Journal of the Japan Petroleum Institute
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47 巻, 5 号
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一般論文
  • 水谷 洋, 桐山 和幸, 出井 一夫, 持田 勲
    2004 年 47 巻 5 号 p. 303-310
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,触媒存在下で残油の水素化処理条件において溶媒の添加効果に関して検討し,残油の水素化処理における水の特異性を調べた。
    溶媒を等容量添加してオートクレーブによる活性評価を行った結果,水素化脱硫(HDS)活性の序列はH2O > LCO > Tetralin > None(base)> 1-MN > Phenolであった。一方,触媒上へのコークたい積量は,溶媒を添加した場合,いずれも低減した。
    Tetralinについて,H2Oと等モル数添加した評価も行った。Tetralinは添加量の増加とともにHDS活性は向上したが,等モル数で比較しても,H2Oの添加効果は顕著であり,特異的にHDS活性を向上させている。
    アスファルテン等の重質成分の脱離促進は,コーク生成を抑制する一方,添加溶媒は残油と競争して触媒上の活性点を占有する。添加溶媒の活性点における滞留時間が長いと,溶媒自身は水素化される一方,他の反応基質が活性点に吸着できないため,反応阻害となる。したがって,添加溶媒の反応阻害は活性評価結果とその転化率から考察した。
    H2Oは,他の添加溶媒と比べて触媒に強吸着したアスファルテンおよび脱硫生成物の触媒上からの脱離促進効果が大きい。また,他の添加溶媒より触媒上の活性点における滞留時間は短く,反応阻害は小さいため,特異的な添加効果を示すであろうと考えられる。
  • 丸山 守人, 川口 芳仁, 熊丸 博滋, 山口 学
    2004 年 47 巻 5 号 p. 311-317
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    原油の静電脱塩装置を模擬した実機規模の装置を試作し,電圧印加場の油相中を降下する(1)単一水滴,(2)複数水滴間の動的挙動について実験的に調べた。(1)単一水滴の実験では水滴の伸長速度,分裂形態や分裂個数に及ぼす電圧強度の影響を調べた。その結果,分裂形態には3種類あることが分かった。(2)複数水滴の実験では着目水滴とそれに同伴する水滴群との相互動的挙動,特に着目水滴と同伴水滴群が合体する相互位置関係や電場強度の影響を調べた。また,実装置で操作不能の一原因と言われている水滴同士の合体による電極間架橋現象についてシミュレートし,架橋形成や架橋形状の変化を明らかにした。
  • スコヨウ, 松岡 忍, 村木 正昭
    2004 年 47 巻 5 号 p. 318-325
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    複数サイトのバッチプラント生産計画問題は,生産時間の制約のもとで各プラントへの需要の配分とプラントからセンターへの製品の配送を同時に決定しなければならない。バッチプラントでは中間製品が不安定なことが多々あり,製品の組合せ法により生産サイクルタイムの短縮につながることがある。このため,必要生産時間の推定には製品の生産シーケンスが不可欠となるが,このシーケンスは各プラントに配分された需要に依存し,またこの配分は生産時間の推定なくしては不可能である。つまり,この生産計画問題を直せつに定式化すると混合整数非線形計画(MINLP)問題となる。最適生産計画では,組み合わせることによりサイクルタイムを短縮できる製品の組合せ(product mix)に基づいて生産が行われることから,これらを需要配分の単位とすることを本論文では提案している。product mixに対してサイクルタイム,生産コストおよび配送コストをあらかじめ用意しておけば,需要の配分問題とは各バッチプラントで生産する各々のproduct mixの数を決定することになり,必要生産時間の推定は配分されたproduct mixのサイクルタイムの合計として近似することが可能となる。この生産計画問題を混合整数線形(MILP)問題に定式化できることを,また例題を用いてその有効性を示している。
  • 宮林 恵子, 内藤 康秀, 辻本 和雄, 三宅 幹夫
    2004 年 47 巻 5 号 p. 326-334
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    採取地の異なる5種の減圧残油に含まれる成分の化学構造特性に関する基礎的知見を得ることを目的とし,大慶,スマトラライト,マーバン,イラニアンヘビーおよびアラビアンミックス減圧残油についてエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI FT-ICR MS)を用い,減圧残油中に含まれる成分の分析を多段にわたるクロマトグラフィーによる前処理を排して行った。各減圧残油スペクトルの正イオンピークの精密質量値から分子式を算定した結果,いずれの減圧残油においても観測された主成分は塩基性窒素原子を一個含む化合物であり,微量成分として窒素および硫黄を一原子ずつ含む化合物も検出された。採取地による成分分布の違いを明らかにするため,得られた分子式から水素不足指数(Z 数)([CnH2n + Z NmSs+H]+)を算出し,炭素数およびピーク強度との関係を求めた。採取地に依存しZ 数の分布の中心が移動し,最大ピーク強度でのZ 数は大慶(-17)> スマトラライト(-19)> イラニアンヘビー(-21)≥ アラビアンミックス(-21)> マーバン(-25)の順に変化していることが分かり,減圧残油の採取地と検出成分の差異を初めてESI FT-ICR MSを用い観測した。得られた結果は,中国系は中東系の油と比較し,パラフィン類が多く,また中東系はより縮合度の高い芳香環が含まれる従来の報告と一致した傾向を示した。今回用いたESI FT-ICR MSは減圧残油中の塩基性窒素化合物の選択的分析に有用であり,また含まれる成分の分子式を算定し芳香環の縮合度を見積もることで,採取地に依存した減圧残油成分の組成分布を観測できることを明らかとした。
