都市計画論文集
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41.3 巻
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  • 再開発等促進区と都市計画契約を活用したBプランの協議プロセスの比較を通じて
    山口 美貴, 大村 謙二郎, 有田 智一
    2006 年 41.3 巻 p. 301-306
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、わが国ではプロジェクト型都市計画による都市再生が進められており、非法定の段階で主要関係主体が協議を通じ実質的で重要な決定、条件付けを行っている。本研究では、1)国内のプロジェクト型都市計画の事例である二子玉川東地区及び武蔵小山駅東地区を取り上げ、非法定の段階からの計画策定過程に着目し、協議の実態と課題を明らかにすること、2)早期の段階で市民を含めた多様な主体の参加を法律で義務付けているドイツのプロジェクト型都市計画の計画協議の手法から今後の日本の計画協議の進め方に示唆を得ることを目的としている。日本の場合、非法定の段階では、周辺住民や計画に大きな影響を受ける関係者が意見を表明し、計画内容を議論する場がないことが大きな問題として指摘できる。これに対し、ドイツでは計画案を作成する担当行政区が開催する説明会を通じて、事業者、地元反対組織、住民が共通した情報を得た後、ラウンドテーブル方式で議論を行う参加手法がとられたことで、計画案に対して積極的かつ建設的な議論が展開された。
  • 東京都市圏のまちづくり条例の運用に着目して
    山田 一希, 村木 美貴, 野澤 康
    2006 年 41.3 巻 p. 307-312
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、大規模敷地での大型開発が紛争となるケースが見られるようになった。地区計画、高度地区等の街並みにあった開発コントロールの手法や、地域別構想での位置づけ等の地域の市街地像を実現させる方法があるものの、大規模開発の規制に十分機能するものではない。こうした現状への対処として、大規模開発の事前協議を位置づけた条例もみられるが、コントロールの枠組みと実施方法の両面に課題があることから、本研究は、事前審査手続を規定したまちづくり条例の運用実態から、自治体レベルの大規模開発コントロールのあり方を明らかにすることを目的とする。本研究を通じて、地域地区等により大規模開発の種類、周辺土地利用状況に傾向があること、まちづくり条例は自治体により対象基準、審査手続に独自性がみられること、個別の大規模開発への助言には、都市MPの土地利用方針や地域特性が影響すること、権利移転、計画時における2段階の審査の仕組みが開発コントロールの実効性を高くしていることの4点が明らかとなった。今後、大規模開発コントロールを行う上で、事前審査手続を規定した条例の有効性、条例運用上の都市MPの活用の2点が重要である。
  • 神奈川県内の自主条例を有する景観行政団体を事例として
    秋田 典子
    2006 年 41.3 巻 p. 313-318
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、神奈川県内の自主条例を有する自治体のうち、2006年4月末までに景観法に基づく景観条例及び景観計画の原案の策定が終了している自治体を対象に、自主条例に定めた開発の基準等が景観法に基づく景観計画及び景観条例にどのように移行されているかを明らかにすることにより、景観法に基づく開発コントロールの可能性と課題を考察することを目的としている。分析の結果、1)自主条例に位置づけられた開発の基準や届出対象は概ね景観計画・条例に反映されているが、自治体の景観法活用の目的や戦略により独自に対象の追加や削除が行われていること、2)景観法が自治体の多様な景観形成の要求に柔軟に対応しうる制度であること、3)大規模な自治体では景観条例に基づく開発コントロールにおいて量か質のいずれかを選択せざるを得ないこと、4)規制の基準が数値等の客観的基準で明示可能な色彩等に対象を限定するタイプと抽象的な文章で幅広い項目を対象とするタイプの二極化が見られること、5)景観計画・条例を制定しても開発協議の手続きや社会的圧力の確保のために自主条例が必要になることが明らかになった。
  • 神奈川県小田原市を事例として
    内海 麻利, 小林 重敬, 坂井 文
    2006 年 41.3 巻 p. 319-324
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    景観法成立に伴い、自治体にとってこれまでの景観行政と景観法施行後の景観行政をどのように移行、発展させるかが課題になると考える。そこで本研究では、神奈川県小田原市を対象に、旧景観条例の経緯と実績を把握した上で、景観紛争事例にみる問題をとおして景観条例の限界と景観法等への移行の背景を明らかにし、その背景を踏まえた景観条例から景観法等への移行内容と理由を考察することで、実効性と独自性ある景観行政の方向性と方策を示唆することを目的とする
  • 施策の成立背景とその内容に着目して
    大石 俊輔, 内海 麻利
    2006 年 41.3 巻 p. 325-330
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    地方分権の推進や自治体の政策過程における市民参加の必要性を背景として、近年、市民の発意による地域の計画づくりや、公共的事業の担い手として市民の活動が注目をあびている。これは、公共に対する行政と市民との役割に変化が生じているものと考えられる。そこで、本研究では、こうした市民の活動を支え、促す施策を積極的に展開している神奈川県大和市を事例に、その施策運用にみられる市民と行政の役割を明らかにすることを目的としている。
  • 公共空間の活用を中心に
    天明 周子, 小林 重敬
    2006 年 41.3 巻 p. 331-336
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地域ポテンシャルを高める視点を持ち、これまで整備してきた都市地域をより有効に活用する「エリアマネジメント」の重要性が認識され、こうした取り組みが大都市都心部を中心に展開されている。そのような中で、自治体がエリアマネジメントを積極的に後押しする形で、2003年10月に「東京のしゃれた街並みづくり推進条例(以下、しゃれ街条例)」が施行され、地域の活性化を図るために公開空地等を柔軟に活用することが可能となった。本研究は、しゃれ街条例の運用実態を明らかにし、しゃれ街条例の意義と今後の課題についてエリアマネジメントの視点から考察することを目的としている。本研究は、既往研究及び行政資料、関連組織の担当者のヒアリングをもとに、以下の流れで行なった。まず、公共空間を活用した地域活動事例、及び活用に伴う法的規制について調査し、公共空間の活用を促す新たな動きについて整理した。次に、しゃれ街条例を活用している各まちづくり団体の運用実態について明らかにし、それらに基づいてしゃれ街条例の意義と今後の課題について分析、考察した。
