41.3 巻 p. 983-988
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、街路空間には文化的な意味があると仮説を立てた。日本の「通り」とフランスの「Rue:リュ」から想起されるイメージを分析することによって、この仮説を展開した。街路空間は、自動車交通の発展に伴い世界中で共通する交通システムよって構築される傾向がある。一方、街路空間は各文化における公共空間であり、そして、街路は「通り」や「Rue」という名称によって示されている。そこで、デッサンを用いたアンケートによって、街路名称から想起されるイメージの分析を試みた。分析方法については、数値によるアンケート集計データを視覚的に扱うことができる「行列図」によってデータ分析を行った。その結果、日本の街路空間における歩行者の優位性とフランスの自動車交通に対応した街路の特徴が各文化において明らかになった。また、日本ではイメージによる街路の分節化がフランスと比較すると明確ではなかった。
  • 山本 聡, 松永 安光, 徳田 光弘, 漆原 弘
    2006 年 41.3 巻 p. 989-994
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、1990年代初頭イギリス政府都市再生政策「シティチャレンジ」の対象地域に選定されたマンチェスター市ヒューム地区を評価とモニタリングのシステムを適用したもっとも典型的な事例としてとりあげ考察したものである。このシステムはこのプロジェクトに当初から組み込まれていたものであり、現在に至るまで機能している。1997年と2002年当プロジェクトの節目には広範にわたる評価報告がなされている。現地の関係機関を通して入手された資料などを検討した結果、この継続的なプロセスの利点が明らかにされた。このシステムによればプロジェクト当初に策定された目標そのものも、その後の変化に対応して変更することが可能になることが判明した。これがわが国の、特に長期にわたる都市再生事業の評価システムに貢献することを期待する。
  • パウレワール プラフー, 福川 裕一
    2006 年 41.3 巻 p. 995-1000
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    アメリカ・シカゴのショア銀行は、1973以来、荒廃したサウスショア地区で、銀行業務を通じて、つまりアパート所有者である地域住民への融資を通してコミュニティの再生を図る事業に取り組み「町づくり銀行」のモデルとして知られる。しかし住宅地の再生で成果をあげた同行も、地区のメインストリート・71番街の再生には難渋している。本論は、住宅地とくにパークウエイ地区の再生プロセスから「ショア銀行モデル」を整理した上で、71番街でのこれまでの取り組みの経過・現状・課題を調査によって明らかにする。そこから商店街の再生においても、ショア銀行モデルは有効であるものの、それが成功するためには、さまざまな関係主体のいっそうの協調が不可欠になるという結論を導く。
  • 杉浦 裕二, 坂本 淳二
    2006 年 41.3 巻 p. 1001-1006
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は,若年層にとってのウォーキング活動の阻害要因を抽出,若年層でも実践可能なルートや実践方法を検討し,市民の健康増進や都市環境の健全維持にとっても有益で効果的なウォーキングコースの整備に関する課題について考察する.分析においては,日本の一般的な地方都市である静岡県袋井市と愛知県蒲郡市を対象に,両市の実施した市民対象の健康意識調査結果を利用した.結果として以下の傾向・課題が明らかとなった.1)ウォーキングの参加度から,60歳代を中心核とする積極的参加グループと30歳代を中心とする非参加グループという2極構造が存在する.2)非参加グループのウォーキング参加への阻害要因として,時間がないという個人的な条件とともに,経路の安全性が問題視されている.3)高齢者ではウォーキング中の生理現象をカバーする空間整備がウォーキング促進の課題となる.さらに若年層がウォーキングに参加するためには,「子どもと一緒でも困らない,「一人でも危険性を感じない」ことを基調として,歩くことに対しての意味づけが必要となることが明らかとなった.
