都市計画論文集
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41.3 巻
選択された号の論文の177件中101~150を表示しています
  • 人口5万人以上の160市を事例として
    橋本 隆, 湯沢 昭
    2006 年 41.3 巻 p. 601-606
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文の目的は、市町村合併後の都市計画区域の地域格差と自治体意識の関係を明らかにすることである。研究の着眼点は、都市計画区域の併存状況に応じた規制誘導に対する自治体意識を定量化することである。分析を行った都市は、既に市町村合併した人口5万人以上の160市である。自治体意識の分析においては、自治体意識調査の結果を用いて因子分析と階層分析法(AHP)を行った。分析の結果、都市計画区域の併存状況に起因する自治体意識には、大きな格差があることが分かった。この論文は、これらの分析結果を発表し、都市計画区域の再編の一助とするものである。
  • ドイツにおける土地利用計画への住民参加
    阿部 成治
    2006 年 41.3 巻 p. 607-612
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ドルトムント市では、2000年から2004年にかけて新Fプランの策定が行われた。この過程で、市民や各種団体には、早期参加、縦覧、そして再縦覧と、3回にわたって意見を述べる機会が与えられた。そこで、提出された意見とその扱いを検討することにより、住民がプランの決定に参加している実態を明らかにしようとしたものである。約1,000件の意見の内容と採用状況を検討した結果、早期参加と縦覧の段階で提出された意見のうち、かなりの数が採用されていること、参加の機会が複数回あることは再考の機会等として意味があること、市民の参加を拡大するにはその意見を代弁するNPOなどの存在が重要であること、およびFプランが単独で土地利用を計画しているのではなく他の諸計画に支えられて負担が軽減されていること、を明らかにすることができた。
  • 沖縄県浦添市の「花と緑のまちづくりフェスタ事業」を事例として
    安里 直美
    2006 年 41.3 巻 p. 613-618
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、沖縄県浦添市の「花と緑のまちづくりフェスタ事業」制度を取り上げ、地域発意の緑のまちづくりにおける空間管理とその支援の実態を把握することを通して、支援効果と問題点を明らかにし、住民主体の緑のまちづくりにおける今後の支援(協働)の方向を探った。行政へのアンケート並びに聞き取り調査、行政資料の分析整理、住民活動の観察・聞き取り調査を行い、以下の結論を得た。新たな公園確保が困難な密集市街地で、住民が提案した計画の実現を協働で進めることで、地域コミュニティの環境資産を活用した「緑空間」の再生と活動支援が可能になった。地域空間の質の向上、緑化活動と空間管理の深まりにつながった点で効果が認められる。一方で、事業プロセスでの合意形成支援の不備により、事業後の住民活動が継続せず空間が荒れたケースがあった。今後の支援の方向性として、地域環境資産の発掘・活用、施工段階での計画の変更調整に柔軟に対応する合意形成支援プロセスの充実、緑のリーダーの養成が不可欠である。。
  • 御手洗 潤, 越澤 明
    2006 年 41.3 巻 p. 619-624
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、我が国における法律及び大都市部の条例に基づき建築物の緑化義務を課する法制度を研究対象とし、これらの分類、比較検討及び考察を行うことにより、今後の建築物の緑化義務を課する法制度の望ましい姿の検討に資することを目的とする。本研究では、法令に基づき建築物の緑化義務を課する制度を、その対象行為又は対象物の観点から4つに分類するとともに、規制の担保力の観点からも3つに分類した。そして、それぞれの分類及びその他の規制項目について比較・考察を行なった。その結果、建築物の緑化義務を課する制度の望ましい姿は、都市緑地法に基づく権力的手法型の制度と条例に基づく非権力的手法型の制度を併用することであることが明らかになった。
  • 今西 昭裕, 谷下 雅義
    2006 年 41.3 巻 p. 625-630
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    都市計画税は社会資本整備水準の整備に充当するための目的税である。しかし半数以上の市町村は、政府が設定する整備目標量を達成していないにもかかわらず、都市計画税を課税していない。我々はこの理由の一つとして、都市計画税の効果が十分に明らかにされていないからであると考える。本稿では15年間の様々な統計データを用いて、都市計画税の影響を評価した。その結果、都市計画税を課税している市町村は、都市計画税を課税していない市町村よりも下水道整備水準の増加量が多いことが分かった。さらに都市計画区域人口の増加率においても、都市計画税を課税している市町村は課税していない市町村よりも高くなることが示された。
  • 谷下 雅義, 今西 昭裕
    2006 年 41.3 巻 p. 631-634
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,都市計画税の課税および税率の決定要因について統計モデルを用いて検討した,欧米における先行研究同様,課税および税率の決定には周辺の自治体の模倣(Mimicking)行動が見られ,同一府県内市町村の都市計画税率が1%上昇すると,当該自治体の税率は約0.11%上がるという推定結果が得られた.また固定資産税を超過税率(1.4%を超えて課している)自治体ほど,都市計画税を課税しておらず,固定資産税が都市計画税の役割を果たしている可能性が示唆された.財政力指数が高い比較的裕福な市町村ほど課税せず,税率も低い傾向がみられた.一方,都市施設や土地区画整理事業の整備水準との関連は見られなかった.都市計画税とは無関係に整備がなされている可能性がある.