  • 田川 絢子, 内田 奈芳美, 佐藤 滋
    2006 年 41.3 巻 p. 337-342
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、発足から30年が経ち、「転換期」を迎えた中野区住区協議会を研究対象とし、「地域づくりの場」としての運用実態を明らかにした。本研究の目的として、第一に中野区住区協議会の制度としての位置づけを「協議会方式」の変遷から明らかにした。他の「協議会方式」と異なり、中野区では住区協議会をあくまで「協議体」と位置づけていたことが分かった。第二に、現在の住区協議会の参加者の構成から、既存の地域組織との関係を分析した。住区協議会は、既存の地域組織代表と、公募によるメンバーの占める割合によって類型化された。第三に、住区協議会の「地域づくりの場」としての実態を明らかにした。そこから、現在の住区協議会が既存の地域組織と類似した役割を果たすようになったこと、また、住区の枠を超えた地域活動の増加に伴うその「場」としてのあり方の変化が明らかになった。最後に、今後の「地域づくりの場」の運営について、「場」に対する権限委譲の必要性と、新たな形の組織との連携模索の必要性について述べ、今後への提言とした。
  • 大阪船場の取り組みと他地域との比較を通じて
    登根 哲生, 嘉名 光市, 姥浦 道生, 赤崎 弘平
    2006 年 41.3 巻 p. 343-348
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都心のまちづくりは異種多様な担い手の存在や、複数のまちづくり団体の活動、大学の参画等多彩な動きがみられる。そいった中でこれらのまちづくり団体は様々な課題を抱え活動を展開している。そこで本研究は、都心のまちづくり団体が抱える課題に着目し、「船場研究体」のプログラムの検証を通じて多様化する都心のまちづくりへの大学の参画の意義について考察する。京都、東京日本橋、船場のまちづくりへの大学の参画形式は、各地のまちづくりの個別性、多様性に対応しているために一応でない。例えば、「船場研究体」は、大学の活動の諸成果等を活用して大学と地域の双方が活用できる地域に関する情報基盤づくりを進めている。これは船場のまちづくりが団体間で地域に関する情報共有ができていないという課題に対応した形をとっている。都心のまちづくりへの大学の参画は、各地のまちづくりを展開していくために、その現状や課題に応じた形式で大学の諸成果を地域へ還元している。
  • 齊藤 充弘, 西成田 由
    2006 年 41.3 巻 p. 349-354
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、市町村におけるUDの現状と推進するための課題を明らかにすることである。福島県とUDの先進地である静岡県、熊本県内の191市町村を対象として、UDに対する取り組みに関するアンケート調査を実施した。その結果、既往研究に多くみられる公共施設や交通施設にみる施設整備状況に止まらず、市町村を対象として意識づくりやこころのUD等、UDに関する総合的な取り組み状況を明らかにすることができた。また、人口規模別にみた場合、規模が大きくなるに従ってさまざまな分野における取り組みを多くみることができた。そのような中で、10万未満では計画の中にUDを位置づけていない市町村も多く、UDを推進していく上では予算の問題が大きく影響していることがわかった。さらに、ふくしま型UDの分野及び項目を指標としてみることにより、まちづくりにおけるUDの推進に比べて、こころ、サービス、情報のUDについての取り組みに乏しい市町村が多く、これらの分野に対するUD推進の展開の有無が、全体としての取り組みの違いとして現れる形となっていることがわかった。各分野での取り組みの積み重ねにより、一人一人の意識改革や理解を深めていくことが望まれる。
  • 入江 彰昭
    2006 年 41.3 巻 p. 355-360
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでの研究において、従来欠落している分析は、ヒートアイランドが分断され小さくなることによってどの程度温度が下がるかということである。緑地計画への応用は、計画した緑地によっていかにヒートアイランドが緩和されるかを証明することにある。本研究は、広域的な都市環境情報を解析するのに有効なランドサットTMデータを用い、ヒートアイランドの緩和に有効な緑地形態、すなわち種類、規模、分布形状について明らかにし、ランドサットデータをベースとしたヒートアイランドの緩和に資する緑地の配置計画の手法を提示し、特に評価手法を開発することを目的としている。本研究の結果、計画された緑地によるヒートアイランドの変化をシミュレーションの結果として示すことができた。
  • 横田 樹広, 武内 和彦
    2006 年 41.3 巻 p. 361-366
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    都市域における小規模緑被分布の生態系ネットワーク機能を明らかにするため、緑被の空間的分布特性の指標を算出し、チョウ類を指標とした生物出現状況との関係性を把握した。2_m²_以上の都市内小規模緑被について、植生タイプごとの集塊度,異なる植生タイプの隣接長,植生タイプからの距離,植生タイプの多様性の4指標を算出し、出現したチョウ類の種タイプの組合せ(草原性のみ,草原性+林縁性,樹林性出現)との関係を分類・回帰木により分析した。その結果、生態系ネットワーク機能評価において、種タイプの幅への影響が大きい樹林性チョウ類の出現の有無が評価の指標に有効と考えられた。樹林性チョウ類の出現は、広域の落葉樹林面積に依存しており、緑被分布特性として、小規模領域での落葉樹林と常緑樹林・草地の混在による植生のモザイクが寄与することが示された。また、草原性種,林縁性種を含めた種タイプの幅には、小規模距離圏での草地の集塊度や広域での植栽木・竹林の集塊度が寄与しており、生態系ネットワーク機能の向上において、まとまった落葉樹林・竹林の保全や隣接市街地での植栽整備等が有効と考えられた。
  • 清水 美砂, 上甫木 昭春
    2006 年 41.3 巻 p. 367-372
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、『摂津名所図会』と『和泉名所図会』に描かれた神社と現在の神社の緑の存在形態とその変化を把握し、それらの空間特性を周辺土地利用と地形条件から検討した。その結果、神社の緑の存在形態において、絵図では樹林型、現在では広場型が多く、緑の存在形態は樹林型から広場型に変化しているところが多かった。また、現在の樹林型内でもより樹林割合が少ないタイプへ移行しており、緑の存在形態が変化していることが明らかとなった。空間特性について、地形条件では大きな変化は見られなかったものの、より起伏の大きいところでないと樹林としての形態が維持できなくなっており、緑の存在形態の変化については、起伏のないところでは広場型がそのまま継承され、起伏が大きいところでは樹林型が継承されていることが明らかとなった。一方、周辺土地利用では大きく市街化が進んでいるにもかかわらず、周辺土地利用との間に明確な関係性は認められず、地形条件の方が緑の存在形態の継承により強く寄与していると類推された。
