Journal of the Japan Petroleum Institute
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63 巻, 5 号
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総合論文
  • Emmerson HONDO, 呂 鵬, 張 培培, 李 傑, 椿 範立
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 239-247
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    フィッシャー・トロプシュ(F-T)合成は長年にわたって非石油系燃料の中核的な製造技術である。しかし,F-T合成の炭化水素生成物の広い分布は従来古典的なASF則に支配される。ASF則の制限を打破するために触媒および触媒反応経路の革新は非常に重要である。我々は従来のF-T軽油と異なる製品である軽質オレフィン(C2-C4),ガソリン(C5-C11),ジェット燃料(C8-C16),およびその延長である含酸素化合物をF-T法で合成することを研究してきた。これらの付加価値の高い,かつ需要も多い新製品を選択的に合成するために,いくつかの新しい反応経路を実現できる新型高性能F-T合成触媒を設計し,ASF則の制限を破る炭化水素の生成分布を制御できた。ここではこれらの新型F-T反応群を実現できた高性能触媒の設計思想,および触媒の構造-性能相関関係をコントロールする諸要素を解説する。

  • 廣田 雄一朗
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 248-257
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    本総合論文では,シリル化イオン液体を膜素材としたイオン液体の特性をもつオルガノシリカ膜の透過分離特性,膜構造そして透過機構について紹介する。トルエン/水素,メタノール合成ガス・蒸気,トルエン/メタンおよびメタノール/メタン混合系でのシリル化イオン液体由来オルガノシリカ膜の透過分離能を評価した。作製した膜は100 ℃以上の温度域においても水素,二酸化炭素,メタンに対して,トルエンおよびメタノールの選択透過性を示した。膜の選択透過性はイオン液体への透過分子の親和性により発現していることを明らかにした。これらの結果から,シリル化イオン液体由来オルガノシリカ膜は各種の無機・有機ガスから有機蒸気を選択的に回収する分離膜として有望な選択肢といえる。同時に,新規オルガノシリカ膜の構造と透過機構の解明を目的とし,全反射赤外分光測定,窒素吸着,ガス・蒸気透過試験およびナノパームポロメトリー評価を行った。これらの評価から,当該分離膜には「イオン液体密集部のみ」と「シリカネットワーク由来ミクロ孔+イオン液体密集部」の二つの透過経路の存在が明らかとなった。さらに,ナノパームポロメトリー評価から,ガス透過における二つの透過経路の寄与率を算出することに成功した。

  • 鈴木 康介, 水野 哲孝, 山口 和也
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 258-266
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    高効率,高選択性の化学反応や高難度反応を実現するためには,一原子単位で構造や機能を精密設計する新しい触媒技術の開発が不可欠である。本稿では,分子状金属酸化物であるポリオキソメタレート触媒の精密合成法と,その有機合成反応への利用に関する研究を紹介する。特に,配位サイトを有する欠損型ポリオキソメタレートを分子鋳型や多座配位子として用いて,構造や機能を自在設計する精密無機合成法を確立し,同一種だけでなく異種金属を選択的・逐次的に精密配列する無機合成を可能にした。有機溶媒中において反応部位のプロトン化状態の制御や,金属種の溶存状態の制御により,欠損型ポリオキソメタレートの反応性制御が可能になり,様々な金属を核数,配列,結合様式などを制御した無機材料設計ができる。さらに,ポリオキソメタレートに導入する金属や基質との協奏作用を利用して,既存の触媒を超える活性や新たな反応性の発現,分子内電荷移動を利用した可視光応答型酸化還元触媒の開発など,金属酸化物触媒の設計における新たな方法論を開拓した。