  • 全 泓奎
    2006 年 41.3 巻 p. 635-640
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国におけるコミュニティ参加は、都市貧困層居住地のまちづくりと密接な関係を持っている。とりわけ都市再開発事業による貧困層居住地の解体は、住民の居住の権利や生存戦略に直接関係しており、それらに対応する様々なコミュニティ参加の取り組みがなされてきた。本稿ではアジアの発展途上国における関連議論を概観し、そこから得た知見を基に韓国におけるコミュニティ参加の分析を試みた。その結果、韓国におけるコミュニティ参加は、「阻止・抵抗型(強制立ち退きに抗する運動)」・「自主管理型(再定住及び協同共同体型まちづくり・協同組合型(貧困層自らによる生産協同組合))」・「エンパワーメント・パートナーシップ型(生産主義的アプローチ)」という特性を持ち、現在も進行中であることを明らかにしている。
  • 石田 章, 細田 崇史, 横山 繁樹
    2006 年 41.3 巻 p. 641-646
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告では,国際食料政策研究所がバングラデシュのスラム街において実施した調査の個票データを用いて,ソーシャル・キャピタルの水準と医療サービス利用状況との関係を明らかにすることを目的とした。定量分析の結果,必要な医療を受けることができない家族構成員がいる可能性が高いと推察されるのは,次の諸条件をより多く満たす世帯であるといえる。a)女性が世帯主である,b)所得水準が低い,c)貯金額が低い,d)家族数が多い,e)乳幼児がいる,f)困窮時に「親戚のネットワーク」と「隣人のネットワーク」を利用することができない,g)地域の集会やNGO活動に参加している者がいない。特にf)とg)から明白なとおり,緊急時に依存し得る隣人・親戚ネットワークを有する世帯,あるいは地域集会やNGO活動に参加している世帯ほど,医療サービスの利用状況は良好であることが明らかとなった。この分析結果は,既存のネットワークが地域医療の改善に利用できる可能性を示唆している。今後は,隣人や親戚ネットワークの有効活用と,それらネットワークと同様な機能を有する相互扶助的な組織を積極的に育成していくことも検討されるべきであろう。
  • 英国の住宅地における地域のプロパティマネジメントに関する研究
    齊藤 広子, 中城 康彦
    2006 年 41.3 巻 p. 647-652
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、わが国における地域によるプロパティマネジメント方法、特に住宅地における検討のため、英国で住宅地として長い歴史をもつガーデンビレッジ、ガーデンシティ、ガーデンサバーブの例を取り上げて、その管理方法を明らかにした。結果、これらの住宅地では、土地の利用に対する私権を制限し、それによる良好な居住環境を創出することを目指し、リースホールドのカベナントとそれを準用した管理規則をベースとした管理体制と、行政が主導権をとる保全地区制度に住民が意見を言う形で参加する体制がある。前者の場合には、組織の不動産所有が経営の安定と時代の変化に対応した空間要求の変更に対応できている。
  • 西村 洋子, 近藤 隆二郎
    2006 年 41.3 巻 p. 653-658
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    観光形態の変化に伴い、歴史散策やウォーキングで訪れる観光者に対し、観光資源を解説するガイドといった「ホスト」役を担う地域住民が必要とされている。地域独自の資源に焦点を当て活用し、地域活性化を図る取り組みとして全国的に多く見られ、その成功例として注目されているのが、まちかど博物館である。これは市民がもつコレクションやわざを民家や事業所の一角で展示する小規模な博物館をネットワーク化したものである。しかし、事業に対する期待と効果にギャップを感じている自治体が近年増加している。まちかど博物館をより効果的な地域活性の手段にするために、継続的に実施している事例の継続性の要件を解明し、自治体等に提示したい。継続性の課題として挙げられるのが、館長意識の継続と世代交代である。1986年に開設して20年間も続いている墨田区「小さな博物館」には、地域住民の主体性、自治体の支援体制が見られた。館長意識の継続には、職業関係や趣味関係といった展示内容に合わせた博物館の空間作りを、世代交代には、博物館の構成要素「ヒト」・「モノ」・「バ」の組み合わせに合わせた引き継ぎをすればいいということが分かった。
  • 山下 真希, 馬場 麻衣, 宮原 知沙, 桜井 康宏
    2006 年 41.3 巻 p. 659-664
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、地縁性の強い地方都市郊外住宅団地におけるネットワーク居住の実態を明らかにすることを目的としている。福井市郊外においてアンケート調査を実施し、189世帯343人から有効回収を得た。調査項目(分析項目)は(1)別居する子供および親戚の所在地と交流実態、(2)友人との交流実態である。主な結論は次の通りである。(1)交流は多様であるが、長女世帯や妻方親世帯との交流が相対的に多い。(2)交流には地理的要因(距離)が影響している。(3)交流にはライフステージが大きく(強く)影響している。(4)複数世帯と高い頻度の交流をもつ「ネットワーク居住」世帯は約2割である。(5)親戚(子供・親)との交流と友人との交流は相乗関係にある。
  • 自治体担当者などに対するヒアリング調査の結果から
    谷 武
    2006 年 41.3 巻 p. 665-670
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢化の進展に伴い、単身または夫婦のみの高齢者世帯が急増してきているが、高齢者仕様の賃貸住宅の供給は著しく遅れている。また、民間賃貸住宅では高齢者世帯の入居が敬遠される傾向にある。このような状況を踏まえて、平成10年度に旧建設省の要綱に基づく制度として高齢者向け優良賃貸住宅がスタートし、平成13年度に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」で法制度化され、内容も改正された。本研究では、16都道府県において自治体や住宅供給公社の担当者を対象に実施したヒアリング調査と現地視察の結果から、高優賃の運用状況と課題について整理することを目的とした。調査の結果、(1)高優賃居住者の年齢や家族構成などの属性、(2)今後、広報などを通じた自治体による入居者募集に対する支援が期待されること、(3)LSAの派遣も含めて自治体による加齢対策が検討が必要なこと、(4) 整備費補助と家賃対策補助のあり方を検討する必要があることを明らかにした。
  • 八王子市めじろ台住宅団地を事例にして
    小場瀬 令二, 小林 乙哉
    2006 年 41.3 巻 p. 671-676
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    高度成長時代、民間開発による遠隔郊外地開発が大量供給された。その中には地区計画がかかり、居住環境の良い住宅地もある。他方バブル経済崩壊後、人口の高齢化、人口の減少、都心への人口の回帰の流れの中で、そのような住宅地で初期入居者の相続が始まるとともに、どのような変容を起こしそうなのかを調査研究を行った。八王子市めじろ台団地の事例を取り上げて、現況の人口構成の変化、土地所有状況、住宅利用状況を把握して、今後のこのような住宅地の変容を考察した。
  • 中林 綾, 佐藤 栄治, 吉川 徹
    2006 年 41.3 巻 p. 677-682
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都稲城市,多摩市,八王子市,町田市に広がる多摩ニュータウンは,昭和30年代から現在まで開発が続く計画住宅地である.近年は,初期開発地区の老朽化や居住者の急激な高齢化が進行し,いわゆるオールドタウン化した地区が散見される.この状況のもと多摩ニュータウン地域は,郊外の居住環境の良好なイメージのある地域と比較すると,居住環境に大きな差があると受け取られがちである.そこで本研究では,多摩ニュータウン地域とその他の地域で居住環境を定量的に比較し,その元来有している居住環境のポテンシャルをあらわにする事を目的とする.居住環境評価は,居住者が不動産を選ぶ視点を反映するため,居住者の居住環境への種々のニーズが直接反映される不動産価格を利用し,地価関数の便益計測に用いられるヘドニックアプローチから,その形成要因を分析する.
