Journal of the Japan Petroleum Institute
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54 巻, 2 号
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総合論文
  • 藤本 尚則, 溝口 隆, 渡辺 圭太郎, 佐々木 健
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    コンパクトで低コストの余剰汚泥削減システム開発を目的に,製油所由来の余剰汚泥にアルカリ処理を実施した。0.025~0.05 mol/Lのアルカリ(水酸化ナトリウム)処理により,1時間後に約30%の可溶化率を得た。また,硫化ナトリウム,水硫化ソーダ,ジイソプロパノールアミンのような製油所由来のアルカリ廃棄物を用いても10~30%可溶化されることが分かった。そして,アルカリ(0.05 mol/L)と高速ミキサーを組み合わせて可溶化することで,25℃において約50%の可溶化率が得られるシステムを確立した。この可溶化システムの実証装置を製油所(活性汚泥槽600 m3,沈殿槽450 m3,可溶化槽3 m3)に設置し試験した結果,64日間の平均として,可溶化率44%,余剰汚泥削減率47%が得られた。この際,活性汚泥槽に戻したアルカリ可溶化液は活性汚泥の処理に影響を与えなかった。さらに,40 Lベンチスケール実験では,余剰汚泥減容システムがない通常の活性汚泥処理時に発生する余剰汚泥量の2~3倍を可溶化処理し,可溶化率59%,余剰汚泥削減率94%の結果を得た。
  • 鈴木 俊光, 中川 清晴
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 66-79
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    世界で最初に,ダイヤモンド微粒子を触媒担体に用いるいくつかの触媒反応を行った。ダイヤモンドは長年安定な物質と考えられていたが,その表面は水素や酸素と反応し,C–H結合や,C–O–C,C=O結合などが最表面に生成することが知られるようになった。我々は,酸素で表面処理したダイヤモンド(酸化ダイヤ,以下O-Diaと呼ぶ)を触媒担体に用いて,金属酸化物,金属を担持した触媒を調製し,次の反応にO-Dia担持触媒が高い活性を示すことを見出した。本論文では以下の反応に関する著者等の研究をまとめた。(1)酸化クロム/O-Dia触媒によるエタン,プロパンなどのアルカンの脱水素反応,(2)酸化バナジウム/O-Dia触媒によるエチルベンゼンの脱水素反応,(3)メタン,エタンの酸化バナジウム/O-Dia触媒上での二酸化炭素を酸化剤とする酸化反応によるアルデヒド生成反応,(4)Ni/O-Dia,Co/O-Diaを用いたメタンの部分酸化による合成ガス生成反応,(5)NiまたはPd/O-Dia触媒上でのカーボンナノフィラメント生成反応,(6)Ru/O-Dia触媒によるアンモニア合成反応。
  • 竹中 壮, 岸田 昌浩
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    カーボンナノチューブ(CNT)は,その構造に由来する特異な特性を有するため,触媒担体への応用が検討されている。しかし,CNT表面は化学的に不活性であるため,ナノサイズの金属粒子の固定化が難しい。また,CNT上の金属ナノ粒子は,触媒反応条件下で容易にシンタリング,脱落する問題もある。我々は,CNT担持金属ナノ粒子を厚さ数nmのシリカ層で被覆することに成功している。CNT担持金属触媒をシリカで被覆することで,触媒活性を損なうことなく,金属粒子のシンタリングおよび脱落を抑制することができる。さらに我々は,シリカ被覆CNT担持金属触媒を固体高分子形燃料電池のカソードに応用している。燃料電池のPtカソード触媒は高い正電位,酸素雰囲気などの厳しい条件にさらされるため,Ptのシンタリングおよび溶出により失活するが,シリカで被覆することでPt触媒の失活が抑制される。このシリカでの被覆法を応用して電極触媒の非Pt化も検討している。すなわち,Pd/CNT触媒は高い酸素還元活性を示すものの,カソード条件下でPdが速やかに溶出することで失活するが,シリカ被覆Pd/CNTは高い酸素還元活性と優れた耐久性を示す。
一般論文
  • Xiao-Yan Zhao, Jun Yao, Chuan-Zhi Cui
    原稿種別: Regular Paper
    2011 年 54 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    Through introducing the pressure function and apparent viscosity the expression of space potential is obtained based on the oil-water two-phase flow theory in this paper. The potential distribution in reservoir of herringbone branch well under the condition of oil-water two-phase steady flow has been studied based on the potential theory. Then the coupled model of flow in reservoir and wellbore pipe-flow is deduced according to wellbore pressure drop calculation model of the variable mass flow with the oil-water two phase in the horizontal pipe. And the anisotropic correction parameters are introduced to correct the model. The model can be used to calculate the productivity of branch well with different configurations at different water cut stage. The establishment of this model has provided a basis for the productivity prediction and the configuration optimization of herringbone branch well under the condition of oil-water two-phase flow.