  • 藤田 直子, 熊谷 洋一
    2006 年 41.3 巻 p. 373-378
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    社叢と周辺の緑地の連担性に着目した配置特性の分析を行った。本研究において連担性とは、社叢と周辺の緑地が拡大することによって連なり相互に融合することと定義し、連担性を持つ箇所を連担緑地ユニットと称した。連担緑地ユニットは社叢と周辺緑地にバッファを形成することにより作成した。また地形指標データはDEMの解析により標高・傾斜・ラプラシアン・開度の4つの指標を作成して用いた。連担緑地ユニットと地形指標データとの相関関係を分析した結果、連担性が高い社叢の特徴は、地形が変局し且つ斜面地であること、または地形が変局し且つ開けていることという傾向が明らかになった。社叢空間が地域の基軸となり他の緑地との間で地形に沿ったユニットが形成されていることを示すことが出来た。このことは、都市における緑地の残存パターンを把握する上で有効であるだけでなく、新たに緑地を創造する場合のデータベースとしても有効であると考えられ、社叢空間は地形との相関が含有された緑地であるということを指摘することが出来た。
  • 松本 邦彦, 澤木 昌典, 柴田 祐
    2006 年 41.3 巻 p. 379-384
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    都市的環境が優先する大都市圏においては、農地は様々な地域環境の維持向上に貢献する機能を有しており、中でも農地景観は都市居住者が体感しやすく、馴染みのあるものであると考えられる。特に、農地はその緑被地としての役割と、高密な市街地において開放性を提供する役割を担っていると考えられるが、その役割は十分に明らかにされていない。そこで本研究では、比較的多くの農地が存在する大阪都市圏周縁部を事例に、農地の存在形態とその分布を明らかにし、またこれらの結果と都市住民の農地に対する評価の関係から、地域景観における農地の役割とその機能を明らかにすることを目的とした。分析結果からは以下の点が明らかになった。1) 対象とした大阪都市圏の北部周縁部では様々な農地の存在形態があり、その構成比や分布特性には特徴がある。2)農地が視対象としての役割だけでなく、近傍に視点場を提供する機能を有している。また居住者は農地近傍を視点場とすることで、山などの中遠景観を享受している。3)農地が居住環境の向上に貢献しており、居住者は農地を自然を感じられる要素として認識している。
  • 河和 知子, 中井 検裕, 中西 正彦
    2006 年 41.3 巻 p. 385-390
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    一般的な低層住宅地では、散在して発生する建築行為が緑の喪失に与える影響が大きい。本研究では東京都内で風致地区に近年建築された共同住宅等を対象に、現行の規制と緑化の実態を把握し、今後の望ましい誘導手法を考察した。結論は以下の通り。1、敷地面積別に規制を緩めることの妥当性を見直す必要がある。2、接道部への緑化に優遇措置が導入されているにもかかわらず、その効果は見られなかった。3、共同住宅と長屋では緑地の形状が異なり、それぞれの性質を考慮した緑化指導を行うことが効果的であると思われる。4、空地が緑化されないのは駐車場の影響が大きいため、駐車場の緑化に関するガイドラインを作成することが必要である。5、連続性を考慮した指導の意味と必要性が確認された。
  • ニューカッスル市リーザス公園を事例として
    宮川 智子
    2006 年 41.3 巻 p. 391-396
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、整備後に年数を経た都市公園では、管理不足の状態が課題となっているケースがあり、現状を放置すれば、公園内施設の劣化・破損が進行し、バンダリズムを誘因するおそれもある。イギリスでは、政府は1996年に遺産宝くじ基金による都市公園事業の制度を整備して都市公園の再生・管理を進めている。本研究は、ニューカッスル市の歴史的な中規模都市公園であるリーザス公園を事例として、施設配置計画の変遷および再生に関連する制度の検討を行い、歴史的な都市公園の再生過程の特徴について明らかにすることを目的とする。結果から、リーザス公園が公園消滅の危機にまで至った要因には、自治体の財政難による維持管理の不足、開発への圧力が関連することが判明した。リーザス公園の再生過程においては、市民による継続的な活動の展開、都市公園事業による再生、再生計画における歴史性の再評価が特徴であることが判明した。
  • 旧日光市から旧今市市における地籍図、土地台帳、公図の比較調査
    深谷 正則, 宮脇 勝
    2006 年 41.3 巻 p. 397-402
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    今日、日光街道周辺の景観整備において、歴史的景観を一体的に保全するための景観計画は策定されていない。本研究では日光街道の周辺景観の変遷を捉え、今後の街道周辺景観の保存の在り方を考察することを目的とする。研究方法は、1990年の公図及び1898年から1959年まで使用されていた土地台帳を利用して、1898年、1945年、1959年、1990年の地籍図を作成し、それぞれの年次の地籍図を比較することにより景観の変遷を捉えた。景観の変遷を辿った結果、1898年以降、宅地化、鉄道の敷設、側道の整備等により日光街道周辺の景観は変化してきたことが明らかとなった。現在、日光街道周辺の歴史的景観は断片的に保全されており、今後は景観条例等を用いて街道周辺の景観を一体的に保全していくことが望まれる。
  • 利用世帯・事業所の特性と意識からみた継承の動向と改修補助事業の影響
    松谷 圭祐, 小林 史彦, 川上 光彦
    2006 年 41.3 巻 p. 403-408
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は非戦災都市である金沢市の中心部に広範に残存する歴史的木造家屋に着目し、建物調査とそれらを利用する世帯・事業所への質問紙調査などにより、歴史的木造家屋利用世帯・事業所の特性と歴史的木造家屋継承の動向を明らかにするとともに、歴史的木造家屋を対象とする金沢市による改修補助事業の効果について考察することを目的としている。歴史的木造家屋を利用する世帯は小規模で高齢者のみ世帯が多く、事業所は一部に複数店舗展開する比較的規模の大きいものもあるが、家族経営的な小規模事業所が多い。これまでの継承は、家族内で行われたものが大部分であり、新規利用開始例が経年的に減少しており、継承は停滞傾向にある。今後の継承については、約3割の世帯・事業所は継承の見通しがないことが明らかとなった。補助事業の利用・未利用で比較すると、利用した世帯・事業所の方が、建物のよいところを見出しながら使っている傾向がある。また、補助事業の種類別では、居住性向上を対象に含む補助事業は家族外での継承を促し、景観要素としての再生に重点を置く補助事業は伝統的外観要素の修復に改修補助事業に効果があることが明らかになった。