  • 2005年11月時点でのゴール・マタラ・ハンバントタの事例
    村尾 修, 仲里 英晃
    2006 年 41.3 巻 p. 683-688
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    2004年12月26日09時58分頃(日本時間),スマトラ島西方沖で発生したMw9.0の地震は,この100年間に全世界で発生した地震の中で4番目に大きな巨大地震であった.その後各国で復興の施策が進められている.スリランカでは,1980年代から沿岸保全帯(CCZ:Coastal Conservation Zone)を設け,現在それが津波復興上のひとつの重要な要素となっている.津波災害の特徴のひとつとして,集落が全滅的に被害を受けることが挙げられる.そして,将来当該地で再び発生するかも知れない津波による被害を避けるために,内陸部への集団移転方策がとられることが少なくない.その中で発生する被災者にとっての課題を明らかにするためには津波被災地での継続的な復興調査が欠かせない.西南部6地区の被災・復興に関する空間的様相を記録することを目的として,筆者らは2005年11月現在の被災・復興状況の悉皆調査を実施した.本稿では悉皆調査に基づく各地の復興状況と,聞き取り調査に基づく復興に関する課題について報告する.
  • 仲里 英晃, 村尾 修
    2006 年 41.3 巻 p. 689-694
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    2004年スマトラ沖津波により96,020戸の住宅被害を出したスリランカでは、政府の方針のもとで1)応急仮設テント、2)簡易住宅、そして3)恒久住宅の3段階で住宅の再建事業が進められている。最終段階である恒久住宅の多くはNGOなどの支援団体の寄付金によって、政府が用意した建設地に建設する方針がとられている。しかし、地域間では住宅再建事業の進行状況に格差が生じており各地の住宅再建に大きな影響を与えている。筆者らは2005年11月と2006年3月の2度にわたり、復興住宅の建設状況とその時点で被災者が抱えている問題を明らかにするため現地調査を行った。本稿では再建事業に着目し、調査に基づく恒久住宅再建事業の地域間比較と、ヒアリング調査により明らかになった地域間格差の要因について報告する。
  • 南 正昭, 谷本 真佑, 安藤 昭, 赤谷 隆一
    2006 年 41.3 巻 p. 695-700
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    中央防災会議は,近い将来に発生の予想される津波災害に関する被害想定を2006年1月に発表し,迅速な避難体制の整備による死者数の軽減の必要性を強調した.津波防災への機運が高まるなか,本論文では,昼夜の住民の空間分布を考慮した避難計画立案の支援を試みた成果をまとめた.三陸沿岸に位置する岩手県宮古市田老地区を研究対象地域とし,自治会を中心とする調査を実施し,数世帯からなるブロック単位で,住民の属性別人数を昼と夜について調べた.この調査結果をもとに昼と夜の住民の空間分布を明らかにするとともに,避難計画に関する考察を行った.特に,避難困難者,高齢者,小学生未満,小学生,中学生など,避難時に支援が必要になる可能性のある住民の空間分布を明らかにすることで,傾斜,距離,容量等を考慮した適切な避難場所ならびに避難路の選定に有用となることを示した.また具体的な避難計画を例示し,津波災害発生時点での居場所に応じた避難施設環境と,避難者自身の身体状況に応じて,避難経路を適切に選択することの重要性を示した.
  • 8回目を迎えた東京区市行政職員向け都市復興図上訓練から
    市古 太郎, 饗庭 伸, 佐藤 隆雄, 中林 一樹
    2006 年 41.3 巻 p. 701-706
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,事前に復興に備える,という事前復興対策として1998年から東京都都市整備局が開催している区市自治体職員向け都市復興図上訓練の経緯とプログラムを整理し,訓練成果と参加者アンケート調査から訓練水準を分析し,その上で訓練の改善点を検討したものである.図上訓練は,区市職員が通常時とは手順が大きく異なる復興都市計画策定手順を理解し,行政の役割を意識化する上で効果があることが確認された.一方,訓練テーマと手法については,改善の余地があること,また,今後は行政サイドで責任をもって「計画策定手順を検討しておく」ことに加えて,「計画策定プロセスを共有しておく」試みに進んでいく必要があることが1998年からの経緯を踏まえて明らかとなった.
