Journal of the Japan Petroleum Institute
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49 巻, 6 号
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総合論文
  • 長谷川 武治
    2006 年 49 巻 6 号 p. 281-293
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    わが国では一次エネルギー資源の約8割を海外からの輸入に依存している。将来にわたるエネルギーの安定供給ならびに地球環境負荷低減の観点から,新たな未利用エネルギー資源の開拓および高効率利用技術の開発が今後ますます重要となる。
    未利用一次エネルギーのうちビチューメン,オイルシェール等の超重質油資源の究極可採埋蔵量は約5.8兆バレルと言われており,現在市場で取引される原油の可採埋蔵量の数倍に相当する。しかも,その貯留層は比較的政情の安定した中南米および北米に分布しており,発電用燃料としての有効活用はエネルギー資源の発掘,電力の安定供給力確保の観点から重要である。わが国の電気事業では,超重質油等を高効率ガスタービンで利用する技術として,ガス化•ガス精製技術の開発に取り組むとともに,ガスタービン燃焼器技術の開発を実施してきた。特に,ガスタービンに供給されるガス化燃料は,ガス化方式によって大幅に異なり,それぞれに適した燃焼器技術が必要になる。
    本論文では,ガス化燃料用ガスタービン燃焼器技術について,開発の背景および海外における研究および開発の動向を概説するとともに,電気事業において開発された各種ガス化燃料用ガスタービン燃焼器技術について詳説する。
一般論文
  • 山下 浩司, 川口 亜星, 大勝 靖一
    2006 年 49 巻 6 号 p. 294-300
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    ヒンダードアミン光安定剤による過酸化物分解反応の活性種の生成反応について酸性化合物の役割を検討した。その過程で,HALSの性質を決定する上で過酸化物分解活性が重要であることを明らかにした。そして,HALSとフェノール等の酸性化合物との拮抗作用の要因であり,過酸化物のラジカル分解活性種であるHALSニトロソニウム塩の生成に対して,HALSの第二級アンモニウム塩の存在が重要な鍵となっていることを発見した。このHALS塩よりHALSニトロソニウム塩はニトロキシド,アルコキシド,ヒドロキシルアミンといったHALSの安定化活性種を経ることなく生成することが分かった。さらに,本論文ではこれら事実に基づいてHALSニトロソニウム塩生成機構について明らかにした。このことに加え,HALSの性質を議論する上でHALSと他の物質との間の分子会合の考えが重要となることを提案した。
  • 高橋 武重, 仲西 真由美, 甲斐 敬美
    2006 年 49 巻 6 号 p. 301-307
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位反応において触媒活性劣化に及ぼす細孔径の影響を明らかにするため,MFI構造をもつTS-1およびこれよりも大きな細孔をもつSSZ-31およびSSZ-24を触媒として反応を行った。SSZ-24を用いたときの活性劣化定数は,本研究で使用したゼオライトの中で最大になった。さらに,ε-カプロラクタムの分子径/ゼオライトの細孔径比が1になるとき,同程度の酸性度をもつゼオライト間で最大の活性劣化因子をもつことが分かった。これらの結果は,細孔内の活性点で生成したε-カプロラクタムが細孔から拡散できないため,ε-カプロラクタムが長時間にわたり細孔内に滞留し,結果としてコークあるいはその前駆体になったことを示唆している。ゼオライトの細孔径はベックマン転位反応の活性劣化に大きな影響を与えた。
  • 中山 哲成, 浅井 宏太, 永易 圭行, 岩本 伸司, 矢ケ崎 えり子, 井上 正志
    2006 年 49 巻 6 号 p. 308-314
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    Ni触媒を用いてメタン分解によりカーボンナノチューブと水素を合成する反応における担体粒子の形状の影響を熱重量分析装置を用いて検討した。Ni触媒の担体としてグリコサーマル法により合成したEr3Ga5O12を用いた。Er3Ga5O12の形状と細孔径分布は焼成温度により変化し,球形で滑らかな表面を持つEr3Ga5O12粒子に担持したNi触媒を用いた時,カーボンナノチューブの生成量は高くなった。また,様々なアルミナをNi触媒の担体として用いた。球状アルミナ(Nanophase Technologies Corp.)に担持したNi触媒は極めて高い炭素生成量を示した。担体が球状で,滑らかな表面を持つ時,担体同士は点接触するため,容易に位置を変えることができる。このことから触媒担体の形状は炭素生成量を支配する最も重要な因子であると結論付けられた。
  • 佐々木 厳, 森吉 昭博, 恒川 昌美
    2006 年 49 巻 6 号 p. 315-320
