Journal of the Japan Petroleum Institute
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54 巻, 3 号
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総合論文
  • 向井 紳
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    ゾル-ゲル法を利用することで種々の機能を有する多孔質材料が得られるが,これら材料の機能はそのモルフォロジーを制御することでも向上させることが可能である。最近,我々は,ゾル-ゲル法で得られる材料の前駆体である湿潤ゲルを一方向に凍結することにより,マイクロハニカム状のモノリス体に成型できることを見出した。このプロセスでは,凍結時に湿潤ゲル内に発生し,凍結方向に成長する氷晶がテンプレートの役割をし,材料が成型される。氷晶の痕跡である流路のサイズはマイクロメーターオーダーであり,マクロ孔として機能する。これら流路を形成する壁の厚さは1 μm程度であり,その中にはナノ細孔が発達している。よって,これらのモノリス体は短いナノ細孔が直状マクロ孔に直結している特異な細孔の階層構造を有する。この特異な構造のために,これらのモノリス体は材料内の拡散距離が非常に短いにもかかわらず,流体通過時の圧力損失が小さい。開発したこの手法は種々の有機系,無機系の湿潤ゲルに適用可能であるため,特異な構造に加え,種々の機能を有するモノリス体の製造が可能である。また,適当な湿潤ゲルを実質的なバインダーとして利用することにより,微粒子をマイクロハニカム状モノリス体に成型する手段として利用することも可能である。
  • 佐藤 一成, 小林 敬幸
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 136-145
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    自動車の燃料タンクから排出される蒸散燃料ガスには人体に有害な物質が含まれており,法規制により排出が厳しく制限されている。大気中への蒸散ガス放出(破過)を防止する装置であるカーボンキャニスターは,内部の活性炭充填層でガスを吸着することでタンクからの排出を抑制する。本研究では,自動車から排出される蒸発燃料ガスの主成分であるn-ブタンと活性炭の吸脱着・拡散現象を実験と数値計算から明確にして,活性炭層内での物質収支と熱収支の計算式を確立した。この計算式を用いてキャニスターの性能シミュレーションを行い実測した破過特性と比較した結果,良い相関を得ることができ,シミュレーションの妥当性を確認した。また,長時間にわたる過渡的な現象の計算には膨大な時間が必要となるため,収支式を高次の解法により解くことで計算の収束性を格段に高め,計算時間を短縮した。これらの結果,いくつかの収支式を組み込んだ流体解析ツールを用いてカーボンキャニスター内のn-ブタンの挙動と破過特性を実用的に予測することが可能となった。
  • 野崎 智洋, 岡崎 健
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 146-158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    化石燃料利用体系の省エネルギー,省資源,CO2排出抑制が求められている。現在は,熱化学的手法を基盤としたエネルギー・物質変換が主要な役割を果たしているが,長期的なエネルギー資源利用体系のあり方を考えたとき,既成技術の延長線上にない革新的な反応プロセスの開発が不可欠である。このような背景から,我々は大気圧非平衡プラズマを利用して,天然ガスやバイオガスの主成分であるメタンを高効率に転換するための技術を開発している。本稿では一般的なプラズマ燃料改質の概要を述べた後,これまで我々が取り組んできた研究を二つ紹介する。まず,プラズマ-触媒ハイブリッド反応を用いた低温メタン水蒸気改質について概要を述べた後,マイクロプラズマによるメタンからメタノールの常温直接合成を紹介する。それぞれ,具体的な応用を目指したプラズマ燃料改質の位置づけを明確にした後,プラズマ固有の反応特性,たとえばプラズマと触媒のシナジー効果,マイクロプラズマによる高度に非平衡化された化学反応場の創成など,将来の革新的技術開発につながると期待される新しい技術の概要を紹介する。最後にプラズマ燃料改質の展望を述べて本稿のくくりとする。
  • 池庄司 民夫
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 159-167