  • 平 修久
    2006 年 41.3 巻 p. 707-712
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ワシントン州は、成長管理政策の一環として、各郡の将来人口を推計し、ある幅を持った推計値を郡に提供している。過去40年間の人口変動に照合すると、推計値の70%以上が、きわめて妥当もしくは妥当と判断される。各郡は、この将来人口の推計範囲の中で、郡の将来人口を設定し、それを郡内の自治体に配分する。配分方針や方法は郡の裁量に任されている。推計プロセスは科学的であるが、配分プロセスは政治的である。際限のない成長を受け止めるリスクといった構造的な課題と開発可能用地の不十分な分析などの運用上の課題があるが、人口規模より生活の質の重視、州-郡-市町の良好な関係、推計プロセスの柔軟性、不服申し立て制度、州の人口予測機関の高い専門性などにより、スムーズに将来人口の推計と配分が行われている。
  • 新たな広域政府としての「レジオン」と「地域連合」の活動分析を中心に
    松本 忠, 大西 隆
    2006 年 41.3 巻 p. 713-718
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究論文は、1990年代後半以降のスウェーデンにおけるカウンティの合併・再編と「レジオン実験」を取り上げ、広域レベルの行政体系が大きく変化することとなった背景・要因の分析を行うとともに、レジオン実験の状況の分析、実験内容の評価、さらには実験結果を踏まえた今後の広域レベルの行政体系のあり方について考察を加えることを目的とする。主な結論は次のとおりである。1.「レジオン実験」の実施に至る背景には、民意を反映した地域政策担当組織の不在、EUのニーズに戦略的に対応できる効率的な行政システムの欠如、という2つの課題があった。2.これまでの「レジオン実験」の成果として、従来、地方行政局が実施していた地域政策に関する事務を「地域自治組織」が行うことにより、地域レベルの関係主体間の連携が強化されるなど、民主性の向上について一定の成果が認められる。一方、実験の結果として、EUのニーズに戦略的に対応できる効率的な行政システムを構築できるかどうかについては、現時点では明確でないと考えられる。
  • イギリス・ロンドン及びオランダ・ロッテルダムの事例分析から
    村山 顕人, 川口 高志, 清水 哲夫
    2006 年 41.3 巻 p. 719-724
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、京浜臨海部をはじめとする大規模工業・港湾地区の再生に向けた空間計画の枠組みの特徴を把握することである。ロンドン及びロッテルダムの最近の空間計画の取り組みを事例として取り上げ、都市圏、工業・港湾地区全体、開発・再生地区の3つの空間レベルの空間計画の枠組みを分析した。その結果、(1)都市圏戦略の構成要素としての工業・港湾地区再生、(2)工業・港湾地区全体に対する分野融合的戦略、(3)開発・再生地区の明確な将来像と独自の実現方法、(4)小規模で機動力のある調整主体による計画の推進に関する特徴が把握された。
  • 福原 由美
    2006 年 41.3 巻 p. 725-730
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的はベルギーの連邦制への移行に着目し、連邦化に伴う地方分権が都市政策に及ぼした変化とその特徴、さらに新たな課題を明らかにすることである。本研究で得られた知見は以下の4点である。(1)ベルギーでは1962年に「空間計画法」が制定され法的枠組みが整ったが、その後も中央集権のもと自由放任的な都市政策が展開された。(2)連邦制への移行にともなって都市政策の権限が各地域政府に委譲されたため、地域の特性を反映することのできる都市政策体制が整った。(3)各地域政府では、独自の法律のもと都市政策や事業を展開し、社会経済的な状況もふまえて、地域内格差の縮小や都市間ネットワークの形成など独自の課題に対応するアプローチが可能となった。すなわち地域政府自らの意思や判断に基づく都市政策が展開できるようになった。しかし、すべての地域を網羅する法律や国土全体を包含するような計画指針などは存在しないため、地域間の整合性が図りにくく、バランスの取れた都市政策の展開には課題が残されている。
  • 樋口 明彦, 高尾 忠志
    2006 年 41.3 巻 p. 731-736
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    米国マサチューセッツ州バーンズテーブル郡において1990年から行われている郡レベルでの成長管理の取り組みに着目し、背景と意図及び特性について考察をおこなった。主な知見は以下のとおりである。・CCCは乱開発を防ぎ環境を保全する目的で地域の発意で設けられた郡レベルの成長管理組織である.CCCにはRPPの作成・DCPC制度の運用・DRI制度の運用を軸とした強力な権限が付与されている.・郡内の各町はRPPと整合したLCPを作成することができ,それによって郡内で整合の取れた成長管理を図っている.DCPCは町レベルの条例では不足する開発規制力を補完するものとして位置づけられている.DRIは一定の基準を超える具体の事業に対してCCCが評価をおこない必要であれば事業内容の修正を求めることが出来るものであり,制度の存在自体が開発抑止効果をもっている.・バーンズテーブル郡におけるCCCを中心とした成長管理は,圏域が社会・経済状況や住民意識の面でほぼ均一であることで可能となっている.・バーンズテーブル郡における成長管理は,CCCと各町が水平的に連携することによって柔軟に圏域内調整がおこなわれることによっているところが大きい.
  • 北米のゾーニングにおける特例的許可制度に関する研究
    木内 望, 米野 史健, 飯田 直彦
    2006 年 41.3 巻 p. 737-742
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ヴァリアンスとは、北米において、建築計画をゾーニング条例に定める規定を字句通り適合させずに同規定の趣旨に合致することをもって許可する仕組みであり、ゾーニング制度を補完する仕組みである。ヴァリアンスの運用にあたっては、北米の場合、同条例に適合することが難しい場合に限ってヴァリアンスを発動することとしているが、本研究が調査するカナダ・トロント市においては、この制約がなく、同条例に定める建築形態規制や用途規制に対するヴァリアンスが広範にできうる。本稿ではトロント市におけるヴァリアンスの運用の実態を調査し、ヴァリアンスがゾーニング制度に機動性を与えている同時に、ヴァリアンスの許可不許可をめぐって不服申し立てが少なくなく、これを審査するオンタリオ州との間での見解の相違を明らかにし、ヴァリアンスの審査における問題点などについて考察を加える。
  • 朴 承根, 瀬田 史彦
    2006 年 41.3 巻 p. 743-748
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国は、歴史的な背景もあってもともと日本に類似した広域土地利用計画体系を持っていたが、近年の改革によってそれらを改正し、より単純で効率的な制度に改めることに成功したと言われている。本論文では、改正された韓国の広域土地利用計画体系について、特に計画間の関係や、各レベルの行政組織との関係に着目して詳しく検証し、日本でこれまでに議論となっている上述のような問題点と対比しながら、示唆される点について論述している。改正された体系は、市街地(都市地域)と農地(非都市地域)で異なっていた従来の土地利用計画・規制の体系が一元化されるとともに、各自治体レベルでの都市計画の権限配分が単純かつ明快になっている。土地利用規制の権限が基礎自治体に一元的に付与されたとともに、広域レベルでは都市圏の状況に応じて柔軟な計画体系が取られており、かつそれが基礎自治体の都市基本計画・都市管理計画の上位計画として法的に位置づけられている。
  • 水原市が策定した1981年からの都市マスタープランの事例を通じて