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    水浸破壊は,橋面舗装およびコンクリート床版における耐久性確保の大きな課題の一つである。特に,水に加えて塩分および界面活性剤のようないくつかの化学物質が介在すると,破壊が著しく促進されることがある。したがって,舗装材料への水の物質移動機構や化学物質の蓄積機構は重要な研究課題である。著者らは,歴青系舗装への水分の蓄積の主因は水蒸気によるものであることを指摘し,物質移動の解明のための新しい透湿試験装置を開発した。本報では,橋面舗装およびコンクリート床版に水および界面活性剤が蓄積することを,この試験法により実験的に実証した結果を述べる。橋面舗装への水の蓄積は,日周期の環境変化の繰り返しに従って増加する。また,舗装表面にアルキルフェノールエトキシレート系の界面活性剤を塗布して透湿試験を行うと,事実上不透水の舗装混合物中を透過し,コンクリート床版中に蓄積されることを実験室で再現した。
  • Qi Zhang, Peiwen Que
    2006 年 49 巻 6 号 p. 321-325
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    海洋パイプラインの維持管理においてラインの探傷およびその安全性の評価は非常に重要な項目である。パイプライン内面は水の存在により腐食を受け,一方,外面はアンカー等による機械的損傷を受ける傾向がある。輸送原油の逸失および環境破壊を避けるためにパイプラインの漏洩が生じる前にその漏洩の可能性のある部位を正確に検知する必要がある。パイプラインのダメージを探る方法として超音波探傷が一般的に広く行われているが,その肉厚測定に超音波インテリジェントピグを使う場合,複雑な海底地形およびパイプライン敷設環境のためパイプラインの壁面と超音波測定用プローブが離れてしまうセンサーリフトオフ現象が生じることがあり,この場合には肉厚の正確な測定が困難となることがある。このリフトオフ問題に対応するために超音波信号形状の抽出にHilbert-Huang変換を使用するとともにリフトオフの種々の影響を抑えるためにElmanニューラルネットワーク手法を適用することにより,精密な超音波検知結果が得られることが本検討により示唆された。
  • Chris Salim, 江頭 竜一
    2006 年 49 巻 6 号 p. 326-334
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    メタノール水溶液によるコールタール蒸留留分の溶媒抽出において,抽出相に含まれる抽出成分と溶媒成分との分離に蒸留法を適用した。まず,メタノール水溶液を溶媒として,コールタール蒸留留分の一つである吸収油の平衡抽出を行った。吸収油中の含窒素複素環式化合物が選択的に溶媒相側に抽出され,これらの成分と同素環炭化水素などが分離できることを確認した。ついで,この抽出により得られた抽出相を回分単蒸留により分離した。抽出相は,それぞれ抽出成分および水に富んだ互いに溶解し合わない二つの液相からなる缶出物とメタノールに富んだ留出物とに,すなわち抽出成分と溶媒成分とに分離された。このとき,含窒素化合物と同素環炭化水素などとの間のさらなる分離も起こり,同素環炭化水素などは回収されたメタノール水溶液相中に残留した。この蒸留により回収したメタノール水溶液相を溶媒として,再度,吸収油の平衡抽出を行った。回収した溶媒中に残留した同素環炭化水素などによりこれらの成分の吸収油中から溶媒相への移動が抑制され,含窒素化合物と炭化水素成分などとの間の分離性が向上した。これらの実験結果に基づいて,溶媒抽出および蒸留を用いたコールタール蒸留留分分離プロセスを提案した。
技術報告
  • 幾島 賢治, 松本 伸一, 長井 明久
    2006 年 49 巻 6 号 p. 335-339
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/01
    ジャーナル フリー
    地下資源である原油および天然ガスコンデンセートには多種類の金属が含有されており,水銀も微量含まれていることは既知である。これら水銀は,石油精製,石油化学の触媒劣化および配管部材の腐食を及ぼし,装置稼動に影響を与えることがある。たとえば,これまでに天然ガス製造設備の部材の腐食および劣化,LPGの気化器の閉そく,熱交換器のアルミニウム部剤の損傷が発生したことが報告されている。
    水銀除去には,シリカゲルやアルミナ等に金属硫化物を担持した吸着剤や活性炭に金属硫化物を担持した吸着剤が有効であることが報告されている。しかし,既存の吸着剤は,それに担持している金属硫化物がナフサ等の石油製品に溶出する問題がある。これらのことから,水銀の結合エネルギーをコンピューターケミストリーの手法を用いて計算し,その結果を基に,硫黄アルカリ金属および塩化物を担持金属として選定し,安価で高表面積な椰子(やし)殻活性炭を担体とし,ナフサの性状に変化を与えることなく,水銀を低濃度まで除去できる吸着剤の開発を行った。
    開発した吸着剤を充填した水銀除去装置は,1995年11月に太陽石油(株)四国事業所で稼働が開始された。常温,常圧で連続運転され,8年間で処理量は約500万kl を超えている。世界的にも非常に長く連続運転している水銀除去装置である。
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