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    超臨界水の物理的および化学的性質について第一原理分子動力学を用いて解析した。超臨界水中では水素結合は存在するが,そのネットワーク構造は完全ではなくクラスター状になっている。シクロヘキサノンオキシムからε-カプロラクタムを生成するベックマン転位反応が超臨界水中(0.7 g/cm3,670 K)で進むことを,ヒドロニウムイオンの存在下で確認した。超臨界状態の温度の影響でなく,密度が低いためにヒドロニウムイオンが完全に水和されることがなく,反応性が高まりベックマン転位反応が進んだ。密度が1 g/cm3では,ヒドロニウムイオンは水和されて安定化し,ベックマン転位反応は進まない。
  • 錦谷 禎範, 久保 貴哉
    原稿種別: 総合論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 168-179
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    色素増感太陽電池は,ルテニウム色素に代表される有機色素で増感されたTiO2ナノ粒子電極,白金対極およびヨウ素レドックス電解質からなる光電気化学セルである。色素増感太陽電池が今後大規模に上市されるためには,耐久性の改善と変換効率の向上が重要課題となる。そこでまず,耐久性改善のために,ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPをマトリックス・ポリマーとしたゲルタイプ高分子固体電解質の開発を行った。この高分子固体電解質でセルを擬固体化することにより,耐久性低下の主要因である電解液の漏洩を防ぐことができる。ただ,高分子固体電解質を用いたセルでは,短絡電流の低下が起こる。そこで,その原因を明らかにするため,高分子固体電解質および液体電解質を用いて作製したセルの電気化学特性を調べた。その結果,ヨウ素イオン拡散係数とセル・ギャップ(電極間距離)が短絡電流密度を決定する重要因子であることが分かった。つまり,高分子固体電解質とセル構造の最適化が,擬固体型色素増感太陽電池の高効率化に重要であることが分かった。続いて,変換効率の向上を目的として,アスペクト比の非常に大きいTiO2ナノチューブを用いたセル作製を行った。用いたナノチューブは,チタン金属を希釈過塩素酸水溶液中で陽極酸化することにより合成した。TiO2ナノチューブはナノ粒子と異なり,電荷分離のための高比表面積を保持しつつ光散乱体として機能する。そのため,高アスペクト比のTiO2ナノチューブを光散乱体としてナノ粒子上に形成することで,色素増感太陽電池の高効率化を達成することができた。さらに,チタン金属を基板とした対極照射型のフレキシブル太陽電池を作製することも可能であった。本総説では,筆者等が行ったゲルタイプ高分子固体電解質とTiO2ナノチューブを用いた色素増感太陽電池のこれまでの研究開発状況を報告する。
一般論文
  • 坂下 幸司, 西村 勲, 芳野 真実, 木村 俊之, 浅岡 佐知夫
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 180-188
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    流動接触分解(FCC)プロセスの原料への残渣油の割合が増大していることに対応するために,高活性でコークが出にくく,かつ機械的強度が強く耐水熱性を有するFCC触媒に関して基礎的な研究を行った。結晶成長が制御されたゲル化していないベーマイトを原料とする均一なナノサイズの細孔径(5~50 nm)を有するアルミナが,ゲル化している場合に比べて,その細孔の大きさが機械的強度を損なうことなく良好に制御されることを確認し,この研究に用いた。FCC触媒のマトリックスとしてのこのナノポーラスなアルミナが,再生工程での水熱的劣化を低減することにおいてナノポーラスなシリカよりも優れることを確認した。また,このナノポーラスアルミナはコーキングを抑制する予備分解を起こさせるのに重要な役割を有すること,その能力に関して最適な細孔径で示されるサイズがあることを明らかにした。その最適径は,炭素数の異なるモデル化合物を反応原料として用いることによって,反応原料にはあまり依存しないことを確認した。したがって,FCC触媒マトリックスとしての最適なナノポーラスなアルミナは,実用的な条件において基本的には,細孔直径として約11~15 nmを示すものであると結論した。
  • 石原 篤, 根倉 広宇, 乾 健太郎, 橋本 忠範, 那須 弘行
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 189-200
