フィッシャー・トロプシュ合成ワックスを水素化分解・異性化することにより得られた生成油を各燃料油成分に分留し,燃料油を調製した。各留分の平均分子構造と反応条件の関係を検討し,また軽油留分の分子構造が燃料特性に及ぼす影響についても検討を行った。
調製された各留分のイソパラフィン/ノルマルパラフィン比は,ボトム油や軽油などの重質な留分では水素化分解・異性化反応のシビアリティーが上昇するほど明らかに高くなる傾向が見られた。灯油留分でも同様の傾向があったが変化の程度は比較的小さく,ナフサ留分では反応のシビアリティーに関係なくほぼ一定であった。
13C-NMR分析からイソパラフィンの平均分岐数を決定し,反応のシビアリティーとの関係を比較したところ,灯油留分および軽油留分はそれぞれ1.3分岐/分子,2.0分岐/分子程度でほぼ一定であり,それ以上の分岐の生成確率は低いことが分かった。一方,ボトム油の平均分岐数は360℃
+分解率の影響を受けた。
平均炭素数と平均分岐数の間には直線的な関係が確認され,平均分岐数が反応のシビアリティーに依らず平均炭素数により決定されることが分かった。
また,軽油留分の分子構造と軽油の燃料特性の関係を検討した結果,(平均炭素数) × (ノルマルパラフィン比率)
A式において,
Aに0,0.02,0.05を適用することにより,それぞれ動粘度,セタン価,および目詰まり点との間に直線関係があることが分かった。ナフサ留分の分子構造についても検討し,分岐の位置などの情報を得た。
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