Journal of the Japan Petroleum Institute
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48 巻, 4 号
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総合論文
  • Gray Murray R., Elliott Janet A. W., McCaffrey William C.
    2005 年 48 巻 4 号 p. 181-188
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    表面張力および粘度といった流体特性,ならびに接触角で表される流体-固体の相互作用は,石油やオイルサンドビチューメンから得られる減圧残さ留分を処理する際に観察される種々の現象に影響を与える因子として重要である。たとえば,これらの流体特性を代表的な処理条件下で直接測定することによって,水素化処理プロセス装置内でのガスホールドアップや加熱炉チューブ内のファウリング生成といった装置設計や運転に関しての重要な情報を得ることができる。本総説は,減圧残さの高温・高圧下での流体特性の測定に関しての取組みを解説したものである。現在まで,低圧条件下,530℃ までの温度領域における減圧残さの表面張力と粘度の測定については大きな進展が見られたが,今後,接触角の測定や高圧条件下での流体特性の測定方法の開発に対してさらなる努力が必要である。
一般論文
  • 本名 幸作, 荒木 泰博, 榎本 敏行, 吉本 昌雄, 西村 陽一, 島田 広道
    2005 年 48 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    中間留分選択性の高い残油水素化分解触媒の開発を目的として,メソポア容積が大きく,高Si/Al比(Si/Al=130)のUSYゼオライトを出発原料とする触媒を調製し,アラビアンヘビー常圧残油(AH-AR)の水素化分解活性評価を行った。触媒調製は,USYゼオライトをエチルアルコールに浸せきした後,アルミン酸ナトリウム水溶液処理を用いてアルミニウムを再挿入することで固体酸点を導入した。エチルアルコール浸せきにより,Al再挿入工程でのゼオライトの構造破壊が抑制されることが分かった。ついで,チタンイソプロポキシドのエチルアルコール溶液を用いてチタン修飾し,さらにパラモリブデン酸アンモニウム水溶液を用いた平衡吸着法によってモリブデンを担持した。得られた触媒(MTAZ)は水素化分解反応評価において,前報で報告したチタン修飾USYゼオライト触媒(MTZ)よりもさらに優れた中間留分選択性を示した。MTAZの中間留分選択性が高い原因は,メソポアが豊富であることに加えて,Al再挿入が主としてメソポア表面で起こったため,ナフサ,ガス生成の原因となるマイクロポア内酸点が少ないためであると考察された。
  • 平野 正樹, 安武 聡信, 黒田 健之助
    2005 年 48 巻 4 号 p. 197-203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    CO2とH2を原料として,メタノール合成触媒とメタノール脱水によるジメチルエーテル(DME)合成触媒を組み合わせた複合触媒を用いてDMEを直接合成する実験を行った。
    粒子状複合触媒(MD-12)とペレット状複合触媒(MD-13)では,形状の違いによるDME合成活性面での大きな差は認められなかった。
    MD-13について563 Kでの2000時間の耐久性実験を実施した結果,メタノール合成触媒の活性は低下したが,メタノール脱水触媒の活性は低下しなかった。
    ベンチプラントを用いて,ワンパス実験とリサイクル実験を行い,反応条件の影響を調べた。反応温度の影響に関しては523~563 Kの範囲では,メタノール合成反応は平衡の制約から温度の上昇とともに低下し,逆にメタノール脱水反応は温度の上昇とともに促進された結果,メタノール+DME収率は若干低下したものの,DME選択率は大きく向上した。
    反応圧力の影響に関しては,メタノール合成反応は圧力の上昇とともに促進されたが,メタノール脱水反応はあまり圧力の影響を受けず,メタノール+DME収率は向上したが,DME選択率は低下した。このことは反応速度のシミュレーション結果と一致した。