    李 起培, 中井 検裕, 中西 正彦
    2006 年 41.3 巻 p. 749-754
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国では1981年の都市計画法の改正により、都市マスタープランの制度と、その策定過程に市民参加の手段として公聴会を導入し義務化した。本研究は韓国の都市マスタープランの策定過程において、公聴会が如何に運用されているのかを明らかにすることを目的とし、1981年以後、水原市が策定した5個の都市マスタープランを対象にする。研究の結果、公聴会の開催時点、進行方法、市民の提出した意見、計画への反映結果などの問題点が明らかになり、市民参加が十分に行われていないことが分かった。この問題点を踏まえた今後の課題として、計画策定の初めの段階からの市民参加、明確な議題の設定と積極的な参加の誘導、市民参加ではなく市民合議のための公聴会への転換、自治体の自律性の確保などが必要であると考えられる。
  • 兵庫県加古川市の寺田池協議会の活動事例から
    森川 稔
    2006 年 41.3 巻 p. 755-760
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    管理の粗放化や潰廃の進むため池を、地域の住民も含めた多様な関係者が参画する組織(協議会)によって、その多面的な価値や機能を生かしながら、保全・管理・運営していくことが大きな課題になっている。本稿では、こうした協議会のなかでも、積極的な活動を行っている、加古川市の寺田池協議会を取り上げ、とくに組織と活動内容の2つの面からその特徴を明らかにした。改修工事にともなう利活用計画案の策定にあたって、住民が参加するワークショップである「寺田池の集い」と「専門部会」を開催するとともに、住民などが発表する「寺田池発表会」の開催、先進地視察の実施、寺田池セミナーの開催、広報活動などを行っている。こうした寺田池協議会の特徴として、以下の点が指摘できる。1)地元出身者の寺田池への思い、2)一体となった自治会と水利の取り組み、3)市民グループの存在、4)行政とコンサルタントのサポート、5)関係者との連携・協力、6)協議会の立ち上げまで2年近くの準備期間、7)協議会活動のエンジン部分となる運営委員会の積極的な取り組み
  • 公正理論を用いた実証分析
    青木 俊明
    2006 年 41.3 巻 p. 761-766
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では胆沢ダム建設プロジェクトを題材に、大規模事業の合意形成の心理構造を明らかにすることを目的とする。胆沢ダム建設を進める行政にヒアリング調査を行った後、胆沢平野に住む一般市民に質問紙調査を行った。その結果、以下の知見を得た。1) 市民の賛否態度は公正理論で説明できること、2) 事業への賛同意向は計画発表当初に比べて有意に向上していた、3) 市民はダム建設で得られる自己利益と社会的有益性を考慮して賛同意向を形成していたことが示唆された、4) 人々は手続き的公正を情報開示によって認知していた、5) 公正体験により、まちづくりに対する市民の関心は向上した。
  • プロモーション・リサーチ手法の提言
    芦野 光憲, 浅野 光行
    2006 年 41.3 巻 p. 767-772
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は都市再生整備計画策定のための課題把握方法の事例報告を行うものである。中心市街地活性化に資する都市再生を必要とする多くの市町村は、都市再生整備計画を作成し、まちづくり交付金によってその課題解決にあたることとしている。そのため、都市再生合意創出プログラムが開発された。しかしながらこれは、ワークショップ等の対話方式で課題把握を行うため、多くの時間を要することや、都市再生合意創出プログラムを実施しない市町村では、都市再生のための課題把握そのものが難しいことが課題であった。そのため、国土交通省中部地方整備局の都市再生整備計画マニュアルの一つとして、課題把握を短期間で科学的に把握する手法(プロモーション・リサーチ手法)を開発し提案を行った。本手法を活用した伊勢市山田地区、静岡市清水地区の都市再生整備計画は、市民の高い賛同率を得た。
  • 岡本 寛子, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2006 年 41.3 巻 p. 773-778
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    旧国鉄債務は、土地、株式を財源とし償還することとされ、旧国鉄から引き継いだ土地の土地利用転換および売却処分が全国各地で行われている。こうした旧国鉄跡地は、大規模かつ駅周辺にあることから、その土地利用転換は周辺地域の土地利用、都市構造にも多大な影響を及ぼすことが考えられる。さらに単なる土地利用転換でなく債務返還の財源の種地となるため、円滑な債務償還に資する価格での売却が必要であった。つまり旧国鉄跡地は売却による旧国鉄債務の解決および都市課題の解決の両方の観点に基づいた土地利用転換が必要となっていた。そこで本研究では、旧国鉄跡地について分布状況、規模、活用実態等その全体像を明らかにし、さらに大規模跡地に関連した自治体へのアンケート調査を実施して、旧国鉄跡地の活用プロセスとそれに伴って生じた課題などを明らかにすることを目的とする。その結果、旧国鉄跡地の分布や規模、土地利用転換等の全体像を明らかにすることができた。またアンケート結果より、跡地利用については概ね高い評価が得られているが、一方で合意形成や要する資金と時間の問題など、解決すべき土地利用転換プロセスの課題も抽出することができた。
  • 谷口 守
    2006 年 41.3 巻 p. 779-784
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    技術革新に伴って人類はその行動範囲を広げてきた。現在では自動車利用者を念頭においた郊外ショッピングセンターの進出が、土地利用計画上大きな問題となっている。しかし、IT技術は自動車以上に個人の購買圏を大きくい広げており、サイバー型店舗が実際にどこに立地しているか、そしてそれは将来どのように展開するかということを見極めておく必要がある。この論説では、実際にわが国の主要なサイバー店舗3,103店がどこに立地しているかをその扱っている商品内容とともに詳細な追跡を行った。分析の結果、サイバー店舗は一般店舗以上に東京都心に集中しつつあること、また期待された空間透過性が地方や既成市街地では発揮できておらず、その一方で僻地にも空間的に無計画に立地が見られることを実証的に明らかにした。また、商品別のダウンロード特性などの検討から、一部の商業形態では既成市街地の商業機能を速い速度で侵食する可能性を指摘した。以上の結果より、本論説ではサイバー立地に向けた新たな空間コントロール制度導入の必要性を主張し、またその方法は線引きなどの既存手法に縛られないことの必要性を指摘した。
  • 塚井 誠人, 奥村 誠
    2006 年 41.3 巻 p. 785-790
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国では,地方自治体の財政基盤と行政機能を強化するため,市町村合併が積極的に推進されている.既往の研究から,自治体人口に対する一人当たり行政コストはU字型を示すことが知られている.したがって,一人当たり行政コストが最も小さくなる人口規模を目標とした合併が望ましいと考えられてきた.しかし一人当たり行政コストと自治体人口の関係を単純化して捉えることは,一人当たり行政コストを規定する費用構造を無視することにつながるため,より慎重な検討が求められる.本研究では,著者らの既往研究を発展させて,確率的フロンティアモデルを用いて平成8年から15年までの全国の自治体の不効率性を計測する.さらに同期間に合併を行った自治体の不効率性を時系列的に比較することによって,市町村合併が一人当たり行政コストの削減に繋がっているかどうかを,実証的に分析する.