  • 兵庫県安楽田集落を事例として
    徳勢 貴彦, 澤木 昌典, 岡 絵理子
    2006 年 41.3 巻 p. 409-414
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、現在、景観施策の対象となっていない景観施策外集落の今後の景観のあり方を検討する第一歩となることを目的とし、景観施策外集落の一事例として、兵庫県安楽田集落取り上げ、以下の調査分析を行った。(1)集落空間の現状の把握、(2)住民の評価する景観構造の分析、(3)住民の建替え等の意向に基づく、今後の集落景観の変化の予測を行った。本研究の結果、集落の建物や塀などのデザインは変わっているが、集落の骨格となる道の構成や形状、敷地内の建物などの配置は継承されていること、また、住民の評価する景色には大きく5つのタイプがあり、それらは、今後の住民の建替えなどにより失われる可能性が高くなっていることが明らかとなった。
  • 山梨県南アルプス市を事例として
    宗像 路子, 大山 勲
    2006 年 41.3 巻 p. 415-420
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の住宅景観は、歴史との断絶が進行している。今後は歴史との連続を考慮した景観形成を行うことが望まれる。さらに、その形成は単に規制によるのではなく、住み手の内発的な活動によって作り上げられるべきである。近年多くの自治体で、地域の歴史的資源を再評価し、デザインガイドなどのルールを定めて町並みを誘導する取り組みが行われている。多くの地域は歴史との連続が見えにくくなっているが、その連続の特徴を明らかにすることが、今後の景観形成のために重要であると考えられる。本研究は、開発の波にさらされ歴史の連続が見えにくくなってしまった地方都市郊外の農村集落の現在の民家景観を対象として、混沌とした民家様式を類型的に整理し、歴史との連続性を考察するとともに、規制によらずに伝統的な建築様式を継承する人々の意識を明らかにした。これより歴史と連続した、内発的な、今後の景観形成に資する基礎的知見を得ることができた。
  • 佐藤 圭二
    2006 年 41.3 巻 p. 421-426
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究はイギリスの住宅地デザインガイドにおける「囲み」概念のあり方を研究したものである。「囲み」は室内の空間に対置されてみることができる。床は平面スペースに、壁は正面立面に、天井は天空としてとらえることができる。ここでは、イギリスの3都市のデザインガイドにより、このことを明らかにするとともに、デザインガイドがhy法7日する、「囲み」の3つの側面について、その空間のあるべき姿を示した。
  • 富山県城端を事例として
    惣司 めぐみ, 澤木 昌典, 鳴海 邦碩
    2006 年 41.3 巻 p. 427-432
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文で取り上げる富山県南砺市城端(旧城端町)の中心地は無形文化財「曳山祭り」の舞台として有名である。その中心地において、平成9年度から国道304号の拡幅工事が行なわれ、工事の進行とともに、通りの両側の建築物が建替えられ、新しい町並みが出現した。その際、沿道の1商店会および2町会において、各自、紳士協定である外観ルールを作成し、地域の町並み景観と環境の管理を目指した取り組みが行なった。本論文では、外観ルールの内容をいかに建築物の外観のデザインにとりいれるかが、建築協定よりも建築主個人の判断に任されることになる紳士協定としての外観ルールを作成し、その実施にあたった西町商店会、出丸町、新町の3つの地区を対象とし、文字で表された外観ルールが表現する外観のデザインの方向性と、建築主の外観ルールの読み取り方を検証し、外観のデザインの読み取り方の違いと建築主の事業への関心度の違いの関係性を明らかにすることを目的とする。
  • 山崎 隆之, 十代田 朗
    2006 年 41.3 巻 p. 433-438
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、現在全国で行われている「物語」を用いた地域PRの取り組み事例から、取り組みの標準的な姿を明らかにすることを目的とした。全国から収集した事例を分析し、取り組みの種類を11の取り組み項目に分類し、対象物語カテゴリーごとの主要取り組み項目を明らかにするとともに、各対象物語カテゴリーごとの主要取り組み項目の実施順から、実施順の標準的なパターンを仮説的に示した。
  • 土田 夢子, 羽生 冬佳
    2006 年 41.3 巻 p. 439-444
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、まちなみ観光地として発展を遂げてきた岐阜県高山市において、地域紙「高山市民時報」の記事から読み取れる住民の意見の変遷を、同市におけるまちづくりの展開ならびに観光の発展と比較しながら論じたものである。分析の結果、高山では、まちづくりという側面においては、行政の施策と住民の意識とが比較的合致しており、そのことが結果的に「古い町並み」を核とする観光地としての発展に結びついたと考えられる。他方、観光という側面においては両者とも一貫性に乏しく、観光地としての発展やその方向性に関して対立する構図がみられた。また、近年においては、高山が観光への依存度を高めてきたことによる地域社会のひずみが、住民の意見としても現われている。
  • 赤坂 信
    2006 年 41.3 巻 p. 445-450
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    国際観光局が組織した国際観光委員会が「山の権威」「山の専門家」を集めて、日本の山岳を中心に国際観光を進める会議を開いた。1931年に国立公園法が公布されたその3ヶ月後に会議は二度開かれ、山の観光の可能性が討議された。外客誘致の方策について先進地スイスアルプスの事情を「山の権威」にきくことから会議は始まる。スキーリゾート、登山鉄道、ホテル施設、道路等の交通施設の事例が紹介される一方、日本の現状、とくに上高地の現状について多くの問題点が指摘された。上高地における道路建設と自然保護はこの座談会の争点ともなった。アルプスの観光で国の経済を立てていると目されていたスイスをお手本と考えていた国際観光局は、(何人かの専門家によって指摘されたが)観光がどれだけヨーロッパアルプスを荒廃させてきたかについては関心を示すことはなかった。
  • 小関 信行, 高野 公男
    2006 年 41.3 巻 p. 451-456