    リサイクル比の影響に関しては,リサイクル比の増大とともにメタノール合成反応とメタノール脱水反応の両方が促進され,CO2転化率が上昇した。DME選択率は,メタノール合成とDME合成の反応速度比も変わらないためほぼ一定であった。
    以上から,CO2転化率,メタノール+DME収率およびDME選択率を上げるためには,反応温度とリサイクル比を高く,反応圧力は低く設定することが効果的であると考えられる。
  • 小泉 直人, 占部 善久, 畑 憲太郎, 新宮 正寛, 稲村 和浩, 杉本 義一, 山田 宗慶
    2005 年 48 巻 4 号 p. 204-215
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    本研究ではNiMo触媒を用いて数種の軽油の超深度脱硫反応を種々の条件で行い,昇温酸化(TPO)法を用いて反応後の触媒上にたい積した炭素質化合物の性状やたい積量を調べることにより,炭素質化合物の生成機構や触媒の劣化との関係を検討した。全ての触媒のTPOにおいてH2O,CO,CO2,SO2に加えてCH3CNが生成することが見出され,使用済触媒上に炭素種と窒素種がたい積していること,窒素種はTPO時にCH3CNとして脱離することが明らかとなった。次いで,COxとCH3CNの生成プロファイルを波形分離し,これらのプロファイルが触媒の履歴によって2本のピーク(どちらも680 K以下に現れる),あるいはさらに680~690 Kに現れるピークを加えた3本のピークによって構成されていることを明らかにした。つまり,使用済触媒上には触媒の履歴によって2ないし3種類の燃焼性状の異なる炭素種および窒素種がたい積していることが示唆された。上記のピークを低温側からI,II,IIIとすると,各ピークの成因となる炭素種(窒素種)の燃焼反応における活性化エネルギーから,各ピークごとに炭素種(窒素種)の由来が異なると推定された。ピークI,IIの成因となる炭素種と窒素種のたい積量は軽油の全窒素濃度,90% 留出温度(T90),反応温度の最高値(Tmax)のいずれに対しても明確な相関を示さないのに対して,ピークIIIの成因となる炭素種と窒素種のたい積量はどちらもT90Tmaxに対して増加傾向を示すことが見出された。したがって,ピークIIIの成因となる炭素種と窒素種はいずれも軽油中の窒素を含む重質成分に由来し,触媒が高温の反応雰囲気にさらされると熱分解反応や脱水素反応による吸着種の重合が進行して,燃焼性の低い炭素質化合物のたい積量が増加すると推定された。さらに,この炭素種のたい積量が多いほど触媒の残存活性が低いことが見出され,この炭素質化合物のたい積が超深度脱硫触媒の劣化の一因と推定された。
  • 原田 浩一郎, 對尾 良則, 高見 明秀
    2005 年 48 巻 4 号 p. 216-222
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    ディーゼル車の排出ガスに含まれるカーボン微粒子を低減する手段として触媒担持ウォールフロー型ハニカムがあり,これにたい積したカーボン微粒子を効率良く酸化除去するために,Pt担持酸化物の検討を行った。その結果,カーボン微粒子の燃焼開始温度は同等だったが,燃焼開始後については,Pt担持Ce複合酸化物(Pt/Ce0.7Zr0.3O2およびPt/Ce0.9Pr0.1O2)を用いた場合にPt担持CeO2(Pt/CeO2)に比べ,より低温でカーボン微粒子が燃焼した。1073 K大気エージング後では,特にPt/Ce0.9Pr0.1O2において最も低温でカーボン微粒子が燃焼した。Pt/Ce0.9Pr0.1O2については,低温において担体からのO2の放出量が最も多く,またPt表面において吸着するCOの気相O2による酸化反応が進みやすい状態にあることが明らかになり,これらの特性がカーボン微粒子の燃焼特性を高めたと推定した。
  • 田中 住典, 中川 和憲, 金崎 英二, 加藤 雅裕, 村井 啓一郎, 森賀 俊広, 中林 一朗, 杉山 茂, 木戸口 善行, 三輪 恵