  • 高橋 宏和, 穂刈 信幸, 横田 修, 西田 浩二, 林 明典, 稲毛 真一
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    硫黄比率0.28 wt%,バナジウム濃度4.6 wtppmの重油を対象に,超臨界水あるいは亜臨界水との接触による重油からのバナジウムの分離特性およびコークスの析出特性について水平方向に流れる反応管を備える流通式改質実験装置を用いて調べた。反応管の温度350℃から470℃,圧力25 MPa,供給した水と重油の質量流量の比0.5の条件では,反応管温度が高いほどコークスの析出量は増加し,コークスの析出量の増加に伴い改質油のバナジウム濃度が低下する。また,反応管での反応時間が長いほど改質油のバナジウム濃度は低下する。改質油のアスファルテンとバナジウムは,重油から同等の比率で減少したことから,アスファルテンを含む高沸点成分が重油から分離され,それと同時にアスファルテンに偏在するバナジウムが分離され,改質油のバナジウム濃度が低下することを確認した。さらに,反応管外部表面温度が424℃から459℃の範囲において,温度が高い領域に析出したコークスほど窒素比率,硫黄比率,バナジウム濃度が高いことから,この温度範囲では,温度が高いほどアスファルテンを含む高沸点成分がコークスに濃縮されることを確認した。
  • 滝 優人, 大友 直子, 大谷 久子, 冨谷 新吾, 宇野 俊昭, 永井 正敏
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    海域に排出され環境汚染物質である軽油と重油の迅速な油種分析法を提案する。本法は赤外分光光度法を使用し,ナフタレン類の吸収811 cm−1(C-Hの2個の隣接した水素面外変角振動),742 cm−1(C-Hの4個の隣接した水素面外変角振動)および723 cm−1(メチレン基の骨格振動)を識別指標に用いた。その結果,811,742,723 cm−1の各吸収の大きさは,軽油が742<811<723 cm−1であったのに対し,A重油では723<742<811 cm−1であった。1603 cm−1の吸収は軽油よりA重油の方が大きかった。また,475 cm−1の吸収は軽油には認められなかったのに対し,A重油からは認められた。これらの吸収に基づいて,迅速に軽油とA重油を識別した。しかしながら,2955,2925,2854,1462および1377 cm−1の吸収では,軽油とA重油を識別できなかった。本法は,海域に排出した軽油とA重油の油種分析に有用であった。
  • 黒川 秀樹, 川田 雄介, 檜山 優斗, 石濱 由之, 櫻木 努, 設楽 浩明, 三浦 弘
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    エチレン重合に用いる不均一系触媒として,ビス(イミノ)ピリジンバナジウム(III)錯体,[2,6-(Ph’-N=C(CH3))2 C5H3NVCl3,Ph’=錯体1: 2,4,6-(CH33C6H2および錯体2: 2,6-((CH32CH)2C6H3]をマグネシウムイオン交換モンモリロナイト(Mg2+-Mont)および合成フッ素雲母(Mg2+-Mica)に担持した触媒を調製した。それらの触媒は汎用のアルキルアルミニウム化合物と組み合わせて,エチレンおよびエチレン/1-ヘキセン共重合に用いた。Mg2+-Mont担持触媒は,エチレンあるいはエチレン/1-ヘキセン共重合において,Mg2+-Mica担持触媒よりも高い活性を示した。錯体1をベースとした触媒は,エチレンと1-ヘキセンの共重合を促進し,直鎖状低密度ポリエチレンを与えた。対照的に,錯体2をベースとした触媒では,活性点周りの高い立体障害のために共重合が進行しなかった。エチレン/1-ヘキセン共重合体のGPC曲線においては,二峰性分布が観察され,これはバナジウム錯体とトリアルキルアルミニウム化合物の反応により,複数の活性種が生成したことを示唆した。
