Journal of the Japan Petroleum Institute
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49 巻, 4 号
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総合論文
  • 山田 裕介, 小林 哲彦
    2006 年49 巻4 号 p. 157-167
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    筆者らは,コンビナトリアル手法を固体触媒開発へ応用するための手段・手法について,主に金属酸化物触媒を具体例として取り上げ研究を行ってきた。本報では,触媒調製,評価に必要な各種実験装置,それらを利用した触媒探索手法の紹介,今後の展望について述べる。迅速実験手法を用いることにより,これまで実際の材料探索には用いられていなかった確率的探索手法を用いた組成最適化が可能となった。本手法を用いた触媒組成最適化の実例として,プロパン選択酸化触媒を取り上げた。また,系統的かつち密なデータベースがオンデマンドで得られるため,それらのデータベースを利用した新たな触媒設計手法も可能となった。実例として,ジメチルエーテル改質触媒ならびにエタノール改質触媒を取り上げた。さらに,今後の展開として,コンビ手法と計算科学を含めた解析的手法の組合せが中心的役割を果たす「マテリオミクス」の概念についても紹介する。
  • 横野 照尚
    2006 年49 巻4 号 p. 168-176
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    二酸化チタン光触媒は環境浄化用の重要な触媒と考えられているが,その触媒活性は紫外光照射下でしか発現しない。したがって,我々は,太陽光のような広範囲な光を励起光源に利用するために,可視光化で触媒活性を発現する光触媒の開発は重要と考えている。そこで,我々は硫黄カチオンを二酸化チタンのチタンイオンの一部,あるいは窒素アニオンを二酸化チタンの酸素イオンの一部と置換した可視光応答型二酸化チタン光触媒を開発した。これらは,可視光領域に強い吸収を示し,440 nmの可視光照射下で2-プロパノールやアダマンタンの部分酸化反応を効率よく進行させる。XPS測定により硫黄と窒素の酸化状態を測定したところ,ドープされた硫黄の酸化数は主にS4+であり,窒素の酸化数はN3-であった。さらに,硫黄と窒素をドープした可視光応答型二酸化チタンの粒子表面に鉄イオンを吸着処理することで,触媒活性が大きく向上した。このときの最適な鉄イオン吸着量は,硫黄ドープ二酸化チタンの場合で0.9 wt%,窒素ドープに酸化チタンの場合で0.36 wt%であった。これら鉄吸着処理を行った硫黄および窒素ドープ二酸化チタンは,水素化ホウ素ナトリウムにより吸着処理した鉄イオンの還元,空気再酸化により,さらに活性が向上することが明らかになった。
    このときの最適な鉄イオン吸着量は,硫黄ドープ二酸化チタンの場合で2.81 wt%,窒素ドープに酸化チタンの場合で0.88 wt%であった。
一般論文
  • 木下 睦, 高橋 悟, 山崎 友紀, 金 放鳴, 守谷 武彦, 榎本 兵治
    2006 年49 巻4 号 p. 177-185
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    オイルサンド層から熱攻法で採収されるビチューメンのオンサイト低粘度化・改質技術として開発研究中のアルカリ超臨界水熱改質法において,ビチューメンからベンゾチオフェン・ジベンゾチオフェン(BT・DBT)類が生成する挙動とそれらの分解挙動について考察した。アルカリ超臨界水熱改質法では,反応温度430℃,圧力30 MPaの条件でKOHを加えて処理した場合,反応時間が数分で終了する比較的迅速な初期の分解反応と,その後のゆっくりとした反応とに区分され,本報では後者を対象とした。得られた結果をまとめると以下のようである。(1)ビチューメンからBT・DBT類が生成し,主にこれらのうちのBT類が分解されることで脱硫が進行すると考えられる。(2)アルカリはビチューメンからBT・DBT類を生成する反応で消費される。(3)使用した2種のビチューメンについて,生成したBT・DBT類の種類は同様であったが,成分ごとの生成量は異なった。(4)生成したアルキルBT類の種類は構造上可能な化合物数の半数近くであり,アルキル基の炭素数が3以下のものがほとんどであった。(5)BT類はDBT類に比べ分解が容易であり,かつDBT類の生成量は多くないため,脱硫は主にBT類を経由すると考えられる。本研究で使用したビチューメンでは生成したDBT類の硫黄含有率は合計で0.3 wt%以下であった。
  • 永易 圭行, 浅井 宏太, 中山 哲成, 岩本 伸司, 矢ヶ崎 えり子, 井上 正志
    2006 年49 巻4 号 p. 186-193
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    熱重量分析装置を用いて,二酸化炭素共存下でのニッケル触媒によるメタン分解反応を検討した。純メタンの分解反応と同様に,メタンは水素と多層カーボンナノチューブに分解された。しかし,メタン分解反応と同時に二酸化炭素改質反応,炭素のガス化反応およびシフト反応が起こり,一酸化炭素や水も生成した。純メタンの分解反応と比較すると,二酸化炭素共存下では,触媒は徐々に失活した。また,反応ガス中の二酸化炭素濃度の増加により炭素生成量は増加したが,二酸化炭素濃度がさらに高くなると炭素生成量は逆に減少した。この研究で最も興味深いことは,炭素生成が停止した後にも関わらず,二酸化炭素改質反応が継続する点である。これらの結果より,触媒が失活する機構について検討を行った。
  • 小林 学, 十河 清二, 石田 勝昭
    2006 年49 巻4 号 p. 194-201
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    フィッシャー・トロプシュ合成ワックスを水素化分解・異性化することにより得られた生成油を各燃料油成分に分留し,燃料油を調製した。各留分の平均分子構造と反応条件の関係を検討し,また軽油留分の分子構造が燃料特性に及ぼす影響についても検討を行った。
    調製された各留分のイソパラフィン/ノルマルパラフィン比は,ボトム油や軽油などの重質な留分では水素化分解・異性化反応のシビアリティーが上昇するほど明らかに高くなる傾向が見られた。灯油留分でも同様の傾向があったが変化の程度は比較的小さく,ナフサ留分では反応のシビアリティーに関係なくほぼ一定であった。