  • 首都圏の特定行政庁を対象として
    加藤 仁美
    2006 年 41.3 巻 p. 1007-1012
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,首都圏を中心とした各都市における市街地更新と狭隘道路問題への取り組みの実態を把握し,地域特性をふまえた市街地更新と狭隘道路整備のあり方と,改正基準法を視野にいれた地域的展開の可能性について探ることを目的とした。その結果,各行政庁の狭隘道路整備の実態として,市街地特性や現場の実情を踏まえた多様な適用のなされていることが確認され,市街地の骨格的道路水準の現況や整備方針との関係を基本とした計画的適用の可能性が見出された。
  • 東京都中央区月島地区における3項道路型地区計画の初動的な実績と効果
    川崎 興太
    2006 年 41.3 巻 p. 1013-1018
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都中央区は、月島地区において、路地を保全しながら、「防災性の向上」と「定住性の高い住宅の立地誘導」を図ることを主な目的として、平成16年7月1日に3項道路型地区計画を施行している。本研究は、3項道路にのみ面する建築物を対象として、平成9年12月1日に施行された一団地型地区計画と比較しながら、その初動的な実績と効果を考察することを目的とするものである。本研究を通じて、以下の3点が明らかになった。第一に、3項道路型地区計画は誘因が効果的に作用し、目的の実現に効果を発揮している。第二に、一団地型地区計画は、一団地活用建築物に限っては3項道路型地区計画とほぼ同様の効果を発揮しているが、8割弱を占める一団地不活用建築物の影響が大きく、全体的にはその効果は限られており、この点で3項道路型地区計画は一団地型地区計画よりも効果を発揮している。しかし第三に、年間平均建築確認申請件数は、一団地型地区計画の施行後よりも3項道路型地区計画の施行後の方が減少していること等から、3項道路型地区計画は目的実現の前提となる建物更新の速度自体には一団地型地区計画と比較して大きな作用を及ぼしているとは言えない。
  • 歴史的景観保全と生活環境整備の一体的展開
    清水 肇, 小野 尋子
    2006 年 41.3 巻 p. 1019-1024
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    那覇市首里金城地区においては、歴史的環境を有する地区としての景観整備が1980年頃から取り組まれてきた。その過程において、中央部を貫く石畳道を保全し、地区外に通過用道路を建設し、さらにアプローチ道路を整備することが行われてきた。その過程で生活環境を整備しつつ細街路の歴史的形態を保全・整備する方法について模索が行われてきたが。2005年に細街路の両側の石垣を含めて道路用地として石垣や石積の保全修復をはかり、道路自体は歩行者専用道路として整備して有効幅員を2~2.7mとする都市計画決定が行われた。これによって沿道敷地は幅員4m以上の道路に接することとなる。これは環境、利用、設置の三側面を実質的に評価して細街路の目標を定めることによって可能となった細街路整備の方法である。
  • 坂本 紳二朗, 松浦 健治郎, 浦山 益郎
    2006 年 41.3 巻 p. 1025-1030
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、愛知県常滑市の散歩道地区を対象として、小さな店舗集積の形成を可能とした条件を明らかにする。明らかとなったのは、1)散歩道地区には景観的なまとまりをもつ3~9軒の小さな店舗集積が複数箇所に形成されていること、2)地縁・職縁共にない店舗経営者が散歩道地区へ出店を決めた条件として、散歩道地区が人通り・集客性・街の魅力などの面で有利と判断される状況にあること、3)起業・地区参入段階に散歩道地区に出店を促す介在者がいたこと、4)店舗出店の受皿としての空き工場が散歩道地区内に分布していたこと、5)物件選定段階において特定の物件に店舗経営者を紹介斡旋する家主や介在者がいたこと、6)その結果として、小さな店舗集積の形成が可能となったこと、である。
  • 大規模商業施設開発と生活環境の変化に着目して
    西 英子
    2006 年 41.3 巻 p. 1031-1036
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    「生活の質」の向上が都市計画においても重要な課題として位置づけられるようになった。日本のこれまでの都市計画は、高度経済成長を荒削りで支えた量としての都市計画であり、ハード整備(Physical Planning)に力点が置かれていたが、今後は、「生活者のための都市計画」、「人々のための都市計画」が大きく問われている。本研究では、熊本市郊外に出店が続く大規模商業施設と周辺に居住する子どもを持つ世帯への生活環境調査を事例に取り上げ、都市開発とQOLについて考察することを目的とする。大規模商業施設の出店によって、周辺の生活環境が変化(悪化)したと答えた95%の世帯からは、交通渋滞やそれに伴う事故の発生が出された。大規模商業施設周辺に住んでいても施設利用には車を利用しているのも事実である。子どもを持つ世帯にとっては、大規模商業施設は消費活動の利便性、嗜好性に貢献しているものの、生活環境全体を通して見た場合には、様々な環境の変化(悪化)という現実に直面している。子どもたちの安全な生活環境や安心して遊べる空間が、車社会を助長する大規模商業施設の開発によっても排除されている。