ノート
  • 小俣 光司
    原稿種別: ノート
    2011 年 54 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    Friedel-Crafts反応は種々の中間体の合成や石油化学プロセスに欠かせない反応であるが,プロセスのグリーン化に対応した固体触媒の開発が求められているため,各種のHTS(High-Throughput Screening)反応器を作製してベンジルアルコールによるアニソールのベンジル化反応用の固体触媒の探索を進めている。本研究では12タングストリン酸(HPA)触媒に適した担体を探索した後,担持触媒への最適添加元素をデータマイニングツールを用いてさらに探索した。添加物元素の物性値の主成分と活性の関係をラジアル基底関数ネットワークならびにサポートベクターマシーンにより定量的に求めた結果,活性炭に担持したHPAにReを添加した場合に高活性を示すことを見出した。
  • 吉宗 美紀, 原谷 賢治
    原稿種別: ノート
    2011 年 54 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,エチレンやプロピレンなどのオレフィンガスからの選択的脱水に関して,二種類の中空糸カーボン膜の適用を検討した。一つは,スルホン化ポリフェニレンオキシド(H-SPPO)を600℃で炭化させて得られた細孔径0.4~0.45 nmのカーボン膜,もう一つはNa置換スルホン化ポリフェニレンオキシド(Na-SPPO)を用いて作製した細孔径0.3~0.35 nmのカーボン膜である。膜の細孔径がオレフィンガスの脱水性能に与える影響は大きく,後者のカーボン膜がエチレンやプロピレンに対して水の理想分離係数が非常に高いために,優れた脱水性能を示すことが分かった。このカーボン膜は,膜面積あたりの供給ガス流量30 L・m−2・min−1において,供給ガス中に含まれる4.4 vol%の水蒸気の95%を選択的に脱水することが可能であった。また,このカーボン膜はオレフィンガスに対して十分な耐性を有しており,供給圧力を増加させると脱水量も増加し,供給圧力0.5 MPaにおいて97%以上のプロピレンガス脱水率を得ることができた。
レター
  • 滝 優人, Shamsul Izhar, 永井 正敏
    原稿種別: レター
    2011 年 54 巻 2 号 p. 124-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/01
    ジャーナル フリー
    近年,輸入原油から製造される燃料油の代替燃料油として,バイオマスから製造される熱分解バイオオイルが注目されており,その製造技術の開発が進められている。本報告は,終末処理場から排出される都市型バイオマス廃棄物である活性汚泥から製造されるバイオオイルと,輸入原油から製造される燃料油を迅速に識別する分析法についての速報である。活性汚泥の熱分解によって製造されるバイオオイルは,一般的な輸入アラビアン原油からのアラビアンヘビーオイルと全く異なる成分から構成されており,その相違を迅速に識別する方法を見出した。この識別分析は活性汚泥由来の熱分解オイルのスキャンモードスペクトル(ステラン: m/z = 217)によるバイオマーカー法であり,それぞれの原油を区別できるスペクトル(ホパン: m/z = 191)と全く異なる。
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