地下資源である原油および天然ガスコンデンセートには多種類の金属が含有されており,水銀も微量含まれていることは既知である。これら水銀は,石油精製,石油化学の触媒劣化および配管部材の腐食を及ぼし,装置稼動に影響を与えることがある。たとえば,これまでに天然ガス製造設備の部材の腐食および劣化,LPGの気化器の閉そく,熱交換器のアルミニウム部剤の損傷が発生したことが報告されている。
水銀除去には,シリカゲルやアルミナ等に金属硫化物を担持した吸着剤や活性炭に金属硫化物を担持した吸着剤が有効であることが報告されている。しかし,既存の吸着剤は,それに担持している金属硫化物がナフサ等の石油製品に溶出する問題がある。これらのことから,水銀の結合エネルギーをコンピューターケミストリーの手法を用いて計算し,その結果を基に,硫黄アルカリ金属および塩化物を担持金属として選定し,安価で高表面積な椰子(やし)殻活性炭を担体とし,ナフサの性状に変化を与えることなく,水銀を低濃度まで除去できる吸着剤の開発を行った。
開発した吸着剤を充填した水銀除去装置は,1995年11月に太陽石油(株)四国事業所で稼働が開始された。常温,常圧で連続運転され,8年間で処理量は約500万k
l を超えている。世界的にも非常に長く連続運転している水銀除去装置である。
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