    2005 年 48 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    γ-アルミナ,シリカ-アルミナおよびシリカ3種類の担体に担持したゲータイトのメタン酸化触媒活性を調べた。これら酸化鉄担持触媒の比表面積は,いずれも担持物なしのゲータイト固体の値に比べて増大した。酸化鉄担持触媒 Fe/γ-Al2O3を用いると,メタン酸化反応は623 Kから開始し,923 Kでメタン転化率は100% になり,低温で最も高活性であった。この触媒のX線回折パターン中にはゲータイトが観測された。触媒活性は,鉄含有率上昇とともに上昇し,鉄含有率6モル% で一定になった。823 Kでのメタン酸化反応使用後に測定したこの触媒のX線回折パターン中には,ゲータイトが相転移して生じたヘマタイトが観測された。ヘマタイトはメタン酸化反応での触媒活性種として知られている。Fe/γ-Al2O3触媒中のナトリウム含有率の上昇とともに触媒活性も上昇したが,5モル% 以上で比表面積の減少に起因する活性の減少を観測した。
  • 鈴木 和彦, 弓削 兼一, 内川 啓, 角川 一夫
    2005 年 48 巻 4 号 p. 229-236
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    ディーゼル自動車から排出される黒煙,粒子状物質(PM)低減に向けて金属を含まない無灰系添加剤の検討を行った。その結果,亜硝酸エステルや硝酸エステル系添加剤を軽油に添加すると,直噴エンジンで回転数2100 rpm,負荷80% の定常運転では黒煙やPMの低減が認められた。特に,黒煙低減効果は筒内の酸素濃度が低いほど大きくなった。また,筒内燃焼圧のサイクル変動を抑制する効果も認められた。
    含酸素化合物については,燃料油中の酸素濃度を増加させるほど黒煙低減率も増加した。ただし,サイクル変動については抑制効果が認められなかった。
    次に,副室式エンジンを用いて,ディーゼル自動車10・15モード排出ガス測定法に基づいた試験を行った結果,軽油に亜硝酸n -ヘキシルを添加した所,燃費向上と同時にPM低減,NOx低減が認められた。
  • 岩本 隆一郎, 各務 成存, 飯野 明
    2005 年 48 巻 4 号 p. 237-242
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    CoO-MoO3/Al2O3系水素化脱硫触媒の脱硫活性を向上するため,新たな添加物として水溶性有機化合物の一種であるポリエチレングリコールを用いた。触媒の調製過程において,ポリエチレングリコールをコバルト-モリブデン含浸溶液に添加すると,チオフェン,ジベンゾチオフェン,軽油の脱硫活性が向上することを見出した。XPS測定とTEM観察の結果から,ポリエチレングリコールは活性金属であるコバルトとモリブデンの凝集を抑制して,活性点数を増大していると考えられる。ポリエチレングリコールを添加しない場合,活性金属は担体と結合していないために,含浸液を乾燥して水分を除去する際に活性金属種が凝集することが観察された。一方,ポリエチレングリコールを添加した場合,ポリエチレングリコールは水よりも沸点が高いので,含浸液を乾燥する際にも触媒表面上に残存する。したがって,残存するポリエチレングリコールに活性金属種が溶解し,高い分散性が保持されたものと考えられる。
  • Jin Tao, Que Peiwan, Chen Liang, Chen Tianlu, Li Liang
    2005 年 48 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    石油産業においては,海洋パイプライン等の安全評価は環境汚染あるいは人身事故を未然に防ぐという意味合いで非常に重要なものである。その評価方法としては,管厚の測定に対して有効な超音波探傷法のほかに,パイプラインの管体に生じた微小な傷を探知する手法として近年広く利用されるようになった漏えい磁束探傷法がある。同手法は,出力信号処理としてウェーブレット基底関数をスペクトル解析し,時間情報と周波数情報の両方を同時に解析して得られるものである。本論文では,漏えい磁束探傷法を用いたパイプラインの探傷自動化装置の開発において検討されてきたウェーブレット基底関数ニューラルネットワークのダイナミックな反復アルゴリズム利用による検知精度の向上,ならびに高速化を図る手法について紹介している。
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