Journal of the Japan Petroleum Institute
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49 巻, 1 号
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一般論文
  • 杉本 義一, 相原 洋一, 松村 明光, 大井 明彦, 佐藤 信也, 斎藤 郁夫, 由井 聡文
    2006 年49 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    カナダのオイルサンドビチューメンから製造された合成原油をわが国で利用することを想定し,中東系直留軽油および減圧軽油との混合水素化処理における脱硫・脱窒素反応性を調べるとともに,ディーゼル自動車排ガス組成への影響の把握,ならびに水素化処理した減圧軽油のFCC原料油としての評価を行った。
    合成原油中の軽油留分は硫黄含有量が非常に低く,窒素や多環芳香族分などの反応阻害物質が比較的少ないために,中東系直留軽油へ混合することにより,水素化脱硫反応が促進され,超深度脱硫(10 wtppm)軽油の製造が容易となった。中東系ディーゼル燃料に水素化処理したオイルサンド系軽油を混合した場合,COおよびHC排出量が増加する一方,NOx排出量が減少したが,それらの増減量は小さかった。パティキュレートの排出量は,オイルサンド系軽油の添加と関係なく,燃料中の芳香族分の含有量に依存することがわかった。
    減圧軽油の混合水素化処理では,生成油の硫黄含量が減少するものの窒素含量がやや増加した。原料油性状からFCC分解の生成物収率を予測した結果,オイルサンド系減圧軽油の混合によりLPG,ガソリン収率が減少するもののその影響は小さいことがわかった。
    オイルサンド系合成原油のわが国への導入は,石油資源の安定供給に資するばかりではなく,クリーンな自動車用燃料の製造においても有益であることが示された。
  • Naser Seyed Matin, Reza Ahmadi
    2006 年49 巻1 号 p. 13-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    Na/BaTiO3/MgO触媒を充填した固定層触媒反応器を用い,種々の条件下でメタンを酸化カップリングさせてその反応機構を検討した。試験は,反応温度は725℃,775℃,825℃で行い,反応器に供給するメタンと酸素の分圧は,それぞれ0.05~0.92 atm,0.05~0.17 atmの範囲で変化させた。なお,反応器の圧力は大気圧である。試験結果を反応機構モデルから解析し,メタンの転化反応速度式およびエタンの生成反応速度式を提唱した。また,CO,CO2酸化炭素の生成速度式も推論した。これら速度式の相関にあたっては四つの反応機構モデルを検討し,試験結果を最もよく説明する反応機構を考察し選定するなかで行った。
  • 高橋 武重, 原田 佳子, 植木 勝, 甲斐 敬美
    2006 年49 巻1 号 p. 22-27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    数種類の水素化脱メタル触媒,耐メタル水素化脱硫触媒および水素化脱硫触媒を用いて,1.88 wt%の硫黄を含む熱分解重質軽油(CGO)の脱硫反応を高圧撹拌槽型反応器で行い,触媒の初期反応速度および活性劣化に及ぼすジメチルジスルフィド(DMDS)の添加の効果について検討した。さらに,使用済み触媒の表面積および堆積したコーク量の測定を行った。その結果,1000 ppm程度のDMDSの添加により,反応開始後24 hまでの初期反応速度が3%程度大きくなり,また活性劣化因子は最大10%程度小さくなった。DMDSの添加により,触媒表面上に堆積するコーク量が減少したことが触媒活性の向上に寄与したと考えられる。すなわち,添加したDMDSの熱分解で発生したCH3S・ラジカルが原料油の分解で生成する炭化水素ラジカルと優先的に反応して,コークあるいはその前駆体の生成を抑制したものと考えられる。
    このように,微量のDMDSを添加することにより,触媒の活性劣化が抑制できると考えられる。
ノート
  • 岡部 清美, 黎 曉紅, 鳥羽 誠, 葭村 雄二
    2006 年49 巻1 号 p. 28-32
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    マクロ細孔径を有するシリカ(Q-10,Q-30およびQ-50)の表面をアルコキシド法で調製した20 wt%Co-0.5 wt%Ir-SiO2で修飾することにより,バイモーダル(二元)細孔構造を有する触媒を調製し,スラリー相でのFischer-Tropsch合成を行った。バイモーダル細孔構造の形成は,得られた触媒の細孔径分布,BET表面積および細孔容積の変化により確認した。バイモーダル触媒では,高価なアルコキシドの使用量を削減した上で,70時間以上にわたって高く安定した活性が得られた。高い活性が得られたことは,修飾に用いたアルコキシド法触媒の表面が反応に有効に寄与していることを示している。一方,バイモーダル触媒のマクロ細孔径の増加に伴って,生成物のオレフィン選択率が増加した。高いオレフィン選択率は,バイモーダル触媒のマクロ細孔内における生成物やスラリー溶媒の拡散の向上によるものと思われる。その結果,アルコキシド法Co-Ir-SiO2による修飾比率(Co-Ir-SiO2とマクロ細孔シリカQ-50の重量比)が1 : 3のバイモーダル触媒で,C2-C4生成物中のオレフィン/パラフィン比0.9が得られた。