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ドイツのクアオルトの認定条件は、療養の要素、気象、環境保護、医学的鑑定のほか、広範囲に渡っている。それだけ、療養地という場所の環境や生活の質が、高いということである。日本の温泉地には、このようなクアオルトの認定制度がないため、人々の目は、個々の旅館や温泉のみに目が向けられる。そのため私は、いま改めて温泉地全体の環境を、都市計画や環境、医学そして交流する観光の視点から総合的に見つめなおし、ドイツのクアオルトのような美しい温泉保養地から学ぶべきと考える。
  • 斎藤 直人, 十代田 朗, 津々見 崇
    2006 年 41.3 巻 p. 457-462
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年都市の随所で見られるストリートダンスは、計画者の想定とは異なる「都市空間の使い方」をしており、加えてその芸術的要素や生み出される人々の滞留は、都市空間の賑わい創出の一端を担っている。そこで、本研究は東京圏のダンススポットを対象に、(1)ストリートダンサーの特性、及び(2)ダンススポットの空間及び管理の特徴等の実態を明らかにし、今後の都市デザインを議論するための知見を得ることを目的としている。その結果、(1)ダンサーはスポット選択の際、主に交通利便性や他のダンサーとの交流を重視するが、経験に応じて混雑しないスポットや管理者の対応がより柔軟なスポットを選ぶこと、(2)現在利用されている21スポットは駅周辺の空間が多く、大規模構造物等の大きな単位の空間の端や隙間に立地するものが多いこと、(3)風雨を避けられ、鏡や滑らかな床面といったスタジオに似た設備を多くのスポットが有すること、(4)管理・警備主体は、1カ所のみが許可する方針で、3ヶ所では排除、残り12カ所は黙認や方針なしと消極的であること。また、不法占有、騒音、歩行者への迷惑等が問題点として認識されていること、が明らかとなった。
  • シーニックバイウェイルートにおける試行
    石田 眞二, 亀山 修一
    2006 年 41.3 巻 p. 463-468
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    シーニックバイウェイ北海道とは,道をきっかけに北海道固有の景観,自然,文化等の地域資源を最大限に活用し,個性的な北海道を実現するための取り組みであり,道路の美しい景観づくりが主要なテーマの一つとなっている.本研究では,「シーニックバイウェイ北海道」で指定されているルートにおいて,車で走行した際に見ることのできる連続した道路景観をシークエンス景観として捉え,定量的に評価するとともに,シーニックバイウェイルートに代表される北海道らしい道路景観の特徴を類型化し,明確にすることを目的とした. 定量的評価手法には,フラクタル次元を用いて,道路景観の複雑さを評価するとともに,道路景観の構成要素から主成分分析を行い,道路景観の特徴を3タイプに類型化し,北海道らしい道路景観の特徴を明確にすることができた.また,シークエンス景観構造は,2つのモデルルートにおいて求めたフラクタル次元と占有率及び,道路景観タイプの変動から,その特徴を明確することができた.
  • 京浜臨海部の機能転換に見られる都市空間としての質的変化と混在化の動向
    野原 卓
    2006 年 41.3 巻 p. 469-474
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    京浜臨海部を代表とする我が国の工業地帯では、産業構造変革以降、活力低下が徐々に進んでおり、再生の方法論が必要とされるものの、都市空間(土地利用)としての工業地帯の実態は明らかではなかった。また、都市計画的にも、「工業地域」は、住宅地からの隔離以上の効果を持ち得なかった。一方、都市空間としての京浜臨海部の実態をみてみると、単純な工場機能ではなく、これまで想定し得なかった質的変化が起きている。第一に、敷地単位では、工場から物流業へと移行し、規制の弱い地域では住宅も進出している。第二に、工場内部をみると、研究開発機能が挿入され、中には、賃貸用の業務床を持つものも現れた。第三に、これらの変化は、高度利用化も伴っており、工場機能を維持しながら敷地内部での変化も多いことから、「混在化」が進展している。このような業務化・研究機能化は、就業者の生活環境向上の必要性にもつながり、福利厚生やアメニティ環境の整備が課題である。従来の(工場)用途では捉えきれない変化のある京浜臨海部において、新たな都市空間のあり方を示す必要がある。
  • 大阪市北船場地区を事例に
    笹尾 和宏, 鳴海 邦碩
    2006 年 41.3 巻 p. 475-480
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都市再生に対する都市ツーリズムの有効性が認識され始めた。一方で、情報化社会を背景に、人々は都市の点の情報を媒体から得ることが日常的になった。人々と都市情報との接点が増えていく状況を都市ツーリズムにうまく利用して、人々が都市の点に注目するだけではなく、その点を取り巻く都市全体に関心を展開することができれば、それは都市へのなじみにつながり、都市再生に寄与しうると考える。本研究では、地区特性と点情報との関連性から、大阪市の北船場地区の飲食店情報を事例として、人が地区に関心を持って歩いてみたいと思えるような点情報のコンテンツのあり方に関する提言を行うことを目的に研究を行った。ガイドブック及び地域情報誌の地区特集を用いた文献調査からは、飲食店集積を示す地区特性が多く取り扱われており、特集内の飲食店情報との関連性も高いことが明らかになった。しかし、アンケート調査からは、人々が飲食店以外の商業要素、建築物、歴史要素の集積を示す地区特性を認識している上でその地区特性と関連性のある魅力が飲食店情報に記載されているときに、飲食店情報が地区への関心に有効に機能することが明らかになった。
  • 白川 慧一, 坂野 達郎, 堂免 隆浩
    2006 年 41.3 巻 p. 481-486
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    国立大学通り訴訟の宮岡判決は,市村判決同様,景観のコモンズ性認識に基づく互換的利害関係としての景観利益を認定することで,地域の自発的な景観維持を条件に集合的行為管理権を認定した画期的な判決である.宮岡判決を棄却した大藤判決は,行政制度の存在を条件に集合的行為管理権を認めるべきという判断を下しているものの,審級制度の元での合法性と社会的正当性は必ずしも一致しないことから,宮岡判決に社会的正当性が認められる可能性がある.集合的行為管理権の認定条件に対する社会的正当性の判断と,その背景要因を探るために,国立市民を対象としたアンケート調査を行った結果,大藤判決よりも宮岡判決に社会的正当性が認められる可能性があると同時に,市民の行為管理権認識において地域の自発的な景観維持を認める傾向であるcommunitarian性は,価値主観的な景観選好のみならず,財としての景観の連結性という,主観的でありながらも客観的な事実認識を介して強められ,その一方で,コミュニティのルールに対する同調性によって弱められることが明らかになった.