  • 横山 壽治, 藤田 直子
    2004 年 47 巻 5 号 p. 335-340
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    ZrO2触媒による各種ジカルボン酸ジエステル類の水素化反応を検討した。芳香族ジエステルであるベンゼンジカルボン酸ジメチルエステル類の反応性はパラ- >メタ-置換体の順で高く,それぞれ対応するモノおよびジアルデヒドに変換された。しかし,オルト置換体であるフタル酸ジメチルの水素化ではアルデヒドは生成しなかった。反応中間生成物として考えられるテレフタルアルデヒド酸メチルは,本反応条件下においてジアルデヒドに変換されることも確認した。以上より,本反応では二個のエステル基が逐次的に水素化を受けることにより進行すると推定した。脂環式ジエステルである1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは,テレフタル酸ジメチルと同様な水素化反応成績を示した。一方,グルタル酸ジメチルやアジピン酸ジメチルのような脂肪族ジカルボン酸ジエステルの水素化を試みたが,アルデヒド類は生成しなかった。また,ZrO2触媒をCr,In,Zn等で修飾することにより,触媒活性が向上した。Zn修飾触媒(物質量比Zn/Zr = 5/100)を用いた場合,テレフタルアルデヒド酸メチルの水素化におけるジアルデヒド選択率は72.4% に達した。
  • 横山 壽治, 藤田 直子
    2004 年 47 巻 5 号 p. 341-347
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    ZrO2触媒によるベンゼンジカルボン酸ジエステル類の水素化反応では,テレフタル酸およびイソフタル酸ジエステル類は対応するモノおよびジアルデヒドに変換された。しかし,フタル酸ジメチルはアルデヒド類を与えなかった。この理由を明らかにするため,拡散反射法FT-IRおよびCP/MAS 13C-NMRによる触媒表面吸着種の解析を行った。その結果,テレフタル酸ジメチルからはモノカルボキシレート吸着種が主に観察された。一方,フタル酸ジメチルではジカルボキシレート吸着種のみが触媒表面上に存在した。イソフタル酸ジメチルの場合では,モノおよびジカルボキシレート種の両方の存在が示唆された。このジカルボキシレート型吸着種が生成することにより触媒活性が低下し,本水素化反応のアルデヒド選択性が低下するものと推定した。また,テレフタル酸ジメチルの水素化における中間生成物であるテレフタルアルデヒド酸メチルを触媒に作用させると,メチルエステル基がアルデヒド基に優先して触媒に吸着することが分かった。
  • 渡辺 克哉, 川上 敬士, 馬場 浩二, 木村 孝夫
    2004 年 47 巻 5 号 p. 348-354
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    硫黄分を含有するライトナフサの異性化反応を金属/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒を用いて行い,EPMA(Electron Probe Micro Analysis)による金属濃度分布から耐硫黄性の発現について検討した。
    Pt/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒の異性化活性は原料中に硫黄分が存在すると時間とともに直線的に低下するが,Pdを担持したPt/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒は,高濃度の硫黄分を含有するライトナフサの異性化反応でも安定して高い異性化活性を示すことが分かった。EPMAによる金属濃度分布の結果から,この触媒はPdが選択的にAl2O3粒子に担持されたハイブリッド構造(Pt/SO42−/ZrO2-Pd/Al2O3)を形成しており,高い耐硫黄性は触媒中に形成されたPd/Al2O3粒子の脱硫機能に起因していることが分かった。さらに,Pd/Al2O3粒子の効果を説明する目的で,Pt/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒とPd/Al2O3触媒とを粉砕混合した触媒の耐硫黄性についても同様の異性化試験を行った。粉砕混合した触媒でもPd担持Pt/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒同様に高い耐硫黄性を示すことから,Pd/Al2O3粒子は脱硫機能を有すると同時にPt/SO42−/ZrO2-Al2O3粒子への水素供与機能も有していることが示唆された。さらに,寿命試験結果からPd担持Pt/SO42−/ZrO2-Al2O3触媒の耐硫黄性は長期間に渡って維持され,安定的な異性化生成油が得られることを明らかにした。
ノート
  • 竹内 由美, 天尾 豊
    2004 年 47 巻 5 号 p. 355-358
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    ジャーナル フリー
    光エネルギーによって駆動する新しいタイプの生物燃料電池の開発を目的として,クロロフィル誘導体によるナノ結晶酸化チタン薄膜の可視光増感を利用した光駆動グルコース-酸素型生物燃料電池に関する研究を行った。具体的には,クロロフィル誘導体である亜鉛クロリンを吸着させた酸化チタン薄膜SnO2ガラス電極を作用極に,白金をコートしたSnO2ガラス電極を対極に用いた電池である。グルコース,グルコース脱水素酵素,NAD+および塩化カリウムを含む溶液を電解溶液とした。構築した電池に100 mW·cm−2,A.M. 1.5の条件で光照射し,電流-電圧特性を調べたところ,短絡電流および開放電圧はそれぞれ6.8 μA·cm−2および444 mVであった。また,構築した電池の単色光照射時の作用スペクトルを測定した結果,400および780 nmに光電流値の極大が存在した。特に,酸化チタン薄膜上で会合体を形成している亜鉛クロリンの光増感作用を利用することで,可視光だけでなく近赤外領域の光源を利用できることが示唆された。以上のことから,亜鉛クロリンの光増感作用を利用することにより光で駆動するグルコース-酸素型生物燃料電池の構築に成功した。
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