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,リンゴ酸(MA),コハク酸,クエン酸を用いたゾル-ゲル法によって非晶質シリカ–アルミナを調製し,それらの接触分解特性が評価された。MA/TEOS(テトラエトキシシラン)比を増加させると表面積,細孔容積,細孔径が増加し,メソ孔が形成された。非晶質シリカ–アルミナ単独では,ドデカンの接触分解における転化率の最大値は約30%であったのに対して,β-ゼオライト単独では91%に達した。非晶質シリカ–アルミナのマトリックスとしての反応性を評価するためにゼオライト,非晶質シリカ–アルミナおよびバインダーとしてのアルミナゾルからなる混合触媒を調製した。生成物分布はゼオライト単独やシリカ–アルミナ単独の場合と異なり,ゼオライトを1/4しか含まないがゼオライト単独に匹敵する活性が得られた。また,メソ孔を持つシリカ–アルミナ(MA1.22-5)を用いて調製した混合触媒では,ゼオライト単独と比べてガソリン留分(C5~C11)中の多分枝/単分枝比がゼオライト単独の場合より高かった。
  • 尾山 宏次, 曽根 忠豪
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究ではガソリンの化学的特性がエンジンアウト排出ガス,特にNOx排出に及ぼす影響を調べることを目的に,15種類のガソリン(モデル燃料)を用いたエンジン実験およびエンジン燃焼解析を実施した。燃料の影響を詳細に解析するために,NO生成に関する拡大ゼルドビッチ反応機構を用いた数値シミュレーションを行い,生成機構からの基礎的な観点も含めて解析を行った。その結果,エンジンアウトのNOx排出濃度は燃料により大きく異なり,理論火炎温度で代表される燃料パラメーターと実験より得た50%燃焼点のパラメーターとの二つのパラメーターで整理できることが分かった。また,数値シミュレーションからそれらのパラメーターはそれぞれ燃料の熱力学的特性の要因と燃料による燃焼時期変化の要因を代表したものであり,実験結果の妥当性について裏付けることができた。
  • 田畑 宏, 堤 健, 松下 洋一, 西脇 亜也, 林 幸男, 小川 喜八郎, 田畑 研二
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 54 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    持続できる社会の構築を目指し,バイオマスの有効利用,すなわちリグニンを含むバイオマスからの有用化学物質あるいは燃料への変換に大きな関心が寄せられている。リグノセルロースの酵素糖化の前処理としてアルカリ溶液を利用する方式についてはこれまでに多くの研究がなされてきたが,糖化率の向上を目指しさらなる改善が求められている。我々は,草本系バイオマスであるネピアグラスの葉部と木質系であるクズ茎部からの糖化率の向上を目指した研究を行った。アルカリ処理を事前に施したこれらのリグノセルロースにシリコン存在下で可視光を照射し,その効果について調べた。草本系ネピアグラス葉部の場合,酵素糖化24時間後では還元糖収率はアルカリ処理のみでは60.3%であったものが,可視光照射を付け加えることにより86.7%に改善された。同様に木質系クズ茎部では57.4%から88.6%に改善された。
技術報告
  • 柳田 高志, 藤本 真司, Lyudmyla Bespyatko, 塚原 建一郎, 秀野 晃大, 澤山 茂樹, 美濃輪 智朗
    原稿種別: 技術報告
    2011 年 54 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    リグノセルロース系バイオマスを原料としたエタノール製造では,糖化前処理技術の経済性向上が求められている。この前処理技術の一つとして,水熱反応や湿式微粉砕を組み合わせるメカノケミカル法が検討されている。しかしながら,この方法は湿式方式のため,プロセス後段の発酵終了時のエタノール濃度が低くなり,蒸留工程での投入エネルギーを多く必要とすることが懸念されている。一方,脱水工程を導入した場合,水熱反応で溶解した糖類の損失が懸念される。そこで,前処理と酵素糖化の間に脱水工程を導入するシステムについて,エタノール製造全体におけるコストとプロセスエネルギーの評価をした。その結果,脱水工程の導入は9~17%のコスト削減効果,ならびに43~57%のプロセスエネルギーを削減する効果のあることが確認できた。
レター
  • 望月 剛久, 鳥羽 誠, 葭村 雄二
    原稿種別: レター
    2011 年 54 巻 3 号 p. 222-223
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    急速熱分解により得られるバイオオイルのアップグレーディングを小型振動式バッチオートクレーブにて行った。触媒には還元Ni/SiO2, Co/SiO2, Pt/SiO2, Pd/SiO2 そして硫化CoMo/Al2O3を用いた。水素化脱酸素は水素圧1~5 MPa,反応温度300~350℃で行った。その結果,還元Co/SiO2触媒がグアイアコールの脱酸素反応に最も高い活性および芳香族選択性を示した。これは,還元Co/SiO2触媒が主にベンゼン生成するフェノールの直接脱酸素反応(DDO)に高い活性を示すためと推察される。
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