    13C-NMR分析からイソパラフィンの平均分岐数を決定し,反応のシビアリティーとの関係を比較したところ,灯油留分および軽油留分はそれぞれ1.3分岐/分子,2.0分岐/分子程度でほぼ一定であり,それ以上の分岐の生成確率は低いことが分かった。一方,ボトム油の平均分岐数は360℃+分解率の影響を受けた。
    平均炭素数と平均分岐数の間には直線的な関係が確認され,平均分岐数が反応のシビアリティーに依らず平均炭素数により決定されることが分かった。
    また,軽油留分の分子構造と軽油の燃料特性の関係を検討した結果,(平均炭素数) × (ノルマルパラフィン比率)A式において,Aに0,0.02,0.05を適用することにより,それぞれ動粘度,セタン価,および目詰まり点との間に直線関係があることが分かった。ナフサ留分の分子構造についても検討し,分岐の位置などの情報を得た。
ノート
  • 天尾 豊, 渡辺 智絵
    2006 年49 巻4 号 p. 202-205
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    常温常圧条件で,ホルムアルデヒドを還元してメタノールを合成する新規な反応系の確立を目的として,水溶性亜鉛ポルフィリンの可視光増感作用によるNADの還元反応とアルコール脱水素酵素(ADH)とを利用した,ホルムアルデヒドからの光学的メタノール合成反応系を構築した。トリエタノールアミン,亜鉛ポルフィリン,メチルビオローゲン,ホルムアルデヒド,ジアホラーゼ,NADを含む系にタングステンランプを用い可視光照射したところ,NADが還元されNADHが生成した。光照射時間3時間後のNADからNADHへの変換効率は約60%であった。この系にADHを添加し,光照射すると定常的にメタノールが生成した。光照射3時間後のメタノール生成量は0.38 μmol·dm-3であった。
  • 飯島 孝幸, 岩瀬 徹, 山口 達明
    2006 年49 巻4 号 p. 206-209
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    これまでの研究において,ナフトール類のカルボキシル化を非プロトン性極性溶媒中で行うと,従来のKolbe_Schmitt反応と比較して低温においても反応が進行することを見出してきた。ここでは,より有用な生成物を得るため,非プロトン性極性溶媒の一つであるアニソールを用いて,より高温で2-ナフトールのカルボキシル化を行い,反応温度,反応時間が生成物収率および選択率に及ぼす影響について検討した。
    反応温度の増大に伴い,収率は減少する傾向を示した。一方,生成物選択率に着目すると,373 Kでは2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸のみが得られるが,反応温度の上昇に伴い,2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸の選択率が減少し,3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の選択率が増大した。また,543 Kでは6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の生成が確認された。
    反応温度543 Kでは,反応時間の増大に伴い,2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸の選択率は減少し,同時に6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の選択率が増加した。
    これらより,2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸の脱炭酸と3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸への熱転位反応が並発的に進行することが推察される。
  • 佐藤 信也, 矢津 一正, 松村 明光
    2006 年49 巻4 号 p. 210-213
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    酸化脱硫により生成した硫黄酸化物をナフサ中から吸着分離するための吸着剤のスクリーニング試験をベンゾチオフェン-1,1-ジオキシド(BTDO)をモデル硫黄化合物として実施した。
    予備試験では硫黄濃度約14 ppmのBTDO-モデルナフサ溶液を用いて,硫黄濃度1 ppmをモデルナフサの0.2 wt%以下の量で達成する吸着剤を探索した。その結果,シリカゲル(SIL),活性炭埋蔵シリカゲル(ACSIL),モレキュラーシーブ(MS13X)は1 ppm以下を達成したが,活性炭およびシリカアルミナ系吸着剤は1 ppmを達成できなかった。
    次に,予備試験で選定した3種類の吸着剤について,流通式吸着試験装置を用い,硫黄濃度10 ppb以下を維持する処理量を比較することにより吸着剤の性能を評価した。その結果,SILの吸着剤1 gあたりの処理量は1000 g以上となり,最も高性能な吸着剤であった。
技術報告
  • 小俣 光司, 増田 章宏, 望月 剛久, 渡辺 裕輔, スタルト , 小林 靖和, 山田 宗慶
    2006 年49 巻4 号 p. 214-217
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    ジャーナル フリー
    メタンの酸化的改質反応用新規触媒を探索するために,多数の触媒の活性評価を短期間に行うハイスループットスクリーニング用高圧反応器を設計している。そのために高圧条件下で使用可能な簡易合成ガス検出器を試作した。生成ガスを常圧で分析する手法では,圧力を常圧へ減圧するデバイスの制限で一度に評価できる数に限界がある。そこで,高圧下で利用可能な検出方法として有色の金属酸化物の還元反応を用いた。酸化銅をアルミナ製フィルターに担持し,触媒層と重ねて用いた。650℃,1 MPaにてメタンの酸化的改質反応を行ったところ,触媒と接する部分のみ焦げ茶色から薄茶色への変色がスポット状に観察され,このフィルターが加圧下で改質触媒の水素生成能の評価に利用できることが示された。
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