一般論文
  • 杉山 茂, 三宅 未珂, 吉田 瑞穂, 中尾 友紀, 霜田 直宏, 加藤 雅裕
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 267-273
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    SiO2に担持されたBi–Mo複合酸化物触媒へのCe添加の効果を,プロピレンのアクロレインへの部分酸化について検討した。本研究で検討した触媒は二つの相で構成されおり,SiO2に担持されたMo-酸化物にFe,Ni,Coを導入した格子酸素に対する酸素供給相,およびその周りに担持した反応物からの水素引き抜きを行うBiサイトを持つBi–Mo酸化物の触媒活性相の2相である。本研究では,酸素供給相の酸化還元性を高めるために,酸素供給相にCeを添加した。Ce添加による良好な結果は,酸素リッチの原料ガスを用いた際に観測された。たとえば,P(C3H8)=10.1 kPa,P(O2)=15.5 kPa,T=623 K,通塔時間6時間において,Ceの添加率を0 %から20 %に増加させても,アクロレインの収率は57.6 %から65.3 %へわずかに増加しただけであった。一方,同条件で,P(O2)=31.0 kPaとした酸素リッチの条件では,Ceの添加率を0 %から20 %に増加させると,アクロレインの収率は27.7 %から61.8 %へと約2倍増加した。原料ガス中に酸素を加えずに反応を繰り返した後の触媒のXPS分析により,触媒活性相と酸素供給相の間のユニークな酸化還元挙動が確認され,触媒活性相の格子酸素は酸素供給相から補充されて,触媒活性相表面の状態が維持されることが明らかになった。これらのXPSによる結果と,酸素リッチ状態での酸素供給相へのCe添加の触媒活性への顕著な効果に基づいて,酸素供給相と触媒活性相からなる触媒調製方法の概念が正しいことを明らかにした。

  • 日隈 聡士, 岩佐 豪, 荒木 健人, 川畑 悠介, 松木 駿, 佐藤 徹哉, 今 喜裕, 武次 徹也, 佐藤 一彦, 町田 正人
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 274-281
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    NH3燃焼特性に高活性・低N2O/NO選択性を示すCuOx/Al2O3,CuOx/10Al2O3・2B2O3,CuOx/Ag/Al2O3,CuOx/Pt/Al2O3等の粉末状の酸化銅系触媒をコーディライトハニカムにウォッシュコートした担持触媒を調製し,粒状触媒との触媒性能を比較検討した。調製したハニカム触媒のWDX-mapping観察より,触媒コート層の厚みは約100 μmで,Agは熱処理により凝集が確認されたが,CuOxおよびPtは比較的高分散状態を維持していた。ハニカム触媒と粒状触媒のNH3燃焼特性を比較すると,いずれの組み合わせもNH3燃焼活性ならびにN2O/NO選択性が類似することから,NH3燃焼特性は触媒の形状より,むしろ触媒の材料特性に依存すると推定された。XPSより,CuOx/10Al2O3・2B2O3ハニカム触媒のCu2+とCuの割合が見積もられた。DFT計算より,配位不飽和(高分散)なAgがNH3を活性化すると推察された。

一般論文 – 特集「山形大会」–
  • 山田 高義, 竹内 大介, 小坂田 耕太郎, 荒谷 一弘
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 282-288
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    後期遷移金属触媒によるオレフィンと極性モノマーとの共重合によって,炭化水素ポリオレフィンに新しい機能を付与することができる。本研究では,Brookhart型のパラジウム–ジイミン錯体を触媒に用いて,1-デセンとメタクリル酸エステルとの共重合を行った。メタクリル酸メチル(MMA)との共重合では,極性基を末端に有する分岐状の生成物が得られた。共重合体の平均分子量はおよそ10,000~31,000であった。同位体標識を用いたNMRスペクトルの解析により,極性基を含む末端構造を決定した。これによって,MMAが高分子生長末端に2,1-挿入し,続く異性化で生じた六員環パラジウム錯体に1-デセンが挿入し,その後水素脱離により高分子が生成することが明らかになった。各種のメタクリル酸エステルと1-デセンとの共重合体を得た。メタクリル酸イソプレニルとの共重合体は,極性モノマーの二つの炭素炭素二重結合の両方が重合に関与した新しい構造を有する高分子であった。