  • 金沢市の歴史的建築を事例として
    宇津 徳浩, 川上 光彦
    2006 年 41.3 巻 p. 487-492
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    歴史的市街地において戦前に建築された木造の住宅(以下歴史的建築)は現在も住居や商店として利用されている。しかしながら近年、その老朽化や継承の問題から歴史的建築が急速に減少の一途をたどっており、その継承活用の必要性がさけばれている。本研究では、金沢市を対象とし歴史的建築に対する歴史的建築に対する市民評価と評価に関わる意識構造を明確化し、歴史的建築の保存活用のための新たな知見を得ることを目的とした。また本研究では無作為抽出による調査票調査を実施した。その結果、歴史的建築に居住経験のある市民は継承活用の意識が比較的高い傾向にあり、またCVMによる評価の結果、歴史的建築の継承活用を進めることは市民一人あたり1,000円(中間値)1,561円(平均値)の価値が存在していることがわかった。さらに、その評価に関わる様々な意識構造を定性的な評価や共分散構造分析を行うことで明確化できた。
  • 山形市における高層建築物の立地状況と制御の課題抽出
    小林 敬一
    2006 年 41.3 巻 p. 493-498
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    容積率制を中心とした現在の形態規制制度は、絶対高さ規制から発展したものであるが、昨今再び絶対高さ規制を導入する自治体が増えている。現行制度のどこに問題点があるのか、どのような観点から新たな高さ規制が求められているのか、を明らかにすることが本稿の目的である。具体的に地方中核都市である山形市を対象に行った計画調査の報告書から、同市の高層建築物の分布と近年の立地動向、ならびに抽出された計画課題を紹介し、それらに基づいて高層建築物制御の計画技術的課題について考察を加えた。結果として、1)地区に形成されたローカルな景観ルールの反映、2)将来の変化を見込んだ運用、3)変化に連動した運用、4)直接規制的手法と手続的手法の併用を、コントロールに求められる特質として結論づけた。
  • 浜離宮恩賜庭園を事例にして
    伊藤 悠太, 久野 紀光, 斎藤 潮
    2006 年 41.3 巻 p. 499-504
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年大名庭園からの眺望は周辺の開発により変化した。その開発を抑制するために法制度が制定されているのが実情である。しかし、大都市において開発の全てを抑制することは難しい。文化財保護法では事業者は行政と協議することが義務付けられている。本研究は協議の中で事業者と行政が景観保全について話し合った内容を分析するために浜離宮恩賜庭園での景観保全のための事業者と行政間の協議を精査することで、協議の中で何を追求し、また何が景観保全において重要であるかを明らかにする。それにより今後の景観保全に対する知見の一端を明らかにすることができる。
  • 田代 雅明, 中井 検裕, 中西 正彦
    2006 年 41.3 巻 p. 505-510
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年屋外広告物に対する関心は高まりを見せており、屋外広告物の外観的な要素については様々な議論が行われている。しかし、屋外広告物の広告内容は地域にも大きな影響を与えており、今後は屋外広告物の広告内容についても注目する必要がある。本研究の目的は、商業地の屋上広告空間の特性と形成要因について明らかにすることである。現地調査を通して屋上広告物の広告内容について把握し、そして広告主に対するアンケート調査とまちづくり団体に対するヒアリング調査を通して屋上広告空間に対する意識とその形成要因を把握する。これらの調査結果から以下のような結果が得られた。まず、企業の屋外広告戦略が地域において異なる屋上広告空間を形成おり、そして地域イメージは屋上広告空間を決定する大きな要因の1つとなっているということが明らかになった。
  • 小田 憲治, 近藤 隆二郎
    2006 年 41.3 巻 p. 511-516
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、日常の街並みの景観を捉えなおす手法として「色彩参画」を提案し、「色彩参画」を行うことによって、変化するであろう市民の景観イメージに焦点を当てる。「色彩参画」とは、「決められた色を持つ任意の要素(モノ)を市民が街並みに飾り付けることによって街路景観の形成に参画すること」とする。本研究では、「色彩参画」が街並みの景観イメージに与える影響を明らかにし、景観形成における「色彩参画」の効果を明らかにすることを目的とする。「色彩参画」実験が市民の景観把握へ与える影響を明らかにするために、実験の前後にアンケート調査を行い、街並みの景観イメージと景観認識、実験への関心に関するアンケート調査を行った。調査の結果、「色彩参画」を行うことで、日常の街並みの景観を捉えなおし、新たな一面を発見することができることが示された。つまり、景観形成への市民の積極的な参画を促すためのツールとして、「色彩参画」を用いることができると考えられる。今後、市民が景観計画や景観協定等の策定といった、日常の景観をつくる際に市民が参画するための“入り口”として「色彩参画」が用いられることが望まれる。
  • 横断図を用いた構成分析手法の提案
    毛利 洋子, 星野 裕司
    2006 年 41.3 巻 p. 517-522
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    河川空間の魅力を活かすため、街との繋がりを考慮し一体的な整備が行われてきているが、官民境界や管理体制の境界によって、実践においては難しい現状がある。しかし、人間活動の視点から街と川との繋がりを考えたとき、その管理体制などの境界と、人々による街と川との境界の認識が一致するとは限らない。そこで、本研究では、人間活動の視点から街と川の繋がりを捉え、境界となる場所を見抜く手法、境界の位置づけ、境界と位置づけられた場所を街と川との繋がりをもつ場所としてデザインする為の着目点、を明らかにしたい。また、研究対象として、複数の都市河川を同列に取り上げたことで、各河川の個性によらない高い汎用性と計画やデザインの実践につながる知見が得られると考える。また、現地調査をもとに、街と河川を含めた横断図の作成を行い、空間を構成している要素に着目した。その要素の配列の傾向が、どのような空間の状況を示しているのかを分析することで、街と川をつなげるためのデザインにおける着目点を抽出する。
  • 広島市リバーフロント建築物等美観形成協議制度を対象として
    山口 卓哉, 岡崎 篤行
    2006 年 41.3 巻 p. 523-528
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都市部では河川や湾岸沿いの地区に、周辺環境の変化が少ないことや水辺への美しい眺望が保障されているという利点から多くのマンションが建設されている。 研究の目的は広島市が行なっているリバーフロント建築物等美観形成協議制度を対象とし、届出書と関係者へのヒアリング調査から届出された協議の実態とその運用状況を明らかにすることである。 この研究の結論は次の通りである。施行から現在に至るまで、運用していく上で様々な制度内の変更点があった。特に、不成立処理の採用は広告物業界に河川地区への不必要な広告物の抑制効果を喚起した可能性が高い。「水の都ひろしま」構想と協議の効果が広島市内の水辺空間の魅力形成につながっていると言える。
  • 出村 嘉史, 荒川 愛, 樋口 忠彦
    2006 年 41.3 巻 p. 529-534
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,京都臨済宗本山の一つである天龍寺を対象として,十境によってどのような景域が創られたのかを明らかにすることを目的とする.伽藍創建と共に成立した天龍寺の十境及びこれに関する偈頌を分析し,事物の形状のみならず景域における体験の仕方までの再現性を含んだ設計図のようなものであった可能性を検証した.天龍寺の伽藍が作られ十境が設定される以前の場所の歴史を把握し,それぞれの要素の配置と,求められていた風景観を確認した.次に,夢窓疎石による偈頌から次のような領域を構成する意図を抽出した.このとき,境致の設定の仕方には「見立て」と「布石」の二通りあることが確認された.布石は,主に場所の意味を強め,視覚に関わるものに用いられた.見立ては,本来の環境に重層的な意味を加え,あるいは景域の中のストーリーを明確にするために用いられた.これらによって,後醍醐天皇に関連する吉野との一体化,法華経の法界の創造,およびそれぞれの境致の履歴を含むマスタープランが構想されていた.夢窓疎石の意図は,伽藍のみに収まらず周囲の環境を含みこむ大きな景域の創造であったことが明らかになった.