  • 瀬田 史彦
    2006 年 41.3 巻 p. 791-796
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    2つ以上の基礎自治体をまたがり、直接・間接に土地利用を規定する広域計画の問題は、従来から多く提起されてきた。本論文では、まず現在の国土・都市計画体系における広域計画の位置づけの問題点を、都市計画区域マスタープラン、国土利用計画(都道府県計画)、土地利用基本計画を中心に考察し、次にこうした問題点に対する都道府県の取り組みについて、任意の広域マスタープランを策定した群馬県、茨城県、神奈川県、石川県、三重県、山口県の6県へのヒヤリング調査などから明らかにする。 広域マスは、現状としては実効力のある広域計画となり得ていないといえるが、都道府県が任意の広域マスを策定するということ自体、広域計画の必要性を物語っており、また将来を見据えた都道府県の自主的な取り組みとしては高く評価できるものであることが示される。
  • 西尾 英俊, 村木 美貴
    2006 年 41.3 巻 p. 797-802
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市を中心に進む中心市街地の衰退要因は、モータリゼーションの進展、核家族化に伴う住居の郊外化や郊外型商業施設の発展等の他に、公益施設の郊外への移転新築もその一要因であると言われている。そこで本研究は病院立地のあり方を、病院移転と人口分布に着目して評価・検討することを目的とする。具体的には、地域保健医療計画による病院の整備状況、病院移転の実態を踏まえた上で、病院移転時における利用者の利便性を移動費用に着目して評価するものである。本研究を通して以下の2点が明らかとなった。近年の病院移転は過半数が国や地方公共団体立等公的病院によって行われていたこと。病院までの移動費用の観点から見れば、病院移転は必ずしも問題を引き起こしていないこと。なぜなら、多くの住民が郊外へ流失してしまっているからである。
  • 市川 美穂子, 大村 謙二郎, 有田 智一, 藤井 さやか
    2006 年 41.3 巻 p. 803-808
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市では、商業施設や公共公益施設などの大規模集客施設の郊外化が進行し、都市機能の拡散化や中心市街地衰退の遠因となっている。本研究では、郊外化する公共公益施設の中でも医療施設の立地動向に着目し、今後の地方都市における医療施設整備のあり方を論じることを目的としている。はじめに、地方都市の過去20年間における医療施設の新規立地(新設・移転)の動向を把握し、都市特性との関連性から医療施設の新規立地特性を抽出した。これによると、都市特性は4つのタイプ、新規立地特性は6つのタイプに分類された。このうち、特に市街化度の高い都市において多くみられた市街化区域外市街地縁辺立地型の医療施設は、周辺地域の土地利用に影響を及ぼすため、都市計画的見地からの立地誘導が必要であることが明らかになった。誘導の方向性としては、市街化区域内に立地する医療施設に関しては現地建替えを促進し、また、市街化調整区域への新規立地に関しては、周辺地域を含めた計画的立地を促進することを指摘した。
  • 島根県津和野町奥ヶ野集落を事例として
    植野 翔, 後藤 春彦, 村上 佳代
    2006 年 41.3 巻 p. 809-814
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    中山間地域の空間管理作業への労働力不足への対策として成果が上がっている集落営農という集落内の労働力を再編する仕組みに着目し、その実態を明らかにすることを目的とする。高齢化・過疎化が著しく進んだ中山間地域であり、集落営農組織が機能している先進事例として、島根県津和野町奥ヶ野集落を対象地に選定し、集落営農組織と集落の各世帯がどの作業をどれくらいの量担っているのか調査した。その結果、集落営農によって各世帯は状況に合わせて様々な労働形態をとることが可能となったこと、加えて、互助的慣習が発生したことにより集落内の農業に関る全ての労働が集落内の体力・時間・技術的に適した人によって賄われるようになったことが明らかになった。
  • 方 宏康, 野嶋 慎二
    2006 年 41.3 巻 p. 815-820
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では全国の伝統工芸産地を研究対象とし、芸術家の増加,生業の体制、地域振興の取組の関係を分析し、地域振興の取組における芸術家の役割を明らかにした。得られた知見は以下の通りである。1) 事業所や販売額の縮小により産業として活力が低下しており、一貫生産や直売に社会構造が変化している。この状況の中で、まちづくりや伝統工芸を活用した教育やコミュニティづくりをおこなうなど地域住民のくらしづくりを行い、地域としての総合力を高めていこうとしている産地も見られる。2) 芸術家はものづくりだけでなく、まちづくり,特にくらしづくりの地域振興の取組に多様に貢献している。3)具体的には地域振興の取組において、芸術家は技術を伝える、体験指導を行う、展示・発信・発表をする、新商品のデザイン提案をする、交流を担うという役割を果たしている。
  • 廃熱のオフライン化学蓄熱輸送利用に向けて
    小倉 裕直, 岡野 聡史
    2006 年 41.3 巻 p. 821-826
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    資源・エネルギー問題および環境問題の観点から、次世代エネルギー技術が今後のサスティナブルな都市づくりの実現にいかに寄与するかを明らかにすると共に、どのように社会導入されるべきかを明らかにすることを目的とした。まず、エネルギー有効利用型都市づくりを実現する制度をレビューし、NEDOや環境省からの補助やエネルギー特区があることが示されたが、政府主導型の技術を除いては次世代技術には今のところ適用し難いことが示された。次に、次世代廃熱エネルギー有効利用技術導入のメリットについて明らかにし、その可能性を東京湾岸地域を対象に試算した結果、特に化学蓄熱・ケミカルヒートポンプを利用したオフラインエネルギー輸送システムの経済性、環境面での優位が示された。今後、次世代エネルギー有効利用システムのような事例に対しては、環境省やNEDOからの補助、導特区制度を利用する等に留まらず、各省庁によって行われる補助制度の中に次世代技術を育てるという概念が組み込まれ一体化して国によって導入促進が図られていくこと、またそのための研究・開発・普及啓発などの体制作りを産官学民一体となり進めていくことが必要であると考えられる。
  • 導入期における水素供給インフラのエネルギー的評価
    朴 海洋, 小林 敬幸, 加藤 丈佳, 鈴置 保雄, 森川 高行, 葛山 弘一
    2006 年 41.3 巻 p. 827-832