  • 本厚木駅・小田原駅前地区を対象として
    阿藤 卓弥, 大村 謙二郎, 有田 智一, 藤井 さやか
    2006 年 41.3 巻 p. 1037-1042
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    首都圏郊外の駅では、地域間競争の激化やロードサイドショップの急増によって、駅前地区の商業拠点性が失われつつある。本研究では、首都圏郊外における駅前商業集積地区として本厚木・小田原地区を取り上げ、大規模店舗の撤退とチェーン店の立地動向に着目して、駅前地区の停滞実態を明らかにすることを目的とする。調査によると、両駅前地区では大規模店舗の撤退が続いている。さらに中小規模店舗の業種業態別店舗数・構成比を1985・1994・2002年の3時点間の推移から分析した結果、外部資本店(チェーン店)が増加傾向にあり、駅前地区と郊外部の均質化が進行していることが明らかになった。また店舗撤退廃業後の低未利用地化の分析から、外部資本店の増加と低未利用地化に関連性があること指摘した。以上の結果から、駅前地区の商業拠点性を維持するために、駅前地区の均質化を抑制し、地元資本店を育成することで、駅前地区の差別化・個性化を図っていくことが、重要であるとの示唆を得た。
  • 三条市と上越市高田地区でのケーススタディ
    桑原 直樹, 樋口 秀, 中出 文平
    2006 年 41.3 巻 p. 1043-1048
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、三条市、上越市(高田地区)の中心商業地域全域を対象として、中心市街地の利用実態と土地・建物権利関係から、地方都市中心市街地の権利状況に関する基礎的知見を得ることを目的とする。商業地域は、本来「主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」であるが、両市の現状は、用途も様々だが商業系よりも戸建住宅の割合が高く、高度利用されているとは言い難い。土地・建物の権利関係をみると、両市とも土地と建物所有者が同一な「単純」がそれ以外の「複雑」よりも多いことが明らかとなり、権利の複雑化は顕著でない。中心市街地衰退の原因は権利関係が複雑だから流動性がないのではなく、地権者の意識が低いことに問題がある。商業地域の指定が広すぎることも問題であり、今後は商業地域の指定を一定の規模にしぼりこみ、権利関係が単純な敷地を中心として機能更新を図ることが重要である。
  • 居住者による自律的住環境形成に関する研究
    原田 陽子, 野嶋 慎二, 薬袋 奈美子, 菊地 吉信
    2006 年 41.3 巻 p. 1049-1054
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市の1つである福井市の周縁部に数十年前に開発された戸建住宅地においては、「空区画」の存在と共に、「区画の統合化」が目立つ事例が複数存在する。本研究では、複数区画利用のプロセスを明らかにし、空区画を利用した居住者による自律的住環境形成に向けての基礎的知見を得ることを目的とする。本研究を通して明らかになった内容をまとめると次のようになる。)空区画の数は年々減少し区画統合は継続的に行われており、未利用地の多くは団地外居住者が所有している。また複数区画利用世帯では、非隣接区画の所有や賃貸での暫定利用も見られる。(2)区画の統合化には、接道条件や方位との関係が大きく関係している。3)区画の複数利用が行われている背景には、3世代居住や将来の親族への土地の確保が活発であるため、交通手段が不便であり駐車場を確保するため、土地価格の安さの大きく3点が影響している。4)区画統合世帯の多くは現住宅への定住を希望していると共に、居住者は未利用地に対し、必ずしも否定的に捉えているわけではなく、管理面での改善を望んでいる。
  • 長岡市をケース・スタディーとして
    平田 菜八佳, 樋口 秀, 中出 文平
    2006 年 41.3 巻 p. 1055-1060
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢社会の対応の一つとして、利便性などを享受できる中心市街地に高齢者用住宅を整備する政策が進められている。しかし、実際に高齢者用住宅の実態を踏まえた上で高齢者のライフスタイルと住み替えの(移住)意向の関係を示した研究は行なわれていない。そこで、本研究は長岡市をケーススタディとして、高齢者の移住に対する需要や条件などを明らかにし、今後の住宅政策に対する課題を整理することを目的とする。研究の結果、高齢単身世帯は中心部で多く、同居世帯は農村部で多いこと、移住に対する意向には地域差がなく、同居世帯に比べて高齢者のみ世帯の方が強いこと、高齢者の多くが、「移住」と「施設入居」が全く異なるものであると認識していることが明らかとなった。移住を促進するためには、家賃が低廉であること、健康状態が悪化しても住み続けられること、住宅のみならず中心市街地全体の一体的な整備が必要といえる。
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