  • 高畠 萌, 南保 雅之, 眞中 雄一, 本倉 健
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 289-296
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    固体酸触媒であるモンモリロナイトを用いたときのn-ヘプタンによるベンゼンの直接アルキル化における反応機構を調査した。プロトン交換モンモリロナイトやアルミニウム交換モンモリロナイトが本反応に活性を示すことが分かった。また,プロトン交換モンモリロナイトの触媒活性は,加熱や超音波照射などの前処理によって増加し,反応初期の生成物の選択性も変化した。生成物選択性の詳細な経時変化の測定によって,層間がより狭い触媒の場合,表面で二分子反応が優先的に起こり,高い選択率で目的の炭素鎖7のアルキル化生成物が得られることが明らかになった。一方,前処理を行っていない層間が広いプロトン交換モンモリロナイトでは,層間におけるn-ヘプタンの単分子クラッキングにより,t-ブチルカチオンが生じ,t-ブチルベンゼンが生成した。H-ZSM-5を触媒として使用した場合もn-ヘプタンの単分子クラッキングが起きるが,主生成物はイソプロピルベンゼンとなった。

  • 藤墳 大裕, 八木田 雄介, 雑賀 隆志, 大塩 敦保, 飯塚 喜啓, 中嶋 伸昌, 多湖 輝興
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 297-307
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    近年,動植物性油脂から得られる長鎖直鎖パラフィンを原料としたジェット燃料製造が高い関心を集めている。炭素数16~20の直鎖パラフィンから炭素数9~15のイソパラフィンであるジェット燃料を得るには,異性化と適度な分解反応が不可欠である。一般に水素化異性化および分解反応にはゼオライト担持Pt等の二元機能触媒が有効である。しかし,その触媒性状が活性に及ぼす影響は解明されていない。そこで,ゼオライト担持Pt触媒を用い,水素化異性化および分解反応による直鎖パラフィンからの炭素数が3~5少ないイソパラフィンの合成を実施した。n-デカンを原料とし,ゼオライト構造,酸点量,白金担持量の影響を検討した。0.5 wt% Pt担持MFI(Si/Al比200)が最も高い目的イソパラフィン収率を示した。さらなる改良のため,n-デカンに対し最適化した触媒をn-ドデカン原料に展開した。MgO担持により過分解反応が抑制され,目的イソパラフィン収率が向上することを見出した。

  • 松下 康一, 後藤 康仁, 髙村 徹, 岩間 真理絵
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 308-314
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    溶剤脱れき装置(SDA),重油脱硫(RDS)装置,流動接触分解(RFCC)装置から構成される残油アップグレーディング技術について検討した。SDAから得られる脱れき油(DAO)を,RDSで処理した後,RFCC装置で分解するという技術である。SDAのRDS性能への影響を明確化するため,DAOと常圧残査油(AR)について,GPC-ICPやFT-ICR-MSによる詳細構造解析,および等温型反応装置や断熱型反応装置を用いた反応性評価を行った。その結果,DAOは,ARと脱硫反応性が同等であるのに対して,脱メタル反応性は高いことが分かった。これはDAOの方がARよりも芳香環数が多く,側鎖炭素数が少ないためと推察された。DAO処理時の実機RDS装置における触媒層の温度上昇は,AR処理の場合と異なり,従来のAR用シミュレーターでは予測精度が低かった。それに対して,分子レベルでの反応予測を行うことで,反応性だけでなく,触媒反応に伴う発熱挙動も含めた予測精度の改善が可能となった。

  • 佐藤 剛一, 羅 紅岩, 宮川 正人, 西岡 将輝
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 63 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 2020/09/01
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    固体触媒を用いた流通式反応にマイクロ波照射加熱を利用するため,メタンの改質反応を円筒型の照射空間を備えたシステムで行った。円筒型照射空間内では定在波が形成され,常に中心部で電界強度が最大となるため,そこに設置した反応管に均一にマイクロ波が照射される。マイクロ波加熱効率が良好な5 wt% Pd/Al2O3触媒を用いた反応では,水蒸気改質とドライリフォーミングのどちらもマイクロ波加熱が電気炉加熱より高い転化率を示した。また,マイクロ波加熱では炭素質の析出も抑制されることがNi/Al2O3触媒を用いた反応で分かった。これらの効果は,マイクロ波加熱では触媒が直接誘電加熱されるため,反応管内部まで十分に熱が供給されることに起因しているものと考えられ,本システムが固体触媒を用いた流通式反応に効果的であることが示された。

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