後期遷移金属触媒によるオレフィンと極性モノマーとの共重合によって,炭化水素ポリオレフィンに新しい機能を付与することができる。本研究では,Brookhart型のパラジウム–ジイミン錯体を触媒に用いて,1-デセンとメタクリル酸エステルとの共重合を行った。メタクリル酸メチル(MMA)との共重合では,極性基を末端に有する分岐状の生成物が得られた。共重合体の平均分子量はおよそ10,000~31,000であった。同位体標識を用いたNMRスペクトルの解析により,極性基を含む末端構造を決定した。これによって,MMAが高分子生長末端に2,1-挿入し,続く異性化で生じた六員環パラジウム錯体に1-デセンが挿入し,その後水素脱離により高分子が生成することが明らかになった。各種のメタクリル酸エステルと1-デセンとの共重合体を得た。メタクリル酸イソプレニルとの共重合体は,極性モノマーの二つの炭素炭素二重結合の両方が重合に関与した新しい構造を有する高分子であった。
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