  • 市町村合併に着目して
    村中 司信, 村木 美貴
    2006 年 41.3 巻 p. 535-540
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、水道事業をはじめとした公益事業を取り巻く環境が変化し、新たな事業者の参入や料金設定の弾力化が進んでいる。また、近年の地方自治体における財政状況の悪化から、市町村の合併が推進されてきた。市町村合併に伴う水道事業統合が数多く検討されており、市町村合併を伴う水道事業の広域化は、経営の観点からその意義と有効性が厳しく問われることとなる。そこで本研究は、水道事業運営の実態と課題を、特に市町村合併に着目し明らかにすることを目的とする。具体的には、市町村合併前後の水道料金を比較した上で、料金が大幅に引き下げられた地域に着目し、料金の変動に伴う家計および事業運営への影響を算出することで、水道事業の市町村合併による影響を明らかにする。結論としては、市町村合併の際の料金調整においては公平性が保たれておらず、設定方法にもばらつきがある。また、自治体によっては、合併に伴う料金の引き下げによって損失の生じることが明らかとなった。
  • 若久地区コミュニティ・ゾーン形成事業を事例として
    外井 哲志, 坂本 紘二, 梶田 佳孝
    2006 年 41.3 巻 p. 541-546
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    参加型の事業を進める場合、結果の分析だけではなく、プロセス全体の分析や異議者の主張等の分析があってこそ、今後の事業のために合意形成の知恵を共有することができる。こうした観点から著者らは、若久地区CZ形成事業調整協議会の議事録の整理、および協議会関係者からのヒアリング調査を通して、事業全体のプロセスを分析し、対立点と合意点を明確に捉えた上で、合意形成を促進させるためには、地域におけるリーダー的人物の存在、住民の意見に対する協議会の柔軟な対応、体験の共有による判断が必要であることなどを明らかにしてきた。本研究では、上記の対立点に焦点を絞り、協議会代表者と事業に異議を唱える住民のそれぞれにヒアリングを行い、両者の主張を対比させることによって、立場の違いに基づく見解の相違を明らかにし、同事業の合意プロセスにいかなる問題点があり、合意形成の要点は何かを考察したものである。
  • 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2006 年 41.3 巻 p. 547-552
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    組合土地区画整理事業は、民的自発的事業とも言われ土地所有者等が集まり組合を組織して事業を実施するものである。これは公民の適切な役割分担の範とも言えるが、一方で社会経済状況の変化により資金的な問題に見舞われ、また地権者発意のため土地区画整理事業実施に対する推進能力等の問題も抱えていた。そのため従来から公的セクターは組合に対して資金的支援、技術的支援を実施してきた。うち市区町村が独自に行っている支援について、その実態を全国的かつ体系的に把握・分析した研究は行われておらず、市区町村が公的支援を行うにあたりどのような条件を課し、組合に対し何を望んでいるのか等は明らかにされていない。従って公民の役割分担を探り公的支援制度が未整備、過不足がある市区町村が今後の施策を検討する上で支援実態を把握し、整理分析することが必要である。そこで本研究は、組合施行土地区画整理事業に対する全国の市区町村レベルの公的支援方策を抽出した上で、資金的・技術的にどのような支援が行われているか、その実態を明らかにする。そしてその支援がどのような目的の下、どのような条件に基づき、何に対して交付されているのか把握分析する。
  • 日本からタイ国への区画整理制度の移転についてのケーススタディー
    日野 祐滋, 瀬田 史彦, 木下 瑞夫, 岸井 隆幸
    2006 年 41.3 巻 p. 553-558
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    欧州に起源を有する区画整理制度は、我が国で発展し、全国各地で様々な都市問題の解決手法として活用されてきている。さらに今日では、急速な都市化に悩むアジア諸国の中にも区画整理を活用している国が現れている。タイ政府は、1992年の閣議での承認に基づき、政府として区画整理の導入に向けて本格的に取り組むことを正式に決定した。以来、日本政府は区画整理の技術協力を続けてきたが、その結果2004年には、タイ国の区画整理法が成立した。本研究では、タイにおける区画整理法の草案作成から国会での修正可決までの過程をたどりつつ、日本とタイにおける区画整理の相違点について比較・分析し、その背景にある社会的、制度的な相違点との関係を明らかにするとともに、今後、タイにおいて区画整理を推進していくための課題についても分析した。さらに、タイへの区画整理制度の移転を事例として、区画整理制度の移転に関する特徴と課題について考察した
  • 赤荻 裕敏, 村木 美貴
    2006 年 41.3 巻 p. 559-564
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、オリンピックやサッカーワールドカップなど、国内での大型スポーツイベントの開催が目立つ。これらスポーツイベントによる効果は様々だが、施設整備や交通基盤強化など、都市の形勢にも多大な影響を与える。しかし、こうしたイベントに伴う施設整備は、大会後の運営悪化により多額の負債をもたらす場合も少なくない。そこで本研究は、スポーツイベントに伴う施設整備のあり方を、地域財政に与える影響と地域住民への有用性の観点から明らかにすることを目的とする。具体的には国体に伴い進められた施設整備の実態を調査し、自治体の認識・地域財政に与える影響から、イベントによる効果を検証するものである。本研究をまとめると1.国体の会場地は開催要項を基に都道府県が主体となって決定される。しかし、市町村の希望や環境条件の他、各競技団体の影響力が大きく、施設内容の決定にも大きく関与する。2.国体施設は、利用者数が多いものの自立運営が難しい多用途施設と、利用者数が少ないものの自治体の負担が少ない専門施設に大別される。また、現在整備されている施設の多くは赤字経営であり、建設時の負債を含めて多額の財政負担を受けている。
  • 中村 真之, 村木 美貴
    2006 年 41.3 巻 p. 565-570