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、燃料電池自動車ならびに定置型燃料電池の実証実験が盛んに行なわれており、世界的にも実用化レベルに達しているが、商用レベルの実現に向けて明確な水素エネルギー戦略を立てることが重要となる。燃料電池車の導入初期段階には、水素供給インフラの整備を加速させるため、自動車だけでなく隣接した商業施設内の定置型燃料電池へ水素を同時に供給するエネルギーシステムが有効であると考えられる。本論ではエネルギー供給元が一元化した都市構造において、提案する水素併給システムがエネルギー負荷ならびに環境負荷の観点からの導入メリットについて、各種エネルギー需要データを用いて定量的な評価シミュレーションを実施した。検討結果よりFCVのみに水素を供給する場合と比較して、水素併給システムのステーションの稼働率が上回る商業施設において、その導入メリットがあることが確認された。
  • 下田 吉之, 山口 容平, 浅井 崇志, 水野 稔
    2006 年 41.3 巻 p. 833-838
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、都市を500m四方のメッシュからなる地区に分解した上で、地区を床面積の特性に基づいて類型化し、各類型について選んだ代表地区について、現地調査等から得られた情報を反映した詳細なエネルギー消費シミュレーションをおこなう手法により、2050年を目標とした民生業務部門の省エネルギー・二酸化炭素排出削減対策の定量的評価をおこなった。本手法をとることにより、従来の建物レベルの対策効果を都市域に積み上げる手法に対し、地域冷暖房システムの導入効果や、都市内の町並みの特性を活かした対策の評価が可能になった。シミュレーション結果より、電源の二酸化炭素排出原単位の変化に大きく左右されるものの、現在の高密度地区のみに高効率な地域冷暖房を整備した場合と、低密度地区の建築ストックを大胆な土地利用転換により高密度地区に集積させた場合のCO2排出削減ポテンシャルを定量的に示すことが出来た。また、集積マネージメントしない場合には、小規模建築の着実な省エネルギー対策の実施が大きな課題になることを示した。
  • スイスの鉄道政策Rail2000の効果分析を踏まえて
    波床 正敏, 中川 大
    2006 年 41.3 巻 p. 839-844
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、スイスにおけるRail 2000の目指す鉄道ネットワークにおけるハブシステムの特徴を整理するとともに、Rail 2000実施により、1987年から2005年までに主要都市間の所要時間がどの程度短縮されたか、乗継ぎ拠点駅での待ち時間がどの程度短縮されたかなどを、期待所要時間などの都市間公共交通の利便性を計測するのに適した指標を用いて計測する。都市間交通は、単に交通機関の乗車時間だけでなく、運行頻度や乗り継ぎを必要とする場合の待ち時間などが実質的な利便性を大きく左右する。期待所要時間は、これら都市間交通の特徴を総合的に考慮することができる指標となっている。さらに、Rail 2000の目的や効果をふまえたとき、日本の幹線鉄道政策においてどのような方向があり得るかについて考察する。
  • 土屋 貴佳, 室町 泰徳
    2006 年 41.3 巻 p. 845-850
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国では、拡散した都市構造に対し、ローコスト・省エネルギーなどの観点から都市の「コンパクト化」が議論されている。一方で、我が国の総人口は2005年を頂点に減少傾向を示すに至っている。人口増から減へと転換する現在、コンパクトな都市を目指すため人口分布について将来的な視点から検討する必要がある。本研究では都市のコンパクト化を人口密度の高度化として捉え、まず、日本全国を対象として、3次メッシュ単位での将来人口推計を試み、メッシュ単位での将来人口推計の可能性を実証的に検証した。そして、将来的な視点から我が国の人口分布に関する概観を把握した。都市全体の人口減少に伴い、人口の拡散した地域における人口が減少しているために、将来的に、低密度の地域が広がっていくものと考えられる。さらに、将来推計結果、および都市のコンパクト化を図るケースの推計結果から、都市のコンパクト化による道路の雪寒費、および維持管理費用の削減効果について検討した。その結果、最大で690億円程度、トレンドと比較して、最大で620億円程度年間維持管理費用が削減されることがわかった。
  • 岩見 達也, 倉渕 隆, 林 吉彦, 西澤 繁毅
    2006 年 41.3 巻 p. 851-856
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    Study on fire situation in Consideration of the Wind Flow in a Built-up Area
  • 時間帯と理由を視点として
    永家 忠司, 外尾 一則
    2006 年 41.3 巻 p. 857-862
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    未だ不明瞭な部分が多く,研究の蓄積を要する犯罪不安研究について,1.犯罪不安分布の空間的パターンを分析すること。2.空間構成要素による犯罪不安の重回帰モデルを算出し関係性を明らかにすることの2点が本研究の主たる目的である。分析の結果,犯罪不安全般,時間帯別犯罪不安,理由別犯罪不安についての空間的自己相関の統計量を求めることができた。また,全てのデータによる犯罪不安は空間的自己相関がみられず,「日中」,「日没後」の時間帯において空間分布に一定のパターンを持つが,このことから「明るさ」の要因は犯罪不安を凝集させる効果を有すると考えられる。犯罪不安全般,時間帯別犯罪不安,理由別犯罪不安について空間構成要素による重回帰モデルの算出した結果,「公園」が犯罪不安の変動を促す重要な空間構成であり,「公園密度」の増加とともに犯罪不安も増加する傾向がみられた。
  • 雨宮 護, 横張 真
    2006 年 41.3 巻 p. 863-868
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,都市公園で発生する逸脱行為の実態を明らかにし,逸脱行為の発生を予測するモデルを構築することである.研究対象としたのは,東京都板橋区の334公園である.板橋区に寄せられた公園に対する苦情の内容の分析,2回の観察調査,観察調査結果の統計解析から,以下の3点を明らかにした.1)都市公園で起こる逸脱行為の中心は,「ゴミの投棄」,「公園施設へのヴァンダリズム」,「園内への居住」,「公園施設への落書き」である,2)最も多いのは「公園施設への落書き」であり,全体の6割の公園で観察される.また,少なくとも一種類の逸脱行為が確認される公園は,全体の7割である.3)逸脱行為を抑制する環境要因は,公園周囲の住宅の存在と,地域住民が参加する公園管理活動の存在である.これらをもとに,安全な公園づくりのためには,公園自身の設計の変更とともに,公園のリスクを管理する主体の育成が必要であると考察した.
