Journal of the Japan Petroleum Institute
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最新号
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総合論文
  • 竹内 勝彦
    原稿種別: 総合論文
    2024 年 67 巻 2 号 p. 45-51
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    本総説では,二酸化炭素(CO2)を原料としたカーボネート誘導体,カルバメート誘導体,ギ酸シリルの効率的合成法について,著者らの最近の成果を紹介する。化石燃料の使用などによって人為的に排出されるCO2は世界的気候変動の主原因とされており,その排出量削減の対策の一つとして,CO2を原料とした有用化学品合成が着目されている。しかし,たとえCO2を原料に使用したとしても,環境負荷の大きい試薬や反応プロセスを用いることは避けるべきである。その点で,本総説で紹介している合成法は,バイオマス資源の利用,環境調和性の高い反応剤の使用,排気ガス中の低品質なCO2の利用,安価な亜鉛や銅の触媒の使用などにより,環境調和性を意識したものとなっていることが特筆される。また,合成対象となる化合物は,いずれも工業的に有用な化学品であり,カーボネート誘導体はポリカーボネートの原料,カルバメート誘導体はポリウレタンの原料,ギ酸シリルはホルミル基導入のための試薬となる。有用な化合物を効率的かつ環境調和的に製造することを可能にするこれらの合成法が,CO2排出量削減に貢献することを期待している。

  • 藤墳 大裕
    原稿種別: 総合論文
    2024 年 67 巻 2 号 p. 52-60
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    炭素は高比表面積,構造制御や高機能化が容易といった特徴から触媒担体として利用される。しかし,炭素担体は不活性であるがゆえに金属を強固に固定化することができず,触媒調製中ならびに反応中に容易に活性金属の熱凝集が進行し触媒劣化を引き起こす。それに対し,著者らはイオン交換樹脂を前駆体とした炭素担持金属触媒調製法に注目した。本手法では金属イオンをイオン交換樹脂に担持し,炭素化と金属微粒子形成を同時に行うという調製手順をとることで金属微粒子が炭素担体に部分的に包埋された構造を形成する。本稿では,本触媒調製法で得られる炭素担持金属微粒子触媒の特徴について紹介する。PtNi@C触媒を用いた気相ギ酸分解反応では,触媒活性点の高密度化により高い水素生成速度を達成した。また,Cu@C触媒を用いた糖アルコール類の水素化脱酸素反応では,不活性担体の使用と包接構造により優れた選択性と触媒の安定性を達成した。

一般論文
  • NGUYEN Hung Quang Viet, 國枝 昴希, 松浦 真也, 橋本 忠範, 石原 篤
    原稿種別: 一般論文
    2024 年 67 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    ベトナムクアンニン省(QN)の石炭は高品質で世界的に知られている。QN石炭灰は,ゼオライト合成に利用できるAl2O3およびSiO2を含有している。本研究では,QN石炭灰に含まれる無機化合物を用いて,合成条件を変化させてZSM-5ゼオライトを調製した。実際の石炭灰には含まれるが,ゼオライトの調製には必要ではない成分がゼオライトの調製および特性に及ぼす影響を調べた。テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)を用いて150 ℃,48時間の条件でZSM-5を合成したところ,XRDパターンと窒素吸脱着測定の結果から,ZSM-5結晶はSiO2/Al2O3比が52よりも高い時に観察され,78で最大となることが確認できた。QN石炭灰成分を含まないZSM-5合成においても,実際のQN石炭灰成分を含む場合でも同様の結果が観察され,ZSM-5の調製に対する成分の影響はかなり小さいことが示された。これらのゼオライトをキュリー · ポイント · パイロライザー法による低密度ポリエチレン(LDPE)の接触分解に用いたところ,モデル石炭灰成分を用いて調製したZSM-5は,QN石炭灰成分を含まないZSM-5と同等,またはわずかに高い転化率を示した。これに対し,実際のQN石炭灰成分を含む場合は転化率がやや低く,無機塩の種類がLDPEの接触分解における反応性に影響を与える可能性が示唆された。

  • 和知 慶樹, 矢部 智宏, 中野 遼, 山下 誠, 山口 和也
    原稿種別: 一般論文
    2024 年 67 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

    メタンから有用化合物への直接転換は従来の合成ガス法に代わるプロセスとして注目されている。高圧メタン酸化系では均一系ラジカル反応によって高い転化率でメタン酸化が進行することが報告されているが,触媒を用いて生成物選択率を制御することが困難であった。本研究では,Na2WO4/SiO2を開始剤兼触媒として用いて410 ℃,6.0 MPaの条件で効率的かつ選択的にメタン酸化カップリングが進行する反応系を開発した。この反応系では気相および触媒表面で反応が協奏的に進行することでメタンと酸素からC2またはC3の低級炭化水素が効率的に得られる。さらに触媒量,ガス流量,全圧力およびCH4/O2比などの反応条件検討や種々の触媒との活性比較から,Na2WO4/SiO2触媒上で起こる発熱反応によって触媒層温度が上昇し,気相高圧メタン酸化の選択性がメタノールから低級炭化水素へとシフトすることを明らかにした。また低分圧条件では,触媒表面の反応が低級炭化水素選択率向上に寄与していることを明らかにした。

  • 谷 翔太郎, 市橋 祐一
    原稿種別: 一般論文
    2024 年 67 巻 2 号 p. 80-88
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    ship-in-a-bottle法でバナジウム錯体をY型ゼオライトの細孔内に形成させたバナジウム錯体内包Y型ゼオライト触媒を用い,ベンゼンの液相酸化反応によるフェノール生成反応について検討を行った。結果,Y型ゼオライトに含浸法でバナジウムを担持した触媒を用いた場合に観測されたバナジウム種の溶出はバナジウム錯体内包触媒では抑制され,ベンゼンの酸化反応が効率よく進行した。また,バナジウム錯体の配位子の影響について検討したところ,配位子の違いがフェノール生成活性に大きく影響を与えることが示唆された。密度汎関数理論(DFT)計算を用いて検討したところ,配位子の種類はバナジウムの3価と4価の間のエネルギーギャップに影響し,このエネルギーギャップが小さいものほどフェノール生成活性が高いことが明らかとなった。

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