  • 佐々木 厳, 森吉 昭博, 八谷 好高, 永岡 紀行
    2006 年49 巻1 号 p. 33-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    水分による歴青系舗装の損傷は,表面や路床から液状浸入した水が原因であると考えられてきた。しかし,滑走路等のアスファルト舗装表層は実質的に不透水であることが多い。したがって,著者らは大気中の水蒸気(湿気)がこれらの要因であると考え,この検証のために新しい透湿試験装置を開発した。透湿試験から,たとえ表層材料が実質的に不透水性であっても,典型的な夏の暑い日の気象条件においては水蒸気透過による物質移動により大気中の水分が透過し,凝縮した水分が混合物中に多量に蓄積しうることが明らかとなった。試験装置や試験条件に関してさらなる改良を加えることが必要であるものの,透湿試験は水分蓄積メカニズムの解明とブリスタリング現象等の水分に関連する損傷を評価する有効な試験方法である。
技術報告
  • Sergiy Sadovnychiy, Juan López, Volodymyr Ponomaryov, Andriy Sa ...
    2006 年49 巻1 号 p. 38-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    パイプライン内におけるメカニカルな凹凸,あるいは沈積物,腐食に伴う傷の位置をピグに付帯した種々の装置を用いて,いかに高精度かつ迅速に検知できるかは原油・ガス輸送の安全性確保の観点から必要欠くべからざることである。特に,これらの異常がピグ付帯した距離計による測定誤差にいかに影響し,またいかにしてその誤差を小さく抑えることができるかを知る必要がある。本報告においては,距離計の測定誤差に大きく影響する要因としてパイプ内面と距離計パッドの接触ロスととらえ,実操業の観点からその具体的な原因をパイプ内面の溶接に伴う突起あるいは機械的な傷と想定し,距離計のホイールの動きをパイプライン内流体がガス体,あるいは種々の密度の流体(水+油)かつ流体流量を変えうるような特殊なシミュレーターを用いて実験的に検討した。その結果,距離計による測定誤差はピグの走行速度およびラインジョイント部の溶接幅に大きく影響し,最大10%に達すること,その対応策としてはパッドのスプリング力を適切に調整することにより誤差の低減が可能であることが判明した。
レター
  • 大中 友宏, 橋本 圭司, 古南 博, 松原 凱男, 計良 善也
    2006 年49 巻1 号 p. 43-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    [Ru2Mo14O50]10-あるいは[Ru2Mo14O52]14-の組成をもつルテニウム含有ポリオキソモリブデート(Ru2Mo14)の触媒特性をベンジルアルコールの液相選択酸素酸化を用いて評価した。アミノ基をもつシランカップリング剤で修飾されたチタニア担体上に担持されたRu2Mo14(Ru2Mo14/DAPS-TiO2)は未担持Ru2Mo14および未修飾チタニア担持Ru2Mo14触媒に比べ極めて高い触媒活性を示した。Ru2Mo14/DAPS-TiO2はDAPS-TiO2上に担持された他の典型的なポリオキソモリブデートよりも大きなターンオーバー頻度を示した。
  • Sukamon Hinchiranan, 張 〓, 永森 智, Tharapong Vitidsant, 椿 範立
    2006 年49 巻1 号 p. 45-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル フリー
    スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成用Co/SiO2触媒への少量のTiO2の添加により,触媒の活性が大幅に増加することが分かった。異なるTiO2の添加量において,2 wt%のTiO2の添加は促進効果が最も顕著であった。一般的に担持金属触媒では担持金属の分散度の増加とともに金属還元度が下がり,分散度の向上によって金属比表面積を増やすことに限界がある。適量のTiO2の添加はコバルト種とシリカの相互作用を調節し,高い担持コバルトの分散度と還元度を同時に実現し,金属コバルト比表面積も著しく増加し,高い触媒活性に寄与することが分かった。TiO2の添加によってコバルト触媒のturnover frequencyが増加し,活性的なブリッジ型吸着CO種も増え,TiO2の促進効果は担持コバルトの電子状態の変化によるものが示唆された。
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