近年, 無水フタル酸製造において, その原料事情によりナフタレンおよび
o-キシレンに共用できる高機能触媒の開発が望まれている。この目的に適用できる耐摩耗性TiO
2担持V
2O
5系流動触媒の開発例はこれまで報告されていない。本報では, 耐摩耗性に優れた微小球形の高活性, 高寿命の流動触媒の開発のため, スプレードライ法を用いる300°Cで焼成したときのアナターゼTiO
2 (2θ=25.3°) の結晶子径が10nm以下となる水酸化チタンゲルを担体として用いる新規な触媒製造法を開発し, さらに第3成分の添加により流動触媒の組成および物性の適正化を検討した。その結果, 既報のSiO
2担持V
2O
5系触媒の結果と異なり, 無水フタル酸生成にはK
2SO
4/V
2O
5<1 (重量比) の組成が有効であることがわかった。一定量のLa
2O
3の添加は担体アナターゼTiO
2を安定化し, 活性•選択性を向上させること, 一方でB
2O
3はとくに流動触媒の耐摩耗性を向上させることが判明した。適正組成のTiO
2担持V
2O
5系触媒はナフタレンおよび
o-キシレン酸化のいずれにおいても無水フタル酸の生成に高活性を示した。さらに, 得られた適正組成触媒をメークアップ触媒としてナフタレンフィードで操業中の実装置に適用した結果, 従来のSiO
2担持V
2O
5系触媒に比し約2/3のメークアップ量でも安定して無水フタル酸収率の向上が達成された。
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