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    高度経済成長後の都市の発展が大都市の人口流入をもたらし、住宅開発と鉄道敷設が進められた。その結果、踏み切りによる渋滞など様々な問題が顕在化してきた。その解決策として、鉄道の高架化事業が都市部を中心に行われ、その結果生まれた高架下空間も時代のニーズとともに重要な用地と見なされてきた。そこで本研究は昼夜間人口と地価に着目し、活用の現状を把握した上で、今後の活用のあり方について提言する。本研究を踏まえ、昼夜間人口比が大きく、商業開発のニーズの高いところでは民間による開発が想定されるが、住宅地では公共利用が可能な25%の空間をどう活用するかが、今後のまちづくりには有効に機能することが考えられる。
  • 港区内JR品川駅と田町駅の自由通路整備の事例研究
    原田 敬美
    2006 年 41.3 巻 p. 571-576
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、東京都港区内のJR品川駅と田町駅の東西自由通路を対象に、協議会方式による官民協働事業の整備手法について、特徴、問題点、課題を明らかにし、今後官民協働の手法の可能性を検討することである。品川駅自由通路は駅東口の複合都市開発と新幹線品川駅開業に対応するため1998年完成、幅20m長さ250m、工事費160億円である。田町駅自由通路は西口再開発事業計画に公共施設として位置づけ、周辺の再開発や大型開発へ対応するために2003年完成、幅16m長さ80m工事費25億円である。駅周辺の大企業や商店会に協議会参加を呼びかけ、開発者負担、受益者負担の原則で、協議会が建設費を負担し、区は一般財源の支出無しで公共施設整備をした。一方区は開発事業者にボーナス容積のインセンティブを与えた。協議会方式は様々な主体が参加することでコミュニケーションが進み、問題解決が図れ、単独主体で整備するより効率的に事業が進んだ。協議会方式による官民協働の事業の整備手法は今後様々な公共施設整備に活用の可能性がある。
  • 三宅 諭, 後藤 春彦
    2006 年 41.3 巻 p. 577-582
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、はじめに、建ぺい率、容積率、斜線制限の3つのルールについて、模型を使って子どもが視覚的に学習できる都市計画教材を開発している。次に、それを使った模型づくりワークショップを行い、その有用性を検証している。さらに、ワークショップ後に行ったアンケート調査により模型づくりの効果と課題を明らかにしている。本研究で明らかにした知見を以下にしめす。(1)立方体、三角定規、台形定規、敷地板から構成される都市計画教材は、子どもが建ぺい率、容積率、斜線制限を学ぶのに有用である。(2)模型を並べることにより街なみ学習教材にもなる。(3)建築やまちに対する興味を高めることができる。その一方で、一回のプログラムで終わらせるのではなく、数回のプログラムの中で活用することが求められるなどプログラムに関する課題も明らかになった。
  • 中村 敦, 大森 宣暁, 原田 昇
    2006 年 41.3 巻 p. 583-588
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、小学生を対象とした自転車交通安全教育に関して、独自の手法を提案・実践し、各教材が児童の自転車交通行動の意識・行動変化に及ぼす影響を測定することで、より効果的な教材の可能性を探ることを目的とする。文京区内の小学4年生を対象に、授業の時間をお借りして、写真を用いたワークショップ、市販のビデオを用いた授業、独自に開発したゲームの活用、という3種類の手法を別々のクラスに対して適用した。その結果、自転車の交通ルールに関する意識は、どの手法についても授業終了後には向上し、ビデオを用いたクラスで最も多くの項目で向上が見られたが、一ヵ月後には授業直前の状態に戻る項目が多いことがわかった。ワークショップとビデオを用いたクラスでは、一ヵ月後の行動変化も確認された。また、ワークショップが最も現場が盛り上がり、自由意見でも「気づき」や「今後の展開」についての記述が多く、最も主体的かつ積極的な参加が可能な教材としての効果が認められた。
  • 長野県穂高町とその周辺町村で策定された土地利用調整基本計画を比較対象として
    松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平
    2006 年 41.3 巻 p. 589-594
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、土地利用上の問題へ対応するために策定された穂高町と松川村の土地利用調整基本計画を主なケーススタディとして、主体的かつ能動的に策定される調整計画の課題とあり方の提示を目的とする。その結果、後追い的対応であった穂高町では、過去に生じた開発に囚われたことで、結果的に農振農用地を広く包含せざるを得ない状況に至った。その反面、松川村では支援策を講じたことで、農振農用地に依存した開発誘導系区域の指定が抑制できたが、計画期間の見直しを余儀なくされるといった課題もある。以上より、開発を誘導する範囲が散漫に指定されないために、先行的な取り組みが必要である上、ゾーニングのための適切な合意形成を図る仕組みも求められる。
  • 松本都市圏の開発実態と各自治体の取り組みを通じて
    岩本 陽介, 松川 寿也, 中出 文平
    2006 年 41.3 巻 p. 595-600
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、長野県の松本都市圏を対象に、都市圏一体で整合性が図られた土地利用規制の必要性について論じている。特に市町村合併によって同一自治体に異なる土地利用規制が存在しており、実情にあった土地利用規制のあり方を提示することが求められている。松本都市圏では、区域区分を行っている松本市から周辺の緩規制地域の町村に開発が流れている実態があることを明らかにした。また周辺自治体は新規に都市計画区域や用途地域を指定したり、自治体独自の取り組みによって土地利用コントロールを図っているが、都市圏の土地利用規制の乖離を解消するには至っていないことを指摘した。松本都市圏では、より整合性のある土地利用規制が求められる。特に市町村合併によって誕生した新松本市にとっては、整合性のある土地利用規制の実現がいっそう求められる。
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