  • 住宅・都市の将来像検討のための基礎調査
    小林 英之
    2006 年 41.3 巻 p. 869-874
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    インドネシアの7都市から13の計画的住宅団地から900世帯を対象として、(1)家庭生活における電力・燃料消費、(2)移動のためのガソリン等消費、および(3)建築材料の使用を通じての二酸化炭素排出量を現地調査により把握した。建築材料に関しては、生産過程による排出量を工場調査により把握した上で、単体における建材使用量を期待耐用年数で除して排出量を求める方法を採った。1970年代からの木材輸出と、セメントの国産化に伴い、木造から煉瓦造・ブロック造の恒久住宅への変化が生じた。過去の住宅政策による組積造系の恒久住宅の建設が、その文脈の中で進められてきた。将来の地球温暖化の緩和という新たな要請に基づく発展途上国の住宅・都市の将来像構築に向けて、代替的な提案形を評価するために、歩行圏の重視と公共交通機関の利用、冷房等の普及による電力使用増大を考慮した住宅・住環境設計、建築材料によるライフサイクル排出量と炭素蓄積等の評価尺度について検討を行った。
  • 木下 瑞夫, 松行 美帆子, 瀬田 史彦, 西浦 定継
    2006 年 41.3 巻 p. 875-880
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市マスタープランの策定過程において、どのような条件がととのえば戦略的環境アセスメント(SEA) を適用することが容易となるかに焦点を当てることとし、先進事例としての欧州連合(EU)の環境保全政策およびSEA制度および構成国のSEA制度の代表事例を時系列的に整理、分析することを通じて、わが国におけるSEA制度の適用可能性と課題を考察することを目的としている。時系列分析によると、1980年代後半の「持続可能な発展理念」が環境保全政策およびSEA制度に多大な影響を与えたことがわかった。また、わが国の都市計画マスタープランにSEA制度を組み込むためには、計画策定において明確な経済・社会の発展目標と環境保全目標を持つことが必要不可欠と結論づけることができる。
  • 松行 美帆子, 木下 瑞夫, 西浦 定継
    2006 年 41.3 巻 p. 881-886
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、イングランドのローカルレベルの土地利用計画(LDF)を対象として、戦略的環境アセスメント(SEA)が、計画の意志決定にどのように統合されているのか、すなわち、計画にどのような影響を与えているのかについて分析を行った。研究は、ヒリングドン自治体におけるLDFを事例対象とし、その中でもとくに「空港関連開発」に関する計画策定を対象とした。研究の結果、以下のことが明らかになった。(1)ヒリングドンでは、複数案を設定し、それを選択する際に、各案の持続可能性に関する問題点を軽減する方法(ミティゲーション)が特定できない場合は、その案を選択しなかった。このことより、SEAは計画が著しく持続可能性を欠くものにならないようにするセーフティネットの役割を担っていた。(2)開発の必要性を決定する段階では他の計画決定因子が影響を及ぼしていたが、開発の場所を決定する際にSEAが影響を及ぼしていた。開発の場所の決定はしばしば同意形成が困難になるが、SEAにより各案の持続可能性、ミティゲーション方法を明らかにすることにより、合意形成の一助になると考えられる。
  • 都市計画家の交流に着目して
    秋本 福雄
    2006 年 41.3 巻 p. 887-892
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    1910年代、地域計画という用語がイギリスに登場し、間もなくアメリカに紹介され、1920年代、両国で広範に普及した。最近の研究は、地域計画運動の初期の段階について焦点をあてるようになった。しかし、地域計画の概念がどのように形成されたか明らかになっていない。この論文は、19世紀の末から1920年代までの、ハワードの社会都市、パトリック・ゲデスの地域調査、パトリック・アーバークロンビーの地域調査、トマス・アダムスの地域計画、ルイス・マンフォードの地域都市を含む、都市計画家の考えを解析し、地域計画の概念の諸要素がどのように形成されたかを明らかにし、それらの対立点を吟味している。
  • 五島 寧
    2006 年 41.3 巻 p. 893-898
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論説では,景福宮および満州国執政府の改変・建設事例に着目し,伝統的な計画原理と日本の都市計画との間の関係を検討した。景福宮では,計画原理は意図的に破壊すべき対象という認識にすら達しないほど軽視されたと考えられ,執政府では,溥儀の意向に抗えなかった結果南面が表出したが,意識的な周礼の適用は考えがたいと結論した。計画原理の作為的破壊あるいは尊重という相矛盾した評価は,いずれも植民地都市計画の一面に対する過大評価とするのが筆者の見解である。
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